ジルからウェスカーを追うように背中を押された私達は、エレベーターが到達した先にあったタンカーへとウェスカーとエクセラが乗り込んでいくのを目撃する。
「これ以上好きにはさせん……皆、乗り込むぞ!」
そのクリスの言葉に頷き、私達は個別で素早くバラバラに動く。そして、日が沈んで暗くなりつつある港を警備しているマジニ達を暗殺しながら、タンカーの最後方へと乗り込んでいく。
「ギーク、私に掴まって!一気にいくよ!」
「え?いやまさか、その腕ので――うぉっ!?」
私がギークを抱えてロープのようにした触手で乗り込んだ時、そこにはクリス達が先に到着していた。
すると、それと同時にタンカーも低い汽笛を鳴らして出港を始めた。
「結構かかったな、2人共……危うく乗り遅れる所だったぞ」
「あはは……まぁ、時間ギリギリに乗り込めたって事で許してくださいな」
「それにしても、本当にメーズィのそれって便利ね……私は感染してでもは欲しくないけれど」
「というか、上昇するのがキツいんで止めた方が良いですよ……うぷっ」
おぅギーク君、私の腕から降りる前にリバースしないでよね?
それに、いくら便利な力とは言っても使い過ぎると脳に負担がかかるからか頭が痛くなってくるし……。
何より、それが使えるようになった元を辿れば基本ばっちぃヒジキの怪物になるウィルスに適合して変異までさせてる、そんな私の身体が特別過ぎる訳だからね……こりゃ任務が終わっても、B.S.A.A.からは貴重なウィルス対策のサンプルとして一生飼い殺しかな?
「それにしても、このタンカー……かなり大きいみたいだね。こんなデカいの、石油タンカーくらいでしか見た事ないんだけど……」
「まさか、ウロボロスをバラ撒くのに使うつもりなのかしら?」
「いや……それではすぐ見つかってしまう。ウェスカーの事だ、何か他の手を持っているのかもしれん……」
「ウィルスが積めて、誰にも気付かれずにバラ撒く方法ですか……そんな常識外れなもの、ちょっと考えずらいですね……まるで映画かアニメみたいだ」
ギーク君、地味にメタ発言みたいな事を言ってるのは素で……だろうなぁ。だって、この世界が元はビデオゲームの中の世界だなんて知っているの、それを前世で遊んでた私ぐらいなものだろうし……。
もし同じような人が居たとしたら今頃、こんな変態なモンスター共が跋扈してる事に呆れてるよ……うん。
「まぁ、それはさておき……今は前に進んでいこうかね〜」
「待ってくれ、メーズィさん……ここから高い所の警備がアチコチに見える。まずは、そいつらを片付けてからだ 」
「なるほど、ギークの言う通りだな……ちょうどさっきの遺跡で俺もPSG-1を手に入れたから、ここからシェバとギークの3人で見える敵を減らしていくぞ!」
「「了解(よ)!」」
おぉ〜こりゃ凄まじいスナイパー達だね〜……って、あれ?これ、私しばらく待ちぼうけって感じになります?
