私にとって、世界は失望と諦念で出来ていた。
意味も無く笑われ、貶され、虐げられる。
それが私の日常で、当然だった。
中学生になれば、変るのかもしれない。
そう思ったこともあったけど、周囲の面子はほぼ小学生の頃と変わらない。
ああ、また同じか。
そう思った。
「ねえ、名前は何ていうの?」
偶然、隣の席になった彼女。
知らない顔だった。
「あのさ、良かったら友達にならない?」
彼女は得難い友人になった。
なぜなら、私にこれ以上無い教訓をくれたからだ。
彼女が教えてくれたのだ。
────この世に、決して希望など無いのだ、と。
§§§
「“……”」
シャーレの事務所で、先生は眉を顰めていた。
数日で、ハナコは調査資料をまとめてくれて、提出までしてくれたからだ。
その内容は、一言で言うならおぞましい、だった。
リンゴは日常的にいじめを受けていた。
九年間ずっと、周囲はそれを見てみぬ振りをしたか、いじめに加わったかのどちらかだった。
調査資料には、かつてのクラスメイトのリンゴに対する印象が聴取されていた。
『いつも独りで居て、じろじろこっちを見る気持ち悪い奴』
『ほんのちょっとの休み時間も図書館に行ってるような変わり者』
『小さくて弱いから、いつもみんなにいじられてた』
それが見てみぬ振りをした連中の言葉で、いじめの当事者たちの言葉は口に出すのも憚れるような内容だった。
「先生、リンゴちゃんの絶望は、ありふれたものですよ」
ハナコが先生に語り掛ける。
「幼い故に残虐で、グループの連帯感を高めるための生贄に都合のいい誰か。
その標的になりたくない周囲と、開き直って一緒になって笑う無関係の他人。
彼女の世界は、それによって構成されていたんです。
そしてそれは誰にでも訪れることで、珍しい事ではありません」
「“だけど、こんなのはあんまりだ”」
「先生。教官の経歴は覚えておいでですか?」
「“うん、覚えているけど”」
「リンゴちゃんと彼は表裏一体。
リンゴちゃんが味わった人生は、きっと教官も似たような道筋を辿ったのでしょう」
先生は聞いていた。
あの男は、万年いじめられっ子だった、と。
「学校から逃げたところで、キヴォトスは退学した生徒には優しくありません。
まだ別の形の弱者として、虐げられるだけだったでしょう。
彼女はよく、我慢したと思いますよ」
「“そして、決定的な事件が起こった”」
「お金の貸し借りについて、大事になったらしいですね」
ハナコがその事件についての資料を示す。
「リンゴちゃんは最後まで事実を否定し、大騒ぎになったそうです。
でも誰も、彼女を信じなかった」
「“……”」
痛ましい、としか言いようがなかった。
それ以降、リンゴは寮の自室に引き籠った。
生徒会もまともな調査もせずに、何も無かったことにして終わらせた。
一人の少女の人生を台無しにして、全ては元通りになった。
「うふふ、胸糞悪いですよね」
先生は、先ほどからハナコの表情を見れなかった。
多分笑顔なのだろう。だが、それをまともに見る勇気を持つ人間が、キヴォトスにどれだけ居ようか。
「……本当に、信じられませんよ。
リンゴちゃんが、あの人と同一人物なんて」
ほう、とハナコは溜息を吐いた。
「やられたらやりかえして当たり前。
悪人には決して容赦はしないし、誰よりも悪辣に叩きのめす。
きっとあの人も、最初はリンゴちゃんのように、やり返すことすら怖くてできないような人間だったのでしょうね」
「“彼を怪物にした下地は、最初から出来上がっていたわけだね”」
そして、憐れにもリンゴをいじめていた彼女達は知らなかった。
