※この作品はR-18です。

キヴォトスに墜ちた悪魔   作:やーなん

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今回は短編集です。



サイドストーリー
短編集その1


 

 

 

【――男の甲斐性:●●の日】

 

 

 ――ナギサの日。

 

「今日は良い茶葉を見繕ってきました♪」

「おお、良い香りだ」

 

 トリニティにあるナギサのセーフハウスで待っていたナギサは、男を出迎えると高級らしい茶葉を示した。

 

「これはジャスミンか。高いのか?」

「いえ、値段はそれほどではありませんよ。

 あなたはそう言うのは嫌いでしょうから」

「俺の場合は何を飲むかよりも、誰と飲むかを重視するからな」

「ふふ、御上手ですね」

 

 ナギサがジャスミン茶を入れると、その香りが室内を巡る。

 

「なるほどな。

 コンビニとかで売ってるジャスミン茶とは全然違うな。

 あれはトイレの芳香剤みたいな匂いだが、やはりモノが違うのか」

 

 ナギサの入れてくれたお茶を飲む男はそう評した。

 苦みや渋みが少なく、まろやかな口当たり。やはり安ものとは違うのだろう。

 

「それにしても、ジャスミン茶とは。

 ヤル気満々だな。ええ?」

「うふふッ♡」

 

 

『知っていますか、コハルちゃん? 現実的な範囲で媚薬と言える飲み物はジャスミン茶なんですよ。

 夜の闘いの前に呑むと持久力がアップし、女性がその気になると言います♡

 お茶に含まれるカフェインが興奮作用を齎すのだとか♡』

『急になんでそんな話をするのよ!! 死刑にするわよ!!』

 

 唐突に挟まれるハナコの解説とコハルのツッコミ。

 

 

「さて」

「ええ」

 

 二人はテーブルの上に移動した。

 その上には、チェス盤が置かれていた。

 

「俺が勝ったら変態鬼畜ドS執事プレイで、お前が勝ったら新婚いちゃラブ初夜プレイな」

「あなたの上達の速さは目を見張るモノがあります。今日も負けませんよ」

「俺もお前の趣味にすっかり染められちまったな。将棋しか出来なかったんだが、チェスも良いもんだ」

 

 結局どっちが勝っても、この後二人は滅茶苦茶夜戦した。

 

 

 

 ――カスミの日。

 

 

「今日は先日私達が開発した温泉宿のオープニングスタッフとして働いてきたんだ。

 以前は我らの開発した温泉の経営には口を挟まなかったんだが、設備の保守と点検を我が部が担う契約をするようになってな。

 そこそこまとまった資金になるんだ。万魔殿はケチだからな!!」

「心配するな。

 信用は積み重ねるモノだ。いずれお前たちの活躍は認められるだろう」

 

 カスミと男の逢瀬は、大抵の場合ゲヘナの安宿だった。

 男の懐にすっぽりとカスミは収まり、その胸板に彼女は頬を寄せる。

 

「温泉は皆で楽しむのが一番……だが。

 いつか秘密の温泉施設を作って、二人だけで使いたいな。

 海辺で、出来れば高い場所で、夜景がキレイで静かで……」

 

 尻尾や背中を撫でられるカスミは、そんな夢想をしながら完全にリラックスしていた。

 

「……きっと、あなたの温もりが温泉なんだ。

 この幸せをもっと、より多くの人に伝えたい……」

「どうせだから温泉の効能にもこだわってみたらどうだ?」

「確かに!! いうまでもなく温泉と一口に言っても様々な種類があるからな!!

 以前ドラマで温泉を飲んで鑑定する人物が登場したのを見て、私は感銘を受けてな!!

