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これも皆様の応援の賜物です、これからも拙作をご愛読下されば幸いです!!
「“正直に言うと、少しだけ後悔している”」
「急にどうした」
ナギサと会った帰りの道中、車の中で先生が呟いた。
「“ナギサを騙したことについてさ。私は彼女に苦痛を強いることになる”」
「向こうも騙しているし、あんたに苦痛を強いてもいるだろう」
「“私と彼女は、大人と子供だ”」
「お前と彼女は、立場が違う」
相変わらず、先生と男の話は平行線だった。
「忘れたのか、俺は言ったはずだ。お前の行動は、生徒たちの指針となる。
お前の言動が生徒たちの正義になり、どんな馬鹿共でもお前と行動しているというだけで正当化されるようになる」
「“それは、違うはずだ”」
「お前はそう思うだろうな。
だが、生徒たちは違う。お前がどう言い聞かせようとも、だ」
それが、男が先生に問う責任。
彼の行いの結果だ。
「お前が権力から離れようとしているのも分かる。
やろうと思えばいくらでも兵隊を招集してで身を守れるのに、そうしないのも分かる。
お前が暴力を良しとしないように、権力で解決しようとしたくないのも。
だがお前の事を知らない誰かは、お前はなんかすごい権力を持った大人に過ぎない。お前を邪魔に思う者もこれからたくさん現れるだろう。
お前の高潔さを、お前以外の誰もが理解してくれるわけじゃない」
「“……”」
「お前はお前の身ひとつで、手足は二つずつしかない。
お前の意思を反映する組織として、シャーレを強固にする必要がある。
いずれ、その時が来るまで耐え忍べ。無害なお人よしのままの教師でいろ」
「“ままならないものだね”」
先生は世知辛い世の中を嘆いていた。
「リーガルハイって、昔のドラマがあってな。
印象的なセリフがあって、今も覚えている。
悪徳政治家のセリフなんだが、曰く、なぜ人は我々を先生と呼ぶのだろうか? と、主人公に問いかけるんだ」
「“……聞かせてほしい”」
「人は何かをしてもらう相手に、先生と言ってへりくだるんだ、とな。
教師には教えてもらう、医者には治してもらう、弁護士には助けてもらう、と主人公は返す。
では政治家には何をしてもらうのか? ――稼がせてもらう、だそうだ」
実に悪徳政治家らしい言葉だ、と先生は思った。
「主人公は次のシーンでそれに対して、カネと権力は表裏一体だと語る。
カネのある所に人が集まるから、だと。ヒトはカネを集めることを悪とし、そんな民衆に媚びる政治家がクリーンさを標榜し、何の力も無く当選するのだ、と。
真の聖者の元に、人徳で人が集まることもあるだろう。
だが、組織の長が金勘定から逃れることはできない。
そして、カネも無しに予算を組めず何もできない組織に実行力は無い。そんな組織の掲げるお題目に、説得力は無い」
それが、現実だった。
先生の当番も、給金が発生する。
ボランティアだって、職員に給料を払う。全て善意で賄うことなんて、社会では不可能なのだ。
「“君はアビドスの子たちに言ったそうだね。大人になると言うことは、優先順位を決めることであると”」
「ああ……」
「“私は子供たちの手前、大人であろうとしてた。
だけど、……ただ子供ではいられないだけだったんだね”」
「俺もそうさ」
二人の、子供ではいられなくなった者達は深く息を吐いた。
「“君の友達は、大人をこう定義した。
大人とは、望むとおりに社会を改造し、法則を決めて、常識と非常識を決め、平凡と非凡を決める者である、と”」
「あいつは意識が高いからな。
そんなことができる大人が、どれだけいるんだろうな。
天才のたった1%の閃きが社会を変えるように、99%以上の人間は凡俗でつまらない社会の歯車に過ぎないというのに」
男はまた溜息を吐いて、またみんなで飲もう、と言った。
ああ、と先生は頷いた。
それで、この話は終わった。
「ナバト、ムツニ、戦力の確保はどうだ?」
「順調です、ボス」
助手席のムツニが答えた。
「わかった」
「ボス、私はどんな理由があろうと、悪事を働く政治家は赦せません」
「本当か、ナバト?
