※この作品はR-18です。

キヴォトスに墜ちた悪魔   作:やーなん

54 / 121
元問題児たちの夜

 

 

 

「皆さん、ごきげんよう。

 美食研究会チャンネルへようこそ。

 お馴染みの黒舘ハルナですわ」

 

 ハルナはトリニティの公園で生配信をしていた。

 彼女の仲間たちは撮影をしたりライトを調整したりと、今回の動画の主役はハルナのようだ。

 

「本日はあの幻の魚、『ゴールドマグロ』の食レポをしようと思います。

 しかし、肝心の現物がまだ到着しておりませんの。

 それまで、私とフウカさんの小粋なトークで場を繋ごうと思います」

「あの、ハルナ。

 私はゴールドマグロを御馳走してくれるからって、ここまで来たんだけど。ここトリニティだけど、ちゃんと大丈夫なの?」

 

 部外者なのにフウカが撮影に文句を言わないのは、彼女らのチャンネルに度々ゲスト出演してるからだった。

 

「ええ、普段お世話になっているフウカさんにお礼に、ゴールドマグロを御馳走しに、わざわざトリニティくんだりまで参りました。

 しかし、肝心の私達にマグロを捌く技術はありませんので」

 

 ハルナは不安そうにしているフウカに力説する。

 

「所詮、魚を切るぐらい誰でも出来るだろう、と思われているかもしれませんが。

 ……ジュンコさん」

「はい、会長」

 

 アシスタント役のジュンコがパネルを渡した。

 

「御覧のパネルのように、素人と職人の切った魚の断面図には大きな違いがあるのです。

 素人の捌いた魚の断面図は、組織が潰れ水分と共にうま味成分が流れ出てしまいます。

 職人は職人と称されるだけの技術を有している、と言うことですわね」

「まあ、そこまで私の技術を買ってくれるのは嬉しいけど」

 

 流石に本職と比べられるのは気恥ずかしいフウカだった。

 

「ハルナがそこまで力説するから、ちゃんと包丁は研いで来たけど、ゴールドマグロなんて水揚げが滅多にされない魚を、どこから手に入れたの?」

「ええ、実は先日食べたい珍味リストを公表したところ、私のファンの方々がゴールドマグロを調達してくれると仰ったので、お言葉に甘えようとした次第ですわ。

 そして、今日、この時間のこの場所に届けてくれる予定なのですが……」

 

 肝心のマグロはまだ届かない。

 ハルナはちょっと困り気味だった。

 

「フウカさんはマグロを捌けるんですかー?」

 

 ジュンコがトークを繋げるために質問を投げかけた。

 

「あ、はい、ゲヘナは大所帯ですから。

 マグロを何頭か食堂で解体したこともあります。

 自分で捌いた方が安上がりですし、マグロは無駄な部位も無いので余すことなく食材として利用できますから」

 

 と、フウカはよどみなく答えた。

 

『流石フウカたん、パネェ』

『涙ぐましい努力……ですね……』

『もううちの食堂の料理を雑とか言いません』

『嫁にしたい』

 

 等々、配信画面からコメントが流れる。

 

「雑で悪かったですね!!

 この間、部費が削減されてなかったら、もうちょっとマシにはなったんです!!」

「やはり生徒会をおそ、ごほん、説得して予算を増やすよう交渉致しましょうか」

「ハルナ達も下ごしらえが板についてきたし、衛生管理にも力を入れられるようになったし、真面目に抗議ぐらいしようかな……」

 

『頭ゲヘナ乙ww』

『おい、トリカスが居るぞww』

『トリニティのお嬢様(笑)がこんなチャンネルみてるわけないだろwww』

『喧嘩でしたら買いますわよ』

 

「あら、コメントが荒れてますわね。まあいつもの事ですが。

 そう言えば、地域別の視聴者層についても表示できるのですが」

 

 ハルナは自分の配信チャンネルの視聴者層の分布を画面に示した。

 

「意外にも、トリニティの10代が15%を占めているそうですね。

 一番多いのは勿論ゲヘナの36%ですが。学園の垣根を超えて食の素晴らしさを知らしめていられると思うと、これ以上素晴らしいことはありませんわね」

 

 ハルナの言葉に、コメント欄はすぐに意外そうな反応を示した。

 そこで、ハルナの目に留まったコメントがあった。

 

