休日の昼下がり、女子大学生にしてプロ音楽家・湊友希那とその恋人の男――彼はリビングでくつろいでいた。食事を終えてから紅茶を淹れ、雑多な会話に花を咲かせていた。話題は互いの仕事や友人関係に関する話題に、次のデートの予定など多岐に渡った。
穏やかな日々だった。大きな窓硝子から陽光が差し込み、その白色の優しい熱は室内の様子を温かく映し出している。なんの不安感もない緩やかな空気感だったが、そのような雰囲気は彼のひと言ですっかり打ち切られた。
「あなる、舐め……?」
彼からの提案を聞いた友希那はそれをそのまま復唱した。紫色のタイトスカートに灰色の長袖、胸元に黒いリボンを付けたおとなしい服装だった。ぎこちない口ぶりだったが表情の中に困惑した様子はあまりなく、ただじっと、彼のことをみつめていた。
「あ、ええと……」
彼はその純真な視線に追い立てられるように焦って口元を揺らした。はやく解説しなければ。解説したいと気持ちの部分が急いている。黒色の長袖ズボンに小豆色の長袖シャツを着ていた。
「まぁつまり、僕のアナルを舐めてほしくて。あでも――」
「待って」
無理なら強制はしないから、といいかけて友希那が口を開いた。彼はその口調に過度に反応し、肩幅を尖らせて友希那を視た。
「ごめんなさい。あなたのいう『あなる』というものが、よくわからないのだけれど……」
友希那は彼から目を逸らした。眉の部分を歪ませていた。自らの脳内記憶の中で『アナル』という単語を必死に検索し検討しているようだった。一応『アナル』と口にしているものの、その発音が正しいのかさえまだ手探りの状態といった様子だった。
「『あなる』というのは、何を意味しているの?」
友希那はずいずいと訊ねてきた。何か無遠慮というか堂々とした質問の様子だった。何か羞恥心だったり、彼を 責する予感は皆無だった。ただ純粋な疑問への回答を彼に求めている様子で、今度は彼がぎこちなく口を震わせた。
「お、お尻……」
「お尻……?」
自分の悪戯を白状するみたいに答えると友希那はポツリと復唱した。
「それじゃああなたは、私にお尻の穴を舐められたい、ということかしら?」
「うん……」
「それは、その、気持ちよくなれるものなのかしら……?」
「とっても……」彼は呟いた。「してもらったことないけど」
「そう……」
彼は小さく俯いていた。今、ほとんどマニアックな性的知識を持たない友希那の堂々とした態度がむしろ自分の愚行を際立たせているように思えていた。顔から火が出る、などという表現があるがまさしく熱湯が垂れ出てしまいそうな強烈な羞恥に苛まれている最中だった。
「あの、友希那――」
「わかったわ」
「え……?」
彼が額を持ち上げると友希那は、先ほどのあの悩んでいるような様子はどこへ消えたのか、唐突にきっぱりと了承した。
「やってあげるわ。アナル舐め」
友希那は正確無比に答えた。今度は自信を持って『アナル』と発音していた。そこに羞恥心の類はやはり通っていなかった。ただ、まるでプロ音楽家として仕事を請け負う時と変わらない態度でアナル舐めを許容しているようだった。
彼はそんな予想もしていなかった友希那の態度をじっくりと覗き込んだ。
「いいの?」
「ええ」
「ほんとに?」
「当然よ」
快活に答える友希那を前に彼は何か腹部の内側がぐっと重たくなる感覚を得ていた。それは感動と驚愕が均等な大きさでせめぎ合う心地だった。当然、とまで言い切る友希那のことが大きく視えていたし、感謝しているが、こんなに清らかな子に尻穴を舐めさせることが猛烈な禁忌のように思えてきた。
友希那はそういった彼の拮抗する心情を貫くように勇ましかった。
「恋人であるあなたがそれを望んでいるのなら、全力でそれに答えるだけよ」
堂々と宣言する友希那に対し、彼は全て任せてみようと安心していた。
アナル舐めについて、彼からそのようなプレイを聞いて友希那は別に驚かなかった。
(そういうものが好きなのね……)
