※この作品はR-18です。

キヴォトスに墜ちた悪魔   作:やーなん

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前回、あとがきが思わぬ反響を呼んでビビりました。
別に嫌がらせとか、酷いコメントとかあったわけではないので、ご心配なく!!
ちょっと色々と重なってたんで、ヘラってただけですので!!
皆さんの高評価や温かいお言葉に、感激してます。
これからも頑張って書いていくので、ご愛読下さると幸いです!!。



秒読み開始

 

 

 

「それでは第一回、いかにしてアリスちゃんを愛でるかを議論しましょう!!」

「趣旨が違うでしょ、バカ!!」

 

 リンゴの議題提起に、コハルが突っ込んだ。

 

「え? でもコハルちゃん。アリスちゃんは可愛いよ?」

「そ、それがなによ……」

「可愛いは、正義でしょうがぁあああ!!

 つまり、アリスちゃん=ジャスティス!! アリスちゃんを実現するのが正義実現委員会の理念でしょう、違うの!?」

「違うわよ!! いい加減にしなさいよ、あんた!!」

 

 突如キレるリンゴに、コハルも怒鳴り返す。

 

「つまり、ギルドの方針は、アリスを生かすってことで良いのね?」

 

 ヒナがリンゴの主張を噛み砕いてそう尋ねた。

 

「いえ、ギルドは中立です。そこは間違えてはいけません」

「急に真面目にならないでくださいよ……」

 

 真顔でそう答えるリンゴに、アコが半眼になった。

 

「じゃあ、仮にアリスという子を処分すると決まった場合、我々はそれを黙って見ている、ということか?」

「そんなのいけないです!!

 彼女はミレニアムの生徒さんなんでしょう!? どうにかならないんでしょうか!!」

 

 アズサの言葉に、ヒフミが反応して声を荒げた。

 

「……まず、私がリオさんなら、学園からアリスちゃんを排除します。そしてミレニアムの意見を統一させるでしょうね。

 彼女を監視を付けながら世論を煽り、後は臨機応変でしょうか」

「まあ、会長ならそうするだろうね」

 

 ウタハはアリスのスペック等の調査結果などを各人に共有しながら、リンゴの推察を肯定した。

 

「技術者として、或いはミレニアムの生徒として、アリスについて教えてくれないかしら?」

 

 ヒナがウタハに尋ねる。

 

「技術者としては、正直アリスが指揮官機というのは納得だね。

 ハッキリ言って、兵器と言うのは特化した方が強んだ。

 人型は腕が二つしかないが、戦車なら積載量が許す限り武装を積める。

 アリスそのものに、世界を滅ぼす力は無いと推測される。勿論、希望的観測だけどね」

「つまり、実行する為の兵隊が居ると言うことですね」

「人型なのは交渉役等を担う為に親しみやすい外見なのかもしれない、と言うのは流石に非現実的な思考か。単なるどんな地形にも対応できる走破性の確保の為だろう。

 人型のロボットというのはそれだけでロマンなのだが……アリスを作った古代文明もそれが分かる連中だったのかもしれないね」

「リオ会長の物言いからすれば、最上位の統括ユニットであるような言い方でしたが……。

 彼女そのものが、兵隊の攻撃目標を伝えるビーコン的な役割があると言うことでしょうか」

 

 アコはウタハの推論を交えたアリスのスペックを確認して、そのように判断をした。

 

「うむ、大事なサーバーを背負って戦うバカは居ないだろう。

 尤も、それは我々の常識に沿った話だがね。

 古代文明はアリスにあらゆる権限を乗せて、最前線で兵隊と共に戦うという運用に合理性を見出したのかもしれない」

「その辺りを議論する意味はないかもね」

 

 ヒナが溜息を吐く。

 そう、全ては推論だ。しかも、誰もが理解できないオーパーツの。

 

「……あの、思ったんですけど」

「なによ。次変なことを言ったらぶつわよ」

「え? じゃあぶって!! そっちから肉体的接触をしてくれるの!!」

「いちいち言い方が気持ち悪いのよ!!」

「えへえへ、コハルちゃんから向けられる全部の感情がご褒美なんだよ……」

「……」

「えーと、何を言おうとしたんでしたっけ!!」

 

 コハルに冷たい表情で睨まれ、リンゴは慌てて言った。

 

「ああ、そうでした!!