例えば、恩義のあるSRTの廃校取り消しとかを持ち掛けられてもか?」
男は意地悪を言うように運転席のナバトに言った。
「そんな口約束、真に受ける輩が居るとは思えません。そんな馬鹿は居るはずないでしょう」
「それもそうだな」
笑う二人。それが笑い話で済めば、どれだけ良かったことだろうか。
そうして、第二次特別学力試験を目前としたこの日は終わろうとしていた。
補習授業部に試練が、訪れようとしてきた。
§§§
ヒフミたちが、明日の試験への意気込みを表明している。
試験が終わったとのことに、思いを馳せている。
お互いに試験勉強をし、訓練を経て得た絆を確かめ合うように。
生徒たちの成長に、先生も目に熱いモノがこみ上げていた。
コハルの問いに、ヒフミがスマホでトリニティ学園のサイトにある、連絡掲示板の告知を見た時、そんな彼女達の淡い希望は霧散することになった。
補習授業部への、ナギサの悪意。
試験範囲を、三倍へと拡大。
合格点は90点以上。
試験会場は、ゲヘナの自治区内の深夜三時。
「なるほど、私達の模試試験の結果はリコさんによって報告されていますからね。どうしても私達を退学にしたい、と」
露骨なやり方ですねぇ、とハナコは嫌味っぽく言った。
「退学?」
「え、た、退学!? ちょっとどういうこと!?」
ハナコが口を滑らせた、というよりこの状況でそれを黙っているわけにはいかないという判断だろう。
彼女の言葉に、アズサとコハルが困惑した様子を見せた。
先生とヒフミ、男とハナコも顔を見合わせ、共有することに無言で全員が同意した。
「退学ってどういうこと、説明してよ!?」
困惑するコハルと、不安そうな顔を隠し切れないアズサに、真相を知る面々は説明をした。
この学力試験に三度失敗すれば、全員が退学になるということを。
「隠していてごめんなさい、まさかこんなことになるなんて……」
ヒフミも涙目になってそう言った。
当然だろう、彼女も他人事ではないのだから。
「どうしよう、退学になったら、正義実現委員会に戻れなくなっちゃう!?」
コハルにとって、それは彼女のアイデンティティでもあった。
それを失うことは、恐怖なのだ。
「り、リコ、あんた何か知ってるんじゃないの!?」
「申し訳ありません、私は所詮下っ端の使いっぱしり。
この通知は昨日の時点でアップされていたみたいですが、私にそれを伝えるようにと言う命令も有りませんでした」
トリコも苦渋の表情でそう言った。
本当にその通りなのだと、怒りの矛先を向けようとしたコハルは勢いを失った。
「彼女に当たっても仕方がない。
それよりも、早く出発した方がいい」
動揺する面々に、いつも冷静なアズサが眉を鋭くして言った。
「試験時間が、深夜三時って書いてある。今から出発しないと間に合わない」
それは即ち、今日が終わり、日付が変わった午前三時が試験の開始時刻と言うことだった。
無茶苦茶にも程があった。
アズサがみんなを鼓舞する。嘆くのも怒るのも、全てが終わってからでいい、と。
ハナコはこんな状況でも楽しんでいるし、コハルもヤケクソ気味に頷いた。
「すぐに出発しよう、各自装備を忘れずに」
「私も、皆さんが試験を受けられるように最善を尽くします」
アズサに続き、一応運営側となっているトリコも贖罪を果たすかのようにそう言った。
「ゲヘナなら顔が利く。
全員、バンに乗れ」
男の言葉に、皆も頷いた。
一足先に男と先生は合宿所に彼女達を運んできたバンを取りに向かった。
「“まさか、ナギサがこんな手段を取るなんて……”」
彼女達を退学させたいだけなら、ウズに指示をすればいいだけの話だ。
なのに彼女はこんな手段を取った。
「ウズは俺の手下だからな。それをあいつは信用しなかったんだろう」
「“ナギサ……”」
ナギサの置かれている状況を、先生は心底嘆いていた。
「それにしても、あのお嬢ちゃんも単純だな。
ミカの言う通りだった。女って怖いよな、あいつら、お互いにお互いを馬鹿だと思ってたんだぜ?」
男は助手席に座った先生に笑いかける。
先生は何とも言えない表情をしていた。
