その後、一行はなんとか無事に合宿所まで戻って来れた。
その頃にはすっかりと日が昇り、昼間になっていた。
「もう嫌!!」
コハルがそう叫ぶのも無理はなかった。
ヒフミが励まし、コハルとハナコが乳繰り合っているのを横目で見る先生と男。
結局、この日はあの騒動の疲れから何も出来なかった。
そして、夜になってから再び彼女達の寝室で会議が始まる。
「結局、ここに戻って来ちゃいましたね」
今更のように、ハナコが言った。
試験に合格すれば、補習授業部はお役御免になるはずだった。
だが、相手の悪意でそうはならなかった。
「ああ、皆とお別れになると思っていたのにな」
「感傷に浸ってる場合じゃないでしょ!! これからどうするの!?」
いつもと変わらないアズサに、コハルが食って掛かった。
ティーパーティーが退学に関わってるなら何をしても無駄だと喚き散らす。
「一応、一週間後にある第三次特別学力試験が最後のチャンスではありますが……」
「ここまでありとあらゆる手段で邪魔をされてしまいますと、確かに厳しいかもしれませんね」
ヒフミとハナコの口から出るのは溜息ばかりだ。
「それで、馬鹿正直に九十点を取りに行くか?
今回みたいに邪魔を蹴散らしながら、次は試験を受ける前に爆弾を仕掛けられてるかもしれないぞ」
「それは、そうですけど」
「お前たちは馬鹿かもしれないが、そこまで馬鹿だとは思わなかったぞ」
男はあからさまに溜息を吐いて見せた。
「ぐすッ、無理、絶対ムリよ……ここまですっごい頑張ったのに、これ以上なんて!!
そうよ、バカよ、私はバカなのよ、でもこれ以上は、私にはもう無理……無理で……ううッ」
コハルはもう心が折れていた。
ただ自分のプライドを守るための虚勢を張ることもできないほどに。
「なぜ泣く、コハル」
「だって、だって無理だもん」
「なぜ、怒らない」
「えッ」
「お前は努力した。本当に頑張った。
しかし、相手はそれを踏みにじり、嘲笑い、そして更なる理不尽を強いた。
お前たちはなぜ馬鹿正直に理不尽に従うんだ?」
「なら、どうしようって言うの!!
相手はティーパーティーのお偉いさんで、私達なんかいつでもどうとでも出来るのに!?」
涙を湛えるコハルに、男は言った。
「戦え。そして、あの理不尽な条件を撤回させろ」
「ほ、本気なの?」
「そもそも、お前たちがここに居る理由からして理不尽なもの。
お前たちには正当な怒りが許されるはずだ」
「だから、どうやって!!」
「簡単なことだ」
男は笑った。邪悪な笑みだった。
「ティーパーティーを転覆させる」
絶句。コハルだけでなく、ヒフミやアズサも開いた口が塞がらない。
「その為に、今日まで準備してきた」
「どういうことよ……」
「その前に、アズサ。こいつらに見覚えはあるか?」
男はスマホで、ある動画を再生した。
『いい加減にしろ、貴様ら!!』
『だったら負けを認めなさい。
得意でしょう、かつての私達のように敗北するのは!!』
『ほざけ、ぽっと出の分際で!!』
そこには、便利屋扮するグリゴリ小隊と、アリウススクワッドの銃撃戦が映されていた。
「これはッ」
「定時連絡の報告する相手が、ついこの間変わったらしいな?」
「もう全て、お見通しか……」
アズサはただただうな垂れた。
「あの、どういうことですか?