『もしかして、トリニティのゴールドマグロって、今水族館の展示中のアレじゃね?』

 

「展示中のアレ? 今トリニティの水族館には、ゴールドマグロが展示されているのですか?」

 

 ハルナ達は知らなかった。

 ほぼ連日、食堂で下ごしらえをして、フウカの買い付けの手伝いやらなにやら。

 毎日くたくたで、配信の撮影や動画編集なども忙しい。

 

 他所の学校の自治区の水族館の情報なんて、耳に入りようも無かった。

 

「……ハルナさん。正直、なんだか嫌な予感がしてきましたわ」

 

 アカリがその情報に、無性に胸を掻きむしるような嫌な予感に襲われた。

 

「……まさかそんな。私のファンの方々が、水族館からゴールドマグロを略奪しようだなんて――」

 

「ハルナ様、お待たせいたしました!!

 ちょっと警備に追われて、遅れてしまいました!!

 でも、ゴールドマグロはこの通り!!」

 

 その時、ゲヘナの制服の少女たちが目をキラキラさせながら幻のゴールドマグロを運んできた。

 

「……」

「……」

「……」

「……」

「……」

 

『あッ(察し』

『これは人狼隊案件では?』

『ハルナ様の所為、ってわけじゃないけど、一時期増えたからな、ゲヘナで迷惑系配信者』

『南無南無。手品部や魔法少女同好会みたいになるのか』

『まさか、あいつらがトリニティまでやってくるわけが……』

『奴らが来なくても、正義(笑)実現委員会が来るんだよなぁ』

 

「ハルナ、証拠隠滅ッ、いえ、彼女達を捕らえて身の潔白を証明して!!」

 

 いち早くフウカが冷静になって叫んだ。

 

「し、しかし、ゴールドマグロ……いえ、彼女達は我々のファンで……ファンは大切にしませんと……」

「じゃあ手品部や魔法少女同好会の連中みたいに成りたいの!?」

 

 ゲヘナ学園に居れば、嫌でも伝わってくる惨劇。

 いや、処刑動画の話。

 

 有名になったハルナ達の後追いで、動画配信を始める部活がゲヘナでは増えた。

 とは言え、良い子にしろと言われても良い子の基準が分からない連中ばかりなのがゲヘナ。

 一時期迷惑系配信部活動が増加した。

 

 その中でも有名な事件になったのが、手品部と魔法少女同好会だった。

 

 手品部。その名の通り手品の習得や習熟を目的とする部活動。

 しかし、そこに所属する彼女達は手品には“タネ”があることを理解していなかった。

 その為、度々火事を起こしたり、動物園の猛獣を檻から脱出させるマジックを披露した。

 結果、謎の狼マスクのマジシャンに捕まり、彼女達は文字通り種も仕掛けも無い人体切断マジックを配信で披露する羽目になった。トラウマを負った彼女達の部活は廃部になった。

 

 魔法少女同好会。元々魔法少女モノのアニメや映画を部員内でレビューするようなゲヘナにしては穏当な部活だったのだが、配信業を始めてからは過激化。自分たちが魔法少女になり切って、街中の悪人を手あたり次第攻撃して注目を浴びようとした。

 その結果、狼の怪人と4人の戦闘員にボコボコにされ、守るはずだった(守っていない)住人たちに罵声を浴びせられながら、市中引き回しにされ、その様子を配信させられた。

 最近は魔法少女凌辱モノのエロゲを口頭でレビューする動画をアップする程度にまで落ち着いたらしい。

 

 それら迷惑系配信部活を処断したのが、人狼隊。

 風紀委員会がその活動を黙認しているという、私人処刑系配信者集団だという噂だった。

 

 勿論、元美食研究会の面々にはその正体が誰かなど、問うまでも無かった。

 

「あ、あの男が来る……」

 

 ジュンコの身体が震える。

 彼女にとって、一日中追い回された記憶は、まだ昔ではない。

 

「そ、そそ、そんな、まさか……」

「そッ、そうだよぉ、だってここはトリニティで――」

 

 ガクガクと震え、脂汗をかき始めたアカリとイズミは、その時見た。

 

 

「よう、お前ら。こんなところで会うなんて奇遇だな」

 

 嗜虐の笑みを浮かべた、オオカミが現れたのを。

 

「アカリさん、イズミさん、ジュンコさん、やってしまいましょう!!」

「「「はい、会長!!」」」

 