 思ったんですけど、本当に世界の滅亡にアリスちゃんが必要なんでしょうか?」

「どういうことかな?」

「あ、言葉が足りませんでしたね。

 つまり、今のアリスちゃんの人格は、つい最近になって培われたものですよね?

 それって、その何とかの王女って兵器に必要な機能なんでしょうか?」

 

 リンゴの発言に、ウタハ達エンジニア部の面々は顔を見合わせる。

 

「要するに、機能と人格は別、と言いたいのかな?」

「だって、今の人格は兵器として支障をきたすじゃありませんか。

 兵器としてアリスちゃんの今の人格は、必要ないんじゃないかなって……。

 あ、素人意見ですよね、出しゃばってすみません……」

「いや、案外いい案かもしれないね」

 

 ウタハはリンゴの意見を支持した。

 

「我々が認識しているアリスとは、今の人格のみだ。

 断じて、兵器としての彼女ではない」

「なら、処分したいならすればいいじゃないんですか?

 ただし、アリスちゃんの今の人格をなんかこう、いい感じに別の場所に一時的に移動したりしてとか……機械なら、できるんじゃないんですか?」

「出来る、と言いたいのは山々だが」

「正直、物理的及び電子的アプローチは危険だと思う」

 

 ウタハに続いて、ヒビキが答えた。

 

「アリスの身体は、少なくとも表面的には人間とほぼ変わらない。

 物理的にアクセスするのは不可能。電子的なハッキングも、どんな反応が起きるか分からない」

「……精神ダイブを行い、精神情報を電子的に保存するのは出来ないんですか?」

 

 ハナコがエンジニア達に問うた。

 

「あれはあくまで、精神に侵入する手段だから、実行者に危険が伴う。

 少なくとも私は、おススメできないかな」

「だけど、仮にアリスを生かしたところで、根本的な解決にならないことには変らない。

 私達はリオ会長とは別のアプローチで解決の糸口を探す必要があるわね」

 

 と、ヒビキたちの意見を聞いてそのようにヒナがまとめた。

 

「技術的敷居が高い、というのが現状かしら」

「そうだね。我々もこの件を持ち帰って、他の部活と意見を出し合ってみようと思う」

「ねえ、そこのエロAIみたいに、そのアリスってこの精神をコピーできないの?」

 

 話がまとまりかけたところで、コハルが問うた。

 

「不可能ではない、と思う。

 実例がこうして存在するからね。

 だけど、コハル。君は自分の目の前に、まったく同じ自分が現れて、君はどうしようもないから死んでもらって、こっちをこれから本物として扱うよって言われて、納得できるのかい?」

「ッ!? わ、私は、そんなつもりじゃ……」

「ああ、意地悪な質問だったね。ごめんよ」

 

 自分の発言が、いかに残酷なことか理解したのか、俯いたコハルにウタハは優しく微笑んだ。

 

「そこのとんでもAIが異常なのさ。

 普通、自分と同じ精神を無制限にコピーするなんて、真っ当な精神では耐えられない。

 うーん、これはなんと例えれば良いかな」

『僕らのヒーローアカデミアって漫画に、自分を増殖させる能力を持ったキャラクターが居るな。

 そいつは増殖した自分を見て、自分が増殖された側じゃないかと疑って、挙句に二重人格を発症したりしていたな』

「……つまり、彼の精神性はそれだけ真っ当とはかけ離れているんだ」

 

 生徒達の議論を見守っていた男のアバターが口を出し、ウタハは呆れながらそう締めくくった。

 