◇◇◇
――それから5分後。
あらかた見える範囲の敵を片付けて全員でタンカーの甲板上を進んでいくと、今度はスナイパーライフルで狙えなかった位置の方から、ワンサカとスタンロッドなどを持ったマジニ達が襲いかかってきた。
「また随分と盛大な歓迎だな。3人共、武器の弾薬は大丈夫か?」
そうクリスから聞かれた私は、自分達の武器を確認してからサムズアップを送る。
「モーマンタイ!まだまだ私はいけるよ〜!」
「こっちも問題無いわ、クリス!」
「俺はスナイパーライフルの弾が少し心もとないんで、後方から手榴弾やグレランで援護する方向に切り替えます!投げる時は合図するんで!」
それから私達は陣形を少し入れ替えつつ、マジニ達を千切っては投げ千切っては投げ……と大暴れしながら進んでいくが、そのあまりの広さに私達の弾薬だけが激しく消耗していってしまう。
「皆、また一旦バラバラに散るぞ!このまま進んでいては弾薬が持たん!」
すると、そんな状況を危ぶんでクリスは私達へ1つの提案をしてきた。確かにクリスの言う通り、これはずっとチームで固まって進んだとしてもマジニ達の物量に圧倒されちゃうかもね……。
「分かったわ!とにかくタンカーの制御を奪う為にも、ここは個別に別れて探索しましょう!メーズィもギークも、それで大丈夫!?」
「OK!じゃあ、先に誰かがタンカーの内部に入れたら連絡って事で!そうすれば、皆もそこに向かえるから!」
「ああ、了解だ!皆さん、後で落ち合いましょう!」
そうして、クリスとシェバは貨物クレーン側の通路を、私とギークは貨物コンテナの並ぶ方を進む事となった。
◇◇◇
『くっ……!こっちの方にも待ち伏せが多いな!』
「ホントそうだね、ギーク!特に隠れてる奴なんか――うわっとぉ!危ないなぁ!!」
私はビックリしながらも、コンテナの物陰から飛び出してきたスタンロッド持ちのマジニを蹴り飛ばし、そのままUMP9の至近射撃で蜂の巣にしていく。
さっきから物陰を利用してくるマジニが多いせいで、私の歩みは先程よりも遅く慎重になりつつあった。……しかも、その途中でギークとはぐれてしまうオマケ付きだ。
「この野郎〜……こんなに数が多いんだったら、カッコつけて触手バンジーなんてやるんじゃなかったよ……」
『ところで、メーズィさん……それで登った時に少し鼻血を出していたよな?さっきからウィルスの力を使っていなかったのは、そういう反動があるからか?』
「カンのいいガキは嫌い……じゃないよ、うん。まぁ……とりあえず、触手を振り回すくらいなら10分くらいはクールタイムが必要って感じかな」
そう苦笑いで答える私を見て、ギークは通信越しで心配そうな声を掛けてきた。心做しか、その彼の声は恥ずかしげに少し上ずっているように聞こえる。
『メーズィさん……とにかく、もう無茶だけはしないでくれ。ここまで一緒に戦ってきた、その……仲間を俺は二度と失いたくないんだ……』
「ありがとう、ギーク。それにしても、こんな事がたった1日の間で起こるなんて……ホント、悪い夢でも見てるような気分だよ」
『そうであって欲しいけどな、俺も……。さて、まだ先は長いんだ。せめて少しでも早く合流出来るよう、こっちも――うわっ!?』
すると、その瞬間にギークの方から激しい物音が聞こえて通信が切れてしまった。
「ちょっ、ギーク!?大丈夫!?」
その突然の事態に私が携帯端末へ何度も呼び掛けていると、今度はコンテナの上の方から数匹の犬が吠えながら私の前に飛び降りてきた。
「こうして会うのは初めてって感じかな……あいにく、今お前達に構ってる余裕は無いんだけどね!」
――マジニ達のように「コロス」「オカス」ってプラーガの本能的な声が聞こえてくる……って事はコイツら、プラーガに寄生された"アジュレ"だね。
周りを駆け回りながら飛びかかってくるアジュレに、私はナイフで応戦しながら他の奴らにもUMP9で弾幕を張り、全てのアジュレから同時に攻撃されないよう牽制する。
「そう簡単に勝てるなんて――はっ!しまっ……きゃあ!!」
だが、ふと背後から影が忍び寄っていると気付いた瞬間、振り向いた私は大型のアジュレに仰向けで押し倒されてしまった。
その途端、身動きが取れなくなったと知った数匹のアジュレ達は一気に私へと殺到してくる。
「くぅ!この、上から退いて……ひゃっ!?」
しかし、その全てが何故か私の股間に鼻先を突っ込んで、一斉にベロベロと舌を這わせてきたのだ。
「はぅ♥くぅ……♥そんな激しく、舐め……ふぁぁ♥♥」
そんな快感に私は思わず、腰をヘコヘコと上下させ始めてしまう……ヤバい♥このままじゃ、イッ――♥♥
「ふひゃぁぁぁ……♥♥」
プショロロロロ……と私の股間から透明な潮が吹き出してしまうも、それでもアジュレ達は私の股間を舐め回し続ける。
くっ♥コイツら私がイッたのにペロペロペロペロって……だけど、今がチャンス!