 ハルナは即座に、ファンを売った。

 

 

 

 

 

「誤解です。信じてください、先生」

 

 自称、ハルナ公認“ハルナ様ファンクラブ”をぶちのめした四人は、正座して先生に訴えた。

 

「こいつらはお前公認だと言っているが?」

「そ、そうです、私達はハルナ様の為に――」

 

 ロープで縛られたファンクラブの会員を、ハルナは即座に愛銃をぶっぱなして黙らせた。

 

「……先生、一応アーカイブを見て下されば。

 彼女達は本当に襲撃には関わってないんです」

「“わかった、信じるよ”」

 

 フウカに言われ、一旦配信を切ってアーカイブを確認した先生は頷いた。

 

「ちッ、お箸無しであつあつおでんを完食させた後、お前たち四人をおでんの具にしてみんなに振舞ってやろうと思ったのに」

 

 ぽんぽん、と愛銃で手持ち無沙汰を示しながら男は正座している四人を見下ろした。

 

「それは次の機会に取っておこうか。お前たちも美食の一部になれるのなら本望だろ? なあ?」

「え、遠慮しておきますわ……」

 

 男の猟奇的な構想を聞かされるハルナは縮こまっていた。

 

「“あんまり脅かさないであげなよ。今回は本当に悪気は無かったみたいだし”」

「アホか、こいつらは初めから悪気なんて無かった。そうだろう?」

「“じゃあ不可抗力だった。フウカを喜ばせようとして、やり方を間違えてしまった。違うかい?”」

「ふむ、じゃあそれで行こう」

 

 先生との論議の結果、男は納得して一歩下がった。

 それを見て、四人は安堵の息を吐いた。

 

「あ、あのー、元顧問官殿は、私達の処遇を決める権利は無いはずでは?」

 

 アカリがおずおずとそう言った。

 

「そ、そうよ!! あんたは今風紀委員会を辞めてるじゃない!! なのに、そんなに脅かさなくても!!」

 

 ジュンコも追従して声を上げた。

 そう、この男は四人に対して何の権限も今は無いのだ。

 

「それもそうだな。ちょっと待て」

 

 男はスマホを取り出し、電話を掛けた。

 

「もしもし、俺だ。アコか?」

『……何の用ですか。騒ぎの報告なら既に受けて、委員長がそちらに向かってらっしゃいますが』

「どうやら、ハルナ様ファンクラブは公認らしい。

 こいつらを準美食研究会系テロリストと認定し、例の法律を適応できるように手続きしてくれ」

『わかりました。そのように致しますね』

 

 男はそれだけ言うと、スマホを切った。

 

「で、何の話だっけ?」

「……何でも無いです」

 

 ジュンコはそっと目を逸らした。

 この男のゲヘナ風紀委員会での影響力は、ちっとも衰えてなどいないことを思い知ったからだった。

 

「フウカたそ、良かったな!!

 ハルナの言うことなら何でも聞く馬鹿どもが、食堂の手伝いをしてくれるそうだ」

「うわーい、うれしいなぁ……」

 

 体よく押し付けられる形になったフウカは、半眼になってそう言った。

 勿論そんなこと聞いていないファンクラブの面々は抗議するように訴えたが、ハルナの一睨みで黙り込んだ。

 

「とりあえず、これと博物館での破壊行為の弁償の分は働かせてやってくれ」

「まあ、人手が増えるのは純粋に助かりますけど」

 

 結局そう言うことになったのである。

 

「ああ、ゴールドマグロが……息絶えてます」

「元々か弱い生態をしているそうです、だからこそ幻の魚なのだとか」

 

 ファンクラブの面々を包囲して武器を構えているアズサとコハルを他所に、地面に置かれたゴールドマグロがピクリとも動かないのを嘆いているヒフミとハナコだった。

 

「まあ、死んじまったものは仕方ない。

 折角だし、新鮮なうちにフウカたそに捌いて貰って食ったらどうだ?」

「私が言うのもなんですが、あなたも大概サイコですわね」

 

 ハルナにツッコミを受ける男だった。

 結局、ゴールドマグロの死骸は博物館に返品することになった。

 

 

 

