それから再び連絡通路を使って公邸前に昇ってきた私は、その入り口近くの庭で激しく破壊された石造りの舗装や生け垣を目にしてデカい溜め息を吐く。
「うわぁ……よりにもよってダークサイド・クロニクルズ版の方じゃん」
この破壊っぷりは間違いない。ロックフォート島で訓練用に配備されていた、タイラントのT-078型が暴れた痕跡だ。アイツは訓練用で人間の偽装が不必要だからか、最初からリミッター解除された時のスーパーっぽい状態になってる個体のハズだ。
そんな奴とウッカリ出くわしでもしたら……うん、今度こそ死ぬな私。いやゾンビ共に犯され尽くして死ぬのも嫌だけども。ともあれ、初代バイオのグラサンよろしく爪でグサッ!でグワーッ!な死に方はゴメンだ。
「さてと、気を取り直して……アシュフォードさん、家にお邪魔しますよ〜っと」
静かだ……「邪魔するんなら帰って〜」ではなくズドンとライフル撃ってくるのが基本なアルフレッドさんは留守みたいだね。
ホールでグチャグチャな肉塊になってるゾンビ共やバンダースナッチの死体から見ても、クレアさん一行が既に通り抜けたのは一目瞭然だ。
というか、このクレアさん一行は暴れすぎじゃない?手榴弾とかグレネードランチャーの爆破跡が沢山あるんですけど?ゴリ押しプレイとは感心しませんな……まぁゲームの私に対して盛大なブーメランになってるのはさておき。
「やっぱりホールのカウンターの所には無かったか……そうなると、他に鍵がありそうな部屋は執務室か秘書室だね。う〜ん、ここのマップどんな感じだったっけ……」
しまった、謎解きがそこそこあったせいで割とガチで覚えてないもんだなぁ。最後にコレ遊んだのは……3年くらい前だった気がするし。何より、ダークサイド・クロニクルズ版(以降DC版)とゴッチャになってて敵の配置もアヤフヤだ。
いやホント、良く刑務所でゾンビ共に押し倒されずに済んだな。あんな数に犯されでもしたら今度こそ、私は――
「うぅ、また湿ってきた……。とりあえず、鍵のついでに服も借りていこうっと」
妹さんにコスプレしてる残念な兄貴が住んでるんだから、サイズは合わなくても女性モノの服はあるハズだろうし。
もっと欲を言うなら洗面所で身体も洗っておきたいね。ゾンビ犬に犯されたせいで、身体も泥と精液がベッタリ残ってて気持ち悪いもん。
……何か、更にやる事が増えた気がする。
◇◇◇
「あ〜もう!こんな豪邸建ててるクセして、なんでボートの1つも用意してないんだか!」
それから十数分後、私は執務室のイスを蹴り倒して鍵が見つからなかったイライラを発散していた。
結果から言うと、ボートの鍵は見つからなかった。
……そう、"ボートの鍵"は。
代わりにアイテムボックスの隅で見つかったのは、なんと重要そうな書類と共にファイルに綴じられていた潜水艦の予備キーだったのだ。
そういやDC版だと潜水艦に乗らず、いきなり輸送機へ直行してたっけな……そうなると、コレはそれのシワ寄せって事かな。何にせよ、それなら脱出方法は確保出来た訳だし……
と、そう思った瞬間――ウワァァァァァ!!と私邸の方からクッソ情けない男の悲鳴が聞こえ、いきなり公邸の明かりが全て消えて真っ暗になった。
「うわっ!?……何、いきなり?停電?」
すると、それと同時にけたたましい警報音と共に合成音声のアナウンスが聞こえてくる。
『島内全ての施設を爆破します。全員、速やかに避難してください。繰り返します、島内全ての施設を爆破します。全員、速やかに……』
「わぁぁ!オールひろゆき展開だったの忘れてたぁ!!」
って事はシスコン兄貴が女装バレしてブチ切れた辺りじゃん!DC版ったらチョーSだよな!