自分たちが虐げていた相手が、凶悪な人喰い狼だと言うことを。
「多分、いえ確実に、引き金ひとつで彼女は、あの人に変貌するでしょう。
無力な村人だと思っていた相手が、毎夜誰かを食い殺す人狼と化すのです」
「“だけど、ここまでの仕打ちを受けても、彼女はそうはならなかったんだ。
私には分からないよ。いったいどんな引き金を引けば、リンゴが彼のようになるのかなんて”」
先生はリンゴの経歴の書かれた資料に目を落とす。
彼女は間違いなく、進学を断念し人生が台無しになった。
それでもなお、その怒りと悲しみを周囲に求めなかった。
「これは多分私の予想に過ぎないのですけど、その引き金は実に単純なモノだと思いますよ」
「“単純なモノ?”」
「それはきっと、周囲が、自分より弱いと理解してしまうことです」
先生はハナコの考察に、二の句を告げなかった。
同じ言葉を、以前あの男から先生は聞いていた。
「“……以前、彼がアビドスに居た頃、そこの生徒達に言ったらしいんだ。
暴力の本質とは、相手が自分より弱いと思うことだ、と。熊が人間を喰らうのは、それが理由だって”」
「ああ、そうでしたか」
ハナコは瞠目した。
結局、全てはリンゴが己を鎖で縛っていたから、周囲は惨劇を免れたというだけだということだった。
彼女の周囲は、グレイプニールで縛られたフェンリルを、嘲笑っていたのである。
その怪物が、どれほどの災厄を齎すか理解せずに。
「リンゴちゃんは、危うい爆弾です。
この暴力に満ち溢れたキヴォトスで、誰かに暴力を振るう機会なんて有り触れているのですから」
「“時間の問題、というわけか”」
先生も、ハナコも、理解したのだ。
リンゴが優しいから反撃しなかったのではない。
彼女はただ、自分が弱いと思い込んでいるだけなのだ。
ただ自分独りでは何もできないと、諦めているだけなのだ。
『なあ、先生よ』
「“はあ……何かな?”」
先生のスマホから、男のアバターが語り掛けてくる。
「おや、もう話しかけてこないかと思いましたよ♡」
『お前の端末の俺から苦情が来てたぞ。
普通のAIだったら自我崩壊してるだろうってな』
「自我を持つAIなら、自己矛盾を指摘された場合どうなるか試したくなるじゃないですか♪」
男のアバターとハナコのやり取りは、生前の彼とまるで変わらなかった。
それがほんの少しだけ先生の救いになった。
『俺が言うのもなんだが、俺って人間はかなり倫理観を持っていると自己評価をしている』
「“どの口が言うんだろうね”」
『先生。まだわからないのか?』
くくく、と男のアバターは先生に笑って見せた。
『俺のオリジナルと、リンゴは唯一決定的に違うものがあるんだ』
「“決定的に、違うもの?”」
「…………」
『ハナコはもう気づいたようだな』
ハナコはスワンプマンの指摘に、真顔になって黙り込んでいた。
彼女は、気づいてしまったのである。
「“ハナコ、教えてくれないか?”」
「先生、リンゴちゃんは、キヴォトスの住人なんですよ」
「“それが、どうしたの?”」
「キヴォトスの外がどういう場所なのかは存じませんけど、交流先の一つでは銃弾を一発撃っただけで警官の昇進の望みが断たれるような場所もあると聞きます」
それを聞いて、先生もハッっとなった。
あの男は、一度たりとも実弾を生徒に向けて撃ったことなど、なかった。
少なくとも先生の知る限りでは、一発も。
『素人とプロボクサー、喧嘩で危険なのは素人の方だ。
どれだけ殴れば死ぬか、或いは加減が分からないからだよ』
あの男は銃の恐ろしさと危険性、そして暴力の使い方を知り尽くしていた。
『理解したか?