 私も利き温泉が出来るようになろうと――」

 

 男は黙って、カスミのマシンガントークに付き合ってやった。

 勿論、その後は男の突き合いに付き合って貰うのだった。

 

 

 

 ――ヒマリの場合。

 

 

「リオ様。どうやら二人がおっぱじめたようです」

「そう。もう好きにさせればいいじゃない」

 

 セミナーの会長室。

 夜中まで書類の決裁をしているリオに、トキは報告した。

 

 内容は特異現象捜査部の部室で野戦をおっぱじめた二人についてである。

 リオとしてはヒマリは要注意人物なのだが、それに加えて男と密会しているのは当然容認しがたいわけで。

 不埒な計画をしないかどうか、監視しないわけにはいかないわけで。

 

「確かに、これまで五回中、五回とも男女の営みだけでした。

 しかし教本によるとピロートークの最中こそ、男性が警戒心を解き、女性に秘密を漏らすことが多いそうです。

 そんな機会をエージェントとして逃す訳にはいきません」

「じゃあ有用な情報があったら、後で報告して頂戴」

「了解しました、リオ様」

 

 トキはクソ真面目に応じた。

 そして二時間後。

 

「報告いたします。

 どうやらお二人は最初に前戯として所謂69の態勢で――」

「待って、待って!!」

「はい、どうかなさいましたか、リオ様」

「ふ、二人の情事の内容を報告してほしいなんて誰が言ったの!!」

「しかし、今回は何やら重要な話らしき内容を、性行為の最中にちりばめておりまして、体位の説明と暗喩と暗号を織り交ぜて会話をしていましたので、状況を説明せねば内容が理解できないかと」

「くッ、無駄に高度な嫌がらせを!!」

 

 むしろ最近は聞かせて楽しんでいる節がある、ヒマリと男の二人だった。

 

 結局長々としたトキの報告に内容は、どうせリオはマグロだとか、女としては私の勝利ですねプゲラww、みたいな内容だった。

 

「全く、ふざけたことを」

「……本当にね」

 

 暗喩やら暗号やらをその聡明な頭脳で解読する羽目になったリオは疲れ果てていた。

 

「リオ様がマグロだなどと!!

 私が彼女たちにリオ様の魅力と性感帯を懇切丁寧に説明して参ります!!」

「やめて、お願いだから辞めて頂戴!!」

 

 リオは暴走するトキを止める羽目になったのだった。

 

 

 

 ――ナバトの場合。

 

 

「やはり、『相棒』はシーズン9が至高でしょう」

「分かる。“暴発”とか、“ボーダーライン”とか、神回が揃い踏みだからな」

「ホント、ナバトは刑事ドラマ大好きだよねぇ」

 

 男はナバトとムツニと一緒に、刑事ドラマを鑑賞していた。

 ナバトの趣味は刑事ドラマ鑑賞だった。

 

 丁度今見てるのが男が言及した回の内容で、主人公が貫こうとした正義が、相棒に裏切られ無為に帰した場面だった。

 しかしその裏切りの理由も警察としてのしがらみや葛藤にまみれたもので、その裏切りを主人公は責めなかった。

 

「この回はいくら天才である右京さんでも、結局は組織の一員にすぎず、彼の正義も個人のモノに過ぎないというところでしょうね。

 シャーロックホームズが己の平凡さを吐露する場面のように、彼が組織人としての無力さを示す、ある種の主人公の万能性の否定。

 しかしだからこそ社会の難しさや、そこに生きる人々の切ない葛藤が映えるんでしょう」

 

 ナバトは熱く語り始めた。

 男はうんうんと頷いた。ムツニも笑みを浮かべたままうんうんと頷いた。

 

「右京さんの歴代相棒で誰が好きだ? 勿論俺は薫ちゃんだが。右京さんと薫ちゃんで頭脳面とフィジカルを分担してるのが良いよな」

「私はカイト、でしょうか」

「ほう、意外だな」

 

 そのキャラクターは最終的に、主人公の正義や正しさに耐えきれず、警官と言う立場で凶行に走ってしまうという最後を迎え退場してしまう。

 