などと友希那は平然に構えていた。嫌悪感もなかった。他の男性の性的な好みや事情を知らないため比較することもできず、心の底から『そういうもの』として認識していた。
そのため今、ベッドの上で四つん這いになる全裸の彼の真後ろに位置しても友希那は特別に顔をしかめることはなかった。
(けれど……)
だからこそ友希那は少し想像できないことがあった。
今、眼前に彼の尻がある。
ここは友希那自身の部屋だった。落ち着いたフローリングに白色の壁、音楽系のポスターなどをいくつか貼っており、家具に関しては黒色を基調としたものが多かった。カーテンが艶やかな紫色で、それは寝具もほとんど同様だった。
サイドテーブルを備える友希那のベッドは巨大だった。
毛布をめくればその下に真っ白なシーツが視え、今はそのシーツを彼が少し踏み荒らしている。友希那と共に室内に入った彼は真っ先に衣服を脱いだ。全裸になるとベッドに乗り上げようとするので、友希那が毛布を退かして案内した。彼は枕を前に犬によく似た体勢になると「ほら、友希那もきて……」などとまるで自分がベッドの所有者みたいな目配せをした。友希那はサイドテーブルをちらりと視た。木目調の丸いサイドテーブルの上には水が入ったペットボトルが置かれていた。友希那はコクリと頷き、それから何も脱衣をせずベッドに乗り上げた。二人分の軋みが過ぎて友希那は彼の後続に跪いた。少し動くだけでスカートとシーツがこすれて音が鳴った。友希那は居住まいを正して彼の尻を認めた。プリッと差し出された尻の皮膚は友希那のそれと比較すると浅黒く焦げていた。尻の中心部分は当然、窪んでいるというか溝のようなものが通っており、そのさらに中心部分には尻穴があった。尻穴は穴というより溝、あるいはもはやシワのように視えた。汚れは不自然なほどなく、舐めてもらうため事前に清掃したのかしら、などと友希那は考えた。
そして友希那は彼の尻を前に彼の性的な好みについて少し疑問を感じていた。
(お尻の穴を舐めるなんて、不思議ね……)
それは自然と考える疑問のように思えた。だって、尻の孔の内側を舐られて、それで性的に気持ちいいのかしら。友希那としてはその部分が上手く想像できず、唖然としてしまうのが正直なところだった。
「ゆ、友希那……」
彼の声がする。期待感によって震えた質感だった。
「友希那、お願い……」
尻をふりふりと震わせる彼の懇願だった。友希那はそのひくついた尻穴を眺めて堅苦しいものを飲み込み、無言のまま動き出した。
それから友希那はあらゆる所作を躊躇せず行った。
彼は両手、それから両肘を強くベッドに押し込んで友希那のことを待ち構えている。友希那は両手を伸ばし、バスケットボールを持つように尻を手のひらで固定した。すぐに胸元を彼へ寄せ、首を前に伸ばして顎先を突き出した。唇の隙間から優しく吐息が噴いており、その熱気が先行して触れたらしく彼は身体をビクリと震わせた。飛び跳ねるような痙攣のような動きだった。友希那は軽く叱責するみたいに両手を力んで彼のことを固定し、尻の奥へ口で向かっていった。
ねっとりと唾液で充満した唇を友希那は突き出すように開き、その奥から垂れ出る赤色の舌でまずは尻穴のふち部分をなぞってみた。
「んっ……」
甘い声で反応したのは彼だった。友希那の粘膜が尻に少し触れただけで身体を強張らせている。友希那はさらにぎゅっと彼の尻を握った。別に尻肉くらい、少し雑に扱っても彼だから問題ないわ、などと軽々しく考えて友希那は顔を沈ませた。思っていたほど舌が尻に触れておらず、しっかり舐め啜るためにはもっと顔を尻に近づける必要があると友希那は判断していた。彼の尻を握り、シーツの上で曲げた両足をくいくいと揺らして身体そのものを前進させた。息を漏らしながら肩幅を彼へ狭めてゆくと、次第に垂れかかった頭髪がするりと胸元に落下して自由になった。
友希那はそれからさらに意欲的に彼の尻穴の周辺を舐めた。二つ膨らむ尻の肉のその間の部分に舌を隠し込むみたいに必死に押し込んだ。
