男勝りロリコンドマゾ女退魔師 赤坂燈火 作:お金ナイダー1号
燈火の性が真に目覚めた日。
妹に向けていた感情の正体を知った、あのあと。
浴室での燈火は、実に立派に“姉”として振る舞った。
妹が裸体を完全に晒してしまったあとも、燈火は妹に気付かれない程度には平静を装えていたし、
「おねえちゃん、まゆのことゴシゴシして?」
と、ねだってきたときも、膨れ上がる欲望を抑えつけて、垢すりで洗ってやるのに留め、その柔肌には決して手を触れなかった。
「今度はまゆがゴシゴシしてあげる!」
と、逆に妹が燈火の全身を刺激しても、たまに体をビクンッと震わせるくらいで
「くすぐったいから」
と誤魔化せる範囲で耐えていた。
問題は浴室から出て、妹を寝かしつけてしまったあとだ。
それからもしばらく燈火は“姉”として耐えなければならなかった。
脳裏に過った“それ”を実行するまいと、布団に潜り、熱くなった体を抱きながら小一時間は耐えていた。
しかし、ふと、洗濯をしなければ明後日の着替えがないと気付いてしまった。
燈火の体感では、次の瞬間には脱衣所にいた。
そこにある洗濯機の前で、妹の下着を手に取って立ち尽くしていた。
その下着の柄は今でもハッキリと覚えている。
薄ピンクで、白い子猫の絵が描かれていた。
***
「はぁ……♡ はぁ……っ♡」
あれから12年。
燈火は公衆トイレの個室の壁に背を預け、熱い息を繰り返している。
自分の両手を戒めるかのように、それぞれ反対の手で掴みながら、背を丸め、体から熱が引くのを待っている。
その頭の中では12年前の光景が再生されていた。
***
あのあと、燈火はしばらく洗濯機の前で立ち尽くしていた。
が、しばらくすると、手に持っていた下着をそっと自分の鼻先に近づけた。
そしてその瞬間、燈火の意識は桃源郷に連れて行かれた。
頭に桃色の靄がかかって、それ以外に何も考えられなくなった。
甘い香りにまざる、微かなすえた匂い。
最愛の妹の、恥ずかしい部分の匂い。
たまらず「すんすん」と連続で吸うと、自分の股間からドプドプと愛液が溢れ出したのがわかった。
下腹部がキュンキュン♡と収縮し、生まれて初めての絶頂を迎えた。
これ以上はダメ。
燈火の脳の一部が激しい警鐘を鳴らした。
それ以上やったら戻れなくなる。
退魔師失格で、母に対して恥ずかしく、何より最愛の妹に対して会わせる顔もない最低の存在になってしまう。
しかし、そんな理性の警鐘も、この香りの前には無力だった。
燈火はもはや人と言うより豚のように鼻を鳴らして、自分の手の中にある物の、麻薬のような香りを吸い込むのに夢中になった。
やがて燈火の手は自分の下着の中に潜り込んでいった。
***
あのとき何度絶頂したのか、燈火は覚えていない。
しかし確かなことが二つある。
アレが凄まじい快感だったこと。
そして、翌日から燈火の日課に“妹の洗濯物を漁る”という決して人に言えない事項が追加されたことだ。
この日課はアルメリアの事件後に妹と別居するまで、毎日、欠かすことなく行われた。
逆に言えば、それ以降は一度もできていない、ということでもある。