「以前は嫌いでしたよ。

 ですが最近になって、その気持ちが分かるようになったんです……」

「クレしんの大人帝国の逆襲も、子供の時に見るのと大人になって見直すのとでは違うからな」

「ええ、これが大人になるってことなのでしょうか。

 正義を担う立場で、そこから外れて私刑を行う。自分の無力さを目の当たりにする絶望は、理解できますから」

 

 男はそんな彼女の頭を抱き寄せた。

 反対側からムツニも彼女にくっついた。

 

「俺達のやり方を偽善と呼ぶ者も居るだろう。

 しかし、それを言うのはどうせ偽善すらしない連中だ。

 俺達を糾弾する資格があるのは、きっとこのキヴォトスで先生くらいなものだろう」

「……私は、彼が嫌いです」

「お前が先生の味わい深さを理解するには、あと十年は必要か」

「……」

 

 この男が女性に向ける無償の愛と反対の、先生に対する無償の信頼。

 それがナバトには気に入らなかった。

 

 先生は正義や善悪と言った基準で動かないからだ。

 それが、責任ある者の行動として、ナバトの目には映らなかった。

 

「それで、今日はどうする? するか?」

「明日で良い。いいかな、ムツニ」

「私はどっちでもいいよ~」

「じゃあこのまま寝るか」

 

 三人はそのままベッドに川の字になって眠った。

 

 

 

 ――ムツニの日。

 

 

 ムツニとナバトの日は、必ず連続で訪れ、どちらかがエロいことをしない日になる。

 

 なので今日、男はナバトと共にムツニの買い物に付き合っていた。

 

「えへへ、今日はいっぱい買えたね」

「すみません、ボス。毎度毎度……」

「お前も大変だな……」

 

 男は荷物持ちをしていた。

 両手に大袋を抱えて。

 ムツニは浪費癖があって、ナバトは彼女の買い物には必ず同行すると決めていた。

 

「ところで、いつも気になってたんですけど、ボス。

 我々の活動資金の出所ってどうなっているんですか?」

「あ、そう言えばそうだよね。

 私達って稼ぎが無いし」

 

 Wolf小隊の四人の活動資金や裏工作の費用は、基本的に男の自腹である。

 ちょっと前まではゲヘナの風紀委員会で、今はシャーレから給料が出ている。

 どちらも常識的な範囲で、とても四人を養えるほどではない筈だ。

 

「実は、以前便利屋に居た頃にカイザーの依頼でアビドスのあいつらを追い出しただろ?

 あの時は口止め料を諸々含めて吹っかけてな。

 アルの口座って凍結されてるだろ? 現ナマで支払われたからそれを受け取って、その成功報酬がまだ半分くらい残ってるんだわ」

「……」

「……知りたくなかったです」

 

 道理で男の羽振りが良いはずだ、と二人は思った。

 

「俺としてはちゃんとアルに全額返そうと思ったんだぜ?

 でもあいつ、償いは要らないって言うからさ」

「じゃあ、仮にその資金が尽きたら?」

「ナギサ辺りにたかるしかないな」

「……」

 

 二人は思った。

 この男は生粋の根無し草で、ろくでなしだと。

 

「まあ、まだまだパトロンには当てがある。

 全員に愛想が尽かされるまで、長く見積もってあと二年かそこらは時間がある。安心しろ」

「安心できるか!!」

「姉さんとウズに相談しないと……」

 

 結局二人はトリコに相談し、男の活動資金はウズが管理することになった。

 それでも、出所不明の謎の資金を時たま男は調達したりすることもあるのであった。

 

 

 

 ――ウズの日

 

 

 ナバトとムツニと同じく、ウズとトリコと一緒が多い。

 ただ、必ず二人一緒の彼女らとは違い、時折ウズとトリコは男と二人きりを望むこともあった。

 

 かたかたかた、と室内にノートパソコンのキーボードを叩く音が聞こえる。

 

「お前、いつもパソコンいじってるよな」

「いちいちこっちに寄らないでください」

 

 作業をしているウズの横に座り、腰を抱く男に彼女は一瞥をくれる。

 

