アクアくんは変わった。
ルビーちゃんとの旅行から帰ってきて、まず髪を切った。バッサリと。
顔が隠れそうな程長かった前髪も、縛れそうなほど長かった襟足もすっきりと短くして、前髪なんて眉の上くらいの位置まで切ってしまった。
ふわふわの髪のせいか、ひよこみたいで正直とても可愛い。
髪型が変わると少し幼く見えてしまって、彼が年下の男の子なんだということを強く意識するようになった。
特に弟さんがいるメムちゃんは庇護欲をいたく刺激されたらしい。
わかる、可愛いもん。
「なんでそんなに短くしたの?」
「…鏡見るたびアイツ思い出すから」
死んだカミキヒカルに似てきているのが嫌なのが理由らしい。理由がちょっと子供っぽくてそれも可愛い。
ちなみに、アクアくんは最初もっと短くするつもりだった。
「髪切ろうと思うんだ」
「ふーん、あーくん髪伸びてきてるものね。ロン毛にするつもりなのかと思ってた」
「アクたんなら似合いそうだね〜」
「おにいちゃん結構ズボラだから放置してただけだよMEMちょ」
「で、どれくらい短くするつもりなのよ?」
「そうだな……ボウズにするかな。プリズンブレイクみたいな…」
「「「やめて!!!」」」
よくぞ止めてくれたB小町と言いたい。
ボウズのアクアくんは少し見てみたいけど、やっぱり見たくない。
そういう自分に無頓着なところも放っておけなくて好きなんだけど。
それから、一番アクアくんで変わったのは性格だろう。
元々の優しさは変わらないけれど、彼に常に付き纏っていた鉛色の靄のような昏い空気が無くなって、代わりによく笑うようになった。
ルビーちゃんが言うには、お母さんが亡くなる前の、子供の頃よりも明るくなったかもしれないということらしい。
ちょっと何を言ってるのか不思議な説明に、「子供の頃より明るいなんてどうしてわかるわけ?前世の性格なんて言うんじゃないでしょうね〜?ブラコンも大概にしときなさいよ」と秒で噛み付いたのはかなちゃん。
かなちゃんはたまに一から十まで余計な事を口にする。
一言多いとはよく言うけど、十割余計な事を口走る人は知り合いではなかなかいない。
コレが原因でいつか炎上するんじゃないかとヒヤヒヤする。
ルビーちゃんはというと、そんなかなちゃんを憐れむような、優越感に満ち満ちた目をしながら「そうだねー先輩と出会った頃くらいの明るさかな。私バカだからちょっと説明変だったよ」とニッコリ笑みまで浮かべるものだから、完全に馬鹿なのはかなちゃんみたいな空気になって、あわや殴り合いかという空気になった。
無防備で少し放っておけないところはあるけど、今にも消えてしまいそうな儚さは無くなった。それを「独特の影があるところが魅力的だったのに」と惜しむ声もあるけれど、アクアくんが苦しむ事で得られる魅力なんて要らないし、そんなことで幻滅するような人に彼を語って欲しくもない。
以前のアクアくんも大好きで愛してるけれど、私は今の幸せそうなアクアくんが一番好き。
「いい加減座りなさいよ黒川あかね。今にもあーくん攫いそうな顔してるわよアンタ」
分別ある大人ぶっているけど、かなちゃんの目も鷹のように鋭く見つめている。
斜め向かいのソファに座るメムちゃん ──── の膝の上のアクアくんを。
「たはは…あかねもかなちゃんも怖いよぉ…」
口では昔と変わらず、一歩引いた苦労性を覗かせる物言いをしながらも、膝に乗せたアクアくんの頭を撫でる手を止めないメムちゃんには隠しきれない余裕がある。
ルビーちゃんがいたら確実に「メスの顔してる!」と言い放っていただろう。
「いつからなの?」
「アンタが来る30分くらい前かしらね」
あーくんの試験は今日が最終日だった。
医学部のテストはやはり大変だったのか、寝不足と疲労困憊な上にB小町の動画編集までしていたあーくんは、私が事務所に来た時点でかなり限界に来ていた。
『ちょっと、あーくん。フラフラじゃない。少しは寝なさいよ』
『わかって…る』
作業する手を少しも止めず、止める気配すら見せないあーくんに、今更ムキになる私ではない。
