どれくらい気絶していたんだろう……目が覚めると、私は男達に犯された建物から先に広がっている町の、人通りの少ない路地裏で寝かされていた。
「ん……誰か運んでくれたのかな……?」
自分の姿を確認してみると、精液でベッタリしていた私の身体も大部分が拭き取られていて、髪も水洗いされたのかシットリと湿気が残っている。
とはいえ、それでもタイツやショーツは破られたままだったし、服に染み付いた匂いは残っているけど……。
「さて、ひとまずはエージェントさん達と合流を――って、何この死体の山は?」
何か妙に町が静かだと思っていたけど、私が気絶してた間に一体何が……だいたいがヘッドショットで一撃死しているし、中には頭自体が弾け飛んだやつもある。
そんな死屍累々な町を警戒しながら進んでいると、突然そこへ私の携帯端末が着信音を鳴らした。
「知らない番号だな……もしもし、誰?」
『どうやら無事だったみたいだな、メーズィさん。俺は……そうだな、"ギーク"とでも呼んでくれ。君より先にレイナードさんの手伝いで潜入してたB.S.A.A.の隊員なんだけれど、どうも厄介な状況になってきている』
「厄介な状況?まさか、アルファチームとエージェントの合流が失敗したとか?」
『いや、もっと悪い……何の仕業か分からないけど、アルファが全滅した。その"何か"はエージェントと現地で先に合流していたシェバが倒してくれたみたいだけど……2人は今、アーヴィングを追って鉱山に向かっている状態だ』
「……で、アンタはビビって隠れてたって訳。まぁ、それなら私も他人の事は言えないんだけどさ」
そう皮肉を返してやると、相手は酷く落ち込んだ様子の溜め息を電話越しに吐いてきた。
『ごめん……それに、レイナードさんも町の連中に殺された。……ちょうど、俺がアルファと連絡を取ろうとしていた頃の最中だった。アルファを全滅させた黒いバケモノが出てきたのも、それとほぼドンピシャだ』
「それは災難だったね……で、これからどうするの?」
『とりあえず、俺は君と合流するつもりだ。既にデルタチームもカークさんも支援に動いている。俺達も、少しでも皆の為に援護へ向かわないと』
「そうだね……ギーク、何処で合流する?」
『俺はアルファとの合流予定だった地点に潜んでいる。座標データと安全なルートを送るから、メーズィさんはそれを辿ってこっちに来てくれ』
「はぁ……分かった。せいぜい、私が到着する前にバックレたりしないでよ?」
『早々そんな事はしないよ。……俺も、死ぬなら美人の膝の上って決めてるんだ』
その言葉を最後にギークは私との通話を切った。
それにしてもコレは、とんだ任務になりそうだね……たった1人の協力者も、何というか頼り無さげって感じがするし。
◇◇◇
それから彼の示したルート通りに進んで取引現場へ到着すると、そこには黒い粘液に塗れたアルファチームの遺体がアチコチに倒れていた。
「うわ……何て酷い有様……」
「……だろう?とても現実に起こった事だとは、アレが倒された今でも思えない」
すると、私の後ろから先程の電話と同じ声が聞こえてくる。振り返ると、そこには灰色のパーカーに軍用ジャケットを羽織ったフツメンな黒人男性が立っていた。彼は悲しそうな表情をしながら私の隣を通り抜け、彼らに向かって十字を切っている。
「アンタが電話を掛けてきたギークって奴?」
「うん、その通りだ。元々はアルファと君らの橋渡し役を務める予定だったのが、まさかこんな事になるなんて……」
「そう落ち込まないで。さっき私を路地裏に運んでくれたのも、アンタなんでしょう?」
「えっ……どうして、それを?」
「そんなの、お人好しそうなアンタの顔から一目瞭然だよ。電話を掛けてきた時も、私が見える所から見守っててくれたんだよね?」
「そこまで見抜かれてたか……というか、君の方は大丈夫なのか?さっき奴らに、その……」
「それくらい平気だよ。いつかは通る道だったんだし……優しいんだね」
「俺は仲間を見捨てたんだ……優しいもんか」
そうかな?優しい性格だというのは、亡くなった人達に十字を切るのを見ていたら誰でも気付くとは思うんだけど。それでも、彼が電話をしてくれなかったら、近くに誰も居ないような状況からして孤立無援だったかもしれないのは確かだ。
「さて……無事に合流は果たせた訳なんだし、早く先に行ったエージェント達のバックアップに向かうとしますか」
「ああ、それが一番――待って、カークさんから緊急通信が入ってる!?」
すぐにギークが携帯端末のスピーカーをONにすると、そこからはヘリのパイロットがヤバそうな声を上げているのが聞こえてくる。
『エンジン出力低下!コントロールも効かない!墜落する!メイデイ!メイデイ!』
それを最後に爆発するような音が響き、ヘリからの通信が途絶えた。
「そんな、カークさん……」
「……行こう。このままじゃエージェント達どころか、私達もジリ貧になる」
私は携帯を持って項垂れるギークの肩を叩き、すぐ彼と共に取引現場を後にしていった。
早くもオリキャラ&今回の被害者枠(オイ)でございます。