私は絶頂特有の上がったまま降りてこれない快感に耐えつつ、素早く太腿のホルスターからグロック19を抜いて股間へ殺到していたアジュレ達の頭を撃ち抜いた。
「はぁ♥はぁ……っ♥クソッ、ギーク君とエッチしてから落ち着いてたのに……♥このワンコ共は何て事してくれるの、全く……♥」
とりあえず、皆と合流するまでに1回はオナニーしておかないと……プラーガを出産した時みたく、また皆の前で汚い声や失禁はゴメンだ……♥
◇◇◇
アジュレ達にバター犬よろしく股間を舐め回されるアクシデントはあったものの、何とか私はギークが送っていた位置情報を頼りに内部への扉まで辿り着く。
だけど、それ以上に気になったのは――
「……で、全然無傷なギーク君?さっきの通信途絶について、私にどういう事か説明してくれないかな〜?」
「いや、だから何度も掛け直したんだよ……ウッカリ携帯を下に落としちゃっただけだって、そう言うつもりだったのに出てくれないし……」
「ギーク!無事か!?」
「良かった!メーズィも着いてたのね!」
すると、そこへクリスとシェバも揃って到着してきた。あ、これギーク君は後で全員から怒られるやつだね〜……というか、恥ずかしさで顔真っ赤にしちゃってるし♥あ〜……そういう所もカワイイなぁ♥
それは兎も角、私達はギークの無事にホッとしつつもタンカー内部へと踏み込んでいく。そんな中で、シェバはタンカーの広さに溜め息を吐いていた。
「それにしても、広い船ね……こんなに大きなタンカーだと、ウェスカーを探すのも一苦労だわ」
「いや、心配ない……俺が追ってきたと知れば、奴の方から姿を現す」
そのクリスの言葉に、私の後ろでギークは首を傾げた。
「そうは言いますが、クリスさんには確信でもあるんです?」
「まぁ、憎まれているからな……色々と」
「一体クリスさん、どんな事をやったんですか……"憎まれっ子世に憚る"とは言いますけど」
「私もギークと同じく、そんなに奴から恨まれる事になった理由を知りたいわね?」
「フッ、話せば長いさ……」
そんなギークの言葉に苦笑いして先を進んでいくクリスに、私は同情で同じような苦笑を浮かべる。
だって、ウェスカーがクリスを恨んでるのは殆ど向こうの逆恨みみたいな感じだからね〜……。特に何処かの作品だと、"クリスに殺された恨み"って言ってたりした気がするし……いやアンタ、実際に殺したのは復活の茶番劇的に使ったタイラントでしょうがって話なんだよね。
「とりあえず、奴を……ウェスカーを倒したら、いつか皆にも経緯を話してやるさ」
「そう……ふふ、楽しみね」
「それなら、俺も有名な店で全員分の特等席を予約しておきますよ。あっ……もちろん、俺が全額持ちますんで」
「ほ〜ん?それは良い事聞いちゃったな〜?……言質取ったからね、ギーク君♥」
……おぅギーク君?すぐ私から顔背けるの止めてくれない?全く、ちょっとからかっただけなのにさ〜……まぁ、そこがツンデレのツン8割で好きなんだけど♥
そんな会話をしながら階段を降りて、その先で辿り着いた部屋の扉を開けると……そこには遺跡と同じ始祖花が入った培養槽が並ぶ研究室と、慌ててアタッシュケースを閉じようとするエクセラの姿があった。
「動くな!」
「そのアタッシュケース……貴方、何をしているの?」
今の様子からするとエクセラは私達が此処に来たのは想定外といった感じで驚いていたが、すぐハンドガンを向けた私達に彼女は毅然と言葉を返してくる。
「っ……!貴方達には関係ないわ!」
「この□◇○女!ふざけてないで正直に言え!」
「相変わらず、なんて汚い言葉遣い……言う訳がないでしょう?」
「エクセラ……大人しく吐けば、私達から危害は加えないよ」
