ふと目が覚めると私はギークに膝枕されていて、クリスとシェバの乗るエアボートで行動を共にしていた。
「おっと、どうやら目が覚めたな。随分グッスリと眠っていたみたいだが……こっちの乱暴な運転で起こしてしまったか?」
「クリス、とりあえず冗談は後にして。この子は……その、私の同僚なんだから」
「そういえば、さっき会った時にジョッシュさんも言ってましたね……」
すると、そう言ったギークに対してシェバが思い出したといった様子で私達に振り返ってくる。
「ところでギーク……ジョッシュが生きているというのは、本当なの?」
「ええ、あくまで可能性の1つではありますが……あの巨人が倒れていた場所で唯一、彼だけ死体が見つからなかったんです」
ギークの言葉にシェバはホッと一息つくも、クリスは何処か諦めた様子で首を横に振っていた。
「確かに、そうあって欲しいと願うが……あんな馬鹿デカい奴だったんだ。もしかしたら――」
「そういうのは心配してる人の前では止めようよ、クリス。もし仮にそうだったとしても、今の私達は私達の目的を果たす為に独自で動いているんだから……ね?」
「まぁ、それもそうだな……で、お前がメーズィで良かったんだよな?」
「うん、そうだよ。ここまでの経緯はギークから大体聞いてたと思うけど……これからは私達も、貴方達2人をサポートする為に着いていくよ」
「どうせシェバと同じく、止めても聞かないんだろう?なら、そっちの勝手にしてくれていい。俺はアイツを……ジルを、何としてでも探し出すだけだ」
そう言って、何故かクリスは私から目を逸らすように視線をボートの正面や左右に向けだす。
やっぱり、まだクリスはウェスカーを倒す為に身を投げたジルの事を――
「えっと、その……メーズィさん?そろそろ自分の今の格好を何とかしてもらえると、俺とクリスさんとしても色々な意味で助かるんだが……」
「ギーク?それって、どういう……あ〜、そういうね……」
いけないいけない……前世でバイオファンだった私とした事が、今の今まで自分の姿がヤバいのに気付かなかったなんて!さっきキペペオに襲われたせいで、タイツとショーツ以外は無事だったUMP9な衣装は、今やシャツの胸元もスカートもボロボロになっちゃってるじゃん!どうりでスースーして涼しいな〜って思った訳だよ!
「クリスもギークも、しばらく私を見ないで!あ〜もう、こんなんじゃお嫁さんに行けないよ〜……」
「えっと、その……メーズィ?気落ちしないで、ね?」
とうとう同期のシェバからも、ギークやジョッシュみたいな生暖かい目を向けられたんですけど……いや本当、コレますます「ごめん、実は私プラーガに寄生されてます」って言いにくくなっちゃったよ……。
◇◇◇
それから私達は、ギークの発案で彼の故郷であるンディパヤ族の集落の1つへと向かう事になった。
運良くクリス達の方としても、アーヴィングが逃げた先に進むには必要な仕掛けがあるという事で賛成してくれたのは良かったけどね……。
「それで故郷の集落に行こうって訳ね……ギーク、貴方って意外と女心が分かる所もあるのね」
「まぁ、それもそうなんですが……さっきの飛行型プラーガ、あれを見たら妙な胸騒ぎがして……」
「その予想、当たっていない事を願いたいけれど……」
