やろうと思えばエッチはだれでもデキるっ!—1— 作:浅見智幸
4)互いを高める口唇愛撫
先にシャワー浴びた美智子がベッドで待っていると、腰にバスタオルを巻いただけの格好で岸田が浴室から出て来た。
ベッドのなかの美智子はブラジャーとパンティを着けて待っていた。
いきなり全裸を見られるのは恥ずかしいという思いもあったが、男性に 脱がす楽しみ を与える計らいの意もあった。
もちろん美智子が穿いている下着も、同級生たちが着けているようなモノではない。
スーパーの廉売品で購入したような安物ではなく、セクシーなレース飾りがついた高級品。
ベッドルームの照明は薄暗くしてあった。いくら好色な美智子でも煌々と明るい電灯の下で、・・・・・・というのは好まない。
肉体の手入れは怠っていないつもりだが、やはり70歳は70歳のそれなり。
それなりに乳房は垂れているし、股間に生えている陰毛もボソボソと頼りなく、自慢したいような裸体ではない。
それでも、躰が衰えているのは岸田も同じようなモノだった。浴室から出て来た彼の胸部の肉は落ち、お腹は逆に厚い脂肪がついていた。
「ワクワクするな」
照れ笑いを浮かべながらベッドに上がってきた岸田は、美智子にチュッと軽いキスをすると、さっそく美智子のブラジャーを胸から剥がして乳房を揉みはじめた。
歳のせいで張りを失った美智子の乳房はプリンのように柔らかく、男の手の中で自在に潰れたりひしゃげたりしている。
人によっては、その柔らかさがたまらなく心地よいと言う男性もいる。
「ああっ、いい気持ちだわ」
美智子は情感たっぷりの声で囁いた。
これも、相手を勇気づけるためのしぐさ。
ローションという切り札が美智子にはあるが、熟年のセックスでいちばん問題になるのは男性のほうの若さだった。
男も60歳を過ぎると勃(た)たなかったり、勃ったとしても充分な硬さにならなかったりで、ガッカリさせられることも多々あった。
双胸を揉んでいた岸田は美智子の胸に顔を埋めて、今度は乳房を舐めはじめた。
ペチャペチャ
と、卑猥な音を立てて舐めながら、片手で美智子のパンティをつかみ、無理やり引き下ろそうとした。
レースを破られては大変なので、美智子は自ら腰をわずかに浮かしてパンティを脱ぎ去った。
岸田の手が美智子の白い太ももの狭間をまさぐり始めた。
しかし、気分は高まっていても、なかなか彼女のアソコは濡れてはくれない。
「ねぇ、・・・舐めて」
美智子は鼻にかかった声で彼に甘えた。
「いいの?」
「舐めてもらうのが好きなのよ」
美智子が娘時代だったなら、こんな破廉恥なセリフはとうてい口にできなかっただろう。
しかし、残り少ない人生を考えると、恥ずかしがったり躊躇(ためら)ったりしているような悠長な時間はない。
夫である淳一からは、一度たりとも口で愛撫などしてもらえなかったが、浮気相手に教わっていらい、美智子は陰部を舐めてもらうのが大好きになった。
唾液が愛液の代わりになってくれるのと同時に、恥ずかしいところを舐められていると思うと、とても興奮するようになった。
岸田は掛布団をかぶったまま、モゾモゾと美智子の足元のほうに潜りこむと、アソコを舐めはじめた。
顔が見えないということが、二人ともに好都合だった。
美智子は、岸田よりずっと若いハンサムな男に舐められていると、妄想を逞しくできる。
そのような思いは、きっと岸田も同じだと思われる。暗いところで分かるのは女のいかがわしいアソコだけのはず。
岸田の舌が、ペチャペチャといやらしい音を立てると、彼の唾液が呼び水になって、少しずつ美智子の秘所にオツユが滲み出てきた。
「ああ、いいわ。とろけそう」
興奮した美智子が、腰を高くして岸田の口に陰部を押しつけると、彼はブハッと、苦し気に息を吐いて毛布を払いのけた。
いつの間にか、腰に巻きつけていた岸田のバスタオルがはずれ、性器がむき出しになっていた。
しかし、褐色に光るそれはまだ、ようやく半勃ちという状態だった。
「すごく興奮しているんだけど、・・・変だなぁ」
美智子の視線に気づいた岸田が、少しうろたえた声で言った。
「だいじょうぶ。私が硬くしてあげるわ」
彼を仰向けに寝かせると、美智子は岸田の股間にそうっと顔を寄せ、半勃ちの男根を口にふくんだ。
