それから私はウルフィーの協力も得て、相変わらずクレアさん一行がチラホラ残したゾンビ共を始末しつつ、武器や薬品が保管されている倉庫まで辿り着く。しかし、そこにも抗ウィルス薬は見つからず、一縷の望みを胸に別の部屋へと向かう。
「この先のB.O.W.保管倉庫に抗体が有れば良いんだけど……というか有っててよ、マジで」
そう祈りながら扉を開け、机や機材に乗ったままなスパイダーの死骸を退かしながら部屋のアチコチを探したものの、グリーンハーブとブルーハーブしか見つける事が出来なかった。
「駄目か……こうなったらダメ元でアレクシアの研究室も調べるしか無いか……」
いやまぁ、彼女が研究してたのはT-Veronicaっていう亜種みたいな物だから望み薄ではあるけども。
そんな独り言を小さく呟いてから振り返ると、ウルフィーが降ろしたスパイダーの死骸に噛み付いて脚を千切っていた。
「こらウルフィー、食べようとしないの。そんなの食べたら、ぽんぽん痛めるよ」
その私の言葉にウルフィーはクゥーンと鳴いて、お腹が減ったといった様子で私の胸元に鼻先を押し付けてくる。
「仕方ないなぁ……食べられそうな物が見つからないとはいえ、本当に私のおっぱいが好きなんだね」
この子に潜水艦で何度も母乳をあげた私は、もうすっかり一人前の母親として出来上がってしまったようだ。Cカップだった少し小ぶりな胸は今ではDかEくらいまで立派に大きくなってしまい、ノーブラで直にワイシャツを着ている私には乳首の先が擦れて少し動きにくい。
それはさておき、私がペロンとワイシャツを捲り上げたと同時にウルフィーは尻尾をパタパタさせて、喜んだ様子で私の乳首を咥えてくる。
「んっ♥ふぅ……♥前より吸う力が強くなったからか、おっぱい吸われてるだけで少しイきそう……っ♥」
そんな私の授乳タイムは5分くらい続き、その中でも2回くらい吸われる快感で軽く絶頂してしまった。それにしても、まさか実の娘に授乳してイく事になるなんてね……。
◇◇◇
ウルフィーへの授乳を終えた私はアレクシアの研究室に向かうべく、ゾンビ犬の死体が転がる電力供給室を抜けて採掘室に足を踏み入れる。
ここのクレーンリフトを使えば、研究室に繋がるエレベーターがある地下1階へ登れるハズだけど……どうやら、アルフレッドやクレアさん一行とは別に先客が既に来ていたらしい。
――私の前に広がっていたのは、上半身や下半身を粉砕されたゾンビ共のグチャグチャな爆破死体の中に佇む、黄色い装甲に全身を包んでM202ロケットランチャーを担いだ、一つ目のヘルメットを被った異様な存在の姿だった。
あんな奴、本編どころかシリーズを通しても居なかったハズだ……だけど、あの機械的でロケットランチャーを担いだ見た目は、何処かで見たような……。
『おい……そこの女』
「えっ?」
不意に相手が声を掛けてきた事に、思わず私は素っ頓狂な声をあげてしまう。
そうだ……コイツみたいな奴を何処かで見たと思ったら、アンブレラ・クロニクルズの最終エピソードに出てきたタイラントの重武装型――T-A.L.O.S.ことテイロスに似ているんだ。向こうと比べると170センチくらいで、かなり小柄な見た目だけど……間違いない。
だけど、そんなアンブレラの極秘な兵器……それもタイラントが、どうして言葉を?