アズサちゃんは、この変な人たちと知り合いなんですか?」
「そっちの覆面の連中は知らない。
だけど、それと戦っている相手は、私の同胞だ」
「じゃ、じゃあ、トリニティの裏切り者って!?」
「ああ、ティーパーティーのナギサが探している裏切り者は私だ」
ヒフミが青い顔になる。
共に勉学と青春を共にした仲間が、本当に裏切り者であると知ったからだ。
「なに、いったい何の話?」
「“この補習授業部そのものが、アズサを炙り出すためのネズミ捕りに過ぎなかったことだよ”」
混乱するコハルに、先生は説明した。
そのために、皆は巻き込まれたのだ、と。
「私は元々アリウス分校の出身。今は書類上の身分を偽って、トリニティに潜入している」
「……アリウス?」
「えっと、なにそれ? どういうこと?」
「アリウス分校。……かつてトリニティの連合に反対した、分派の学園です」
歴史に埋もれた知識を、ハナコが二人に説明した。
今は隠れ潜んでいるだけの存在であると。
「そう、私はここに来る前はアリウスの自治区に居た。
アリウスとして任務を受けて、今はこうしてこの学園に潜入している」
「大方、ナギサを殺せとでも言われたんだろう?」
「はい、教官。私の任務はティーパーティーの桐藤ナギサの、彼女のヘイローを破壊することです」
その言葉に、ヒフミとコハルは驚愕する。
キヴォトスの生徒は頑丈で、あの歴戦の医学部のセナでさえ死体を見たことが無いほどだ。
それを保証しているのが、生徒たちの頭上に浮かぶヘイロー。
それを破壊することは、キヴォトスの生徒たちにとって、何事にも代えがたい禁忌なのだ。
つまりは、殺人。それと同等の意味を有する。
「アリウスはティーパーティーを消すためなら、何でもしようと言う覚悟でいる。
アリウスはまず、ティーパーティーのメンバーであるミカを騙して、私をこの学園に入れた。詳細は知らないけど、きっとトリニティと和解したいとか、そういう嘘を吐いたのだろう」
「ああ、あいつはアホ面を下げて、そのことを教えてくれたよ」
「なるほど、だから私の事を知っていたんだな」
もう既にミカも陥落していると悟り、アズサは肩を落とした。
「恐らくは全てが終わった後、その罪をミカさんに着せる……そう言う流れを想定しているのでしょう」
「ハナコ、お前はまだそう言う経験が浅いな。
俺ならアズサは切り捨てるぞ。ナギサを殺した犯人として、犯行直後に殺させる。
そうして下手人の口封じもする」
男の想定に、ハナコは眉を顰める。
恐らく、そっちの方が確度が高いと理解したのだろう。
「アリウスがトリニティを憎んでいることは知っていましたが、そこまでですか。なるほど」
「近いうちに、アリウス分校の生徒たちがナギサを狙ってトリニティに潜入する。……私はナギサを、守らなきゃいけない」
「“アズサ……”」
それを聞いて、先生はやはり自分の判断は間違っていないと確信した。
「……アズサ、アリウスの同胞を救いたいか?」
「無理だ。彼女らはトリニティを憎んでいる」
「彼女達を救う方法がある、その為に今日まで準備してきた」
「……本当なんですか、教官」
「ああ。その為に、お前の協力が必要だ」
男は細い彼女の肩に両腕を置いて、その眼を見た。
「全ての悲劇を、喜劇に変えてやろう。
俺達はアリウスの連中に手を差し伸べ、暗い闇の中から引っ張り出してやるのだ。
だから、俺達は彼女達がテロリストになる前に、叩き潰す必要がある。
テロが決行した時点で、彼女達はキヴォトスの敵となる。
そうなる前に、アリウスの存在をキヴォトスに知らしめなければならないんだ!!」
「ッ!?」
アズサの目から、涙が零れ落ちた。
「み、みんなを、助けてくれるんですか?」
「“ああ、私が保証する。誰ひとり、取りこぼしたりしない”」
