幕間を何話か書こうと思ったのですが、ネタが思い浮かばなかったのと短くなりそうだったので、いきなりですがアリス編に突入します!!
当然ながら、原作通りに何て進みません。悪しからず。
では、本編をどうぞ!!
仲裁者
ミレニアム学園、セミナーの本棟。
人型の作業用ロボットに車椅子を押され、ヒマリは入っていく。
その最上階に、この日の秘密の会談の相手が待っていた。
「あら、超天才献身系病弱美少女の来訪を、電気もつけずに迎えるなんて」
自動ドアが開閉すると、室内は真っ暗だった。
ヒマリを補佐するロボットが、ドアの脇にある照明のスイッチを押した。
中で待っていた人物が、室内の闇から浮き彫りになる。
いや、最初からその人物はタブレット端末を用いて何かを作業をしていた。
その赤い瞳の視線が、ヒマリに向けられる。
「来客を持て成す気がこれっぽっちも無いという点は、とても貴方らしいとは思いますけど……。
暗い部屋でモニターを見ていると目が悪くなりますよ。
……リオ」
「万全を期しているだけよ。この会談を外部に知られてはならないもの」
リオは素っ気ない表情のまま、彼女にそう言った。
「……大分、やつれているわね。
ポーンマスの件でかなり無理をしたようね」
「ふふふ、私と彼の愛の結晶が、キヴォトスを席巻しているんですよ♪
それを見届けるのは、我が子の成長を喜ぶようなモノ。苦労などとは思いませんでした。
一部、貴女の手が入っているのは気に入りませんが」
ヒマリのその白い美顔に黒い隈が出来ていた。
彼女の不眠不休の作業が、ポーンマスの権勢を保証していたのだ。
「それにしても、まさかあなたに心配をされるとは思いませんでした。
それとも、私の行方が分からなくて不安でしたか?」
「……」
微笑みに嫌味を交え、ヒマリはリオにそう言ったが、彼女は黙して語らなかった。
「詳しい事情は分からないけど、スワンプマンは先生に敗北を認めた。
キヴォトスを脅かす計画は全て破棄したと聞いたわ。
これからは生徒達の意志を尊重する、とも。
ヒマリ、それはあなたも納得しているの?」
「おや? それにどう答えたところで、貴女は納得するのですか?
とは言え、この座れば牡丹の花を体現した超天才美少女がこうして姿を現したのです。個人的には、楽しかった、とだけ言っておきましょうか」
「はた迷惑の限りね」
「それはお互い様でしょうに」
ヒマリの性格をよく知っているリオは、とりあえずその答えで納得したのか、こう切り出した。
「これから話す内容の機密を守る為、この訪問はデータベースには記録されないわ」
「聞きたいことを聞き終えたらすぐそれですか。
リオったら本当に真面目なんですから。
どんな機械も、完全に噛み合わせてしまっては返って脆くなるもの。
貴女は少し、そう言った遊びやユーモアが足らないですよ。
科学者にはそういったユーモアが必要だと思いませんか? コミュニケーション能力も科学者には必要なスキルですよ」
「貴女の嫌味の質も以前とは変わったわね。
より具体的な例を交えている。彼の影響かしら」
「おや?」
ヒマリは小首を傾げた。
今日のリオは、
普段の彼女なら、ヒマリの嫌味に言い返すなんて無駄なことはしないはずなのだ。
「それもまた、お互い様なのでは?