そうシェバに憂鬱そうな顔を見せたギークを見て、私は胸元や股間を隠しながら小声でクリスに尋ねる。
「いきなりで悪いけど……クリス、この辺りで有名な企業って何かあったりする?」
「また随分と突然だな……確か、トライセルという製薬会社が支社を構えていると聞いた事はあったが……」
「それ、多分ビンゴだよ。このキジュジュ自治区のプラーガ騒ぎ、たかがアーヴィング個人と数人だけで引き起こせる生物災害(バイオハザード)じゃないもん」
「メーズィ、それはまさか……奴らが関わっていると?」
「私だって信じたくは無いけど……ケネディ・レポートにもあったでしょ?あそこのプラーガ騒ぎだって、元を辿れば予防接種をタネに村人に植え付けたって情報があるんだから……ね?」
「それが当たっていなければ良いんだが……用心に越した事は無いな」
そんな会話をしている内にエアボートはギークの生まれ故郷である集落近くに到着し、私達は舟を浜辺に停めてアシで鬱蒼とした道を歩いていく。
「おかしいな……俺が知っていた頃だと、誰かが来たら皆して浜辺まで来て歓迎したりって感じだったんだけど……」
「注意して進みましょう。さっきのメーズィみたいに、いつ何処から敵が襲ってきても不思議じゃないわ」
「ぐっ……それは、一刻も早く忘れてもらえると助かります……」
まさか、シェバさんやギークさんにもキペペオに嬲られて汚い喘ぎ声を出てた所を見られてたなんてね……アイツら、次から見かけたら真っ先に撃ち落としてやる。
「よし……皆、どうやら到着したみたいだ。ギーク、ここがお前の集落で合っているんだな?」
「ええ、でも……皆は一体――うわっ!?」
すると、その瞬間にギークの目の前へ木の槍が突き刺さる。そして、集落のアチコチから先住民の格好をした男達が飛び出してきて、訳の分からない言葉を喚きながら槍やトゲの付いた盾を向けてきた。
「待ってくれ、皆!この人達は悪い人じゃ――」
「下がれ、ギーク!コイツらは、もう……!」
そう叫んで腕を前に出して止めるクリスに、ギークは涙目で訴えてくる。確かに止めたい気持ちは分かるけど、本当に集落もプラーガの手に落ちていたなんて……!
……だけど、ギークの方は現実を受け止めきれていないみたいだ。
「クリスさん!止めてください!あの人達も、きっと色々あったから怖がってるだけで――」
「アイツらの目を見ろ!お前は、今まで一度だって彼らからあんな目を向けられた事があったのか!?」
「うぅ……!」
「割り切るしかないんだ、もう!今の彼らはギークが知っていた集落の人じゃない!プラーガに寄生された、操り人形なんだ!」
クリスは戦意を失いかけたギークに声を荒らげつつ、シェバと共に冷静にハンドガンでマジニと化してしまった集落の人達の頭を撃ち抜いていく。
私も、それに続いて彼らをサポートするべく足を撃って軽快な身動きを封じていくが……ようやく全滅かといった、そんな中で1人のマジニがギークの前に飛び降りてきた。
「あ、ぁ……お、親父……?」
銃を構えたまま震えるギークは、そう小さく呟いた。
しかし、そのマジニはギークの事を単なる敵としか見ておらず、両手で彼の首を絞め始める。
見ると、既に相手の口からはプラーガの触手が……!
「あ、が……!な、んで……!?」
「¥%□$*♠○――ッ!?」
でも、この距離じゃギークにも流れ弾が……!