淳一との間では、尺八という行為の記憶は美智子にはまったくない。
彼女のような古い教育を受けた女性なら、商売女でもない限り、尺八の経験などないのが当たり前だった。
美智子に、尺八という口でも愛撫を教えたのも夫以外の男性。
始めこそ抵抗があったものの、背に腹はかえられないというのか、熟年男性のモノを勃たせるには、是非とも必要な口淫だった。
その結果、今では美智子も咥えたりしゃぶったりするのに慣れ、たいていの男性は彼女に感激してくれた。
「ああ、いい感じだ」
岸田も美智子の口による愛撫に陶酔したようだった。
ネバネバした唾液をタップリぬりつけた舌をからめ、唇で岸田の性器をしごいてやると、頼りなかった男根がだんだん硬く大きくなってきた。
「いいよ。奥さん、上手いんだね」
本当は入れ歯を外した方が上手くできるのだが、口がすぼんでしまったのでは、せっかくキレイに化粧した顔が台無しになる。
美智子は顎がつかれるまで、たっぷりと口で愛撫をほどこした。
これだけサービスしてやったのだから、倍にして返してもらわなくちゃ・・・・・・。
などと考えながら。
とうとう、その顎が痺れてしまうと、美智子は彼の股間から離れて、ぐったりと横になった。
覆いかぶさってきた岸田がすぐに交合しようとするのを、
「ちょっと待って」
と止め、美智子が枕元から取りだしたのは、密かに準備していたローションだった。
「これをお願い。私のアソコに塗ってちょうだい。そのほうが、ずっと気持ちいいから」
自分でさっさと塗るよりも、相手に塗らせたほうが、男性もより興奮を覚えることを美智子はしっていた。
「へぇ、こんなものを使っているの」
「あなたの 坊や にも塗りつけると、もっといいのよ」
素直に、ローションが入れられている小瓶を岸田は受けとり、手のひらにタップリすくい取った。
まずは、美智子の性器に・・・、それから自分の性器にも塗りつけたのだった。
ジャコウの香りがふたりの鼻腔をくすぐる。
「いいわ、きて」
美智子の甘い誘いを合図に、岸田は彼女の両脚の間に躰を挟み、ゆっくりと腰を沈めていった。
ローションのおかげで、彼の男根はあっけないほどにスルリと、彼女の蜜つぼに吸い込まれていった。
「これはいいや」
ヌルヌル、ベタベタした潤滑剤に助けられて、岸田はせっせと腰をうごかした。
まだ、ローションを使うことを知らなかったころの美智子は、無理な挿入で痛みを覚えることもあったが、今ではまったくそんな心配をする必要がなくなった。
「ああ、もっとっ!」
張り切って往復運動を繰りかえす岸田の動きに合わせて、美智子も下から腰を突き上げた。
じんわりと快感が彼女の肉体を支配していく。
その後も、岸田とは2度交渉を持ったが、美智子のボーイフレンドは彼ひとりだけではなかった。
おなじようにダンスを通じて知り合った男性が他にも3人。
ひとりの男性と、週に一回セックスするにしても、4人で週に4回。・・・・・・と言うのは少しオーバーだが、今でも週に2回くらいセックスしている美智子は、自分でも、
「スーパーお婆ちゃん」
だと自負している。
数年前からいかに鈍い夫の淳一でも、流石に美智子の男遊びに気づいているようだが、表立っては何も口にしない。
今さら余計なことで騒ぎ立て、離婚などということになっては面倒だと考えているようだ。
それは美智子も同じだった。
元々が見合い結婚で結ばれた淳一だから、今ではほとんど愛情のかけらもないが、この歳になっての離婚は・・・。その結果、貧乏生活を送るなんて真っ平なのだ。
世間的に見れば不倫している彼女が悪いということになる。
しかし、若い頃はしょっちゅう浮気していた淳一も、今では74歳になり、勃つものも勃たなくなっているのだ。
自分で妻を満足させられないのだから、
「文句を言われる筋合いはないっ!」
開き直っている美智子だった。
浮気したくてもできなくなった夫にくらべ、女の美智子は死ぬまで現役。
ローションさえあれば、男性のようにバイアグラだなんだと、目を血走らせる必要もない。
これはたぶん、出産の苦しみや子育ての代償として、神様が女性に与えてくれたご褒美だとおもっている。
淳一が見て見ぬふりをしてくれているおかげで、美智子は今でも大いに、第二の青春を楽しんでいる。