先生は、アズサの手を取り、言った。
「“アズサ、勿論君もだ”」
その言葉に、うな垂れるようにアズサは頭を下げた。
「皆を、お願いします……」
「……作戦の決行は確実なものとなった。
先生、ミカにも連絡を取るぞ。そして、お前たちに、全てを打ち明けよう」
最大の難関だった、アズサの陥落。
それを眼にした男は、ミカへとスマホに秘匿信号を送った。
そして、語られる。
男の狂気に満ちた、徹底的な作戦の全容を。
「ほ、本気で、ティーパーティーを転覆させるつもりなの?」
コハルは初めて、本当の悪意を目の当たりにした。
全て、なにからなにまで、男の手のひらの上だった。
「教官、お願いがあります」
「なんだ?」
「スクワッド……アリウススクワッドの四人も、助けてあげてください。それ以上は、何も望みません」
「……いいだろう、多少予定が変更されるだけだ」
アリウススクワッドの事を頼むアズサに、男は頷いて見せた。
彼女達はもう既に男の手のひらの上。その程度の願いは、容易い事だった。
「そう言うわけだから、お前たちにも手伝ってもらうぞ」
男が笑う。それを見て、ヒフミは思った。
「あうう、何だかデジャビュ……」
彼女にとっての全ての始まり。
あの銀行強盗に加担した、あの時の再現だった。
そうして、改めてブリーフィングが始まる。
トリニティ学園を巻き込んだ、大騒動の幕開けだった。
§§§
翌日、早朝。
ナギサの隠れるセーフハウスに、アズサとハナコが突入した。
彼女達は程なく、ヒトが入りそうな袋を背負って戻ってきた。
「任務完了」
「うふふ、私の方でもちょっとした意趣返しもしておきました」
「よし、車に運べ」
荷物を押し込めると、三人は車に乗り込んだ。
そして二人を合宿所で降ろし、Wolf小隊が乗り込みトリニティの自治区を抜け、ゲヘナ自治区へと赴いた。
「検問ご苦労」
「こちらこそ、ご苦労様です顧問官殿」
昨日から続いている検問を素通りし、ゲヘナ学園の中へと連行した。
「我が麗しの風紀委員長。昨日の暴動を扇動したテロリストを捕まえてきました」
そして風紀委員会の本部棟にて、男はヒナにもがく袋を差し出した。
「開けなさい」
玉座にも思える上座の椅子に座るヒナが、気だるげに言った。
まるで悪の組織の幹部のように侍っている三人の風紀委員の幹部たちに指示を出す。
「では、開けます」
イオリが袋を開けた。
袋の中身が露わになる。
そこに居たのは、猿轡をされてロープで縛られた桐藤ナギサだった。
「か、彼女は!?」
「……ナギサ? これは一体どういうこと?」
驚愕するチナツとアコ。
ヒナは目を閉じ、深く溜息を吐いた。
「これが証拠です。昨夜、ゲヘナの自治区内にて、この弾頭が撃ち込まれていました」
トリコが、昨日答案用紙の入っていた榴弾の弾頭を差し出した。
「これは確かに、ティーパーティーの正式採用している榴弾の弾頭ですが……」
「連中の資金提供者を洗えば、恐らくトリニティのこいつの口座へと行きつくだろう。ティーパーティーの予算からは出せないだろうからな」
なんならその証拠も出させるが、と男は笑う。
イオリは無言で、ナギサに銃を突き付けた。
ついさっき、一弾倉分の弾丸を受けたばかりのナギサは震えた。
「ナギサ、これは一体どういうこと?
あなたも、知っていることを話してくれない?」
「俺はただ、貴女の言われた通り、エデン条約を邪魔する敵の全てを排除しようとしただけのこと」
男はそれだけ言うと、地面に転がるナギサの前に屈みこんだ。
「なあ、いつから自分が排除される側じゃないと、思い込んでいたんだ?」
「――――ッ!?」
ナギサは知った。男の狂気を。
初めから、こうするつもりだったのだと。
「昨日は正義実現委員会が居なくて寂しかっただろう?