そう思っていた瞬間、振り返ったクリスさんが素早くパァン!とマジニの側頭部を撃ち抜いた。
「あ、ああ……そんな、親父……!」
そして、力無く倒れていくマジニの死体をギークは抱きとめようとしたが、一瞬で骨も残さずドロドロと溶けていってしまった事に呆然としてしまう。
そんな彼の悲痛な姿に、しばらく私達は何の言葉もかけてやる事が出来なかった……。
◇◇◇
その後、10分程してクリスが周辺を警戒する中……ようやくギークは泣くのを止めて、自分の家だったであろう木造の建物から姿を現した。
「ギーク、さっきは本当にすまなかった……お前の家族や知り合いを手にかける事になってしまうとは……」
「いえ、いいんです……そんな事よりもクリスさん、今は一刻も早く此処から出発しましょう」
「辛い気持ちは痛い程に分かるわ。でも、まだ気持ちを落ち着けてからでも……」
そう言ってシェバがギークを止めようとすると、彼は今までにないくらいの憎しみが籠った眼差しをしながら振り返ってくる。
「ここの皆を……親父を、あんな寄生虫に殺されたんです。俺は、こんな事をした奴を……絶対に、許さない」
それからギークは無言でエアボートの準備に取り掛かったものの……そんなあまりの気迫に私も含めてクリスやシェバも、今の彼の心境を鑑みて「止めろ」や「無理をするな」といった言葉すら掛けられないでいた。
◇◇◇
気まずい空気が流れながらも、それから私達は順調に仕掛けを解く為の道具を集めていった。
しかし、そんな中でもギークの故郷と同じようにプラーガに寄生されたンディパヤ族の人達は襲撃してきて、それを撃退する度に彼の表情は一層と暗く恐ろしいものになっていくように見えた。
――そんな中、ふと私は湿原の中で1つの難破した舟を発見する。
「ちょっと待って!ひょっとしたら、あそこにも仕掛け用の道具が隠されてるかも!」
「メーズィ、あんな小さなボートにか?いや、しかし……」
そう言ってクリスがシェバとギークへ顔を向ける、2人も私の意見に賛成した様子を見せてきた。
「行ってみましょう、クリス。ここからなら大きな寄り道にはならないわ」
「ええ、シェバさんの言う通りです。どんな状況であれ、調べられる場所は調べ尽くしてから向かうべきだ……!」
クリスは「やれやれ」といった様子でエアボートの操縦棍を難破舟へと向ける。
「ところで……メーズィさん、服はそれで大丈夫だったか?それくらいしか合うサイズが無かったとはいえ……」
「あっ、それなら全然平気だよ!それよりも、ギークも集落の人達があんな事になっちゃって大変だったのに……ありがとう」
そうギークに礼を言いながら、私は今の自分の服装を見た。
ワッペンの付いた長袖やチェック柄のスカート、そして太ももまであるニーソックス……これらの服を着ていると、何だか今度は416になったような気分だね。まぁ……髪型は相変わらずツインテールにしているから、実際はUMP9が416のコスプレをしているような感じだけど。
そうこうしている内にエアボートは難破舟に到着し、それにクリスとギークが飛び乗って舟の上を漁り始める。すると――舟の端の方でギークがビックリした声を上げてきた。
「おい、クリスさん!こいつを見てくれ!」
「これはまさか、RPG-7か!いやはや、仕掛けの道具は見つからなかったが……とんでもない収穫だな」
そういえば、此処にあったのは隠し武器だったっけ……ちなみに、RPG-7を背負ってボートに戻ってきたクリスを見て、シェバが目を丸くして「嘘でしょ?」と驚いたのは少し面白かったよ。
◇◇◇
それからも探索を続けて全ての仕掛け用アイテムを集め終えた私達は、いよいよ封じられた大扉のある小島へと戻ってきた。
「こう石版を嵌めてやれば……よし、開いた!」
ギークが全ての石版を大扉の中央部に嵌め込むと、大扉は唸るような音を立てながらゆっくり内側に開いていく。
すると、それと同時にボウガンの矢が私の頬を掠めた。すぐさま私達はバラバラに大扉の先にある樽や木箱へ飛び込み、その後ろから先住民のマジニ達がワンサカと待ち構えていたのを確認する。
「全員、物陰に隠れろ!開けた場所にいたら狙われるぞ!」
「どうやら、余程アーヴィングは私達を通したくないみたいね!」
「アイツら、まさかボウガンまで使えるなんて……でも、こっちには狙撃手がいるよ!ギーク!」
そう叫んでやるとすぐさまギークは私の意思を理解し、背負っていたスナイパーライフルを取り出した。
「任せろ!メーズィさん、周囲のカバーを!」
「OK!彼らをプラーガから解放してやって!」
「俺達もやるぞ、シェバ!俺はショットガンで突撃する!」
「後ろはギークと共に任せて!ここを抜ければ、きっとアーヴィングの元へ辿り着けるハズよ!」
そして、それを見たクリス達も自分らの武器を取り出し、私達は囲われた要塞みたいな集落で応戦を開始するのであった。
そんな訳でクソシリアス回でした。
私の趣味で主人公じゃないキャラなのにドチャクソ曇らせてます。