今回がエピローグになります。
「この結末を、我々は予測していました」
「“……”」
「スワンプマンは先生に勝つ術は無い、と」
『黒ちゃんもヒトが悪いよな。教えてくれてもよかったじゃんか』
いつものバー、そのテーブルに立てかけられているスマホに映る男のアバターがそう言った。
「クックック。言ったでしょう、私は傍観者だと。
今回はそれを曲げてまで、彼に協力しました。有意義な実験だったと認識しています」
黒服は手を組んだまま、先生に語り掛ける。
「しかし、意外な結果も観測できました。
先生、それはあなたがそれの提案を断ったことです」
「“……”」
「それの提案は、先生にとっても魅力的だったはずです。
生徒達の安寧、そして学生生活を謳歌しつづけるという提案。
それは、恐らく先生が求めていたことではないのですか?
少なくとも、生徒同士での争いは無くなる筈だったのでは?」
「“そして、君たちにも利益はある”」
「クックック。ご明察ですね」
スワンプマンが語った子供と大人の対立する社会。
それは、ゲマトリアにとっては子供を幾らでも実験対象にできる世界と言うことだ。
「“スワンプマンの提案を、君に置き換えれば簡単だよ。
私にとってそれは、君が生徒を実験台にし、それを私が解決して生徒の信頼をえればいいと裏で手を組まないか、と提案されるのと同じことだからだ”」
スワンプマンの語る世界は、原則的に子供たちを
最終的に困難に立ち向かって成長するようにするから、それは些細な犠牲だと切り捨てることは先生にはできない。
「なるほどなるほど。
しかし先生、貴方は気づいておられますか?」
黒服の顔を模る怪光が強まる。
「先生がアリウスの生徒を助ける時、彼の提案を許容した時点で、それを言う資格を失っているのですよ。
あの作戦は、桐藤ナギサの犠牲が必要だった。
あの時、先生は拙速を選んだのです」
「“否定はしないよ。いつか報いを受けるとも思ってる”」
「おっと、失礼。
私は責めているわけではありません。
あの時、先生は不名誉を被っても生徒をマダムから助けたかった。それだけなのでしょう」
少なくとも、先生はあれがアップルマンが勝手にやったことだと、言い逃れをするつもりは無い。
そんな卑怯なことはするつもりはなかった。
「“帰るよ”」
「ええ、お気をつけて」
先生はスマホを手に取り、バーを後にしようとした。
あの男を通じての会合だった、先生は少しだけ黒服と分かり合えた気がした。少なくとも、初めて会った時よりは。
「先生、一つだけ忠告をしておきます」
「“何かな”」
「あの、少女の姿をしただけの存在に、気を許さないことです」
「“…………”」
「あれは、我々のような探求欲の最果てに待つ終幕。
もし仮に、何でも願いを叶えてやるなどと、そんな戯言を言われても耳を貸さない方がよろしいかと。
あれにいざなわれ、付いていった者は誰も帰ってこない。きっと、想像を絶する絶望が待ち受けているのでしょう」
「“わかっているよ。でも”」
「でも?」
「“今の彼女は、私の生徒だから”」
先生は振り返らずとも、黒服が呆気に取られたのは分かった気がした。
黒服にしては本当に善意からの忠告を、このように返されるとは思わなかったのだろう。
「クックック。クックック!!