「ボスから預かった資金を運用してるんです」

「どうやって増やしてるんだ? 投資か?」

「まあ、インサイダーですよ。Wolf小隊は非正規の部隊ですからね、トリコ姉さんとナバトのバカには内緒ですよ」

「ほどほどにしとけよ」

「そんなヘマはしませんよ」

「悪いな、頼りにしてる」

「……なんでトリコ姉さんはこんな男に……」

 

 そしてそんな男に絆されている自分が嫌になるウズだった。

 

「そう言えば、モエの奴みたいにお前ってハッキングとかできないのか? そういうのできると特殊部隊っぽくないか?」

「私の本分は潜入ですよ? 情報を聞き出したり盗みだしたりして、内部情報にアクセスするからそんな技能は必要無いですよ。

 そもそも俗人はハッキングを魔法か何かだと思ってる節があって気に入らないんですよね。

 あれって痕跡とか残るんですよ、皆さん有難がってますけどファンタジーじゃないんですから、万能キーじゃないんですよ」

 

 ウズはぐちぐちと愚痴を言い始めた。

 

「なあウズ」

「なんですか」

「お前、子供欲しくないか?

 しかも、トリコよりも先に」

 

 キーボードを叩く、ウズの手が止まった。

 男の手のひらが、彼女の腹部をまさぐった。

 

「キモイですよ。私の生理周期把握して言ってますよね」

「なら、その表情はどういう意味だ?」

 

 淫蕩に満ちた笑みを浮かべるウズに、男は問いかける。

 

「今日のゴムはたまたま不良品だった。だからトリコへの不義理にはならんよ。俺もたまにはナマがいい」

「……最低ですね♡」

 

 ウズはそのまま、押し倒された。

 その日の彼女のシャワーは念入りになった。

 

 

 

 ――トリコの日

 

 

 この日はトリコ一人の日だった。

 彼女は何も求めず、ただ男と一緒にベッドで寄り添っていた。

 

「ボス」

「なんだ?」

「ずっと一緒に居てください」

「ああ」

「それ以上を、私は求めません。願いません」

「安心しろ。俺は死ぬまでお前たちの面倒を見る」

 

 ぎゅう、とトリコは男にしがみついた。

 

「……約束ですよ」

 

 

 そして約束通り、男は彼女達の面倒を死ぬまで見ていた。

 

 

 

 §§§

 

 

【――ゲームヒロイン論争】

 

 

「はあ!? ふざけてんのか、お前!!」

「おかしいのはオオカミさんでしょ!?」

 

 あくる日、ゲーム開発部の面々が連続して当番になったので、彼女らがシャーレの事務室の一部を占拠してゲーム三昧をし始めていた。

 

 先生と彼を手伝っていたミドリは、男とモモイの言い争いにそちらを見た。

 

「お姉ちゃん、大声を出してどうしたの」

「アリスが説明します!!」

 

 険悪な表情をしている二人と、オロオロするユズ。

 そんな中、アリスが立ち上がって言った。

 

「先日リメイクが発表されたと言うことで、オリジナル版のFF7をプレイしている最中、オオカミさんが言いました!!

『やっぱりティファよりエアリスだよな』、と!!

 それにモモイが反論しました。『はあ? ティファの方がかわいいじゃん』と!!

 結果、二人は言い争いになりました!!」

「く、下らない……」

 

 アリスの明瞭な説明に、ミドリはがっくりとなった。

 

「どうせオオカミさんはおっぱいしか見てないでしょ!!」

「そう言うお前は幼馴染ヒロインだからティファ推しなんだろ!!」

「それの何が悪いの!?」

「これだからガキンチョは。エアリスの儚さの合間に見える人間としての強さ、健気さの方がヒロインとして優れてるだろうが!!」

「でもエアリスはザックスが好きじゃん!!」

「主人公と結ばれないとヒロインじゃないってか!!