「いやー、俺ってば生魚食えないんだよな。

 回転寿司とか言っても、もっぱらたまごか納豆巻きか茶碗蒸しぐらいしか食べないんだわ」

「えー、もったいないよ、茹蛸とかエビとか、生じゃないやつもあるよ?」

「そりゃあ分かってるが、茹でた奴ってネタが硬くてな。

 ああ、炙りサーモンとかはギリギリ食えるな。でも最近よく行ってる回転寿司の炙りサーモンがハラミになって脂っこくてなぁ」

 

 だから最近食べてないんだよなぁ、とぼやく男だった。

 

「脂の乗ったサーモンはおいしいよねぇ」

「肉体年齢が三十を超えると、脂っこいモノがだんだん受け付けなくなるんだよ。俺もガキの頃はウナギとか食えなかったが、食わず嫌いはなかなか是正できんものなんだよ」

 

 何て会話をイズミとしていた。

 

「“……意外と仲が良いんだね”」

「腹を空かせたガキをいつまでも嬲るほど、俺もガキじゃない」

 

 男と先生はトリニティ自治区の外郭にある大橋に来ていた。

 ハルナ達とそのファンクラブの面々を引き渡す為である。

 トリニティ側が引き渡すと、政治的に色々面倒なので、ハスミが先生に頼んだのだ。

 

 そうして、風紀委員会の到着を待っていると、数台の救急車がやってきた。

 そして、その一台からセナが現れた。

 

「お待たせしました、死体はどこですか?」

「おっと失礼した、今すぐ死体に変えるわ」

「ああ、顧問官殿。あなたですか……」

 

 男の姿を見て、じゃあ負傷者ですね、とセナは呟いた。

 この二人、実はかなり面識があった。

 男がテロリストを怪我させ、彼女が治療する。風紀委員会なら割と見慣れた光景だった。

 

「先生、こいつはセナ。

 ゲヘナでも珍しい真面目ちゃんの天使だ。

 まあ、実際白衣の天使なわけだが」

「“な、なるほど……”」

 

 死体呼ばわりに若干驚いている先生に、男が彼女を紹介した。

 

「ところで、顧問官殿。ゲヘナを離れたと聞きましたが、何ゆえにこんなところで?

 ……そちらの方は?」

「その方は、シャーレの先生」

「その声は!!」

 

 聞き覚えのある声に、いや聞き間違えのある筈の無い声に、男の声音が上ずった。

 

「嗚呼、我が麗しの風紀委員長!!」

「ご紹介どうも」

「“ヒナ!!”」

 

 ヒナの登場に、先生も思わず彼女の名を呼んだ。

 

「この間ぶりね、先生。事情は全て、彼から聞いているわ」

 

 恭しく膝をついて頭を下げている男を、ヒナはちらりと見て先生に言った。

 

「だから公的には風紀委員会ではなく、救急医学部が来たってことになってる。私は基本的にただの付き添い」

「いや、むしろこっちがメインまである。おいセナ、さっさとそのクソを垂れ流すしか能の無い死体どもを片付けろ!!」

 

 ヒナとセナとでは男の対応が全く違う、と先生は呆れた。

 セナはセナで部員を指揮して真面目にトリアージを始めている。

 

「ああ俺のベストガール……今日も美しい。こんな時間じゃなかったら花束を用意したんだが。

 代わりにクソテロリストの首で勘弁してくれや」

「そう、ありがとう」

 

 そしてヒナもこの男の対応に慣れてるな、と先生は思った。

 

「救急医学部はゲヘナの中でも特に政治的な部分に関わりが薄い立場に居る。だから今回はこうしてお願いしたの」

「部長の氷室セナです。した……いえ、負傷者が居たらいつでもお呼びください」

「まあ、ちょっと変わってるけど優秀だから」

「チナツの奴はこいつの後輩でな、こいつが駆けつけるといつも頭を下げてるんだ」

「チナツに頭を下げさせてるのは貴方でしょうに」

「ははは、ゲヘナジョーク!!」

 

 そんな文化はないわ、とヒナは面倒そうにツッコミを入れた。

 そうこうしているうちに、ハルナ達は救急車に収容されていった。

 

「見ての通り、ゲヘナの治安はかなり向上したけど、問題が無くなったわけじゃない」

「“……大変そうだね”」

 

 多くは今大人しくしているだけで、問題を起こす連中は何一つ変わっていない。

 先生の目にも、いずれ不満の決壊が目に見えていた。

 

「それにしても、あの注文の確認はなんだったの?