だが今日から、条約締結までゲヘナの風紀委員会が守ってくれる。
お前の代わりはミカが何とかするだろう。そう言う約束でな」
「ッ!?」
「ああそうだ、ミカと俺たちは手を組んでる。
あいつはお前を排除したがってたから、手を貸してやったんだ。
したらどうだ? お前ったらちょっと煽ったくらいで、こんなことをしでかしてくれたよな」
昨日の爆発はやられたよ、と男は楽しそうに彼女を賞賛する。
「地下の特別尋問室を借りる。
誰も入れさせないでくれ」
「……わかった。ゲヘナ条約締結を妨害するテロリストの尋問を許可するわ」
ヒナは全てを察したように頷き、幹部の三人に向けて言った。
「事前に人払いをさせたから何事かと思ったけど、この事は他言無用よ」
ヒナは幹部の三人に釘を刺す。
彼女らは黙って頷いた。
そして、ナギサの入っている袋のジッパーが締められる。
そのまま、彼女は地下にある尋問室へと運ばれた。
「ようこそ、ゲヘナで最も安全な場所へ」
裸電球一つしかない、窓も無い薄暗い尋問室。
それに似つかわしくない少女が、ひとり椅子に縛り付けられていた。
「この上は何百人もの風紀委員会の面々が詰めている。
我が麗しの風紀委員長もな。ここで好きなだけ茶をしばきながら話し合いが出来るってもんだ」
「…………」
「おやおや、もう弱り切ってると後が持たないぞ」
男は己に侍るWolf小隊に目配せをした。
トリコが、持っていたバケツの中身をナギサにぶちまけた。
「げほッ、げほッ」
「薄汚いクソテロリストのナギサちゃん。どうしてここに連れて来られたか、わかるかな?」
「ボスの質問に答えろ」
トリコがナギサの頬を張った。
水に濡れたナギサの頬から気持ちのいいほど良い音が鳴った。
「……もう、好きにしてください」
「ほう?」
「もう、誰も信じられない……ミカさんも、ヒフミさんも、私を裏切って……」
ぽろぽろ、と全ての努力が無に帰したと思っている少女は、涙を流していた。
「全ての泥を被るつもりでいたのに、そもそも私は、愚かな道化だった……!!」
「そうかもな。お前の身柄を確保することが、俺達の重要な作戦のひとつだった」
「……」
「退学退学と馬鹿の一つ覚えみたいに繰り返す、おバカちゃん。
なあ、お前はキヴォトスで退学がどれだけ重いか知ってるのか?」
男はずっと見てきた。
このキヴォトスで学籍が無いのは、居ないのも同じであると。
「多くの生徒たちは犯罪をするほか無くなる。
アズサだけでなく、他の三人もだ。まさかゴミ箱に棄てれば、勝手に業者が処分してくれるとでも思ったか?
世の中には死ぬより辛い生き方もあるってことを、世間知らずのお嬢様に教えてやろう」
おい、と男は己の右腕たちに指示を出す。
ナギサは黒い布で目隠しされる。彼女は抵抗しようとするが、縛られた椅子が揺れるだけだった。
「わ、私が失踪すれば、正義実現委員会が黙っていない筈です!!」
「ああ、その辺りはミカが何とかしてくれるそうだ。
多分お前の個人的な判断でゲヘナに攻撃したことへの決議を取ったりするんだろう。失脚したお前を退学にする措置、とかもな」
「い、いや、いやです。私は、そんなつもりじゃ」
「じゃあどんなつもりで、どんな権利があってあいつらを追い込んだ!!
先生は最後までお前を案じていた!! そんな彼をお前は爆弾で吹き飛ばそうとした!!
コハルやハナコ、ヒフミにどんな罪があった!!
