「――で?俺達が化け物と死闘を繰り広げていた間、2人はシッポリとセックスに興じていたと……」
「流石にウロボロスウィルスの効果とはいえ……2人共、やり過ぎじゃない?」
それから精液や愛液……それに黒い粘液塗れとなっていた私達は、部屋から出てきたクリスとシェバに大目玉を食らい、今はギーク共々正座させられて説教を受けていた。
「しかし、まさかメーズィがエクセラの作り上げたウィルスに適応していたとはな……これはもしかしたら、もしかするかもしれんぞ」
「でも……今は彼女の企みを阻止しないといけないわね。何が目的かは知らないけど、あんなものをミサイルで世界中に放つんだとしたら、もう時間に余裕は無いわ!」
そう2人で勝手に世界の危機な話を進めていく中、私とギークは両手を挙げて足の限界を知らせる。
「あの〜……お2人さん?そろそろ私達、足が痺れてきてキツいんですけれど……」
「ああ、すまん……2人共、もう楽にして良いぞ」
「というか……そもそも、そんなヤバい状況だって言うんなら説教は後にしてもらいたかったです……結局、メーズィさんが原因な訳なんですし……」
おぅ、こんな状況でも私を売るかギーク君よぉ?
あんなにズッポシアンアン楽しんだ仲だと言うのに……♥じゃなくて、それは置いとくとして!
とりあえず私達やクリス達の聞いたエクセラの話から掻い摘んでまとめると、あの女はクリスの昔の知り合いと組んで、ウロボロスウィルスで何かやらかそうとしているって事だけは明白だね。
もし、そうなれば……世界の明日は地獄になってしまうかもしれない。
「とにかく、奴ら"賢者の石"だの進化や選別だの偉そうな事は言っているが、やっている事はテロリスト以下だ。どんな形にせよ、ウロボロスによる汚染が広がれば大変な事になるぞ!」
「そうねクリス、急いで止めなくちゃ!ワクチンや治療方法は今の状況じゃ間に合わないわ!」
それにしてもクリスさんとシェバさんは凄いな……。こんなとんでもない状況であっても、パニック1つ起こさないで自分達のやるべき事を素早く見つけられるんだもん。
それに比べて私達はウィルスの力に踊らされて、何て醜態を晒しちゃってるんだろう……。
「……ん?どうした、2人共?」
「いえ、何でも……はい」
「ちょっと、精神的に立ち直れてないだけなんで……」
どうやらギーク君も、そこは私と同じように考えていたみたいだ。いや、本当に私が暴走なんてしなければ巻き込まずに済んだのにね……ごめんなさい。
◇◇◇
私達は再び奥への扉が開いた研究施設を進んでクリス達がエクセラを見た部屋に向かうも、そこからは既に彼女は逃げてしまった後だった。
もぬけの殻となった部屋に置いてあったウロボロスウィルスの説明書を、ギークは乱雑に読み捨てながら悪態をつく。
「チッ!逃げ足の早い……!」
「だが、まだそれほど遠くには行ってないハズだ!」
クリスの言う通り、その先では通路がまだまだ続いている事から、それを使って逃げたのだろうと予想する事は出来る。
「急いで追いましょう!」
その通路を駆け抜けて吹きさらしの足場に出ると、またしても武装マジニ達が向こうの足場から銃座などを使って攻撃してきた。
「くっ……しつこいわね!あの女狐、コイツらの調教はシッカリしてるらしいわ!」
「猛獣使いのようにムチを使って〜っていう感じで?シェバ、それ笑えるジョークだね!」
軽く笑いつつ私はギークやシェバが狙撃出来るよう、クリスと共に銃撃してくるマジニ達の足や頭を撃って怯ませていく。
そうして私達がマジニ達を殲滅して足場を進んでいくと、あの私にウロボロスウィルスを感染させた虫の怪物"リーパー"の繭が天井からブラ下がっているのが見えた。
「うっ!またアイツの繭があるぞ!だが、こんな時に引き返してる余裕は……!」
「クリスさん、それなら問題ない!実はさっきの部屋で感知式爆弾を拾ってきたんだ!きっとエクセラの◇○□$が確実に逃げる用で隠してた奴だ!」
わ〜お、そりゃ最高だね!