先生。貴方は時折、我々よりもずっと、極まっておられますよ。救いがたいほどに」
だからこそ、と黒服は呟いて、それ以上は語らなかった。
ただただ、笑い声を漏らしながら肩を震わせるだけだった。
『アロナパイセン、お加減はどうですかね?』
『うむ、くるしゅうないですよ』
先生がシャーレの事務室に戻り、シッテムの箱をスリープ画面を解くと、男のアバターがアロナの肩もみをしていた。
いつの間にかスマホからこっちに戻っていたらしい。
『ああ、そうだ。先生。
ポーンマスギルド機構は来週にも設立するそうだぞ』
「“思った以上に早いね”」
『箱モノを用意するだけだからな。システムもヒマリに任せていたから、後は人員を配置するだけだ』
先生は、ポーンマスをそのままにした。
ただし、スワンプマンの行く末を生徒達に委ねるように指示して。
敗北を認めた全ての端末のスワンプマンは、それを受け入れた。
これからもポーンマスは、キヴォトスの生徒にとってちょっと便利なアプリとして使用され続けるだろう。
先生も、ポーンマスの有用性は認めていたのだから。全ての端末の彼らも、これからは完全に生徒たちの道具に徹することだろう。
『先生、ずっと俺は考えていたんだ。
なぜ俺はあんたに敗北したのか。俺はこう見えて、一度たりとも敗北を認めたことは無いんだ。それこそ、死んでもな』
「“それは知ってるよ。ミドリと対戦ゲームした時なんて、本当に酷かったもんね”」
先生は以前、ゲーム開発部の面々が遊びに来た時の惨状を思い返してそう言った。
『ようやく結論が出て、全ての俺と共有したところだ。
先生、俺のオリジナルはアロナパイセンをちょっと便利なサポートAI程度にしか思っていなかった。
そんなものはキヴォトスに幾らでもあるし、生徒の学習や授業でも使われている』
男のアバターは肩もみを続けながら、独白するように話し始めた。
『先生は以前、サンクトゥムタワーの制御権を手にしたことがあったらしいな。
しかしそれを迷わず手放した。
だが、実際はどうだ? アロナパイセンに頼めば、恐らくそんなものはいつでも奪い返せるはずだ。
俺でさえ、掌握できなかったそれをだ』
「“そんなこと、考えたことも無かったよ”」
『それだよ』
男のアバターは深い溜息を吐いた。
『やろうと思えば、アロナパイセンの劣化プログラムをキヴォトスにバラまいて、生徒達の動向を監視したり、世論の操作など、俺がやろうとしたことさえ可能だっただろう。
だが、先生はそんなことを想像もしなかった。
ただ単にできると思っていなかったからか?
違うな。先生、あんたはアロナパイセンを一人の個人として認識していたからだ』
「“? 当然じゃないか”」
『だから、それなんだよ』
男のアバターは更に深い溜息を吐いた。
『先生が一度でも、アロナパイセンを己の武器として使用すれば、オリジナルはそれを警戒し、分析し、対策を講じるよう想像を巡らせただろう。
だけど、そうはしなかった。
それは先生が、アロナパイセンを武器として使用するなんて想像もしていなかったからだ』
それはつまり、キヴォトスの生徒が、銃を武器と認識せずに使用したりもしない、そんな飛びぬけた思考回路なのである。
『先生、──誇れ。
俺は間違いなく、あんたに敗北した。
あんたでなければ、恐らく負けなかった』
それが、自己分析の結果だった。
そして、男のアバターは笑みを浮かべた。
『完敗だ。こんなに嬉しいことはない』
勝ちに不思議の勝ち有り、負けに不思議の負けは無い。
この敗北は、必然だったのだと、スワンプマンは結論付けた。
『オリジナルも草葉の陰で喜んでいることだろう。
先生、お前はいつだって、俺の期待にこたえ続けてくれている。
お前のような友人に、もっと若い頃に会いたかったよ……』
『ちょっと、後輩さん!!
肩もみがおざなりになってますよ!!』
『はいはい、わかりましたよ、アロナパイセン』
『そもそもですね、先生をサポートするのは私の仕事なんですよ!!
新顔が出しゃばるからこうなるのです!!
ふふふ、夜なべして拘束用のプログラムを編んで、隙を伺っていた甲斐がありました!!』
『はいはい、アロナパイセンが最高のサポートAIですよっと』
とりあえず、先生は二人が仲が良さそうで良かったと思った。
特に、アロナの容姿は男の性癖的にストライクゾーンを下回っているところとか。
『おっと、隙あり!!』
その時、突然男のアバターがアロナのスカートを全開になるまで捲った。
青と白の縞々が見えたが、先生は紳士なのですぐに目を逸らして見なかったことにした。
『き、きゃぁぁぁぁぁぁ!!!』
『ぎゃははは!! ぷにロリの分際でデカい顔するからだ!!』
『アロナちゃんパンチ!!』
『ぶぎゃあぁあぁぁぁぁ!!!』
どうやら、アホは成敗されたらしい。
視線を戻すと、シッテムの箱の画面の端に星になった何かが見えた。
『先生、見ましたか!?』
「“何も見てないよ”」
『本当ですよね!?』
涙目になるアロナを、先生はしばらく慰めることにした。
§§§
リンゴに対する、補習授業部の役割もそろそろ終わろうとしていた。
彼女に課された学力テストが今日終わろうとしていたからだ。
「はい、合格です」
今回は試験を監督する側として、ヒフミがそう答えた。
「ありがとうございます、皆さん」
「いえ、このくらい大したことじゃありませんよ」
学力に関しては、リンゴは手の掛からない生徒だった。
学力に関しては。大事な事なので二度表記した。
「本格的に、補習授業部もお役御免になるな。
我々も、きっと各々の道へと進むのだろう」
「なら、サオリさんのところに戻っては?