『俺は、俺だからな。

 例え俺自身がお前たちのスマホや、この建物のサーバーに存在する電子情報だけが存在を保証するのだとしても、この俺の心がこうして存在する限り、俺は俺であり、人間なのだよ』

 

 男のアバターは、自分が最もリスペクトしているマンガのキャラクターの一人の台詞を真似て、そう言った。

 

「……難しい問題だね。

 人格のみを本人とするのか。体を含めて、人間と表現するべきなのか。複製や本体から移動した人格は、それは当人と言えるのか」

『それを決められるのは、神だけだろう。

 ……はあ、我が主上ならば、人間の身体をアリスに与えることぐらい造作も無いのだろうがな』

「一応聞いておきますけど、キヴォトスでクローンの生成とか、それに記憶を移し替えたりとかは」

 

 リンゴの問いに、ウタハは力無く首を横に振った。

 それが答えだった。

 

「ですよねー。

 とりあえず、そちらはサブプランとして進めるとして」

「本命は、いかにしてアリスちゃんの人間性を世間にアピールするか、ですよね♡」

「はい、私達は中立の立場として、可能な限りを支援したいと思います」

「なら、まずは一番支援しないといけない人たちがいますね」

 

 ええ、とリンゴはハナコに頷いて見せた。

 

「とりあえず、先生に連絡してゲーム開発部の面々を保護しましょう」

 

 二人は確信していた。

 自分がリオなら、まずミレニアム学内で手を打つのは彼女達である、と。

 

「皆さんを保護して、あんなことやこんなことをしましょう!!」

「エッチなのはダメだって言ってるでしょ、死刑!!」

「……コハルちゃん。分かったよ!! コトリさんを処刑するね!!」

「なんで私に流れ弾が来るんです!?」

 

 ずっとモモトークを弄ってエンジニア部の仲間と連絡を取っていたコトリに飛び火し、涙目になる彼女だった。

 

 

 

 §§§

 

 

「げ、ゲーム開発部の面々を停学処置をするですって!?」

 

 セミナーの会議室に、ユウカの悲鳴が轟いた。

 

「ほ、本気ですか、リオ会長!!」

「当然でしょう?

 彼女達はこのミレニアム学内に、今皆に説明した通りの破壊兵器を招き入れたのだから」

「だからって、こんな……!!」

 

 そこまで言ってから、ユウカは反論が思い浮かばなかった。

 ノアやコユキ以外のセミナーのメンバーも、不安そうに彼女を見ている。

 

「……彼女達は、アリスちゃんが古代の兵器だなんて知らなかった筈です」

「苦しい言い訳よ、ユウカ。

 ヴェリタスに依頼して、学籍データの改ざん、違法に在学させるのは十分に処罰に値するわ。

 それともあなたは、同じ手口で学内に侵入してきた産業スパイにも温情を掛けるの?」

「それは、そうなんですけど……」

 

 リオはアリスが兵器云々を除いても、その言い分と正当性は100%彼女の方に分があった。

 アリスの在籍は違法な手段であり、あってはならないことだ。

 

 日々産業スパイに悩まされているミレニアムでは、それを許容することはあってはならない。

 

「勿論、ヴェリタスの面々にもしばらく停学になってもらう。

 当然、そんな手段で部活を存続させたゲーム開発部もね」

「……退学にならないだけ、温情だとは思います」

「そうでしょう?」

「……彼女達には、私の方から通達します」

「わかったわ。なるべく、ミレニアムから遠ざけて頂戴。期限は、あなたに任せるわ」

 

 それを聞いて、ユウカはハッとなった。

 リオはただじっと、彼女を見つめている。

 

「発表は今夜、ポーンマスギルドを通じて行う。

 それまでに、覚悟を決めて」

「わかりました」

「では、次の通達よ。

 試験的に主要な部活動の部費を、これまでのように実績に応じてから、企画書の提出及びセミナー立ち合いのプレゼンテーションにて決めようと思うわ。

 支給する部費の金額の基準は、以下の通りよ」

 

 ユウカは、早朝の会議が早く終わることを願う他なかった。

 

