それはチョウマが『ガンダムジオラマフロント』の世界を襲撃する一ヶ月前でかつ某世界の某城にいて、自分の服装を整えるもといマントを羽織っていた時だった。
(ワ、ワシは死にたくない!!)
チョウマはその思念と同時に力を感じ取った。
「仕方がない。クソジジイだから放っておきたいが、俺が欲する力を持っているので生き返らせてやるか」
チョウマはパチンと指を鳴らすと目の前で空間の歪みが発生し、その中からローブを羽織った魔族の老人が姿を現した。
「お主、何者じゃ?」
「俺の名はチョウマ。『ガンダムシリーズ』、いや全ての世界の帝王になる男だ。そういうお前は誰だ」
「ヒッヒッヒッ、ワシの名前は異界召喚士じゃ。ワシを生き返らせてくれたことには感謝する」
「当然だ」
「お主がワシを助けたのは訳があるのじゃろう。教えてもらおうか」
「お前の転移能力や魔物を作って配下にした後に自在に操る能力は素晴らしいものがある。それを俺に教えて欲しい。そしてお前の配下をいくらか俺に寄越せ」
「それをしてワシに何の得があるというのじゃ?」
異界召喚士は断りたかったが、目の前の若造に殺されるかもしれないと思い、問いかける。それに対してチョウマは鼻で笑った後で言った。
「代価を求めるその態度は気に入らんがまあいい。先ずはお前の力の真価はお前の本来の世界でないと発揮できない仕様となっていることがわかった。それを解消してどの異世界でもお前の真価を発揮できるようにしてやろう」
「それから?」
「実験室をやろう…」
「それから?」
「次にお前を必要としている異世界の存在にお前を売り込んでやろう」
「ほう…」
「実を言うと俺も王子に恨みがある。その条件を受け入れたらお前に獲物つまり王子達に対して復讐の手助けをしてやろう。それでも断るなら今ここで殺すか元の世界でその主人公に殺すようにするだけだ。それよりも折角蘇って新たな道を切り開けるチャンスを得たんだ。それをムダにするのは惜しいと思うが?」
異界召喚士は戸惑った。条件は良いが、眼の前にいる自称帝王の男は信じられる存在ではない。とはいえ、力はかつての主ガリウスを凌駕している存在だ。
「わかった。お主の要件を受け入れよう」
異界召喚士は止む無く言った。
「賢い選択だ。安心しろ、見返りはある。お前の運命を変えてやる。何故ならお前の力を必要としている連中がいる。彼らのために存分に力を振るうがいい」
「わかった。ワシの修行は厳しいぞ、チョウマ」
こうしてチョウマは二週間異界召喚士の元で修行をして彼からあらゆる術を学んだ。ご都合主義のチョウマが約束を守る理由はその世界の知識を異界召喚士を通じて自分のものにすべく、彼を尖兵としたのだ。だが、異界召喚士もチョウマの腹を読んでおり、さらに技術を高めてチョウマが殺そうとするなら何らかの手段で対抗するつもりである。
二週間後
「おい、異界召喚士、お前を売り込む世界が決まった」
「ほう、それは楽しみじゃ」
チョウマの言葉に異界召喚士は笑みを浮かべた。
「ついてこい」
チョウマは目の前に空間の歪みを発生させてそれに異界召喚士と共に入った。それと同時に歪みが消える。
『おさわり勇者さま~異世界の勇者と地球のダンジョン~』の世界の妖魔の王の居城
酒盛りをしている妖魔の王の前に空間の歪みが発生した。その中からマントを羽織ったブロンドのメッシュの男と異界召喚士が現れる。
「貴様ら、何者だ」
「俺の名はチョウマ。全世界の帝王だ」
チョウマの答えに妖魔の王は訝しげな表情を浮かべた。
「何しに来たと思うのも無理もないな。答えてやろう。その前にお前の運命を教えてやろう」
チョウマが念じると妖魔の王の頭の中に映像が入り込んでくる。
「お前は暫くの間、この世界で王としての力を存分に振るうことができる。だがそれも長くはない! 何故ならお前が殺した鬼族の武人、その妹の姫巫女が仲間を引き連れてお前に引導を渡すからだ!!」
確かにアサアケによって首をはねられる自身の姿が頭の中に流れ込んでいる。
「本来なら俺がその運命を変えてやってもいいのだが、お前にとって人間に助けられるのは癪に障るだろうし、俺は俺で用事があるから出来ない。だから俺の師である異界召喚士がその運命を変えてやろう」
「断る! そんなのは大嘘だ。我の力は最強だ! お前たちの力なしで片付けることができる。チョウマとかいう下等動物が、死ね!」
妖魔の王がチョウマに殴りかかる。
チョウマはため息を浮かべると、手招きをした。すると、妖魔の王の動きが止まる。
「それは残念だ。お前が断るということは俺の手で滅びるという選択肢を選んだという事だな。ならばその願いを叶えてやろう!!」
チョウマが握りしめると妖魔の王の首が見えない力によって締め付けられるため思わず妖魔の王は叫び声を上げる。
「我は死にたくない! お前の言う通り異界召喚士の助けを借りよう!」
「それでいい。聞いての通りだ、異界召喚士。彼を助けてやれ」
チョウマの言葉に異界召喚士はコクリと頷いた。
「では妖魔の王、さらばだ。何らかの形でお前の所に赴いた際に朗報を期待している」
チョウマは指をパチンと鳴らすと、目の前に空間の歪みを発生させてそれに入った。それと同時に歪みが消える。
すると、妖魔の王の見えない力による拘束は解け、ペタリと地面に尻餅をついた。
「あの人間、只者ではなかった。この我がここまで恐怖するとは…」
「確かにのォ…」
妖魔の王に心底同情する異界召喚士であった。
それから二週間後、異界召喚士は勇者ギルドの依頼でパーティを組みダンジョン攻略から帰還したアサアケの前に現れる。
「キヒヒヒ!お主、元の世界に戻りたいんじゃろ?」
と不敵に言う異界召喚士だが
内心は(チョウマの若造にこき使われた八つ当たりをさせてもらう)と大人げないことを考えているのだった。
この話の続きは黒きオーラ様が執筆した「鬼の姫巫女、姦淫に散る」第一話を読んでね。