言って聞くようなヤツではないことはとっくに知ってる。
無理を無理じゃないと言い張り、無理の限界を超えるのがこの男だ。
昔よりも随分色々変わったあーくんだけど、変わらない面もある。
その一つがこの頑張り過ぎるところだ。
確かに、今の彼は頑張らなくてはいけない“理由"があるのだけれど。
彼は責任感が強くて非常に頑固な人だ。少しくらいのお小言で仕事の手を止めたりしない。
そして、そんなことは私とてわかりきっている。
だから、このセリフは私の本音であっても「本命」ではない。
『まったく…し、仕方ないわね。じゃあ、少しだけ仮眠したら?15分したら起こしてあげるわよ』
膝をポンポンと叩いてみせる。
膝枕だ。
散々セックスする関係になっておいて今更カマトトぶってんじゃないわよ、と我ながら呆れるが、こういう恋人がイチャイチャするような行為は未だに照れてしまう。
私と彼の関係が友達から初エッチに一気に段階を飛び越えてしまったからだろう。
あーくんは頑固なのは変わらないが、一度突っぱねられた要求のハードルを下げて提案すると大抵受け入れてくれる。
私もあかねもルビーもMEMもその術をこの一年近い時間を経てすっかり習得していた。
そもそも、人の善意を無碍に出来ないコイツが、こっちが心配して寝るように言った言葉を蔑ろにした時点で気にしない筈がない。
だから「仮眠」とわざわざ強調してやったのだ。
まったくめんどくさくて可愛い奴め。
あーくんはぼんやりとした目で(相当疲れてるわね)私の膝と手元のPCをのろのろと見比べていたが、やがて私の膝で視線が止まった。
(勝った!!!!!!!)
内心狂喜する。
ここんところアクアはテスト期間で部屋か図書館に篭りきりで、事務所にも「この部屋」にも姿を現さない。
正直言って飢えていたのだ、あーくんに。
ガッツリ不足していたのだ、アクアニウムに。
補充させろ、補給させろ、捕食しろ。
有馬かなのメスが雄叫びを上げる。
女だって性欲を持て余すことなんてあるんだから、ケモノのようになっても仕方ないでしょう。
あーくんがフラフラと立ち上がるのを、生唾を飲む勢いで見ている時だった。
『あれぇ?かなちゃんどったの?』
『MEM!』
奥の部屋から出てきたのは、プリン頭から完全に地毛の黒髪になって、寧ろ幼く見える嘗てのメンバーだった。
襟元が微かによれているのは、授乳を終えてようやく寝かしつけたばかりだったのだろう。
あの子眠るまで服をきゅって握るものね、そこが可愛いんだけど。
『かなちゃん今日撮影あるんじゃなかったの?』
『機材トラブルで中断よ。私の分の撮影は終わってたから帰ってきちゃった』
『うわぁ〜それはスタッフさんもご愁傷様だぁ』
機材トラブルにやって生じる各方面への謝罪や出演者のリスケ等、配信者のMEMは裏方の苦労を知るだけに彼らに待つこれからの業務に深く同情したのだろう。
『アクたん、まだ寝てなかったの?』
『ん…』
『少しは寝なさいって言ったよね?』
『ごめん』
苦笑しながらアクアのそばに寄り添うと、MEMは実に慣れた手付きでアクアの手を握ると自分に緩やかに引き寄せる。
『あ』
すとんと音も無く、ソファに腰掛けるMEMに吸い寄せられるようにアクアはその頭をMEMの膝の上に乗せてしまった。
『時間になったら起こしてあげるねぇ』
『ありがとう ──── 』
未だに馴染まないMEMの本名をもにょもにょと口にしながらアクアはあっさりと眠りの世界に落ちて行った。
後に残されたのは、聖母のような眼差しで膝の上の恋人の頭を撫でる新米ママと、スタンバっていた膝の上にやり場の無くなった手をそっと戻す再ブーム寸前の天才女優(元売れっ子天才子役)だけであった。
『この泥棒猫ォォォ!!』
『大声出さないでせっかく寝かしつけたのに起きちゃう!!』
「メムちゃん…」
「あかね、かなちゃん酷いよね」
「うん、酷いよこの泥棒猫」
「あかね!?」
確かにかなちゃんの怒りは、何も知らない第三者からすれば言い掛かりとしか見えないだろうけれど、"私達"からすればとんだ盗人行為だ。