……でもギーク君、ピー音を乱発するのは止めないかい?どれだけエクセラが嫌いかなんては分からなくもないけど、その女性への罵詈雑言は世間から白い目で見られるからね?
――とまぁ、そんなギーク君の感知式爆弾が功を奏して、繭から現れたリーパーを私達は以前より楽に撃破する事が出来たのであった。
◇◇◇
それからもバシバシ敵を倒しながら足場を突き進んでいった先で、今度は機材の制御室を小綺麗なソファで簡素な客間として仕上げた、そんなような部屋に辿り着く。
「連中の守りの固さからして、どうやらエクセラはこの部屋を通り抜けていったようだな……」
「そうね……念の為、彼女が何処に向かったのかを知る為にも調べていきましょう」
すると、その部屋に残されていた書類から私達はエクセラがウロボロスウィルスの開発をしていただけでなく、情報漏洩の対策として自らの研究スタッフをも始末していた事を知った。
これにはクリス達が絶句したのは勿論、それによってギークの怒りは有頂天状態だ。
「あのクソ女……自分の目的の為なら、仲間だろうと見境無しかよ……!」
「うん、全くだよ……!」
私も、さっきのクリスみたいな事を言うつもりじゃないけど……進化や優れた遺伝子の選別の為だ何だろうと、これは大量虐殺なんてレベルじゃない!こんなのイカれたサイコパスよりタチが悪いよ!
◇◇◇
――それから再び大型エレベーターで更なる下方に降りた私達はマジニ達と戦いながら、その先にあった遺跡を改装した施設の防衛戦線も潜り抜けていく。
そして遂にエクセラの元へと追いついた時、シェバとギークは怒りを露わにした声を彼女の背中へ放つ。
「そこまでよ、エクセラ・ギオネ!」
「大人しくしやがれ!お前が殺してきた人々の報い、ここで受けてもらうぞ!!」
その2人の叫びと同時に私達は各々のハンドガンをエクセラに向けると、彼女はゆっくり振り返りながら小さな笑顔で軽い拍手をしてきた。
「……ブラボー!」
「いい加減、ジルの事を喋ってもらうぞ!」
「教えてあげない事もないけど……どうしようかしら?」
すると、そうエクセラがおどけた様子を見せた瞬間――クリスとシェバの方に黒いローブを着た何者かが飛びかかってきて、そのまま2人に攻撃を仕掛けてきた!
「下手な小細工を……ここは俺達に任せろ!」
「メーズィとギークはエクセラを捕まえて!」
すぐさま私とギークは無言で頷いてダッシュすると、それを読んでいたかのように今度は私達の前へ金髪のオールバックをした男が一瞬で現れた。
「なっ――ぐぁっ!?」
「そんな、ギーク――うぁぁっ!?」
気付いた時には私もギークもそいつに蹴飛ばされてしまい、謎の人物と戦っていた2人の方に吹っ飛ばされてしまう。
「メーズィ!ギーク!一体どうし――っ!お前は!」
……そこでクリスは私達を蹴飛ばした男を見て、驚愕と怒りの混じった表情を浮かべた。
「ウェスカー!やはり生きてたのか!」
「クリス……まさか、コイツが?」
「ふむ、貴様とこうして顔を合わせるのはスペンサー邸以来か?」
そして、その姿を見た私も一瞬の内に、前世の記憶で忘れていた彼の正体やクリス達との関係性の全てを思い出した。
そうだ……コイツはかつて、クリスが所属していたS.T.A.R.S.のメンバーを殆ど殺した裏切り者……その名前は――
「アルバート・ウェスカー……!」
「ほぅ……俺の名を知っているとはな。やはりエクセラが見込んだ通り、ただ運が良いだけの人間ではないようだ。あのウロボロスにも適応してのけたのだからな……」
「くっ、待て……!」
しかし、それだけ私に言葉を投げかけた後にウェスカーは謎の人物の隣へと歩いていき、面白そうに口角の端を釣り上げていく。
「もう少し嬉しそうな顔をしろ、クリス。久しぶりに"あの時の3人"が再会したんだからな……ククク」
「"3人"だと!?」
「まさか……その黒ローブの正体って……!」
そして、驚く私とクリスを横目にウェスカーが謎の人物が着るローブのフードを捲ると――そこには、行方不明となっていたクリスの相棒"ジル・バレンタイン"の姿があった。
「なっ……ジル!?」
謎の人物の正体がジルだと分かったクリスは、ハンドガンを下ろして必死な声で呼びかける。
「ジル、聞こえるか!俺だ、クリスだ!!」