……なぜ他者の尊厳を奪おうとしたお前が、お前の尊厳が守られると思った?」
男の怒声に、ただの少女に過ぎないナギサは怯えるしかなかった。
「お前が疑って疑って疑いぬいたように、お前に相応しい末路を与えよう。
お前はこのゲヘナで、テロリストとして疑われ、終わりの見えない尋問の果てに、地位も学籍も何もかも失って、その辺に放り捨てられる。
……お前が彼女達に与えようとした苦痛の全てを、お前に味わわせてやろう」
いや、いや、と地に墜ちた天使は絶望から逃れるように首を振る他なかった。
「だが、お前にはまだ協力して貰わないといけないことがあってな。
明日、お前の大好きなヒフミを連れて来てやる。彼女の前で懺悔し、赦しを乞うといい。
それを楽しみに、今日は孤独に過ごすといい」
「いやッ、出して、ここから出してください!!」
「ああ勿論。ちゃんと用済みになったら五体満足で出してやる」
幾つもの靴音が、室内から離れていく。
そして、がちゃん、と鉄の音が聞こえ、かちゃり、と鍵が掛けられる。
「お願いです、謝りますからッ、ここから出してください!!」
まるで羽衣を失った天女のように、それを盗んだ相手に囚われた彼女は、泣き叫ぶ。
もう尋問室に誰も居ないと分かっていながら、疲れ果てるまでそうしていた。
やがて、力尽き、ずっと同じ姿勢のままうな垂れる他なかったナギサは、皮肉なことにゆっくりと眠ることができた。
あらゆる脅威から隔絶された安全な地下室。
いったいどれだけの時間が過ぎたのだろうか。
こつ、こつ、と誰かの足音でナギサは目を覚ました。
「あはは、良い格好ですね、ナギサ様」
「ひ、ヒフミさん?」
「ええ、阿慈谷ヒフミですよ。どうしたんですか、そんなに怯えて可哀想に……」
自分の愛する人が現れたというのに、ナギサはなぜか震えが止まらなかった。
彼女にとって、ヒフミは裏切り者。
そして、ミカたちと組んでここに閉じ込めた人間に過ぎないからだ。
「不思議ですね、何度も会っているのに、こうして触れ合うのは初めてでしょうか」
ヒフミの手が、ナギサの頬に触れる。
身じろぎするナギサを、ヒフミの手は撫でまわす。
「私の本音が分からない、そう言っていたそうですね。ナギサ様」
「そ、そんなことはもうどうでもいいんです。お、お願いですから、ここから出してください!!」
「貴女の疑っていた私の本性を、教えてあげますね」
こつこつ、とまた別の足音が尋問室に近づいてくる。
「あ、アップルマンさん♡」
「え……」
「よう、待たせたな」
ナギサは耳を疑った。
それは、自分が聞いたことがないような、ヒフミの媚びるような声音。
「なんだ、まだよろしくやってなかったのか」
「ナギサ様に私達の関係を教えてあげようと思いまして」
「そりゃあいいな」
すぐ傍で聞こえ始めた、何かに吸い付くような音。
「ま、まさか、まさかまさかまさかッ」
「はぁい、私はアップルマンの女なんです。
進入禁止区域に入っていたのも、彼との逢瀬のためなんですよ」
「いやッ、やめて、聞きたくない!!」
「お前がこいつを好きだって聞いた時、実は悪いと思ってな。
だからこうして、お前におこぼれをやろうと思ってな」
加速する、口づけの音と回数。
その全てが、ナギサの心を締め付ける。
ある種の偏愛を抱いていた相手が、自分とは別の相手と触れ合う、そんな情景を想像して発狂しそうだった。
「ナギサさまぁ、本当の私を、知ってください」
「あああ、あああああぁぁぁあ!!」
がたがた、と椅子が揺れる。
ナギサの叫び声が、尋問室に響く。
目隠しの布に、涙がしみこんでいく。
愛する人を目の前で奪われるという、最悪の状況に彼女の情緒や脳は完全に破壊し尽くされていく。
「アップルマンさん、さあ、今日もいつもみたいに愛し合いましょう……」
「ああ……そうだな」
男は正直、興が乗らなかった。
自分にしだれ掛かる、ヒフミの声を出すトリコが、尋常じゃない憎悪をナギサに向けていたからだ。
そんな顔を見たら、勃つものも勃たない。
仕方ないので、トリコは男のズボンを下ろして、その逸物に奉仕を始めた。
男はナギサを心底憐れに思った。
さっき、トリコに触れられた瞬間、本当に彼女がヒフミの手の温もりを知っていたら、偽物だと分かったはずなのに。
ナギサは、ヒフミの手の感触さえ知らないのだ。
「私の愛を、ナギサ様にも分けてあげますね♡」
憎みぬきながらも、そんな甘い声を出すトリコを見て、女って怖いな、と男はそう思った。
ナギサの受難は、まだまだ終わらない。
やっと、やっと書けました!! ナギサ様の完璧な脳破壊!!
三章はこれを書くためにやったまであります。
しかも、まだまだこの程度では終わらない!! ナギサ様の脳はなんぼ破壊してもいいですからね。
ではまた、次回をお楽しみに!!