ナギサをどう刺激して動かすか、それは全てミカの発案だった。
どうすれば強硬手段を取るのかも、幼馴染はよく知っていた。
「さて、俺だったら試験会場に爆弾を設置する。
そこまでしなくても、テロリストが突入してきて戦闘になったら試験はオジャンだ。
そう、つまりは――」
「“計画通り”」
ああ、と男は先生に頷いて見せた。
「本当に、本当にかわいいヒヨコちゃんだよ、ナギサは。
まさかこんなに早くボロをだしてくれるとはな」
先生たちの計画に必要不可欠な存在、それがナギサだった。
ティーパーティーの現ホスト。トリニティ学園の実質的なトップ。
先生たちの計画に、彼女の失策がどうしても必要だったのだ。
バンを合宿所の前に停めると、生徒たちが準備を終えて次々と乗っていく。
「ウズ、最短ルートの指示を頼む」
「イエス、教官」
八人乗りのバンに全員が乗り込み、後部座席がぎっちりとつまったところでウズがノートパソコンを開いてナビゲートを開始する。
一行は、トリニティ学園の自治区を抜け、ゲヘナの自治区へに向かった。
「この辺は自治区と名が付いているが、まだチンピラやごろつきが蔓延る無法地帯だ。
治安がいい場所に迂回すると、試験時間に間に合わんな」
「突破しましょう」
「よし来た!!」
ハナコの声に、男は応じた。
だが。
「ッ!?」
深夜の繁華街に突入した途端、横から手榴弾が飛んできたのだ。
「対ショック!!」
男の指示に、訓練を受けた生徒たちは即座に対応した。
男は急ブレーキを踏み、座席の下に先生を引っ張って隠れた。
爆発に、フロントガラスが割れる。
「おいおい、ここはうちらのシマなんだけど」
「誰の許可を取って通ってるわけぇ?」
武装したゴロツキたちが、破壊されたバンを取り囲む。
「はあ、やっぱりゲヘナはこうでなくちゃな」
「“みんな無事か!?”」
「お前ら、やれ」
無事を確認する先生の声より、男の声が勝った。
ゲヘナに来る前に、彼女達は事前に配られていたマスクを着用した。
そして、バンのドアを開けて飛び出した。
「そ、そのマスクは!?」
「じッ、人狼隊だぁ!?」
ゴロツキ共は、彼女達が牙を剥く狼の口元がデザインされた黒マスクを見て震えあがった。
「おい、お前ら。土下座して謝れば見逃してやる」
「ひッ!?」
「三秒やる。3,2,1――」
ゴロツキ達は、震えながら武器を捨てて跪いた。
「よし、良いだろう。――撃て」
男の指示に、生徒たちは何の疑問も無く従った。
無抵抗のゴロツキ共を、容赦なく銃撃でぶちのめしていく。
「な、なんで、見逃すって!?」
「ああ。言葉が足りなかったな。ぶちのめした後に見逃してやるって言ったんだ」
絶望の表情のゴロツキに、銃弾が浴びせられる。
彼女達は例外なく気絶させられた。
「クリア」
「クリア」
「クリアです」
「こっちもクリア」
補習授業部の面々はゴロツキ達を一掃すると、整列した。
「そいつらの顔のマスクとスカートを剥ぎ取れ、その姿を撮影しておけ」
「“やり過ぎだ!!”」
バンからほうほうの体で出てきた先生が叫んだ。
その声に、生徒たちは我に返った。
「おっと、そんなことをしてる場合じゃなかったな」
時間があったら本当にやったんだろうなぁ、と言う視線を向ける生徒たち。
「じゃあ上着だけでいい。
見せしめを引きずって、通行証にしろ」
「はあ、わかりました」
歩く度に襲われてはたまらない、とヒフミは渋々従った。
男は半裸に剥かれたゴロツキの首根っこを掴み、それを盾にするように見せつけながら歩き出した。
「行くぞ」
男の指示に、彼女達は従った。もうぐちぐち言っている暇はない。
そうして、ゲヘナ自治区の繁華街の方へと進んだ一行は、
「どこかで戦闘が?」
「それにあれは、検問ですか……?」
一行は訝しがりながらも検問に近づく。
「止まれ!! ここから先は立ち入り禁止だ!!」
「そもそも今日は街全体に外出禁止令が出されている筈だ!! 早く戻って――」
「おいお前ら、どういうことだ?」
「これはッ、顧問官殿!!」
検問を敷いていた風紀委員達は、男を見るなり敬礼をした。