燈火を依存症にした、麻薬のような行為が。
こういう場合、人間の心理は代わりを求める。
手を出すかどうかは別として、求めてしまうのは避けようがない。
燈火の頭の中に、さきほどの歩道橋の光景が蘇る。
歩道橋の上でフワりと舞い上がったスカート。
その下に隠れていた薄ピンクの布。
ああ……。
あそこに鼻を近づけたら、どんな匂いがしたのだろう。
妹の下着と同じような匂いがしたのだろうか。
欲しい。
あの香りが。
少女の匂いが。
幼い少女の下着が。
あの快楽が。
欲しい。
あの快楽のためなら何を犠牲にしてもいい。
欲しい……っ♡
危険な思考が頭の中で渦を巻く。
今からあの少女たちを追いかけようか。
妄想がブレーキを失って、暴走していく。
いっそのこと、直接お願いしてみようか。
「もう一度下着を見せて欲しい」
「ひと吸いでいいから匂いを嗅がせて欲しい」
もしかしたら断られてしまうかもしれない。
そのときはお小遣いをあげよう♡
幸い、退魔師の給料は一般企業人とは桁違いだ。
流行りのゲーム機が買えるくらいの額なら簡単に出せる♡
いや、その2倍4倍、10倍だって出していい♡
それであの甘やかな香りが嗅げるなら安い♡
自分の手を押さえつける力が強くなる。
燈火の理性が退魔師としての意見を叫ぶ。
そんなことはダメだ。
もし通報されたら警察行きだろう。
いや、通報されなかったとしても、実行してしまえば退魔師を名乗れなくなる。
それでいいのか。
よくないだろう。
お前は赤坂蓮華の娘で、赤坂真由の姉だろう。
そんな最低なことをして二人を汚す気か?
ダメだ。
絶対にダメだ。
燈火は両手を力の限り掴んで、ギュッと目を閉じ、歯を食いしばった。
両手とアゴはもちろん目蓋さえ痛んでくるほど、力の限り。
そうしてもなお、あの日から燈火に巣くった淫欲は収まらなかった。
何度も燈火の脳髄に、想像という名の淫毒を注射してきた。
あの布の、さらに下にあるぷりっとした綺麗な桃。
ぷっくりと膨らんだ肉丘。
柔らかな感触。
舌先で触れたときの、この世のものとは思えない美味。
すでに知ってしまっているそれらが、何度も燈火の中でフラッシュバックした。
なあ、もう我慢できねぇよ……♡
やっちまおうぜ♡
なぁ……♡
捕まったって、退魔師失格だっていいじゃねぇか♡
もう一回“あんなこと”ができんなら、もうそれで良いじゃねぇかよ♡
“あんなこと”。
それが何を指すのか、もちろん燈火にはわかっている。
つまり中級淫魔、淫夢のアルメリアと対峙したときの再現。
最高の快楽を伴った、最低の過ちの再現。
さらに燈火は力を込める。
両手は二の腕の皮が破れるほど強く、瞼は涙が出るほどギュッと力を込める。
食いしばった歯茎からは血がにじみ出す。
それでも淫毒は回っていく。
淫毒に犯された脳髄が、さっきの少女たちの空想を作り出す。
(おねえさん、ぱんつ見たいの-?)
茶髪のギャル少女が言う。
彼女はニヤニヤと笑いながら、値踏みするようにこちらを見ている。
(どーしよっかー♡ 変態さんはけーさつにツーホーしなきゃだよー?)