 こいつは傑作だ!! じゃあ言ってやろうか、ティファみたいな抜群のプロポーションと顔面を持って、性格も陰キャに優しい美人なんて現実に居るわけねえだろ!!」

「私がいつ現実の話をしたの!?

 それを言ったらエアリスだって現実にはいないじゃない!!」

「くくく、実は先日アツコという生徒に出会ってな……」

 

 二人の言い争いはどんどん激化する。

 

「あ、あの、どっちも可愛いでいいと思うな!!」

「じゃあユズ、お前はどっち派だ?」

「そうだよ、ユズはティファとエアリスどっちがヒロインに相応しいと思うの!?」

 

「……ティファかな」

 

 ユズはぼそっと漏らすように言った。

 

「はぁ!!」

「いえーい、私の勝ち!!」

「じゃあアリス、お前はどっちだ!!」

「はい、アリスは知ってます!!

 幼馴染は負けヒロインだって!!

 必然的にエアリスがヒロインの筈です!!」

「はい、俺の勝ち~」

「なに言ってるの!! まだ同数票じゃん!!」

 

 そして、二人の視線は先生とミドリに向けられた。

 

「お前らはどっちだ!!」

「ティファか、エアリス、どっち!!」

 

 二人の詰問に、先生とミドリは顔を見合わせた。

 

「個人的には、エアリスかなぁ」

「はあ!? 裏切ったねミドリ!!」

「いや、裏切ったってなによ」

「先生、先生はティファ派だよね!!」

 

 勝利を確信しドヤ顔をしている男の横で、モモイが先生に問う。

 

「当ててやろうか、先生はな」

 

 男はニヤリと笑ってこう言った。

 

「――ユフィ派だ」

「“よくわかったね……”」

「ああいう手の掛かるガキ、好きだろう?

 俺も体つきだけならエアリスより好みだ」

「“そう言う話じゃないでしょ”」

 

 冷静なツッコミをする先生だった。

 

「じゃあ、じゃあさ、ビアンカとフローラならどっちを選ぶの!!」

「フローラだろ。常識的に考えて」

「いいや、ビアンカだよ。世間もそっちを支持してるはずだよ!!」

「これだからガキは嫌なんだ。

 ビアンカ・フローラ問題はティファ・エアリス問題とは根本的に違うのだ!!

 前者は結婚相手、後者は恋人にするなら、そういう想定が根底にあるのだ!!

 ビアンカとフローラなら、普通親が金持ちのフローラを選ぶだろ!!」

「夢の無い大人だね、オオカミさん!!

 一緒に子供の頃冒険した時の絆や思い出がある方が結婚相手に相応しいじゃない!!」

「現実を教えてやるよ、ガキンチョ。

 愛はカネでは買えないが、愛以外の大体のモノはカネで買えるのだ。

 そして、愛を維持するのにはカネが必要なんだよ!!」

「幸せは生活の裕福さで決まるわけじゃないでしょ!!」

「そうかそうか。じゃあお前は幸せの為に超貧乏な相手と結婚して、ゲームをする余裕も無くなっても構わないわけか!!」

「今はそう言う話じゃないじゃない!!」

 

 再びオロオロするユズと、結婚について理解が出来ないアリスが困惑しながら二人の言い争いを見ていた。

 

「じゃあ良いよ、私、先生と結婚するから!!

 今の私の年で知り合ったら十分幼馴染だし、先生は権力もお金も持ってるもん!!」

「はあ!? お前のようなクソガキが先生に吊り合うわけないだろ、身の程を弁えやがれ!!