ばにばに団はアズサさんが戻ってくるのを待ってますよ」
「いや、それは遠慮しておく……」
笑顔でそんなことを言うリンゴから、アズサは目を逸らした。
「あ、あはは、私もこれからはナギサ様のお手伝いに専念するのでしょうか。
でも、補習授業部という枠組みが無くなっても、私達は友達ですよ!!」
最初はマイナスな理由で始まった補習授業部は、彼女達にとってかけがえのない居場所になった。
それは、彼女達にとって小さな楽園だったのだ。
「コハルちゃん!! とりあえず、来年を目途に正義実現委員会の委員長を目指そうね!!」
「あのね、言っておくけど、私は私自身の力で委員会で成り上がるからね!!
あんたの助けなんて要らないんだから!!」
「わかった!! じゃあコハルちゃんに分からないように裏から手回しをするね!!」
「だから、そう言うことじゃないんだけど!!」
まったく話を聞き入れる様子のないリンゴに、コハルが抗弁していると。
「リンゴちゃん。
やはり、今のばにばに団の活動を続けるのですか?」
「はい。トリニティだけじゃなく、他の学園までその活動範囲を広げるつもりです!!
そうして、キヴォトスを清楚に染めてやるんです!!」
それは、あの男への反骨心からなのか。
リンゴは決意を込めて、ハナコにそう言った。
「リンゴちゃん。今のばにばに団のやり方は間違っています。
服装だけでなく、他人の容姿にまで言及し、貶めるのは明らかにやり過ぎです」
「じゃあ、ハスミさんはドスケベじゃないんですか? 一切のセックスアピールが存在しないとでも?」
「確かに、ハスミさんは存在がスケベなのは否定できません……」
「そんなわけ無いでしょ、このバカ!!」
真面目な表情で対峙する二人に、コハルが罵声を浴びせる。
「ですが、そうやってリンゴちゃん自身の欲求を、発散しているように見えるのは、邪推でしょうか」
「はぁ、ハナコさん」
ハナコの迂遠な物言いに、リンゴは溜息をついてこう言った。
「私は、あの男でもあるんです。
このキヴォトスで誰よりも、貴女を理解していると思っています。
貴女があの男には心を開いたのは、彼に対して何をしても、失望されないと分かっていたからでしょう?」
「…………そう、なのでしょうね。きっと、そうなんだと思います」
ヒフミ達にすら遊びに誘うのにさえ回りくどいことをするハナコは、たった一人、あの男だけは遠慮が無かった。
だがもう、あの男はどこにも居ないのだ。
「コハルちゃんは、私に捨て身の本心でぶつかってくれました。
それなのに、貴女は私に殻を被って遠巻きに見ているだけ。
本心で何一つ語らない貴女に、どうして私が心を開くと思ったんですか?」
だから、リンゴはハナコにそう言った。
自分に遠慮するうちは、自分も正面から相対しない、と。
「わかりました。私も、本心を述べます」
ハナコは目を閉じ、覚悟を決めたように目を開けた。
そして、こう言った。
「リンゴちゃん、私もあなたと、──コハルちゃんみたいに猥談をしたいのです!!」
「バカじゃないの、ハナコあんた!!」
「良いでしょう!! どこまで付いて来れますか!!」
「リンゴ、あんたもいい加減にしなさいよ!!」
「しかし、我々はトリニティ生。猥談も清楚でなければなりません」
「わかりました。それで行きましょう」
そうして、かつてハナコはあの男とそうしたように、リンゴと相対した。間にコハルを挟んで。
「じゃあハナコさんはどこまで許容範囲内ですか?
合意なしモノ、超ひどいモノ、閉じ込めモノ、どこまでオーケーです?」
「その程度なら全て許容範囲です♡
リンゴちゃんはやっぱりひよこが好きなんですか?」
「ええ、コハルちゃんみたいなひよこがしつけをされるところとか垂涎ものですね」
「なるほど……」
「なにがナルホドよ、ヒトを勝手にひよこ呼ばわりして、しつけがどうのって、えっちなのはダメなんだからね!!
というか、何なのよその言い換えは!!」
「コハルちゃん、いけませんよ。
昨今は表現の規制が厳しいのです。
ジャンル名を直接口にすれば、最悪先生の大人のカードが使用できなくなるような事態に陥る可能性も!!」
「そ、そうなの!?」
まさかそんな事態とは知らず、真顔で語るハナコに衝撃を受けるコハルだった。
「あと、個人的に精神支配はアリですけど、痛いのはダメですね」
「分かります♡ 女の子が苦痛の表情では興奮できませんよね♡」
「ハナコさん的には、動物なかよしまではどうですか?」
「ど、動物なかよし!? そんなディープな性癖さえも許容するのですか、リンゴちゃん!?」
「ええ、だって私は、あの男の行為をずっと見せつけられてたんですよ……」
「それは、心中察しますね……」
すっかり蚊帳の外に置かれたアズサは、虚空に目を泳がせているヒフミに言った。
「なあヒフミ、動物と仲良くするのがなぜ猥談になるんだ?
