私達を庇ってクレーンリフトの下敷きになってしまったテイラーに呆然としていると、今度は採掘室の上から煽るような笑い声が響いてくる。
この声の感じはゲームでも聞き覚えがある……アルフレッドだ!
「ハハハハ!……ゴホッ、ゴホッ!無様なガラクタよ、お勤めご苦労!お前のお陰で、我が愛しい妹は無事に目覚める事が出来た!これは暴走機能すら失った失敗作のお前に向ける、私からの最後の礼とでも言っておこう!」
「アルフレッド!アンタって奴は....テイラーは人の心を持ってるのに!どうして!」
「ん?まだ他にもネズミが居たのか……ゴホッゴホッ、まぁいい。既にアレクシアは自らが持つT-Veronicaの力で基地の全てを掌握しつつある!あの女もお前達も、もう逃げる事は叶わない!!」
そう言ったアルフレッドの高笑いは、徐々に遠ざかって聞こえなくなっていってしまった。
「くっ……待て!」
すると、私の後ろからウルフィーがジャケットの裾を引っ張ってバウ!と小さく鳴いてくる。それによって、私はハッと我にかえった。
「そうだ、ひとまずテイラーを助けないと!」
よし……どうやら装備していた装甲のお陰で、テイラーは下半身が身動き出来なくなっているだけみたいだ。何とかクレーンリフトを持ち上げられれば、これなら引っ張り出せるかもしれない!
「う、ぐぐぐ……っ!!」
駄目だ……そこら辺にあった鉄パイプをテコにして全体重をかけても、全然ビクともしない……!
ウルフィーもテイラーの右腕を引っ張ってくれてはいるけど、このままじゃ時間ばかりが掛かって生き残りのゾンビ共やクリーチャーに襲われてもおかしくないぞ。
『女……俺の事は放ってくれ。ここからは、お前達だけで逃げろ』
「馬鹿言ってんじゃないよ!テイラー、そんな簡単に諦めたら駄目だ!」
『もう、何もかもどうでも良いんだ……アルフレッドに切り捨てられて、全てが終わった。俺は自らの価値を証明するなどと言っておいて、結局はアンブレラの捨て駒でしかなかった。そんな失敗作の俺に、生きる理由など……』
はぁ〜、この野郎……どれだけアンブレラに依存してたんだよ。切り捨てられるって分かってて、それでも組織の為に働いてこれたっていうのに……そこで全てを投げ出すなんて、ふざけてるにも程があるぞ。
そう思ってたら、何か急にイライラしてきたんだけど。
「あのねぇ!お前は組織から「クビです、はいサヨナラ」されて何も思わない訳!?ここまで好き勝手に利用してきた連中に対して、「この野郎いつかブッ〇してやる」とか思わないの!?」
『なっ!?』
「私、戦ってる時から凄いイライラしてたんだよ!どうして普通に喋れて自分の意思だってある奴が、ただ人間じゃないからって理由だけで適当な扱いを受けているってのが!ちょっとは怒れよ!!本当は、そんな瓦礫くらい持ち上げられるんでしょ!?」
『だが、T-103型よりパワーの劣る俺の身体では……』
あ〜もう!コイツつべこべつべこべと!どうして最初から「自分には無理だ」なんて考えをしてるんだか!
でも、このクレーンリフトのデカさじゃ確かにテイラーの力でもキツそうか……うぅむ、何か良い方法は無いものかね……?
そう考えていると、またウルフィーが私の胸元に鼻先をグイグイと押し付けてくる。
「ん?どうしたのウルフィー?おっぱいはさっき飲んだでしょ?」
すると、ウルフィーは「違う違う」と言いたげに首を横に振ってきた。
私の母乳が飲みたいんじゃないなら、他に何が……いや、待てよ?
この子を潜水艦で育ててた時、やけに早く成長したのはT-ウィルスに感染した私の母乳が関係あるって事か?例えるなら、成長に必要なエネルギーとか色々なものが多かったりとか……?
でも、この状況でウルフィーがそんな行動をしてくるって事は……ひょっとしたら、ひょっとするかもしれないね。
ちょっと恥ずかしいけれど……ええい、背に腹はかえられぬ!
『ぬぉ!?いきなり胸を露わにして一体どうしたんだ!?』
「テイラー!私の母乳を飲め!」
『ちょっと待て!!何でだ!?』
「お前の為だ!ほら!」
そう言いながらテイラーの被っていたヘルメットを引っペがす。わお、タイラントっぽい顔付きが若いと結構イケメンなのね……ちょっと好みかも。
そして、私は白い雫の滴る乳首の片方を無理やり彼の口に含ませた。
「ん……♥ふぅっ♥はぁ……♥」
お〜お〜……あんなに嫌がってたクセして必死にチュウチュウ吸っちゃって……というか、目が眠そうな子供みたくトロンとしてるな。この母乳、栄養満点なだけじゃなくて心を落ち着かせるような効果もあったりする?
「ちょ、強く吸い過ぎ――あっ♥ふぁぁ……♥」
◇◇◇
それから数分後。
何はともあれ母乳を飲ませ終えると、テイラーは「よっこらせ」と何事も無かったかのように、自身の上にあったクレーンリフトを背中で持ち上げて脱出した。
『なるほど……あの母乳、どういう理屈かは知らんが俺のようなT-ウィルスで作られた生物に強い力を発揮させるようだ』
「まぁ、元はと言えば……この子が産まれて数時間で早く成長した所から思い付いたから、少しヤケクソ気味だったけどね」
そう苦笑いする私達の間で、ワフンとウルフィーが誇らしげな鳴き声を上げておすわりする。
……君のお陰で助けられたとはいえ、それでもテイラーに授乳するのは結構恥ずかしかったんだぞ。
『さて、これからどうする?そもそも、俺はお前の名前も知らぬまま助けてしまった訳だが……』
「あ〜……名前ね……」
そういえば私、自分の名前も朧気にしか思い出せないな……思い出せる限りだと、確か――
「"サヤ"。私の事は、"サヤ"って呼んで」
『あぁ、分かった。サヤか……良い名前を貰ったな。そちらの犬は、確かウルフィーという名前だったな』
「さっきの戦闘中で、よく聞いてたね……こんな犬の姿だけど、血の繋がった私の娘だよ」
『ふむ、娘か……んん?娘だと!?』
あ、やべぇ……そういえば傍から見たらペット連れてるようにしか見えないんだったっけな。
ちなみにその後、テイラーへ説明するのに一悶着があったのは言うまでもなかったり……次からは気を付けようっと。