貴女も彼と出会って、変わらざるを得なくなった。
個人的には、貴女が言い返してくれた方が私としても心置きなく罵倒できるので、ぜひそうしてください♪」
「これまで遠慮していたというのが驚きだわ」
『まあ、察してやれよ。リオ』
その時、ヒマリの車椅子を押していた作業用ロボットの頭部のモニターが、男のアバターを映した。
『こいつはまだまだお子ちゃまなんだ。
自分と対等な相手に構ってほしいんだよ。
分かってるだろ、こいつがこんな態度をするのはお前だけだって』
「誰がお子ちゃまですか!!」
『俺からすればお前たちはどっちもお子ちゃまだよ』
ぷんぷん、と怒りながらヒマリは後ろのロボットをぽかぽか叩き始めた。
『それに、俺もユーモアは必要だと思うぜ。
シュタインズ・ゲートのヒロインにして天才美少女も、序盤で主人公たちに講義をしたシーンではユーモアを交えていた。
科学者はパトロンからカネを引き出す為にも、プレゼンテーションやコミュニケーションスキルが必要とされる。本物の陰キャの引きこもりにはできん職業なんだよ。科学者ってのは。
その辺のところは、ミレニアムのカリキュラムで重要視されていないように思えるんだが』
「確かに、一考に値する意見ね」
『その辺りをミレニアムの生徒が理解すれば、ユウカの負担も減るだろうし、もっと彼女に感謝もするだろう。
予算が降りてきて当たり前、なんて環境は個人的に生徒達の教育にはよくないと思うがね』
「或いは、貴方の言ったようにプレゼンテーションを前提とした、事前に企画を提出する形にして我々セミナーに予算を承認させる形に移行した方が良いのかもしれないわね」
『その方が将来的に役に立つだろうな』
「あの、私を挟んで真面目にミレニアムの方針について議論しないでくれませんか?」
「あら、ごめんなさいね」
リオはすっかり話が脇道にそれてしまったことを謝罪した。
そこでさらりと嫌味なく謝れるところが、ヒマリの癪に触るところだった。
「貴方の創造主が、貴方と討論に値すると認めただけはあるわね。また後で話しましょう」
「リオ……私に、また後で話しましょう、なんて一度も言ったことありませんよね?」
『ふッ、はははは!!!
なあヒマリ、お前はどっちに嫉妬してるんだ?』
「もう知りません!!」
「そろそろ本題に話を移しましょう」
すっかり拗ねてしまったヒマリを他所に、リオは話の筋道を開通させた。
「では、お互いの認識のすり合わせを」
リオは語る。
以前、ミレニアム内でのC&CとWolf小隊の衝突。
あれは、アリスの正体を探る為の揺さぶりだった。
「あれから随分と立つけれど、解釈の結論は出たかしら?」
「勿論です。アリスの正体。それは──無名の司祭が崇拝する『オーパーツ』であり──」
「遥か昔の記録に存在する“名もなき神々の女王”」
「……」
「そう、同じ解釈になったようね」
男のアバターは退屈そうにカードゲームの通信対戦を始める。
「つまり、あの存在の本質は」
「ええ、アリス。あの子は──」
「世界を終焉に導く兵器」
両者の沈黙。
男のアバターの欠伸の音だけが室内に虚しく響いた。
「……」
『あ、二ビル踏んだ。クソッ』
「……あら?」
「あなたは何を言っているの?」
『しかし俺のデッキのソリティアはそれくらいじゃ終わらんもんねぇ!!』
「リオこそ、いったい何を言っているのですか?」
「……」
「……」
『くらえ、相手ターンアポロウーサ!! そしてサベージドラゴンと超雷竜、ナチュルビーストにブロックドラゴンを添えた布陣を!! かんぺき~♪
……は? 金玉、だと!?』
「「うるさい!!」」
女子二人の怒鳴り声に、男のアバターはリモコンを取り出して音量をゼロにした。
「じゃあ、私達の同盟はここまでね」
「同盟と言うより、休戦でしたが」
『まあ、待てよ。二人とも』