私も動物となかよしになりたいぞ」
「だ、ダメですッ、そんなのえっちすぎますから!!」
「どッ、どうしたのヒフミ、急に叫んで」
突如として大声を上げるヒフミに、コハルもギョッとする。
「おや、おやおや♡ ヒフミちゃんはどんななかよしを想像したんですか?」
「ペロロとですか? それともペロロ×ウェーブキャットですか?」
「ペロロ様をえっちな目で見てはいけません!!」
ヒフミは詰め寄って来る二人に真っ赤になってそう返した。
そんな時であった。
「おや、何やら騒がしいですが、どうかしましたか?」
「あ、ハスミ先輩!!」
ハスミが五人の使用している教室に入って来たのだ。
「皆さん、ティーパーティーの生徒会長の方々がお呼びですよ」
「え? ナギサ様たちがですか?」
「ええ、そのほかサクラコさんやミネ団長もいらしていますよ」
「勢揃いですね」
それはトリニティの主要な派閥のトップが全員集合しているということになる。
思わず眉を顰めるハナコであった。
「とりあえず、行くしかないだろう」
アズサが小さく頷き、そう答えた。
「わ、私達にいったい何の用なの!?」
「大丈夫ですよ、悪い話ではありませんから」
ハスミはにっこりと笑ってそう答えた。
ハスミを先頭にして五人は生徒会室に案内された。
「皆さん、ごきげんよう。
ヒフミさんたち補習授業部の皆さんも、リンゴさんの学力向上をありがとうございます」
「も、勿体ないお言葉です、ナギサ様!!」
いつものように微笑むナギサに、ヒフミは背筋を伸ばして答えた。
彼女が緊張するのも無理はない。
この場には、ナギサ以外にも、セイアとミカ、アツコとサクラコ、ミネと言ったトリニティを構成する主要人物が全員揃っていたのだから。
「リンゴちゃん」
「はい」
「つい先日、私達トリニティ総合学園はゲヘナと合同で新たにポーンマスギルド機構を設立することになったのは知ってるよね?」
「勿論です」
ミカの言葉に、リンゴは頷いた。
「とりあえず、それでお互いに人員を出そうってことになってね。
私達は各派閥から五人を推薦して、トリニティ側のギルド本部の初動メンバーにすることを決めたんだ」
「まさか……」
「ええ、ミカさんのパテル分派はリンゴさんを初動メンバーのリーダーとして推薦しました」
「私がですか!?」
「はい、なぜなら」
ナギサは笑みを深めた。
「貴女以上の適任なんて、キヴォトスに存在しないでしょう?」
「……」
リンゴは絶句する他なかった。
「そして、我々フィリウス分派はヒフミさんを推薦します」
「ッ!?」
「サンクトゥス分派は正義実現委員会のメンバーの誰かを推挙するように要請し、ハスミはコハル、君を選んだ」
「えッ!?」
「シスターフッドは、ハナコさん。貴女を推薦します」
「アリウス分派はアズサを推薦するよ」
各派閥のリーダーに、次々と声を掛けられる五人。
結局ミネ団長以外、この場に連れて来られた五名を指名したのだ。
「勿論、これは強制ではありません」
「でもあなた達は仲良しでしょ?