ただでさえ、ここ最近の私達は忙しくてアクアくんを摂取出来ていなかったのに、そこに来て目の前で掻っ攫って行ったのだから、手が出なかったことを
「ルビーちゃんは…こっちにもう来ると思ったけど」
「ルビーならあっち」
かなちゃんの指差した部屋で全てを察する。
またか。
「あの子、ホントメロメロね」
「甥っ子が可愛いんだろうね。最近だと私より寝かしつけるのもおしめ取り替えるのも上手くて助かってるよぉ」
たははと笑うメムちゃんの表情には、疲労が色濃く滲んでいた。
ルビーちゃんはこの夏に産まれた甥っ子にすっかり骨抜きにされてしまった。
お母さんは大変だと思うけど、同情はしきれない。
だって隠しきれない幸福感で満ち溢れているから。
「チッ」
「かなちゃん怖いよぉ…」
「かなちゃんせめて舌打ちはもっと聞こえにくくやらないと」
「あかねもフォローになってないよねぇ!?」
「アイドル卒業した私が一番になるつもりだったのに」
「それを言ったら私の方こそ業腹だよ」
だって、確信したんだもん。
あの日、歩道橋でアクアくんと愛を伝え合った夜に。
あ、これ私がアクアくんの正妻確定だって。
映画だったらエンディングが流れて終わるところだったよ。
アクアくんがみんなを集めて今までの自分の振る舞い、復讐劇に巻き込んだこと、死のうと自暴自棄になっていたこと、みんなに文字通り体を張らせてしまったことへの謝罪と感謝を告げた時も、ずっと隣をキープしてたんだよ?
『こんな俺を引き留めてくれたみんなに報いる為にも、俺は生きるよ。復讐もアイも言い訳にしない自分自身の道を進む為に。俺なんか、なんて言わない俺になれるように頑張るから。もし、構わないなら、これからも側にいてくれると…嬉しい』
はにかみながらアクアくんがそう言っていた時、彼がようやく本当に復讐からもアイさんの呪縛からも解き放たれて未来を向き始めてくれたことが嬉しくて、ルビーちゃんもかなちゃんも、メムちゃんもみんな泣いてる時にも、私は星野あかねとして、前に進み始めてくれた夫の心境の変化に涙する妻くらいの気持ちでいたのだ。
まさか、その場でメムちゃんにつわりが来るとか思わないじゃん?
私とルビーちゃんでセッティングしたこの部屋にアクアくんを閉じ込める前に既に授かってたとか反則だよね?
私なんて穴まで開けたのに。
もう、そこからはトントン拍子。
B小町の東京ドームライブ。
からの、メムちゃんの長期活動休止宣言(という名の産休育休)。
アクアくんの医学部受験に向けた猛勉強。
からの、まさかの国立医学部現役合格。
復讐の呪縛が解けてやるべきことに集中したアクアくんのスペックの高さにみんな驚きや尊敬を通り越して引いていた。
せっかく近場に広い部屋を用意したのだからと、この部屋を逢瀬を重ねたり、絶対に外部に出さない場所に使うことになったり。
その部屋がメムちゃんが事務所作業する時の託児所にもなるとか。
本当に目まぐるしく変わる変わる。
私もかなちゃんも15年の嘘のおかげでお仕事が増えたから、余計にヤキモキする。
だって、私達が仕事で忙しい間もメムちゃんはアクアくんと過ごすことが増える。
もしかしたら、私が主演するドラマでキスシーンを流しながら「アクたん、私達も負けてられないね」なんて言ってアクアくんとキスしているのかもしれないのだ。
私が、お芝居で、特に好きでもない男と、キスをしている時に、私のお友達の
かなちゃんも同じことを考えていたらしく、「オフの日に一日中あーくん独占させてもらっても割に合わないわ」と言っていた。同感だ。
一日中繋がりっぱなしくらいはしないと気が済まない。
忙しいのはルビーちゃんも同じ、というか私やかなちゃんと違って本当に多岐にわたる活躍で、休養が取れているのか心配になるレベルだ。
ただ、私達と違うのは、ルビーちゃんは悔しいとかよりも、甥が出来たことが素直に嬉しいみたい。
そして、私達が仕事に忙殺され、アクアくんが医大生としての勉強と、時々くるタレントのお仕事で駆け回っている間にも、メムちゃんのお腹は順調に大きくなり、そして生まれたのがこの夏のことだ。