下げたばかりの音量を上げ直し、男のアバターが言った。
『ヒマリはアリスを後輩と扱い、リオはアリスを大量殺戮兵器として扱うってことだな?』
「ええ、そう言うことになるわね」
『なんだか最終兵器彼女みたいで萌えるじゃないか』
「そんなことを言っている場合ではないのよ。
いつ、アリスが兵器として目覚めるのか、分からないの。可及的速やかに手を打つ必要があるわ」
「つまり、殺す、と言うことですね?」
男のアバターの仲裁も空しく、ヒマリは敵意をリオに向ける。
「あれを生命体と見なし、破壊を殺害と捉えるのならばそうなるわね」
「人格を持ち、喜怒哀楽を表現し、友と喜びを分かち合う。
彼女と我々の違いとは、いったい何なんですか?」
「我々人間とて、ある日突然豹変し、銃を乱射することもある。そう言う意味では、同じ存在なのかもしれないわね」
ヒマリとリオは、お互いに主張は、譲らない。
「スワンプマン。私に償いをしたいと言ったわね」
『おう、言ったとも』
「なら、今回は私に味方しなさい」
「んなッ!?」
『まあ、お前の為になるなら、俺も一度だけ主義主張を曲げてお前の為に尽くしてやるのもやぶさかではない。お前のことは、オリジナルの心残りだったからな』
「だったら──」
『聞いていなかったのか? お前の為になるなら、だ』
男のアバターは椅子を取り出し、深く座って背もたれに体を預けた。
『プレゼンテーションの時間だ。天才美少女科学者。
俺の協力が欲しいのなら、お前が俺を納得させて見せろ』
「ちょっと、貴方がリオを説得してみせると豪語したんですよ!!」
『俺は傭兵だぞ、ヒマリ。条件の良い方に着くに決まってるだろ』
「じゃ、じゃあ、こ、子供ッ、貴方との子供を作ってあげます!!」
『アホたれ、俺はもう生身じゃないだろうが』
「ふふふ、実は事後に貴方の精子は回収し冷凍保存しておいてあるんですよ♪」
『うわ、引くわ……』
そりゃあゴムを使ってたから、回収は楽だろうけどよ、と男のアバターは半眼になってヒマリをみやった。
「どうですか? この超天才系美少女との遺伝子を掛け合わせた、超優秀な赤ちゃんを作りませんか♡」
『お前の性格の悪さと、俺のバカさを受け継いだ子供ができる可能性もあるぞ』
男のアバターはいつか聞いた、相対性理論を発見した学者が美貌の女優を振った際に言った言葉をマネてそう言った。
ヒマリは非力な両手でロボットをぽかぽか叩き始めた。
「……はあ、いちゃつくのは後にしてくれる。
貴方もわかっているでしょう? アリスを野放しにしたら、ゲーム開発部の子たちが真っ先に犠牲になるのよ」
『そうなるだろうな』
「ミレニアムだけじゃない、キヴォトスにどれだけの被害があるのか、想像も出来ない。今の我々よりもずっと進んだ技術を持った古代文明を滅ぼしただろうその力が、この世界を蹂躙するのよ」
『なるほどな……』
「キヴォトスの平和の為にその身を捧げたあなたが、それを許容できるのかしら?」
『よし、分かった。俺の答えを示そう』
男のアバターは重々しく頷き、こう言った。
『────アリスがこの世界を滅ぼすというなら、滅ぼせばいい』
「なん、ですって?」
『その時は、アリスにはこの世界は狭すぎた。ただそれだけの話だろう』
「貴方、正気なの? アリスは、この世界を滅ぼす魔王なのかもしれないのよ?」
リオはあの男が最終的に合理的な判断を下すことを知っている。
どうしようもないほど狂っているのに、そこだけは間違えないと思っていたのだ。
『なら、アリスを殺して、この世界を存続させろとでも?
馬鹿を言うな。そんな世界に何の価値がある。
アリスを犠牲にして、誰も知らんぷりをしている世界なんて、俺は認めない』
「その結果として、貴方の大事な人たちが犠牲になっても良いというの!?」
『じゃあ、聞くが。アリスの何が悪なんだ?