唾液を塗り付けて湿らせるような動きを連続させると彼はまた反応した。人生はじめてのアナル舐めに困惑しつつ快感を意識しているようだった。(やっぱり、変わっているわね、こんなの……)友希那はさらにアナル舐めの不可解さに思考を巡らせつつ、それでも舌先の動きは淡々と均一に続けた。舌の表面をできるだけ多く彼に触れさせるように意識しているため唾液の分泌が激しく、その湿り気は友希那の口周辺にも及んでいた。べちゃべちゃとした汚れは顎先にまで滴り、いくつかは透明な糸としてツゥーッ、とシーツに垂れた。
「うう、気持ちいいっ!」
彼が呻いた。喉から立ち上る低い声だった。
友希那は尻穴の位置にて口を窄めた。口の中には大量の唾液が溜まっており、友希那はそのねっとりと温かい体液を口の中に含みながら彼の尻穴に唇を押し込んだ。粘膜の表面で唾液がこすれる音がする。それは口と口の触れ合いではないというだけでほとんど接吻だった。窄められた唇は彼の尻穴に貼り付いており、友希那は外気に触れていない特別に温かい唾液を使って彼の尻穴を揉み込んだ。
「うう、それすごっ……」
友希那は彼の尻穴を舐め上げながら両手を少し動かした。左右にそれぞれ盛り上がる尻肉の表面に、手のひらそのもので円を描くみたいに緩く動くことで彼のことをいくらか甘やかした。彼の今の視界には誰も映っていなかった。友希那もまた彼の顔を視ることはできなかった。二人は尻と舌で確かに触れ合っているが視線で触れ合っていなかった。そのため友希那のほうから積極的に尻肉を撫でることで(私はここに居るわ)としっかり彼に示して安心させた。実際、そうやって体温を与えることで彼の中の痙攣は治まった。友希那は次に何かさり気なく相手のポケットに手を入れて盗みを働くみたいに両手を降下させた。手のひらで彼の臀部を撫で下ろす指先は、すぐに前方向に突き出る股間に集結して陰茎を包み込んだ。
(勃起してる……)
友希那は左右からしっとりと彼のものを包んで触診していた。それはリコーダーやフルートを演奏する際の指先の動きとほとんど同じ所作だった。彼の陰茎は巨大化していた。少し触れるだけで独特の熱が絡み付くみたいに皮膚に流れてくる。表面は意外にもつるつるしているくせに、時おり生き物らしく手の中で跳ねる様子が相変わらずで、友希那は彼がこのアナル舐めで本当に性的に興奮しているのだと実感した。
友希那から視てつまり陰茎とは蛇口と同じだった。
ハンドルをひねるとその分だけ水が流れてくる。そんな構造だから、彼からの「竿を手でしごいてほしい(手コキ)」だったり「口で咥えて啜って(フェラチオ)」などの行為は友希那としても連想しやすかった。そこを刺激すればそこから相応のものが飛び出てくる。その放出が男の人にとっての性的発散で、彼はそのためならなんでもやる。だが尻穴というのは何か友希那にとって想像しづらかった。だって竿ではない。穴の周辺や穴そのものを刺激すれば勃起して、射精まで行うことができるのかイマイチ不安だった。
しかしこうして素手を潜り込ませて確認してみると彼はいつも通りに発情状態にあるようだった。
「ママ、もっとして……」
彼が背中を軽く反り上げて呻いた。甘ったるいその声色がさらに彼が発情している証拠のように思えた。
そんな犬のような恋人の背後に付属する友希那は、鼻からもうもうと熱気を吐き捨てながら舌先を大きく動かした。口元が全て彼の尻に付きっきりで呼吸が上手くできていなかった。鼻呼吸をすると彼の尻のにおいが強く脳まで持ち上がる。こんな息苦しさというか、分厚い違和感によって息継ぎが困難になる感覚について友希那は覚えがあった。それはライブだった。大量の高難易度楽曲を連続して歌った時のあの、脳が干上がるほどの感覚が彼へのアナル舐めにて再現されていた。
友希那は尻穴に蓋をしてしまうように、鮮やかな赤色の部分をべっとりと彼に押し込んで一気に舐め上げた。
「もっと……」すると彼は背中を震わせながら呻いた。「もっと、ちゅちゅして……」と連呼した。唾液が溜まった声色だった。友希那は瞼を閉じてより深々と彼の尻に沈みこんだ。奥まった場所に尻穴があり、友希那はその場で唇を窄めて突き出した。