 風紀委員会の制服なんて。しかもあんなに」

「コスプレ大会、ですかねぇ。割と人気なんですよ、ゲヘナ風紀委員会の制服って、シュッとしてて」

 

 そう答える男から、先生へとヒナの視線が向いた。

 

「“トリニティの機密事項だから”」

「そう。ならそれ以上は聞かない」

 

 そもそもトリニティへこの男を差し向けたのが彼女だ。

 この男の矜持は理解しているようだった。

 だからアリウスに対する作戦を、何の報告もしていない様子だった。

 

「先生が居るから心配していないけど、以前私が言った言葉を忘れないでね」

「イエス、マム。我が忌まわしき呪われた知恵と経験は、キヴォトスの平穏の為にのみ貴女に捧げられる」

「少し違うけど、まあ概ねその通りだから、先生、彼を扱き使って頂戴」

「“任せてほしい”」

 

 先生はヒナに頷いて見せた。

 

「はあ、今日も麗しい……。

 彼女を通じて先生が俺を酷使する……思わず恍惚としちまいそうだ」

「こんなんでも、役には立つから」

「“……うん”」

 

 男がヒナに心酔しているとは聞いて居たが、ここまでとは先生は思っていなかった。

 

「我が麗しの風紀委員長。条約締結の邪魔者は、全て排除いたします。俺はその為に居る。間違いありませんね?」

「うん? そうね」

 

 男が恭しく頭を下げる。

 ヒナはなぜ、今そんな確認をされたのか若干困惑した様子だった。

 その確認の意味を、先生は知っているだけに複雑な胸中であった。

 

「わかりました。その確認を先生の前でしたかった。

 では、俺はこれで。先生、俺は先にあいつらのところに戻っている」

 

 顔を上げて立ち上がる男には、笑みが浮かんでいた。

 そして、踵を返して離れたところに居るハスミたちの元へと向かって歩き出した。

 

「彼がああいう笑みを浮かべて、碌なことになった記憶がないわ。

 先生、彼の手綱はしっかりね。お願い」

「“うん、分かってる”」

 

 その後、先生はヒナにエデン条約についての考えなどを聞いたが、程なくして彼女は救急車に乗って帰って行った。

 

 

 そうして、補習授業部の長い夜は終わった。

 

 

 

 

 

 

 そして、夜が更け、深夜。

 合宿所で誰もが寝静まった頃、コハルはそそくさと自分の寝床から抜け出した。

 

 そして。

 

「おう、遅かったなコハル」

「あお"ッ」

 

 トリコとウズの部屋のドアを開けると、既に情事は始まっていた。

 

「あ、あ、あッ」

 

 エロ本だけでは得られない、生々しい光景、臭い。

 全てが衝撃となって、コハルの身体を貫いた。

 

「たッ、たづげで……ぐるじぃ、おながが、はれづしじゃう……」

 

 ベッドの上のウズは涙目で悶えていた。

 

「あと十分ぐらいだ、我慢しろ」

「……」

「コハル?」

 

 入ってから何も反応を示さない彼女を不審に思った男は、そちらを見て見ると。

 

 コハルはドアにもたれ掛かるように失神していた。

 鼻血を垂れ流しながら。

 

「あッ、ははは、こいつは面白いな!!」

 

 トリコ、と男は右腕の名を呼んだ。

 

「はい、部屋に返しておきます」

 

 部屋の隅で情事に参加もせずジッとしていたトリコが、コハルを抱き抱えた。

 

「あいつには後でエロ本の差し入れでもしてやるか」

 

 なんて、親切心で余計なことを考える男であった。 

 

 

 

 

 




投降を初めて一番更新に間が空いてしまいました……。

私が短期間で更新していたのは、そうしないとモチベーションが維持できないからなのです。
最長で二か月くらいなんの作品も更新しなかったりと、作者はムラが多いので。

とりあえず、まだ皮算用ですが、早く四章まで突っ切って、四章の二部を終わらせてから、アリス編を終えて、最終章に行きたいと考えてます。
なんでストーリー実装順どおりじゃなくて、四章二部を優先するのかって?
そりゃあカヤちゃんをイジ……ごほん、可愛がりたいからですよ♡
多分その過程でベアおばはナレ死してると思います(扱い雑

では、書きたいことはまだあるので、次回をお楽しみに!!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。