 せめてセミナーの会長にでもなってから出直すんだな!!」

「それを決めるのは先生でしょ!!」

「少なくとも、お前では無い事は確かだ……その体型ではな」

「あー、言っちゃった、言ってはいけないこと言っちゃった!!」

「モモイちゃん、お駄賃あげるから牛乳でも買ったらどうだ?」

 

 男の挑発に、モモイが飛び掛かった。

 

「お姉ちゃん、私も助太刀するね!!」

 

 間接的にミドリにも飛び火し、彼女も男に飛び掛かった。

 

「“やめなさい、三人とも。ほら、喧嘩はダメだよ”」

 

「ユズ、続きをやりましょう」

「うん、そうだね」

 

 三人の喧嘩を諫める先生を横目に、アリスはユズと共にゲームを再開したのだった。

 

 

 

 §§§

 

 

【アンズちゃんの業務連絡】

 

 

 あなたは、ブルアカの公式チャンネルの更新の通知を見て、動画サイトにアップロードされた最新の動画をクリックした。

 

「いえーい、皆さん、どうもどうも!!

 超絶ウルトラハイパー救世女神のアンズちゃんでぇーす!!

 ピースピース、今日はブルアカの公式チャンネルをジャックしちゃったぞー!!」

 

 蛍光灯を頭上に浮かべた少女の動画が始まった。

 ちなみに、チャット欄は。

 

 :お願い、帰って

 :お呼びじゃないんだよクソ女神

 :世界観壊すな

 :アンズちゃんいえーい

 

 と言った反応だった。

 

「えー、今日はですねー、運営さんからお知らせがあります!!」

 

 カンペ、と書かれた紙を見ながら、少女は言った。

 

「なんとですねー、不評だった四章のIFルートの実装が、サイドストーリーと言う形で決まりましたー!!

 拍手拍手ー!! パチパチパチ!!

 あのオオカミさんがカヤちゃんのクーデターに賛同するって、没案を採用するとかなんとか?」

 

 :888888

 :マジかよ!!

 :我らのカヤちゃんの活躍が見れるのか

 :正直もっとカヤちゃんをイジメてほしかった。

 

「えぇ、なんで皆さん彼女が酷い目に遭うの期待してるんですか?

 流石にアンズちゃんもドン引きですよ。本編でも十分酷い目に遭ってるのに。

 この、欲しがりさんたちめッ☆」

 

 ガチめに視聴者の反応にドン引きしている様子の少女は、しかし気を取り直してウインクしてみせた。

 

「おや、スタッフさんから何かメモを貰いました。

 どうやら、私の実装についてアンケートが出たそうです☆

 これは満場一致で大賛成ですよね、視聴者の皆さん♪」

 

 動画内に、アンケート結果が乗せられる。

 

 賛成:38%

 反対:66%

 

 

「――――はあ!?」

 

 

 アンズちゃん、キレる!!

 

「やっぱ、無しです、無し。ストーリー追加無し!!

 ついでに視聴者先生全員に、次のガチャが天井になるまでSSRが出ない呪いを掛けます!!」

 

 :炎上芸人系女神

 :あの運営ならやりそうだからヤメテ!!

 :ガチャを盾にするな!!

 :そんなんだから拒否られるんだよww

 :だってアンズちゃん、既婚者やん

 :君と先生のエロシーンあった日には、旦那がキレるでしょ

 

「……それもそうですね」

 

 少女はコメントを見て、スンと落ち着いた。

 

「アンズちゃんは貞淑な美少女なので、操はダーリンに捧げてるんです♪

 じゃあ、これまで通り私はアロナちゃん枠で裏方に徹しますね!!」

 

 機嫌を直した彼女はもう一度ウインクした。

 

「本編では、ね」

 

 意味深に彼女は笑った。

 

「そう言うわけでIFストーリー、クーデター編の配信をぜひお楽しみに~♪」

 

 少女が振り返り、スキップで去っていく。

 

「さーて、どんな風に先(・)生(・)と(・)生(・)徒(・)の(・)皆(・)さ(・)ん(・)で(・)遊ぶイベントを企画しようかなー」

 

 画面外のそんな台詞と共に、動画は終わるのだった。

 

 

 

 

 

 




そう言うわけで、イフルートを書きます。
カヤちゃんによる、カヤちゃんの為の、至高にして究極のカヤ虐を用意しますよ。
少々お時間をください。

ではまた、次回!!

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