「答えろ、ウェスカーは何処だ!?」
質問しながら私達が詰め寄ると、エクセラはデスクの上のアタッシュケースに手を掛けていく。
「大人しくするなら、貴方達こそね……だったら、考えてあげる!」
そう言った瞬間、エクセラはバッと部屋の外へ向かって駆け出した。すかさず私達は銃口を彼女へと向ける。
「待て!」
「この……逃がすか!」
しかし、エクセラは右手に持っていたアタッシュケースを落としながらも、その弾幕を躱して逃げていってしまった。彼女がロックしていった扉を殴りながら、クリスとギークは悪態をつく。
「クソッ!」
「また逃げられた!」
「したたかね……それにしても、嫌な女!」
すると、そんな中で私はエクセラが落としていったアタッシュケースの中から、"PG67-A/W"とパッケージされた注射器が何本か溢れているのを見つける。
「ちょっと皆、このアタッシュケースを見て!何かの注射器が入ってる!」
「これは彼女の落し物ね、メーズィ。だけど、この注射器の中身……何かしら?」
「急いで持ち出そうとしていた所を見るに、あのクソ女にとって相当大切な物らしいな……クリスさん、ひょっとしたらウェスカーに関係ある代物かもしれません」
「ふむ……とりあえず、持っていくに越した事はないだろう。とにかく、別なルートから彼女を追うしかなさそうだ」
そう頷きながらクリスは注射器を何本かタクティカルリグのポケットに入れ、残りをシェバや私達にも手渡した。
私達は研究室の別な扉から通じていたタンカーの貨物室へと出ると、そこには乱雑に積み重ねられたコンテナへ隠れるようにして銃火器を構えるマジニ達の姿があった。
「どうやら、ここでも派手にやり合う羽目になりそうだな……皆、やるぞ!ショットガンで先行する!」
「OK!それなら私は下に降りて盛大にパーティーといきますかね!」
「了解よ、クリス!メーズィ!私は高台から援護するわ!」
「俺もシェバさんと共に遠距離から狙撃します!」
そうして私とクリスは足場から貨物室に飛び降り、警報が鳴り響く中で互いにUMP9やイサカM37を投げて交換しながら敵陣ド真ん中で暴れていく。
「おらおらおら〜!お前ら、良い子はもう寝る時間だぞ〜!」
「とは言っても、二度と起きられなくなっているだろうがな!さて、今度はそっちに返すぞ!それ!」
「よ……おっと!クリス、ナイスキャッチ――って、後ろ後ろ!危ないよ!」
「――フン!!これくらい、どうという事はない!」
う〜わ〜出た!クリスさんの生フックパンチや!!
私、こんな間近で見れるなんて思ってもみなかったよ!
……まぁ、それが見れるまでに何度も酷い目には合ってきた訳なんだけどさ。おのれ、変態プラーガ共め……!
「クリス!向こうから妙な奴がやって来るわ!」
「2人共、気をつけろ!あの野郎、ガトリングを持ってやがる!あ、ヤッべ!こっち狙ってるぞシェバさん!」
「私達も飛び降りるわよ、ギーク!」
「あ、ちょ……ぎょぇえ!?」
そしてシェバさん、ギーク君の襟元を引っ張って飛び降りるのは女傑過ぎやしませんかね……いきなり掴まれてた本人はマジで吐きそうになってるけど。
「ゲホ、ゲホ!せ、せめて飛び降りる前に一言あっても良かったじゃないですか!?」
「時間が無かったのよ!それに、もう既に撃たれ始めてたわ!」
「2人共、無駄話は後だ!まずはガトリングの奴が近づいてくる前に、取り巻きの連中を片付ける!」
「さ〜て、ここから第2ラウンドですか!腕が鳴りますなぁ!」
――それから私達はドンパチ賑やかに激しい弾幕を掻い潜りながら、マジニ達ともどもガトリング野郎を蹴散らしたのであった。
はい、またアッサリし過ぎたからナレ死なんだ……すまんね。