「えっ……クリス、それは確かなの!?」
だが……それにジルが答える様子はなく、ウェスカーは楽しむような声で彼女の肩に優しく手を置いた。
「愛しのジルとのご対面だ――殺れ」
その瞬間、ジルは突如としてローブを脱ぎ去りながら2人に蹴りかかる。
そして、クリスを空中に蹴飛ばしたかと思うと彼を両足で踏みつけ、そこからシェバのハンドガンを蹴って彼女をも足で投げ飛ばしてしまった。
「う、げほ……動かないで!」
「ごほっ……ジルさん……クリスさんの事が分からないのか!?」
それを見た私とギークも素早くハンドガンを抜いて、彼らへ更なる攻撃を加えようとするジルに銃口を向ける。
「無粋だとは思わんかね?」
「馬鹿な――がはぁっ!!」
「ウェスカー!アンタって奴は――う、ぐ……!!」
「適合出来た程度とはいえ、たかがこの程度か……フン、期待外れだな」
しかし、それすらも一瞬で移動してきたウェスカーに阻まれてしまい、私は奴に首を掴まれて持ち上げられてしまっていた。
「2人から離れろ、ウェスカー!」
ジルの攻撃を受けながらも立ち上がってクリスが銃撃してくれた事で、ひとまず私達も彼らから距離を取れたものの……ウェスカーは体勢を整える為に戻ってきたジルと並んで、ニヤリとした笑みを浮かべてくる。
「今日は気分がいい……相手をしてやろう。これなら貴様達といえど、4対2で丁度良いハンデくらいにはなるだろう?なあ……ジル?」
そう言ったと同時に、今度はジルが体勢を整え直した私達へ蹴りかかってきた。
「ぐぅ……っ、なんて鋭い蹴りだ!だけど、それなのに殺意を感じないなんて!?」
「考えるのは後!とにかく、今はこの2人を何とかしないと!」
乗馬ムチのように振るわれてくる左の爪先をギリギリの所でいなしながら、私は突っ込んでくるギークのパンチに合わせて、ジルの右足へと逆さ持ちしたUMP9を振るう。
しかし、彼女はギークの腕を掴んで一本背負いしながら左足でつま先立ちをし、右足で私の振るったUMP9を蹴り飛ばしてしまった。
「あぐ、が……っ!!」
「ギーク、無事――うぐっ!?」
すると、そこでジルは私を掌底で吹っ飛ばしたウェスカーと入れ替わり、そのままクリス達の方へと飛びかかっていく。
「7分だ……7分だけ相手をしてやる。クク……それまで何人生き残る事が出来るか、見物だな」
「この、グラサン野ろ――ご、は……っ!」
ギークはフラフラになりながらウェスカーに殴りかかるも、そこから続け様に放たれた掌底を顎に食らって一撃で気絶させられてしまった。
「フン、雑魚が……まだクリスやジルの方が、よほど歯ごたえも戦いがいもあったぞ?」
「ギーク!ウェスカー、お前ぇぇぇぇ!!」
それを見た私は怒りの感情と共に体内のウィルスの制御を解き放ち、腕から纏わせた黒い触手をウェスカーに向かって振り回す。
「ほぅ……そこまで制御出来たとはな。だが、あまりに荒削りで単調な動きだ」
しかし、そんな私の攻撃もマトリックス染みたスピードで避け続けるウェスカーには全く通用せず、遂にはガッ!と逆に触手を掴まれてしまった。
「なっ!?片手で受け止めるなんて――お、ごほぁ……!」
「これで2人目だ。やれやれ……頭数は揃っていても、所詮はS.T.A.R.S.の奴らに遠く及ばんな」
そして、触手を引っ張られて背中から叩きつけられた私は、そのウェスカーの言葉を聞きながら意識を失ってしまった……。
◇◇◇
徐々に意識が戻ってくると、私の視線の先ではウェスカーは既にエクセラと共に姿を消していた。
「う、一体どうなって……っ!」
ふと見るとクリスがジルを羽交い締めにしながら、シェバが彼女の胸元に取り付けられた赤い機械を引き剥がそうと奮闘している所だった。
「起きて!ギーク!」
すぐに加勢するべく、私は倒れているギークを抱き起こし、彼の頬を叩いて揺さぶる。
「う、うぅ……メーズィ、さん……?ウェスカーとエクセラは……?」
「アイツらはもう逃げたみたい!でも、今クリスとシェバがジルを助ける為に頑張ってる!」
「何だって……くっ、あれは新型の医療用薬物投与デバイスだと!?」
あ、ジルの胸元に着いてるアレってそんな名前だったんだ……と、そんな事は置いといて!あのままじゃクリスの力でも振りほどかれちゃう!