「そうかしこまるな。今は極秘任務でトリニティにて動いている。
嘘だと思うのなら風紀委員会の上層部に問い合わせろ」
「いえ、所属が変わろうとも、顧問官殿は我々の同志であります!!」
「貴方はヒナ委員長に並ぶゲヘナの英雄!! なにを疑うことがありましょうか!!」
ある種の盲目的な熱狂、絶対的な信頼が彼女達からあった。
「こいつが、嘘でしょ?」
まさか彼女達にこんなに慕われているとは思わず、コハルが信じられない者を見る目で彼らを見た。
「恩に着る。ここを通してくれ。
出来れば車も貸してほしい」
「問題ありません!!」
「しかし、市街では暴動が起こっており、危険です!!」
「暴動だって?」
「ええ、身の程知らずの元テロリストどもが、ゲヘナの自由を取り戻すと喚いているだけです」
なるほど、と男は頷いた。
「どこからか資金を得たらしく、武装して我ら風紀委員会と交戦中であります!!」
「なるほど、なるほど」
「差し支えなければ、顧問官殿に指揮をお願いしたく存じます!!」
「共に、もう一度思い知らせてやりましょう!!
キヴォトス最強に相応しい、我ら風紀委員会の暴威を!!」
「そうしてやりたいのは山々だが、先も言った通り極秘任務中だ」
「はッ、失礼いたしました」
「こちらの車をお使いください!!」
風紀委員会の面々は、自分たちが使ってたであろう車を差し出した。
「お前たちの献身は忘れない。お前たちこそ、ゲヘナの誇りだ!!」
「顧問官殿!!」
「勿体無いお言葉です!!」
男は涙を流し、風紀委員会の面々を抱きしめた。
「ではせめて、皆に一言お願いします」
「わかった」
男は彼女達から無線を受け取ると、それに向かって話し始めた。
「ゲヘナ風紀委員会の諸君。傾聴せよ。
俺だ。故あって今名乗ることはできないが、俺はお前たちをいつも見ている。
どうやら自由の意味をはき違えたマヌケ共が、あるはずもない権利を主張し、暴れまわっているそうだな。
お前達が敗れればどうなる? 連中が住人や、真面目に学業に励む生徒たちに牙を剥くだろう。
学校とは何だ? そう、学業を修める場所だ。
自由とは何だ? 好き勝手暴れまわって、他人に迷惑をかけることか?」
『違う!!』
『違う違う!!』
『断じて違うッ!!』
無数の無線が、声が、男の声に応じる。
「お前たちは、暴力を振るっているのではない。
学業を疎かにしている生徒に、愛を与える為に鞭を振るっているのだ!!
愛ゆえに、同胞を救おうとしているのだ!!
彼らは憎むべきテロリストだったが、同時に愛すべき同胞でもある!!
赦すために鞭を振るえ、愛する為に拳を振り上げろ!!
そして傷つき、倒れた彼女達を優しく抱きしめてやれ!!」
男の熱の入った演説が、無線を通して士気を挙げる。
「大義は我らにあり!!
征け、我が愛する同胞たちよ、愛を知らぬ同胞を救ってやるのだ!!」
無数の返答が、無線から返って来る。
それの間近で聞いて居た風紀委員の面々は、涙すら流している。
「後は任せた」
「御意に!!」
既に車には先生や補習授業部の面々が乗り込んでいた。
男も運転席に乗り込み、発進する。
風紀委員の面々は、その姿が見えなくなるまで敬礼をしていた。
風紀委員会の車なので、彼女達からは味方としてみられているのか、無線で誰何はあるモノの、男が応答するだけで素通りだった。
ところどころ銃撃戦が起こっているが、風紀委員会の圧倒的な士気の高さに、敵勢力はほぼ鎮圧状態だった。
そして、本当に何人かは倒れた暴徒を抱きしめていた。
「“なぜ君がゲヘナでカリスマなのか、よく理解できたよ”」
「よせやい、褒めるなよ」
褒めたくはなかったよ、と先生はぼやいた。
「これが、ゲヘナ風紀委員会か。
練度、士気、武装、兵員数、欠点が無いな」
アズサは車の外を観察し、冷静に分析している。
「ふん、正義実現委員会の方がスゴイし!!」
「あはは、そこは張り合うところなんですか?」
そっぽを向くコハルに、ヒフミは苦笑いした。
「何はともあれ、このまま目的地に進めると良いのですが――」
『こちら、第三中隊。第十五地区エリア77番街付近に、新手だ!!