リンゴは恐らく、俺よりもずっと、──狂暴だぞ』
「“……そのために、私が居る。そうだろう?”」
『頼もしいな。
だが、一応言っておくよ。先生。
あんたが失敗したところで、俺は責めたりはしない。
リンゴはきっと、己の才能から逃れることはできない』
それでも、やりようはあると、先生は思っていた。
『あのまま惨めな少女のまま、一生を終えるのか。
それとも、自らの残虐性に気づいて、人狼として生きるのと。
……──どっちが幸せなんだろうな』
男のアバターは軍帽を深く被ってそう言った。
「リンゴちゃんは、自分が望まない自分に苦しんでいます。
私達が諦めては、誰が彼女自身を見て上げられると言うんですか」
「“ハナコ……そうだね”」
本日は下ネタひとつ言わないハナコに感じ入って、先生は頷いた。
『なら、あいつのかつてのクラスメイトにはよく注視しておくことだ。
俺が子供の頃に戻って、同じ目に遭ったら絶対にやり返す。
むしろ、俺がリンゴの代わりにやり返してやりたいくらいだ』
「“それでも、私の生徒達だよ”」
『先生、顔も知らない相手にそんなことを言うもんじゃない』
「“知っているよ”」
先生はデスクの引き出しから資料の束を取り出した。
以前、リンゴが在学していた中学校の顔写真が載った生徒のリストだった。
「“私は、私の出来ることをやるよ”」
『くッ、くくく、やっぱり推せるぜ。先生!!』
そんな二人を見て、ハナコは思った。
本当に仲がいいんだな、と。
§§§
「……」
キヴォトスにおいて、国家が学校に値するのならば、学校内とその周辺は首都に相当するべきだろう。
そこを歩くだけで、途方も無さを感じざるを得ない。
分校舎でさえ、三十以上。
それ以外も数えきれないほどの歴史のある優雅な建物が、幾つも並んでいる。
これがテーマパークなら、到底一日で回り切れないほどの規模だ。
むしろ、散歩しているだけでさえ、地図が無ければどうにもならないだろう。
つまり、何が言いたいかと言うと。
「ここ、どこ……」
リンゴは道に迷っていた。
「ちゃんとナビゲーションアプリの通りに歩いたよね?」
優雅に談笑する生徒や、友達と一緒に歩き去っていく生徒達。
その誰かに話しかける勇気など、彼女には無かった。
皆、笑顔だった。
楽しそうに学園生活を謳歌している。
リンゴはそれが、自分への嘲笑に見えて仕方がなかった。
「なぜ怯える、リンゴ」
「ひッ」
リンゴの目の前に、もう一人の自分が現れる。
幻覚、幻聴。
半年の眠りより目を覚ましてから、度々彼女を苛む悪夢だった。
「気に入らないなら、殺してしまえ。
やり方はもう、知っているだろう?」
「違う、違う違う違う!!
私はそんなこと、望んでない!!」
「俺はお前で、お前は俺なのだ。
俺はお前の全てを知っている。お前も、ずっと俺を見てきたはずだ」
男の幻影が、リンゴに笑いかける。
「なあ、リンゴ。
お前が見ていた俺の夢は、悪夢だったか?」
「悪夢だよ。あんなの、誰かを傷つけることしかできない自分の姿なんてッ」
「噓は良くないな」
これは、幻聴に見せかけた、自問自答。
リンゴはもう知っているのだ。
自分自身の、完成形を。
彼女は理解してしまっている。
彼のようになろうとすれば、今すぐにでもそうなれるのだ、と。
「お前は爽快に感じていた筈だ。
気に入らない奴を叩き潰す快感!! 矮小な自分が、嫌な奴らを地獄に落とす愉悦を!!」
「私は、そんなのは欲しくないッ」
「いつまで、まともな振りをしているんだ?」
ほら、と男の幻影が、周囲を示す。
「ひッ」
皆が、リンゴを見ていた。
怪訝そうに、彼女を見ていた。
「皆がお前を見ているぞ。
それはなぜだ? お前が薄汚く、吐き気を催す邪悪なゴミ野郎だからだ」
「ううッ、ううッ!!」
蹲るリンゴを心配して、近くの生徒が話しかけてくる。
どうしましたか、保健室に案内しましょうか、と。
だが、そんな言葉もリンゴには届かなかった。
「くくく、良いだろう。お前が出来ないというなら、俺が代わりにやってやろう」
「え──?」
男の幻影が、銃を取り出す。
そして、手あたり次第、近くにいる生徒を撃ち始めた。
視界が、真っ赤に染まる。
血だらけになった生徒たちが、彼女を見ている。
恨めしそうに、憎らしそうに。
「──────!!!」
絶叫を上げて、リンゴはその場から逃げ出した。
「なにも不安になる必要は無い。
俺と、お前は違うと主張するのなら、それもいいだろう。
そうとも、俺とお前は違うんだ。
なら、俺が勝手にすることは、お前の所為じゃない。そうだろう?」
「やめて、やめてよぉ!!」
リンゴは、特別なことをなにひとつ望んでいなかった。
誰かの輪の中に入りたいとも、沢山の友人に恵まれたいとも、頭脳明晰になって多くの人々から認められたいとも、そんなささやかな願いすら、持っていなかった。
ただ、教室の片隅で一人で好きなラノベでも読んでいられれば、それでよかったのだ。
──なのにどうして、周囲は自分を放っておかないの?