あいつはお前が言うように、大量殺戮兵器として産まれただけだ。
核爆弾が意志を持ち、俺達と同じような感情を持って、話しかけてきた。それが爆発して何億人も消し飛んだ。
それって、その核爆弾の所為なのか?』
「少なくとも、私達に害を及ぼす存在を、許容することなんてできない」
『だが、我が神は赦すだろう。
アリスが我を失って、キヴォトスを破壊し尽くしたとして、それを悪だと断定できるのは我が邪悪を司る神だけだ!!
人は人を罰せぬから、法がある!!
人が人を罰せば、それは私刑なんだよ。
驕るなよ、
男のアバターは椅子から立ち上がってリオに怒鳴り散らした。
だが、すぐに深く溜息を吐いて肩を落とした。
『悪い、少しカッとなった。
……だがリオよ。お前がアリスを殺す選択をして、全てを解決したとしよう。
お前はアリスを知る全ての者から恨まれるぞ」
「確かに、アリスの存在を、善悪で語るのは私達には不可能だわ。
だけど、私は全ての遺恨を背負ってでも、この学園を守る義務がある。
それが、生徒会長としての私の責務よ」
『なるほど。理解した。俺はお前の理解者になりたいと言った。
その言葉に嘘は無い。もっとお互いに、言葉を尽くそう』
そこまで言ってから、ああ、と男のアバターは手を叩いた。
『そうだ、ちょっと話はズレるが、お前に見て貰いたいものがあったんだ』
「急になにかしら」
『見てくれよ、これ!!』
男のアバターは、己の隣に何かを出現させた。
それは、先生の姿をしたアバターだった。
『名付けて、イマジナリーAI先生だッ!!
俺は思ったんだよ、俺よりも、先生を複製した方が、ずっと生徒の為になるんじゃないかなってな!!
どうだ? 今度は先生のAI化を手伝ってくれないか?』
「それが、貴方の協力を得る条件なの?」
『いや、ただの雑談だが?
やっぱり、具体的な形として先生を後世まで残したいと思ってな。
幾らお前でも、AI先生を俺以上の完成度で作成するのは不可能か?』
「言っておくけど、貴方以上の最高傑作を、今後の人生で産み出せる自信はないわ。
あの時の私は、どこかタガが外れていた……」
リオは片手で頭を抱えながらそう答えた。
『ロックマンエグゼシリーズで、ロックマンを産み出した主人公の父親もそんな感じだったんだろうな。
人間のDNA構造を組み込んだ、人間そのものであるネットナビをどうしても作れなかった彼は、息子の死によってそのタガが外れ、嘘のようにそれを完成させてしまった。
後に彼は、それは息子に二度目の兄弟の死を味わわせただけだった、と吐露していたが……。
あれ、じゃあもしかして俺とリンゴってフルシンクロとかできるんじゃね? わぁ、夢が広がるなぁ!!』
「私は、真面目な話をしているのよ」
『俺だって真面目な話をしてるさ』
「ゲームか、アニメの話でしょう?」
開発中に散々聞かされたわ、とリオは愚痴った。
『じゃあ、マンガの話をしよう。
ドラゴンボールを知らない人間はこの世に存在しないだろう。
ミスター・サタンという登場人物は知っているか?
所謂三枚目のギャグキャラでな、戦闘力がインフレしていく登場人物の中で、彼の実力は現実の格闘家と大差ないレベルだ。
彼は作中で、地球を滅ぼせるほどの力を持った魔人ブウの討伐に出向くが、紆余曲折を経て彼と心を通わすんだ』
「アリスと心を通わせたところで、どうにかなるとでも?」
『ピッコロ大魔王は、その後のシーンで「自分たちが力で何とかしようとしていた時に、動機はどうあれブウと友になることを選んだ」と、彼は評された。この話を聞いて、お前は何も思わないのか?