次は黒髪ロングの少女。
彼女はお嬢様然とした雰囲気を崩し、おもちゃを見つけた楽しみを隠す様子もなく茶髪の少女と話し合っている。
そして二人ともスカートの先を、これ見よがしにつまんでいる。
燈火の心臓がドクドクと脈打つ。
二人はニヤニヤと笑っている。
身長差のために燈火を見上げているが、その実、見下ろしている。
燈火のことを、いま自分たちがつまんでいるスカートを捲ったり、戻したりするだけでどうにでもなる存在だと見下している。
(見せてあげよっか♡)
(見せてあげましょうか♡)
二人が言う。
同時に、スカートを摘まんだ手を、ゆっくりと持ち上げていく。
ああ……もうちょっと。
もうちょっとスカートを捲ってくれれば、見える。
太ももが顕わになる。
それはあのときに見た最愛の妹の裸体と同じように染み一つない。
さらに持ち上がる。
もうちょっと。
あと、ほんの数センチ。
燈火の目はスカートの裾に釘付けになり、目が血走る。
すでに自身の陰部がドロドロになっているのがわかる。
下着だってベチャベチャに濡れているだろう。
でも、そんなことはどうでもいい。
いまは目の前の光景以外の全てがどうでもいい。
と、ここで。
((ダーメ♡))
少女がスカートから手を離した。
ふわりと擬音を発しそうな舞い方で、元の位置に戻ってくる。
顕わになっていた太ももが隠れてしまう。
ああ……。
もうちょっとだったのに。
露骨に不満そうな顔をした燈火に、茶髪の少女が言った。
(あとは本物の私たちに見せてもらったら? まっ、こんな変態みたいなこと、絶対に嫌がられるだろうけどね♡)
少女の幻影が消える。
後には公衆トイレの個室に籠もり、一人で陰部を濡らしながら体を悶えさせていた赤髪の女退魔師が残る。
彼女は耐えている。
退魔師として。
何より最愛の妹、赤坂真由の姉として。
「はぁ……♡ はぁっ……♡」
赤坂燈火は、ずっと耐えている。
***
「はぁ……っ、はぁ……、……?」
ふと燈火は周囲が暗くなっているのに気付いて、辺りを見回した。
いつの間にか電灯が付いている。
日が暮れて自動点灯機能が働いたのだろう。
時計を確認する。
あれから二時間も経過していた。
もうさすがに子供の姿は減っている時間だ。
下腹部の熱も薄れていた。
「はぁ……はぁ…………、フゥーーーっ……」
一度、深く呼吸する。
母から教えられた、平常心に戻るための呼吸術だ。
これを二度、三度と繰り返す。
次第に汗が引いていき、訓練のときのような“退魔師の赤坂燈火”の顔になる。
「ふぅっ……」
最後に短い呼吸を一つ。
大丈夫だという安心感が広がる。
もう淫欲の波は引いてしまっている。
と、同時に、今度は別の情動が湧き上がってきた。
それは分類するなら「怒り」というものだ。
(そもそも、何でアタシがこんな思いしなきゃいけねーんだ……?)
その怒りの矛作は、自らの家族に向けられる。
母が行方不明にならなければ、自分はこうまで苦しんでない。
あの日、母がちゃんと帰ってきていたら、父が変わることもなかった。
父が変わらなければ、自分はこうして頭がおかしくなって、妹に対してこんな感情を抱かずに済んだはずだ。
その結果、幼い少女に対して、抗いがたい情欲を抱いてしまうなんて“病気”にもならなかったはずだ。
父が変わったりしなかった場合も、やはり自分はこうまで苦しんでないだろう。
父が無理矢理に性の扉を開けていなければ、当然ながら燈火が性に目覚めるのは遅れていた。
そうであれば妹の洗濯物を漁るなどという恥ずべき行為を覚えることもなく、もっとまっとうな発散法法を見つけられていたはずだ。
ちゃんと普通に男を好きになって、その男と幸せな家庭を築く道もあっただろう。
今のように幼い少女にしか情愛をいだけなくなり、どう考えても実行できない妄想に取り憑かれては淫欲に耐える生活など、しなくて済んだはずだ。
妹が裸で誘ってくるようなことを言わなければ……
そこで思考を止める。
いくら言っても仕方がないことだ。
「フゥーーーっ……」
これで何度目になるかわからない深呼吸。
やはり二度、三度と繰り返す。
いつの間にか乱れていた息が落ち着き、心臓の動きも沈静化していく。
「フゥーーーっ……」
最後にもう一度。
これで今度こそ大丈夫。
「……帰るか」
燈火は独り言ち、個室のドアを開けた。
今日はもう疲れた。
帰ったらすぐに寝よう。
そんなことを考えながら。
得てして、そういう時ほど危急の仕事が舞い込むのが退魔師業だということを、このときの燈火はすっかり忘れていた。