至急応援を求む。繰り返す、応援を求む』
ハナコはその無線に、溜息を吐いた。
その場所は、今まさに彼女達の目的地付近だからだ。
「はははッ、ヒヨコちゃんめ、俺が一番大好きな少佐キャラの言葉を引用してやろう。即ち、―――やればできるじゃないか!!」
「“もっと違う方向で頑張ってほしかったけどね……”」
これがナギサの頑張りの結果だと思うと、先生は痛々しくて胸が痛かった。
横で大笑いしている男は、ふと顔を引き締めた。
「見ろ、あれが新手だ」
車の前方には、武装した50人以上の暴徒が10人程度の風紀委員会のメンバーがバリケードを張って対抗していた。
「お前ら、援護するぞ!!」
『その必要はないッ!!』
「その声は!!」
その時だった、暴徒の足元が崩れ、巨大なドリルが顔を出した。
「ハーッハッハ!! 行け、我ら温泉建設部の諸君!!
我らの更生を、学園に示すのだッ!!」
「はい、カスミ部長!!」
ドリルでブチ抜いてきた穴から、温泉建設部の面々がわらわらと出てきた。
「おお、カスミか!!」
「あッ……久しぶりだな!!
ゲヘナを離れたと聞いて、その、寂しかったぞ……」
カスミは男を眼にすると、顔を赤らめ、もじもじとし始めた。
「ああ、悪いな。この仕事が終わったら1週間ぐらい可愛がってやる」
「ッ、わかった!! では諸君、彼らを検挙し、予算獲得だ!!」
「撤去ーー!!」
メグが暴徒に突撃し、仲間たちがそれに続く。
数が多い彼女らの登場で、形勢は逆転した。
「よし、迂回して目的地へ向かうぞ!!」
「ちょっと、あんたあの子とどんな関係なのよ!!」
「お子ちゃまが大人の世界に入って来るな」
「どう見ても大して変わらないでしょ!!」
コハルのツッコミを車の発進で置いてきぼりにして、一行はすぐそこの目的地へと向かった。
試験会場は廃墟とされていたが、実際に廃墟だった。
「はあ、何とか辿り着いたわね」
「俺のお陰で戦いは最小限に抑えられたな。感謝しろよお前ら」
「多分事実なのがことさらにムカつく……」
ドヤ顔で車から降りた面々を出迎える男に、コハルはイラっとした。
「ゲヘナ自治区第15エリア77番街、廃墟一階。
はい、ここで会ってます。この建物ですね」
住所を確認して、ハナコが廃墟を見上げた。
「リコ、ウズ」
「はい、ボス」
男の指示に、トリコとウズが廃墟に侵入した。
「内部には爆発物の類は確認されませんでした」
「その他諸々のトラップらしきものもありません」
「そうか。俺なら絶対にブービートラップを仕掛けるんだがな」
「発想が物騒すぎるわよ……」
報告を受け思案顔になっている男に、コハルがツッコミを入れた。
「試験会場が急遽また変更になるとかか?」
「いや、恐らくこれだろう」
「これは、不発弾ですか?」
アズサの持ってきた弾頭を、ハナコは覗き込む。
「L118、牽引式榴弾砲の弾頭だ。スローガンとかの散布用なのか、雷管と爆薬を取り除いて爆発しないようにしてある」
「なるほど、L118と言うことはティーパーティーの……つまり、ナギサさんからということですね」
彼女はその中か、答案用紙を引っ張り出した。
「随分と手の込んだことをしてくれる。
ああ、だが、まさか自ら墓穴を掘るとはなぁ……リコ」
「はい、ボス」
最早トリコは自分の主人をそう呼ぶことを隠しもせず、その弾頭をアズサから預かった。
「大切に保管しておけよ、くくく、くくくッ」
「勿論です」
トリコはそれを車の中にしまった。
ティーパーティーの正式採用している榴弾の弾頭の存在。