もう、悔しいことに、可愛い。
黒髪のアクアくん、て感じだった。
ルビーちゃんは一目惚れしたみたいにメロメロで、かなちゃんは流れ出た鼻血をこっそり拭いていた。
私もなんでこの子を産んだのが私じゃないのだろうかと、もしも、いるのならこの運命を握っている神に訴えかけたいくらいだ。
「ま、私的には〜?ゴムに穴を開けるなんて姑息な手段に出たのにあーくんの子が出来なかったどっかの誰かさんの悔しがる顔が見られたのは気分爽快だったけどね〜」
「くっ…」
相変わらず的確に人の痛いところを突いてくる。
でも、姑息なのは百も承知なので何も言えない。
いや、言わせてもらうなら、あの時は少しでもアクアくんをこの世界に引き留める理由が欲しかったことが私をあんな卑怯な手段に走らせた一番の動機なのだ。だから大目に見て欲しいというわけでもないけれど。
「アンタの考えてることくらいわかるわよ。私だって正直言ってその手があったかと思ったし、先を越されたとも思ったのよ?」
「かなちゃん…」
「実行してない私と実行したアンタじゃ違うけどね」
引っ叩いてやろうかと思った。
「大体、そんな『アクアくんが生きることを望む理由になれるなら、私喜んで悪女にでもなるわ!』みたいないい女ぶった顔してるけどさぁ、真っ先にあーくんの赤ちゃん産んで正妻マウント取る気満々だったんでしょ〜〜?ざーんねーん。まんまと
「グフッ」
「かなちゃん、それくらいにしようよぉ…」
「フン、かなちゃんなんて私とルビーちゃんがお情けで誘わなかったらアクアくんと結ばれるどころか、枕営業したって思われたままアクアくんに永久お友達認定受けてたくせに。良かったよね、ビッチ処女優の誤解が解けて?少しくらいは感謝して欲しいな〜」
「ガハッ」
「あかねもやめたげてよぉ〜」
メムちゃんは小声で宥めようとしてくるのだけれど、膝枕していたアクアくんの顔を下腹部にくっ付けて抱き寄せてるのだから、その言葉は煽られているようにしか聞こえない。
かなちゃんのこめかみもひくついている。
「昔は応援してくれてたのに…
「ウグッ」
「あーくんに避けられてる時相談に乗ってくれたのに…
「ハウッ」
いじめ過ぎかもしれないけど、これくらい許して欲しい。
だって、メムちゃんこんな女の醜い争いとは無関係みたいな顔してて、妊娠中の頃いかにアクアくんがスパダリだったのかを平気で惚気てくるんだもの。
これくらいしないと割に合わない。
「さっきから聞いてれば人のこと泥棒猫、泥棒猫って好き放題言ってくれて…大体、2人がそんな風にガツガツしてるからアクたんが疲れて癒しを求めてくるんだよ?わかってる?」
なんの偶然か、アクアくんがギュッとメムちゃんの腰に腕を回してより強く顔をメムちゃんのお腹に埋める。
小さい男の子が大好きなお母さんに無意識に甘えるように。
その仕草が、心底羨ましい仕草が、メムちゃんが癒しだと言っているようで本気で悔しい。
かなちゃんはともかく、私ならアクアくんを甘えさせてあげられる自信があるし、実際現在進行形で甘えさせて色々してるけど、メムちゃんには劣る。
一人っ子の私と違い、弟達の面倒を見てきたバックボーンを持ち、赤ちゃんを産んで本当の意味でママになったメムちゃんにこそ、マザコンアクアくんがより甘えたくなるのだろう。
悔しいことに。
もっとも、ミヤコさんがここに加わるとミヤコさんのダントツの優勝になるのだけれど、ミヤコさんと母性比べしろというのはルール違反だ。
母親という例外を除けば、いつまでも問題児なかなちゃんと甘えん坊の妹なルビーちゃん、そして母親役をするにはあまりにも女としてアクアくんにとって魅力的な私では、年齢的にも成熟した母親らしさを持つメムちゃんには潔く敗北を認めるしかない。
「アナサーの癖に…」
だけど、潔さの対極、未練がましく、往生際の悪いかなちゃんには関係が無かった。
「……ん〜〜?今よく聞こえなかったなぁ〜かなちゃん。アラサーって言った?」