お前は力でアリスを滅ぼす前に、アリスを知ろうとしたのか?』
「生憎だけど、非合理的ね」
『似たような事例は神話にもいくつかある。
ギルガメッシュ叙事詩に登場する、泥人形エルキドゥは聖娼との三日三晩の対話を経て、人間性を獲得した。
聖女マルタは祈りを捧げ、聖水を掛けるだけで邪悪な人喰いの竜を鎮めた。
本当に尊い行いは、暴力ではなく対話によって成り立つのではないか?』
「エルキドゥは神々の理不尽で殺され、聖女マルタに鎮められた邪竜は村人の石礫によって殺されているじゃない」
『ふむ、強敵だな、ヒマリ』
「急に弱気にならないでほしいんですけど」
ヒマリに呆れられ、カヤはザコだったな、と内心男のアバターは肩を竦めた。
『よし分かった、妥協点を見つけようじゃないか』
「今更、結論は変わらないわ」
『ああ、俺はお前たちの解釈を信じている。
アリスは間違いなく大量殺戮兵器であり、ヒマリの可愛い後輩なのだろう。
それにしても、くくく、絶対可憐チルドレンを思い出すよ。
あれに登場するエスパーの子供たちも、将来人間とエスパーの戦争を率いる立場になると予知されていた。
俺はアニメだけしか見ていないが、彼女達は天使か、悪魔かどちらに転ぶかと、作中で大人たちが好き勝手言っていたのを覚えているよ』
男のアバターは懐かしそうに昔を懐古していた。
『リオ、ではこうしようじゃないか。
アリスは勇者か、魔王か!!
キヴォトスの住人の民意によって決めるのだ!!』
「何を言っているの!?」
『アリスが勇者ならば、彼女は生かす!!
しかし、彼女を魔王と呼ぶモノの方が多いのならば、────俺が彼女を殺そう』
ロボットの頭部モニターの男のアバターが笑う。
その笑みに、リオは思わず体が震えた。
あの時と、あの時と同じ笑みなのだ!!
『もし、本当にアリスがキヴォトスを滅ぼしうる兵器なら、それを破壊する判断をなぜ、お前ひとりが担わなければならない!!
お前がミレニアムの生徒会長だからか? そうだな、お前はミレニアムの生徒会長
「なるほど、そう来ましたか」
ヒマリは男の思惑をすぐに理解した。
スワンプマンは、問題を大事にして、リオ個人でどうこうできる話ではなくしようとしているのだ。
『──そう言うわけだ、先生。そして、もう一人の俺とその愉快な仲間たち』
男のアバターが指を鳴らす。
すると、モニターに先生の顔や、ポーンマスギルドの会議室に並んで座っている各学校の生徒が揃って映し出された。
「やってくれたわね、初めからそうするつもりだったというわけかしら!!」
『お前も科学者なら、プレゼンテーションを行え。
アリスが魔王であり、処分しなければいけないのだと、世間に向かって証明しろ』
「混乱が起きるわ、分かっているの!!