自分以外の誰かをいじめるなら、私は周囲と同じように何もしないのに。
なぜ、トリニティみたいな名門校に入学する羽目になって、補習授業部みたいな強い人たちに関わる羽目になったのだろうか。
ただの陰キャとして、友達も居ないまま、独りで朽ちていくことさえなぜ誰も許してくれないのだろう?
私の生き方が、そんなに迷惑なのか?
私の存在が、そんなにも憎いのか?
男の幻影は、リンゴ自身だった。
理不尽だ。
理不尽だ!!
< 〈●〉〈●〉 >
それは、憎悪だった。
己自身さえも焼き尽くす、怒りの炎だった!!
やがて、リンゴは見知らぬ校舎裏へと辿りついた。
あまり使われていない校舎の裏側。
そこで、リンゴは見た。
「ねえ、先輩の頼みがなんで聞けないの?」
「そんなんでうちの部活でやって行けると思うわけ?」
「私達の言うこと聞かないと、来年からレギュラーは大変だよぉ」
体操着を来た数名の生徒が、後輩らしい生徒を取り囲んでいた。
「で、でも、これ以上自腹は困ると言いますか……。
部活もあるし、バイトも出来ないから、もうお金が無いんです……」
「だったら借りればいいじゃん」
「闇金でも何でもお金を借りて、うちらのご機嫌を取った方がいいよ!!」
「わかったらさっさと私達にスイーツを調達してこい!!」
「……何してるんですか。可哀想じゃないですか」
リンゴは自分でも、恐ろしいほど平坦な声が出た。
「はあ? 何だよ、お前」
上級生の声を無視して、リンゴは取り囲まれている生徒に話しかけた。
「部活の最中なんだよね?
練習頑張って。ほら、ここは私に任せて」
「し、失礼します!!」
「おい!!」
後輩の生徒は、後ろめたさから逃げるようにリンゴを置いて立ち去った。
それを追おうとする先輩達を、リンゴが遮った。
「なんなのお前、あいつの友達?」
「あんた後輩でしょ、調子乗らない方がいいよ」
「それとも、あんたが代わりに買い出しに行ってくれるの?」
自分に詰め寄る先輩達を見て、なぜだろうか、リンゴは笑いがこみ上げてきた。
「なにこいつ、キモッ」
「何笑ってるのよ」
「邪魔すんな!!」
リンゴが突き飛ばされ、地面に倒れた。
「なにヘラヘラ笑ってるの、こいつ」
「マジで気持ち悪いんだけど」
「なにがおかしいんだよ、てめぇ」
今度は胸倉をつかまれる。
「大丈夫だ、俺がやる」
男の幻聴が、リンゴの耳元で囁く。
男の幻影が、銃を突き付ける。
「動くな」
それは、男の声ではなかった。
「私の友達に、何をしている」
アズサが、リンゴを取り囲む先輩達に銃を突き付けていた。
「こ、こいつ、氷の魔女じゃん!!」
「やばッ、はやく行こう」
運動部らしき彼女達は、当然丸腰で、アズサの迫力に逃げて行った。
「大丈夫か、リンゴ?」
「アズサさん……どうして、ここに」
「何を言っているんだ?」
アズサは小首を傾げて、こう言った。
「お前が、私を呼んだんじゃないか」
え、とリンゴは一瞬呆然となった。
そしてすぐに、恐怖がこみ上げてきて、アズサに縋りつくように泣き出した。
「もう大丈夫だ、安心しろ」
そんなリンゴを、アズサは優しく頭を撫でたのだった。
すぐにコハル経由で、先ほどの運動部の連中の所業が正義実現委員会に明るみになった。
リンゴのポーンマスが勝手に録音をしていたのだ。
それを証拠に聞き取り調査を実施、その部活の旧態然とした上下関係によるパワハラが常態化してることが明らかになったのだ。