その事実が、何よりも男にとって、いや今回の対アリウスの作戦を考えた全員にとっての追い風だった。
弾頭の中には答案用紙だけでなく、通信機も入っていた。
どちらかと言うと映像の記録媒体とそれの再生機材といったところだったが。
『……これを見ているということは、無事に到着されたようですね』
映像を再生すると、優雅に紅茶を嗜んでいるナギサの姿が映った。
それに対して反応する面々に対して、ナギサは嘲笑うかのようにこれは録画だと語った。
『それでは、約束の時間までに試験を終えて、戻ってきてくださいね』
「……皆さん、そろそろ試験時間になります」
ナギサのやり方に思うところがあるのか、トリコも眉を顰めて皆にそう言った。
『どうか、お気をつけて』
ナギサの声が途切れる。
そうして、二度目の試験が始まった。
それから程なくして。
「よし、今日もここで練習をするわよ」
「でもまさか、練習に志願してくれる人がいるなんてね。資金援助してくれる人もいたし!!」
「廃部になっても、我ら手品部は終わらないわ!!
将来は、スターのなんだから!!」
廃墟に現れたゲヘナの少女たちは、周囲に爆薬をセットしはじめた。
「建物の爆破から逃れる、脱出マジック!!
さあ、始めるわよ!!」
ぽち、と彼女達は爆薬の起爆スイッチを押した。
直後、彼女達と廃墟は爆発で吹き飛んだ。
第二次特別学力試験、結果。
ヒフミ:試験用紙紛失。結果──不合格。
アズサ:試験用紙紛失。結果──不合格。
コハル:試験用紙紛失。結果──不合格。
ハナコ:試験用紙紛失。結果──不合格。
ウズキ:試験用紙紛失。結果──不合格。
――第二次特別学力試験、全員不合格!!
「試験用紙が、試験用紙がッ!!」
「跡形もなく……」
「言ってる場合か、死にかけたぞ!!」
頭にかぶった瓦礫を払いのけ、男は怒鳴り散らした。
「先生、大丈夫ですか?」
「“うん、なんとか……”」
ヒフミは何とか先生の安否を確認する。どこも怪我してはないようだった。
ただ、爆発のショックで意識が朦朧としているようだった。
「教官。正直なところ、私はナギサさんを利用することに躊躇いを覚えていました。――ついさっきまでは」
「うわ、こえぇ」
「うふふ、面白くなってきたではありませんか、ふふふッ♡」
埃塗れなのにいつもと変わらない笑みを浮かべるハナコを、男は半眼で見た。
「とは言え、俺も他人の努力を嘲笑う輩は大嫌いでな。お前も最初はそうかと思ったもんだ」
「……ええ、最低な行為だと、自覚してますよ」
「気にするなよ。お前は己の行動を顧みただろうが」
自嘲するハナコを慰めてから、男は立ち上がった。
「トリコ」
「はいボス、車も吹き飛んでましたが、ブツは何とか無事です」
「ありがとう。だから、その顔は止めておけ」
男はそっと、トリコの顔を手で覆った。
その下には大切な人達の命を危機に晒した相手への、怒りと憎悪で顔は歪み、犬歯をむき出しにしていた。
とても他人にみせられるものではなかった。
「トリコ姉さんのあんな顔、始めてみた……」
ウズはそれを見て、がくがくと震えていた。
男と彼女以外にそれを誰も見なかったのは、幸いだっただろう。
「よしお前ら、帰るぞ。
明日から色々忙しくなるからな」
補習授業部の逆襲の夜明けが、もう目の前まで近づいていた。
彼らの作戦の結実が、もう目の前まで迫っている!!
ちなみに、某2ネタにみんなは反応してましたが、ハナコに渡したエロ本の元ネタは誰も言及してませんでしたねww
まあブルアカやってる人で、あのソシャゲのネタは分からないでしょうけどww
ではまた、次回!!