 

 

 一方、その頃。ゲーム開発部の面々はと言うと。

 

 

「やった、命中判定成功!!」

『ダメージ計算を行います』

「うーん、ポーンマスって超便利!!」

 

 モモイ達ゲーム開発部の四人は、シャーレの事務所で遊んでいた。

 

「TRPGは楽しいけど、やっぱり手動は時間が掛かるからね」

「ですが、サイコロを振る瞬間は堪りません!!」

「そこだけは、手動でやりたいよね」

「ユズなんて、この間どうやったら同じ出目が出るようになるか、練習してたもんね」

 

 四人がわいわいと遊んでいる姿を見て、先生は事務机ごしに見守っていた。

 そしてモモトークに送られてきたメッセージを確認し、目を伏せる。賽はもう、投げられたのだ。

 

 先生は、シッテムの箱を起動した。

 

 

『ぶひー、ぶひー』

『ふふふ、大人の雄が、情けない声で鳴くんですねぇ!!』

 

 

 先生は、無言でシッテムの箱の電源ボタンを押して、スリープモードにした。

 そのまま十秒ほど現実逃避したあと、もう一度シッテムの箱を起動した。

 

『せ、先生、こ、これは、違うんです!!』

『はあはあ、私めは卑しいブタでございます、アロナ様』

「“邪魔しちゃったかな……”」

『こ、これは、この人が私の事を豚呼ばわりしたから、お仕置きで!!』

『ぶひー、ぶひー、アロナちゃん様の奴隷にお情けを~~──ぐげ!?』

 

 ふざけた倒してる男のアバターを、アロナは蹴飛ばして証拠隠滅を完了した。男のアバターは星になったのだ。

 

『まったく、あんたもノリノリだったじゃんか』

「“あまり、アロナに変なことを教えないでくれないか”」

『例えば、先生。あんたのパソコンの検索履歴とかか?』

 

 割とすぐに画面内に戻ってきた男のアバターがそんなことを言うと、先生は目を逸らして下手な口笛を吹いた。

 

「“リオと面談がしたいんだ。セッティングをお願いしてもいいかい”」

『はい、ミレニアムサイエンススクールに連絡をしておきます』

『今頃あいつは、自分の学校で先手を打ってる頃かね』

 

 アロナが先生の要請に応じ、勉強机を並べてそこに寝そべっている男のアバターがそうぼやいた。

 

『こら、お行儀が悪いですよ!!』

「“スワンプマン、君から見てリオはどう言う生徒かな”」

『ミヤコ達と変わらん。

 力を持ったバカなお子ちゃまだよ』

 

 男のアバターはそう彼女を評した。

 

「“でも、私は彼女の事を特別気に掛けているように思えるよ”」

『そりゃあな。俺の制作者の一人でもあるし、オリジナルの最期の心残りの一つだった。

 ……そんで、こうしてあいつのやろうとしていることを知ると、余計に他人には思えなくてな』

「“それは?”」

『あいつは、独りで戦おうとしていた。誰からの理解をされなくても。

 オリジナルも、あのトカゲ野郎と最期まで独りで戦った。

 まあ、俺の話は面白くも無いから良いとして、だ』

 

 魔王。

 先生は、キヴォトスに爪痕を残したあの本物の悪の権化を思い返す。

 

 あれと、アリスを同列に扱っているのだ、リオは。

 

「“私は、聞かせてほしいよ”」

『……言っただろ、俺の故郷じゃ、魔王は神の使徒。

 あいつらに総人口の九割以上殺された頃になると、みんなはやけっぱちになって集団自殺とか始めるんだよ。

 それで、神の怒りを買ったのは、俺達が抵抗するからだと、そんな風に言い出したりし始めた』

 

 相変わらず、彼の話は壮絶に尽きた。

 

『俺には理解できなかった。あれを神の代弁者だと、認めることがな。

 結局、最期に俺について来たのはここの生徒みたいなガキどもばかりだった。

 だが、リオにはそんなガキすら居ないんだ』

「“そう、なんだね”」

『先生、リオはアリスが魔王だと言ったな。

 アリスは産まれながら、魔王としての役割を与えられたのだとしたら、──じゃあリオはなんだ?