最終的に、その状態が改善するまで、部活動の禁止が言い渡された。
「(私、アズサさんに連絡した覚えなんて無い……)」
かといって、ポーンマスではなかった。
リンゴが気づかないうちに、救援を送っていたのだ。
しかもちゃんと武断な対応の出来るアズサを選んでいた。
「(私が、私じゃなくなっていくみたい……。
私はいつまで、私のままでいられるんだろう……)」
「わかってるだろう、リンゴ」
「ひッ」
登校中の生徒に交じり校舎に向かうリンゴの耳元に男の声が囁く。
「俺とお前に、境界線は存在しない。
俺とお前は、ひとつなのだ。ほら、見てみろ」
男がリンゴの肩に手を置き、進行方向を指差した。
そして、リンゴは見た。
周囲の生徒達の悲鳴が聞こえた。
当然だろう、本校舎へ向かう途中の広場に、有ってはならないモノが存在した。
それは、十字架に磔にされたトリニティの生徒だった。
上品で気品に溢れていただろう外見は、無残に痛めつけられ顔中が腫れていた。
猿轡をされ、その視線は助けを求めている。
そして、その磔にされた彼女の体中に張り紙がされていた。
同じモノが、その周辺にバラまかれていた。
思わず、それを手に取った。
曰く、この生徒は手下を通じて脅迫や暴力によってティーパーティーの席を得た外道。
己の虚栄心と名誉欲の為に、自分の手を汚さず、他者を虐げた罪人である、と。その証拠は、動画サイトに音声ファイルがアップされている、と共に、共犯者の名前と被害者がリストアップされていた。
彼女の周囲は、すぐにその張り紙を見た生徒達に囲まれ、目の色が変わっていた。
そこにいた多くの人間が、晒し首も同然の彼女の写真をスマホで撮って、SNSにアップする。
それはすぐにキヴォトス中に拡散され、多くの怒りの声が響き渡る。
「お前達、さっさと登校しろ!!」
「早く降ろしてやれ!!」
すぐに正義実現委員会がやってきて、彼女を下ろそうと動き始めた。
委員会の面々が並んで、周囲の生徒達の退散を命じるが。
「あなた達はどちらの味方なの!!」
誰かが言った。
「こんな奴を庇って、何が正義だ!!」
「どうせ、ティーパーティーの犬なんでしょ!!」
「なんで被害者の方を助けないんだ!!」
次々と怒声が響き渡る。
それを見て、リンゴは心底恐怖した。
これをやったのは、もしかしたら自分かもしれないと言う恐怖。
同時に、己に沸き起こる嗜虐の感情。
ふと、リンゴは己の顔に触れた。
────嗤っていた。
林檎の実が、熟して地面に落ちるように。
彼女の堕落は、必然だとでも言うように。
「い、嫌だ、違う、私じゃないッ」
その時、この場に留まって声を上げていた生徒たちのスマホに、一斉に着信音が鳴った。
「あ、ポーンマスからだ」
「やばッ、もう授業の時間じゃん!!」
「いつのまに予鈴鳴ってたの!?」
生徒達は自分が今まで何をしていたのかも忘れたかのように、校舎の方へと向かって行った。
正義実現委員会の面々は、まるで狐につままれたような表情で立ち尽くしていた。
「……君も、そろそろ授業の時間だよ」
「はい……」
委員の一人に声を掛けられ、リンゴは逃げるように去って行った。
そして今朝の事態が、学校内に波紋を呼んだのは言うまでも無かった。
ドチャクソ偏見ですけど、絶対最後に出てきたように脅迫と手下を使って成り上がったティーパーティーの生徒とか居そうですよね。
それではまた、次回!!