こうなったら――
「ギーク!ジルの脚に掴まって!何としてでも彼女からアレを外させるよ!」
「ああ!分かっているよ!」
私とギークは同時に羽交い締めとなっているジルへ飛び込み、彼女の両足にしがみついて更に身動きを固めていく。
「ぐ、うぉぉ……戻ってこい、ジル……!」
そして……遂にシェバがジルの胸元から、ブチブチとコードを引きちぎって装置を引き剥がした!
それと同時にジルは私とギークの拘束を振り払って私達から飛び退いたが、それからフラフラとしながら地面に倒れ込んでいく。
「く……ぁ……っ!」
「ジル!!」
すぐさまクリスはジルに駆け寄り、倒れ込んだ彼女を抱きかかえて声を掛け続けた。
「ジル……大丈夫か?」
「クリス……ごめんなさい……私……」
「もういい……大変だっただろう……」
そんな2人の長年相棒として付き合ってきた雰囲気を見せつけられ、私達3人はホッと一息つきながらも気まずさから苦笑いを浮かべる。
すると、ジルはクリスに抱きかかえられたまま私達の方へと顔を向けてきた。
「貴方がシェバ……よね?それに、その隣はメーズィとギーク……でしょう?」
「えっ?」
「どうして私達の名前を……?」
「アイツらに操られていた時、意識だけはあったの……だけど、逆らえなかった……」
「ジルさん……俺達は大丈夫です。だから……そんなに気にしないでください」
「ええ……でも、ありがとう……」
そう答えた私達に、ジルはクリスの肩を借りながら立ち上がって感謝の言葉を送ってくれた。
兎にも角にも、クリスの大切な人を救う事が出来て本当に良かった……!
だが、そう思っていた矢先にジルはハッとした様子で私達の方に真剣な表情を向けてくる。
「くっ、いけない……私はいいから、皆はウェスカーを追って!」
「なっ、ジル!?お前を置いて、そんな事出来るか!」
「ダメ……今は一刻も早く、奴を止めないと!ウェスカーがウロボロスをバラ撒けば、もう世界は終わりなのよ!」
「分かってる、だが――」
「私は大丈夫!だから……ウェスカーを止めて!クリス!貴方しかいないの!!もう時間がないわ!!」
ジルの言葉に対して、クリスはそれでも彼女の身を案じようとする。だが、ジルは彼を突き放すようにキッと眼差しを向けてくる。
「……相棒の事が信じられないの?」
「……っ!」
これには、彼女と長い間共に戦ったクリスも閉口せざるを得なかった。
「……ああ、分かった」
それからクリスが頷いて先へ進んでいく中、ジルは私達に向けて優しい声を向けてくる。
「シェバ、それにメーズィとギークも……皆、彼をお願いね……」
その言葉に対し、私達はジルへと強く頷いた。
「ええ……分かったわ、ジル」
「俺達全員で生き残って、アイツらを止めてみせます!」
「うん……だからジルも、また会う時まで無事でいてくださいね!」
私達はそう言ってから、クリスと共に遺跡の奥のエレベーターでウェスカーの後を追うのであった。
「頼むわよ……クリス、シェバ……そして、メーズィとギークも……!」