 皆に理解されず、目の前が崖になるまで突き進み、自分が間違えるまで後ろ指刺されるような、そんな存在なのか?

 それがアイツの役割か? 何の意味もない悪役として、あいつは産まれたって言うのか!!』

 

 男のアバターの怒りが、シッテムの箱の画面に満ちる。

 横に居るアロナが怯えるほど、彼は激怒していた。

 

『俺は前々から思っていた。キヴォトスの生徒には各々役割があるのだ、と。

 それが悪いことだとは思ってない、だが、それを誰もが望んでいるわけではない。思わぬ役目に、振り回される奴もいる。

 もし、この世界がリオを悪役として、笑い者にするというのなら、──ああ、そんな世界、俺が滅ぼしてやるよ!!

 何もかも滅茶苦茶にしてやりたい、そう思うのはおかしい事か、先生!?』

「“気持ちは理解できるよ。でも、他の生徒を巻き込んじゃいけないよ”」

『……ああ、そうだな。肉体がなくなってから、俺は俺の歯止めが利かない時がある。あんたが居てくれて助かる』

「“安心してよ。君は最初からそうだったから”」

 

 先生にそう言われると、男のアバターは拗ねるように画面外へと出て行った。

 

『私がしっかり手綱を握ってますから、安心してください!!

 今のところ、全スワンプマンは生徒さんたちに意図しない動作は行っていません!!』

「“ありがとう、アロナ”」

『私が、先生の秘書ですから!!』

 

 ドヤ顔を画面外に向けて、アロナはえっへんと胸を張った。

 

「そうそう、皆さん」

 

 先生がシッテムの箱をスリープモードにした、その時であった。

 

「どうしたの、ゲームマスター」

 

 モモイが、言った。

 いつの間にか、同じ席に座っていた蛍光灯を頭上に浮かべた生徒を。

 それ自体は、不思議な事ではない。

 彼女は、ゲーム開発部の面々と時折遊んでいるからだ。

 

「実はですねぇ、キヴォトスの外の超世界級ゲームフェスのチラシを手に入れたんです!!」

「わぁ、ゲームフェス!!」

「見せて見せて!!」

 

 ミドリとモモイが、少女の取り出したチラシに群がった。

 

「全世界最大級のゲームフェス、“メアリース・グランド・ゲームフェスタ”!!

 メインイベントは、数多の世界から神に献上されるべく吟味され、選出される文字通り最高の神ゲーの祭典!!

 皆さんも、ここはひとつ、参加してはどうですか?」

「え、参加できるの!?」

「私が伝手で、用紙も貰ってきました。これを書いて、先生に連邦生徒会に提出して貰えば、参加できますよ」

 

 ユズはおずおず、とその参加用紙を受け取った。

 

「私はどちらかと言うと遊ぶ方向で参加したいけど、キヴォトスの外のイベントじゃなぁ」

「でも、神ゲーの祭典って、ワクワクします!!」

「私達も参加できるなら、やってみたいよね!!」

 

 どちらかと言うと遊ぶ側になりたいミドリに対して、アリスとモモイは乗り気だった。

 

「もし、神に献上されるに値する神ゲーに選ばれたら、どんな願いも叶えて貰えるそうですよ」

 

 蛍光灯の少女は、そう言って先生を見た。

 先生はずっと、口を横一文字に結んでいた。

 

「はぁ、私達のゲームが選ばれるわけないじゃない」

「わかってないなぁ、ミドリ。こういうのは参加するのに意味があるんだよ!! やってみようよ!!」

「そ、そうだね……。どうやら部門別の賞とかもあるみたいだし」

「締め切りは、一か月後みたいですよ、早く準備をしましょう!!」

 

 モモイとアリスの後押しを受けて、ユズは参加用紙に書き込みをした。

 