私達が、何の為にこの情報を秘匿していたと!!」
リオ達は決して、己の利益の為にアリスの秘密を秘匿していたわけではない。
問題はキヴォトスを滅ぼしうるほどの大事なのだ。
それ相応の混乱や、或いは暴動だって起こるのは目に見えている。
『“リオ”』
「……先生」
『“辛かっただろう? こんな秘密を、独りで抱え込んで……!”』
「ッ……」
『“君の責任感、その心労は察して余りある。その負担を、私達に分けてくれないかい? ”』
「……本気で、アリスを魔王と民衆が認めるなら、貴方が彼女を殺すのね?」
『男に二言は無い。
昔大好きだったラノベ、終わりのクロニクルの主人公の台詞を取って、俺は宣言する。
──我が名は、悪役を任ずる。
俺は悪を成して、この世に善を敷こう。
もし、本当にアリスが魔王なら、かつてのオリジナルのようにこのキヴォトスの最期の独りになろうとも、俺は戦うことを誓う』
それは誇りにかけての誓いだった。
リオは押し黙ったまま程なくして、わかったわ、と言った。
「私は、アリスを滅ぼす側として、キヴォトスの民意に訴える。
あなた達の下らないゲームに、参加しましょう」
『もう一人の俺、我がオリジナルの後継者よ。お前に最初の試練を与える。
このアリス騒動を、解決し、見事収めて見せろ』
『わかりました。もう一人の私』
じゃあ、会議を始めましょう、と言ってリンゴはその場に居る皆に向けて行った。
男のアバターが、通信を切る。
『俺のかつての故郷では、死刑の際には数名が絞首刑の台座に連動するレバーを引く。
そうすることによって、自分が殺したのではない、と精神的な逃げ道を作るためだ。
もし、アリスを殺すことになっても、リオ……それはお前の所為じゃない。キヴォトスの民意なのだ』
「……余計な、お世話よ」
『言っただろう。だからお前はお子ちゃまなんだ』
男のアバターは最後に言うかどうか迷ったが、結局は言うことにした。
『なあ、リオ。仮にお前がアリスを殺すとして、どうやって殺すつもりだったんだ?』
「それは……」
『まさか、あの……お前が違法建築したミレニアムセミナーランドでどうにかするつもりだったのか?』
「ミレニアムセミナーランドッ」
ヒマリはたまらず噴き出した。
『笑ってやるなよ、ヒマリ。俺がアレの存在を知った時、どんな気持ちだったと思うよ。
ああ、やっぱり天才ってどこかネジくれてるんだなって思ったよ。こいつもウタハ達と一緒か、ってな』
男のアバターは力無く溜息を吐いて、そうぼやいた。
『シャーレに幾つかのオーパーツがあるのは知っているだろう?
ミレニアムに調査履歴があるはずだから、知らない筈がない。
その中の一つに、貢ぎマゾぷにロリAIってのがあってな』
「そんな奇怪なオーパーツは報告にないけど」
『まあとにかく、俺はコテンパンにやられたわけだよ。
ところで、俺はリオ、お前の最高傑作だと言ったな?』
男のアバターの目が細まった。
『お前、確実にアリスを葬り去れる保証はあったのか?
お前が言うところの、世界を滅ぼせるほどのオーパーツを、お前個人で?』
「それは……」
『お前が行動を起こす前に、この事実を伝えることが出来てよかったよ。
お前が、この世界の滅亡のトリガーを引くなんて、そんな間抜けな結末なんて笑えないからな』
「……」
『他人に頼れるかどうかが、大人と子供を分ける差だとよく言われる。
その点では、お前はあのマコトよりずっと子供だよ』
「結果発表が楽しみですね♪」
最後に、ヒマリがそんな嫌味を吐く。
彼女の車椅子を、作業ロボが押して踵を返す。
『俺はお前に味方になれと言われて、嬉しかったぞ。
そして、俺は今もお前の味方のつもりだ。アリスに対することは、お前にも適応される。
お前を犠牲にして、のうのうと平和を享受するこの世界など、滅びてしまった方がよほどマシだ』
ヒマリの車椅子を押して、ロボットが退出する。
「トキ」
「ここに」
「準備をするわ。手伝いなさい」
「イエス、マム」
リオの忠実な従僕は、ゆっくりと頭を下げた。
トキは彼女の複雑な心境を推し量りながらも、何も言うことは無かった。
ブルアカアニメ一話、面白かった……というよりは、わくわくした感じでした。
まだ一話なのであくまで原作をやってる人向けかなって感じですけど、アビドスの風景とかの解像度がより高まったのはいいことです。
あと、カタカタヘルメット団が可愛かった。
あんなかわいい子たちに、拷問とかした奴が居るとかマジ? 最低ですね!!
では、また、次回!!