「と、とにかく急いで潜水艦へ乗り込まないと!くそっ!シャワー浴びたかったのに〜!!」
私は急いで秘書室のクローゼット(本編にあったかって?知るか!)から衣類を適当に拝借し、公邸から出て庭から通じる停泊所の潜水艦へと猛ダッシュした。
そして潜水艦に乗り込んで扉を閉めた瞬間、何故か勝手に潜水艦が起動してオートパイロットで何処かへ向かって潜行を始める。
「潜水艦を操縦するかもってヒヤヒヤしてたけど……とりあえず島からは脱出出来た。だけど……まだまだ先は長そうだなぁ」
そう、私の推測が間違っていなければ……本来こんな使われ方をしなかった潜水艦がオートパイロットで動いたという事はつまり、この潜水艦もクレアさん一行が乗った輸送機と同じように更なる地獄へ向かっているのだろう。
そんな先の憂いを胸にしながらも、私は潜水艦のシートをベッド代わりに一時の休息についた。
◇◇◇
眠っていた最中、突如お腹の中から子宮内に残った精液の痛みともとれない奇妙な感覚で目が覚める。
服を捲り上げてみると、私の下腹部はポッコリと膨れていた。
いや、そんな馬鹿な……あのゾンビ犬との交尾で、私は妊娠した?まさか、有り得るハズが……でも、ハンターやキメラの異種同士の遺伝子を結合可能に出来るT-ウィルスの特性からすると、その可能性は……
「いや、嘘……私、犬の赤ちゃんを妊娠したって事……?」
グリュンとお腹の中で孕んだ生命が動きだし、それと同時に股の間からキツい匂いの液体が溢れて激痛が私を襲った。
「ぐ、はぁ……ぐぅぅぅ……っ!!」
呼吸を忘れそうになる程の痛みに私は腹を押さえつつ、ウッカリ自らの舌を噛まないよう強く脱いだ衣服を咥えて力を込める。
「ふ、ぐ……ぐぅぅぅぅぅぅ!!!」
壁に寄りかかって倒れ込む私の股から、ズリュン!と何かが排出されたのを見る。
その私の腹の中から産まれ落ちた子供は、あのゾンビ犬と同じ犬種……ドーベルマンの姿をしていながらも、全身の毛色は私の髪の色のように透き通るような銀色をしていた。
そのメスの子犬のへその緒が私の股に伸びているのを見れば、私と血が繋がった子であるのは疑いようがなかった。
「はぁっ、はぁっ……あはは、私……マジで犬と子供作っちゃった……はぁ、はぁ……ふぅ……」
そんな絶望的な光景に私は頭が狂ってしまいそうになったものの、その目の前の子犬がキュゥと小さく鳴いたのを見て我を取り戻す。
「そうだ……イカれてる場合じゃない……この子に、おっぱいをあげないと……」
いくら犯されて産まれた生命とはいえ、この子に罪は無い。それならば、きっと生きていく権利はあるハズだ。
……恐らくは狂ったまま正気が戻ってきたと言うのだろうか。とにかく、そんな事を思い浮かべるくらい私の頭には目の前の子犬に対して強い母性が働き、プルプルと小さく震えるそれを優しく大切に抱き上げた。
そして、私はスーツのボタンを外してワイシャツを首元近くまで捲り、Cカップくらいある乳房の先からポタと小さく白い母乳を垂らし始めた乳首に子犬の口元を近付ける。
「んっ……♥すごくチュウチュウ吸ってる……そんなにお腹が空いてたんだね……」
ふと見れば、既に子犬は生後1ヶ月といったくらいにまで大きくなっていて、細く閉じてはいるが瞼も開くようになっているようだった。
「ふふ、可愛い……」
こんな絶望だらけの地獄の中で無理やり作らされた子供とはいえ、私は確かにこの子に対して「絶対に死なせてなるものか」と、初めて希望のようなものを感じ始めていた。
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