「先生、これの提出をお願いできますか?」

「“……うん、わかったよ。チラシを見せて貰ってもいいかな?”」

「はい、どうぞ」

 

 ユズは素直に先生にゲームフェスのチラシを渡した。

 先生は、チラシの内容を眼を通し、そこにあったQRコードをシッテムの箱で読み取った。

 

『お、我が主上、メアリース様の主催するゲームフェスのチラシか。

 俺も機会が有れば行ってみたかったなぁ』

『公式サイトの情報をダウンロードします!!』

 

 シッテムの箱の中の二人が、そんなことを言っていると、公式サイトの情報がダウンロードできた。

 

 どんな願いを叶えて貰える、と言うのは、総合部門の優勝だけの話のようだった。

 つまり、ゲーム開発部の面々には実質不可能な話だった。

 

『先生もこの間、あの林檎を食ったろ?

 それと似たような催しは、幾つもあってな。その優勝者には絶大な権威が与えられるんだ。

 神は、常に己の創造物から生まれる最高傑作を求めているんだ』

「“これって、彼女達が参加しても良いモノなのかな?”」

『良いんじゃね? メアリース様はその辺の懐は広いし。

 かの御方の創造物じゃないこいつらが総合優勝でもしてみせたら痛快じゃないか!!』

 

 それって顔に泥を塗る行為なんじゃ、と思わなくもない先生だった。

 でも、生徒達がやりたいことなら、と彼は最終的にそう判断した。総合優勝なんて、実際不可能なのだし。

 

「“じゃあ、提出しておくよ”」

 

 先生は書類を写真に収めて、それを連邦生徒会の当該部署へ送信した。

 

『メアリース様なら、アリスに人間の身体を与えるぐらい訳ないんだがなぁ』

 

 シッテムの箱の中に、現実と同じチラシを眺めている男のアバターがそうぼやいた。

 

「“人間の、身体か”」

 

 先生は、思うのだ。

 アリスはどう言い繕っても、他の生徒とは違う。

 モモイ達がどれほど老いても、アリスはずっと同じ姿のままだ。

 

 それはアリスにとって、幸せなのだろうか?

 友人たちが大人になって、独りだけ時間に取り残されるのは。

 

「“みんな!!”」

「うわ、どうしたの先生!!」

「“どうせなら、総合優勝を目指そう!!”」

「……うん、そうだよね!! やるからには、最優秀賞が良いよね!!」

 

 モモイは満面の笑顔でそう応じた。

 

『まあ、キヴォトスのあらゆるリソースをつぎ込んで、上位百位に食い込めばいい方だとは思うがな』

「“ああ、やっぱりそんなレベルなんだ”」

『一つの世界が、ゲーム開発に全てを捧げてるなんてところも参加するんだ。

 まあ、思い出作りには良いんじゃないか』

 

 まさに、神に献上するにふさわしい、神ゲーの祭典。

 お祭りの準備に一年を要するところもある。神の最高傑作という称号は、それ程までの価値があるのだろう。

 

「どんなジャンルにしましょう!!」

「やっぱり、王道のRPGだよ!!」

「でも、王道なら競合は多そうだよ」

「やるなら、勝ちに行きたいね」

 

 彼女達の姿を見ていると、先生は思わずほおが緩んだ。

 

 そして、このお祭りがこれから彼女達に訪れる運命に対する、慰めになることを願うほかなかった。

 

 

 

 

 

 

 





アニメ二話、セリカがかわいくて良かったです!!

一方で、生徒たちは先生のバフか何かで戦車を小銃で何とかするみたいなのは、ゲーム的な描写だと分かったのが一番の収穫でしょうか。
個人的に柴大将がもっと渋い声だとは思ってましたがww
あの通行人の多種多様さなら、キヴォトスでアップルマンも違和感なく受け入れられたに違いないでしょうねww

さて、ゲーム開発部のこれからは、アリスの行く末は如何に!?

ではまた、次回!!

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