どうせなら、顔見知り同士の方がやりやすいと思って」
「断っても何のペナルティも無いと、私達が保証しよう」
ナギサとミカ、セイアの三人からそう告げられ、顔を見合わせる五人。
「ですが、私達に事務作業の経験はありません」
ハナコが鋭く、そう答えた。
「それは問題ありません。ポーンマスの補佐により、少数の事務員でギルド機構は機能する見込みですから。
それはこちらで別に派遣致します」
「ポーンマスギルド機構は、言うなれば各学校版シャーレのようなもの。つまり、我々の役割は、実働ですね?」
「話が早くて助かるね、浦和ハナコ☆」
つまり、五人の役割は、ギルド機構に参加する生徒では対処できない依頼の対処。
ある種の、特別機動部隊。特殊部隊に位置するのだ。
シャーレに、SRT部が存在するように。
対応力を重視したメンバーが選ばれたのだ。
「ゲヘナやミレニアムからも、精鋭が選出されるそうです。
そして先生、いえシャーレからも協力の申し出がありました。
いざとなれば、学園の枠組みを超えてキヴォトスのあらゆる場所へと人員を派遣できるでしょう」
「まさに、ドリームチームになりそうですね」
各学園が一丸となり、結束する。
それが、あの男が想定した災厄への備えであった。
それが今、結実しようとしていた。
「わ、分かりました。引き受けます!!」
「リンゴちゃん?」
「私は、今まで誰からも必要とされませんでした」
これまで、リンゴの人生は平凡な、誰でも代替できる誰かでしかなかった。
それが、自分の知らない自分によって、その才能を指摘された。
リンゴはこれまで、ずっと平凡なまま生きて、死ぬのだと思っていた。
己に眠る、呪われた才能。
それを、誰かのために役立てたいと思ったのは、補習授業部の面々に出会えたからだ。
「私の、この呪われた忌まわしい才能を、私達の青春の為に捧げます」
ナギサは目を閉じて、ありがとうございます、と呟いた。
「先生も居るんです、何とかなりますよね?」
ヒフミが笑顔でそう言った。
「私も、頑張ります。見ていてください、ハスミ先輩!!」
コハルは誇らしげに、そう答えた。
「実戦なら任せろ。他の学園の生徒にも負けない」
アズサはいつも通りに頷き。
「ふふッ、どうやら断れる雰囲気ではなさそうですね♡」
ハナコも、笑みを浮かべてそう言った。
彼女達の青春は、終わらない。
そして、各学園の精鋭がポーンマスギルド機構本部となる建物に集結した。
「ミレニアムのエンジニア部だ。
技術面でのバックアップは任せてくれ。豊富な予算を好きに使えると聞いて、参加しない訳にはいかないだろう!!
それにポーンマスを弄れるなんて、こんな面白そうなこと逃すわけにはいかない!!」
ウタハは自分の率いるエンジニア部の誰かが常に一人は常駐することになると説明した、
「ゲヘナ学園の空崎ヒナよ。風紀委員会は籍だけ置いて実質的に引退してきたから、気兼ねなく話しかけてくれて構わない」
「天雨アコです。オペレーターは任せてください」
ヒナは他に何人かの風紀委員を引き抜いて、ギルド機構に参加した。
これが全員ではない。まだ他の学園や連邦生徒会からも、人員が派遣される。
「これは、統括的なリーダーはリンゴちゃんになりそうですね」
「……」
「リンゴちゃん?」
「……ふつくしい」
ハナコは不思議そうにリンゴを見ると、彼女はヒナの手を取って、キラキラと目を輝かせた。
「失恋を前提にお付き合いしてください!!」
「本当に、貴女はあの男なのね……」
小柄な少女の姿に、いかついあの男がダブって見えるヒナは遠い目になってそう呟いた。
アコがすぐに憤慨してリンゴに突っかかり、それを周りが面白がっていると。
会議室の中央の巨大モニターの電源が独りでに点いた。
そこに、男のアバターが映し出される。
それを驚く者は、ここにはもう居ない。ここに居るメンバーは事前に、ポーンマスの正体を説明されていた。
『こうして、顔を合わせるのは初めてだな。もう一人の俺よ』
「はい、そうですね。もう一人の私」
対面する、男と少女。
そして、両者は同時に言った。
「『一度でいいから、カードゲームの主人公みたいに、もう一人の自分って言ってみたかったんだ!!』」
そんな二人に、ここに集まった面々は笑った。
少女たちの青春は終わらない。
たとえそれが、災厄に直面する為だとしても。
これにて4.5章は完結と致します。
最初、リンゴをトリニティ生にしてしまった後、あッこれ他の学校に行きにくいな、と思って、ポーンマスギルド機構は誕生しました。
先生の当番にするのも、限界がありますしね。
この章は補習授業部の面々が影が薄かった三章の分を補うために、彼女達を中心に話を進めました。
ブルアカらしく、もうちょっとドンパチしても良かったと思いますが、まあそれは別の機会で良いでしょう。
そう言えば、そろそろブルアカのアニメが始まりますね!!
アニメ先生のビジュアルですが、個人的に先生はブラックラグーンのロックみたいな感じを想像していたので、割と服装とかは解釈一致でした。もっとシュッとしたイケメンだとは思ってましたけどねww
さて、次回から幕間を挟んで、遂にアリスの話に移ります。
主人公交代から長引いてしまいましたが、十分な世情の変化を描写できたと思います。
納得は、すべてに優先されるのですから。
では、また次回をお楽しみに!!