「アナサーよ、アナサー。アナルをほじられるのが癖になってるアラサー」
「ちょっ、な、何言って」
「あの部屋で散々開発過程聞かせておいて何言ってるのよ。どうせ妊娠中にかこつけて散々そっちでやってたんでしょ!あーあ、かまととぶるのはあかねだけにしなさいよ?」
アナサーって…ふはっ、ダメ堪えなきゃ…メムちゃんに悪い…ふふっ
「…ま、まぁ〜確かに?ちょっとかなちゃんにはまだ刺激が強かったかな。マグロリなかなちゃんには」
「マグロ…リですって!!」
「アクたんに調理してもらうのを待ってるだけのマグロリさんだもんねぇ」
「誰が言ったぁぁ!」
「あ、ルビーが冗談で言ってたけど…本当だったんだ…かなちゃん、アクたんはかなちゃんに振り回されるのが嫌いじゃないから良いけど、二十歳過ぎてマグロでロリっぽく甘えるのは…ちょっと…ねぇ?」
ぐっふっ…んふふふふふ…ダメ、ダメだよあかね、笑っちゃ…マグロのロリでマグ、ロリって…上手いこと言うなぁ2人とも。
「ねぇ、もうそろそろやめようよ。隣で赤ちゃん寝てるし。みっともない喧嘩は…も、もうやめよう…ふふっ」
「今笑いやがったわねアンタ!」
「そんなあかねの哀れみの目初めて見たよ!!」
「アナサー…マグロリ…って…ふふっ」
「アンタ自分は性癖と無関係ですって澄ました顔してるけど、アンタが一番エグいんだからね!」
何て失礼なんだろう
「別に私とアクアくんはお互いに気持ち良くなる為に勉強熱心なだけだもん。メムちゃんみたいにマニアックでもなければ、かなちゃんみたいに受け身なだけとも違うから。エッチは恋人同士の大切なコミュニケーションだから、全然恥ずかしくありませんから」
性欲が強い?そんなのこの一年ですっかり弄られ慣れたよ。
最初は比較する相手もいなかったから自覚が無くて、周りの話を聞いていく内に、私ってもしかして凄く性欲強いかもと落ち込んだこともあったけれど、今は気にしていない。
アクアくんが「あかねは独りよがりじゃない、俺のことを悦ばせようとしてくれてるのがわかるから全然気にならない。寧ろ、俺があかねをもっと欲しいって気持ちに応えてくれてるから、俺は嬉しいんだ」と言ってくれた時から吹っ切れた。
この私の欲の強さはきっとアクアくんと強く求め合って、深く繋がり合うためのものなのだと理解出来たから、少しも恥ずかしくなんてない。
「不意打ちでアイになりきってイカせてから、怒ったアクアにお仕置きックスされるのが好きなんて、十分マニアックで恥ずかしいわよ」
「誰に聞いたのー!?」
「きっとエゲツないアンタのことだから、あーくんがイキそうになる寸前にアイになりきって『アクア、がんばれ⭐︎がんばれ⭐︎』とか何とか言って、母親でイッた罪悪感にキレたあーくんに乱暴にされる時には『ごめんね、ごめんなさいアクアくん。あかねはいけない子なの。悪い子のあかねに強くお仕置きして!』とかノリノリでやってんでしょ?」
「何で一言一句合ってるの!?かなちゃん、誰に聞いたの!」
「あ、半分ノリで言ったけどマジだったんだ…うわぁ〜」
「あかね…凄い…ね?」
「うわぁぁぁぁぁーーん!!」
「アンタ…濃いのは下の毛だけにしときなさいよ?」
「下の毛は関係無いでしょ!!!」
ちゃんとお手入れしてるから!
「あのさぁ…もうちょっと静かにしなよ。起きちゃうでしょ?」
隣の部屋からルビーちゃんが迷惑千万と顔中に書いた表情で出て来た。
ずっと甥っ子の寝顔を眺めていたのだろう。
「3人ともいい大人なんだからさ…ケンカの内容が醜過ぎて心底引く」
「「「うるさい、おしっ娘」」」
「気持ち良過ぎてすぐ漏らすおしっ娘のくせに」
「アクアくんにそれを見られて興奮するのはいけない癖だよ?」
「ルビーもうちの子と一緒にオムツ履く?」
「やっぱり私にはおにいちゃんだけいればいいわ。お義姉ちゃんなんていらなかったんだ」
赤ちゃんが起きて泣き始めて、ミヤコさんに叱られるまで言い合いは続いた。
とりあえず、途中から目が覚めてたのに、関わるまいと狸寝入りしていたアクアくんには4人で朝までじっくり「お話」をした。