ただし、こんな美智子でもボーイフレンドには、他のボーイフレンドのことは内緒にしている。
と、いうのも、男というのはいくつになってもヤキモチ焼きで、数年ほど前に美智子は、いちど修羅場になりかけた経験があった。
地域の老人サークルを通じて知り合った68歳の秋山が、同じサークルの坂東とも付き合っていることを知って、怒り狂い、
「あいつを殺してやるっ!」
と喚(わめ)く騒ぎを起こしたのだった。
その時は、共通の知人が仲にはいってくれて、なんとか事なきを得たが、あんな騒ぎは2度とごめんだと美智子はおもっている。
男はいくつになっても、どうしてこうも子供っぽいだろうか。美智子自身はとっくに愛だの恋だのは卒業していた。
こんな言い方は身もふたもないが、今の美智子は肉体的な快楽さえ得られればそれでいい。だから、つき合う男性を選ぶときも、見かけや性格よりも、ズバリっ! ベッドで役に立つかどうかが判断の基準だった。
どんなにハンサムで優しくて気前のいい人でも、肝心のモノが勃たないのでは意味がない。
美智子が現在いちばん頻繁にデートしている相手は金沢という67歳の男性で、彼女がつけたあだ名は オッチャン。
チビ・デブ・禿げと、もてない男の三拍子そろった風采のあがらない男で、ダンスも下手だが、なんといっても助平で、アッチのほうがものすごく強いのが一番の魅力。
オッチャンは自前のモノのほかにも、バイブレーターなどを持ち出して、美智子を何度もイカしてくれるので、彼女は彼から離れられないでいる。
しかも、オッチャンはベッドの上だけでなく、お風呂場で挑んだり、わざと公園の木陰で美智子のスカートをまくり上げ、パンティのなかに手を突っこんできたりする。
「だめっ! 誰かに覗かれたらどうするの」
と美智子が言っても、
「そんなこと言っても、本当はうれしいんだろう?」
と、パンティの中に入れた手を巧みに動かす。
そんなふうにされて、美智子もつい感じてしまうものだから、どっちもどっちなのだ。
そのほかにもオッチャンはいやらしい雑誌やビデオを美智子に見せては、真似をしたがる。
そんなおかげで、美智子もこの歳になって性の知識がぐっと増し、ほかのボーイフレンドとデートする時にも役立っている。
こんな美智子を色惚けと揶揄(やゆ)する人もいるが、なんと言われようと彼女はいっこうにかまわない。
人間、70歳を過ぎたら、もう怖いものはない。娘時代に戦後の厳しい生活を強いられた美智子にとって、熟年になってやっと掴んだ自由奔放な生活。
いまの彼女は肉体が続く限りは オンナ でいようと心に決めていた。
昨年の温泉旅行に参加した小学校の同級生は、美智子の話に感化されたのか、そのうちの2人が社交ダンスを始めたらしいと聞いた。
「ダンススクールに、とても素敵な人がいるのよね。でも・・・、私より7つも年下だし、叶わぬ夢よね」
と美智子に電話してきたのは久美子。
「そんなふうに決めつけないで、ダメで元々のつもりでアタックして見なさいよ」
と美智子は久美子を焚(た)きつけた。
「え~? でも・・・、やっぱり無理よ」
と言いながらも、久美子はまんざらでもない口調だった。
声の感じも温泉旅行で会ったときより、グッと若返っていた。
きっと今ごろはゴワゴワの木綿の下着をやめて、セクシーなパンティなど買い込んでいるのではないかと想像して、ニヤニヤしていた美智子だった。
次に久美子が電話してきたときには、美津子のお気に入りであるローションの入手方法を訊ねてくるかもしれない。
たとえ叶わぬ夢でも、異性に胸をときめかせるだけでもいいのではないか。
美智子たちの世代はおおかたが見合い結婚で、夫婦生活においてもひたすら夫に服従を強いられてきた女性がほとんど。
老境に入った今こそ、若い頃に果たせなかった夢を追いかけてほしい。
それにしても美智子が気になっているのは、○○小町と呼ばれた郁代の現状。
一泊の温泉旅行で美智子の男性遍歴を聞いて、軽蔑をあらわにした彼女は、今ごろどうしているのだろうか?
きっと、愚痴ってばかりで、家族にも疎(うと)まれているのではないか。
何ごとも、
「終わりよければ、すべてよし」
何度でも言うが、美智子の持論は 女は死ぬまで現役っ!
今の美智子は他人になんといわれようと、郁代よりもずっと幸せだと言い切れる自信があった。
完