『お前はマスターの……アルフレッド様の敵か?』
「いや、特にそういう訳じゃないけど……でも、そう言うアンタは一体?」
『俺はアンブレラのタイラント知能向上を目的とした試作モデル……T-error(テイラー)だ』
「はぁ、テイラーね……errorって単語があるって事は、アンタは使い捨ての失敗作って事?」
『そんな名前は、予想以上に知能が高くなってしまった事を恐れた上層部が勝手に決めたものにすぎん。俺は俺自身の価値を証明する為、マスターの元へと駆り出されたのだ。……H.C.F.という同業者の差し金や、アンブレラを潰そうと企む虫けら達を葬る為にな』
試作タイラントことテイラーは、そう少し憂鬱そうな声色で私に身の上話を語り終える。
「私、ちょっと野暮用でアレクシアの研究室に行きたいだけなんだけど……通してくれる訳は、無いよね?」
『残念だが、命令だからな。その肩の傷……お前がウィルスに感染していて、それを治療したい事は何となくだが理解出来る。しかし、アンブレラの地位を揺るがしかねない芽は摘んでおくに越した事はないのでな』
「だったら、アンタ自身は?命令に従うのも良いけど、本当は私を殺したくはないんじゃないの?」
『……』
すると、そんな私の言葉に対してテイラーは無言で俯きつつ、ロケットランチャーの照準を合わせてきた。
『悪いが……俺には俺の、お前にはお前の理由があるという事だ!』
そう叫ぶと同時にテイラーはロケットランチャーで攻撃を始め、咄嗟に私はウルフィーを抱き上げながら採掘室に転がる岩の影へと転がり込む。
そこから、すぐさま身を乗り出してG11で相手の頭を狙撃するも、カンッカンッと被っているヘルメットに弾丸が弾かれてしまう。
『この俺にアサルトライフル程度の弾丸は通用せん!T-A.L.O.S.から派生した技術、とくと味わってもらおう!』
「うわっ!あっ……ぶない!!ウルフィー、逃げるよ!」
全身を使ったタックルで隠れていた岩ごと潰そうとしてきたテイラーを避け、ウルフィーと逃げながら私は後ろ手でハンドガンを乱射する。しかし、その狙いも定めていない銃弾は殆どテイラーに当たる事は無く、当たったとしても装甲に弾かれて牽制にもならなかった。
「くそっ!普通のタイラントなら身体がデカくて当てやすいのに!」
『舐めてもらっては困る!この身体が遺伝疾患で小さいとはいえ、T-103型と比べても遜色は無いと思え!』
なるほど……今のテイラーの話を総合しても、元々はタイラントの知能向上を目指して生まれただけはある。だけど、その素体の小ささや知能が上がり過ぎたからってテイロスの実験台として使い捨てるなんて……アンブレラは本当に人の心が無い奴らだよ。
少なくとも、もう私はテイラーが人間のように見えてしまっていて……正直な話、戦いたくない。それにテイラーが撃ってくるロケットランチャーも、さっきから私やウルフィーを直接狙っていない。
だから、きっと話せば分かってくれるハズだ。
そう信じて、私はG11もハンドガンも地面に投げて両手を上げて物陰からゆっくり立ち上がる。
『……何の真似だ?』
「見ての通りだよ。テイラー、私はアンタと戦いたくない。そっちだって、私と戦っても1つも得なんかしないって……分かってるんでしょ?」
『あぁ、出来る事ならば戦いたくはない。だが……』
「あんな奴らの言いなりになって、それで本当に自分の価値を証明出来ると思ってるの?アンタなら、もう薄々気付いているんでしょ?」
『……何をだ?』
「自分はアンブレラにとって不要で面倒な存在で、いつ切り捨てられてもおかしくないって事をだよ!」
『――っ!』
「それでも、縋る物が無いから何としてでも自分の居場所を守りたいから頑張ってるって……さっきから話してると、そういう気持ちが嫌でも分かっちゃうんだよ!」
そう私が叫んでテイラーに真剣な眼差しを向けた瞬間――
『はっ、危ない!!』
テイラーが私とウルフィーを突き飛ばしたと理解した時、ガシャァン!!とテイラーは上から落ちてきたクレーンリフトに押し潰されてしまった。
「……えっ?嘘……テイ、ラー?」
その突然の出来事に、私は放心して呆けた声しか出せなかった。
軽い解説的な紹介
【T-error"テイラー"】
クローニング段階で体格的な不良が生じた個体にNE-αでは不完全であったタイラントの知能向上テストを兼ねて脳へ電極を埋め込んだ結果、研究開発班でも予想していなかった自我とも呼べる程の知能向上が見られた特異個体。
そのあまりの知性に制御が困難と判断したアンブレラ上層部から直々の破棄命令が下されたものの、これ幸いと言わんばかりにT-A.L.O.S.の試験用として装甲や武装も施された。
なお、知能テストとして研究開発班からプレゼントされたヘルマン・ヘッセの「少年の日の思い出」を愛読している。