「んあっ!」
ひくひくと縮こまっている穴にふかふかの唇が激突すると彼は甘い声で反応した。
友希那はすぐに尻穴から唇を外さなかった。激突して肉厚がひしゃげて、それで少しじっとりと停止した。押し込むようにいくらか力んだ後にようやく友希那は軽く後退した。大量の唾液を含んだ桃色の唇は尻穴の真上の位置でぶっちゅりと潰れ、その柔らかさが彼へしみ込んでゆく。友希那は顔を少し後退させた。唾液が引きずられる粘っこい音が鳴った。友希那は少し息を吐いた。その熱風は口のすぐ近くに位置する尻穴に触れ、彼の臀部がざわめいた。友希那は躾けるように両手で竿を引き絞り、そのまま目を閉じて口元を彼へ沈めた。何か唇の柔らかさを覚えさせるみたいに強く押し込むとすぐに離れた。いくつかの唾液の糸を緩やかに引き、友希那はまた彼へ唇を押し込んだ。唇は彼から離れる度にいちいち元の形に戻るが、彼に触れるとほとんど同じ要領でひしゃげた。
「んっ、んっ、んんっ……」
友希那は連続でいくつか彼の尻穴に唇を押印した。目を閉じ、なめらかな所作で彼のシモの部分に献身的だった。少し啜り、それから友希那は胸中で(そろそろね……)と計画を立てた。両手で掌握する竿を握り込み、駅から発進する汽車のように少しずつ速度を上げてやがてそれは男根を慰める奉仕となった。また、友希那は口元での所作についても新たに行動を起こしていた。
「んんっ……」
友希那は舌先を少し尖らせた。とはいえ柔らかい肉厚で構成された舌に何か鋭利な雰囲気はなく、ただ赤色がうねりつつも少し細身になっただけだった。友希那はそういった自前の『触手』で彼の『入り口』を探り当てた。すでに何度も唇でぶちゅぶちゅと触れ合っているため位置など簡単に探り当てることができた。友希那は喉奥から熱の籠った息を意識して吐き、唇でまたさらに数回ほど穴のふち部分を舐った後、舌先をそろそろと伸ばして穴の中に滑り込んだ。
「うああ、入って、くるっ……!」
にゅとん……、というほとんど抵抗感のない進入だった。
尻穴周辺に唾液のにおいがこびり付くほど舐ったので、いよいよ彼の尻肉はほぐれている。そのため穴の入り口部分に舌先を添えた。優しく、けれど少し強く押し込むと周囲の肉は唐突に避けてなめらかに舌は入り込んでゆく。友希那の舌は唾液を含みながら進軍した。尻穴の、内側の肉を必要な分だけ押し退けて奥へ奥へと流れ込んだ。友希那は舌の全体に彼の味を感じていた。舌が圧迫されている。今まで、どんな異物も入り込んだことのない尻穴がついに友希那によって拡張され、その内側を舐られている。だが友希那は考えた。これは恋人間で行われる性的な戯れから、いくらか逸脱しているような気がした。
(ママ、だったかしら……)
舌がめり込んだことで呻いている彼を前に友希那は考えていた。
友希那はこのアナル舐めのことを介護の類だと思っていた。
何か『世話』のような感覚が強い気がする。それに彼だって、恋人とはいえ異性に対しほぼ抵抗感もなく尻をむき出しにして穴や周辺の事情を任せるなんて、それは恋人というより母親的な期待を寄せているとしか思えない。
まだ出産どころか結婚さえしていない身分なのだが、それでも彼から母親役を求められている。
(それなら……)
友希那は彼に舌を突っ込んだまま意気込んだ。彼が求めているのならそれを叶えてあげたい。それは友希那が冷静に、少しの義務感と共に持つ気概だった。だって恋人なのだから。要望に答えてあげること、要望通りに気持ちよくしてあげること、それこそが彼の恋人としての役目のはず……、と友希那は真剣に考えていた。
いや、そんな難しい考え方ではないのかもしれない。
友希那は至極理性的な考えのすぐ横で自分の感情が熱く暴れてゆくことを意識していた。
実のところ友希那は感情的だった。彼に気持ちよくなってほしい、彼にだけはなんとしてでも気持ちよくなってほしい、いい思いをしてほしい。友希那は実はそのように思っていた。何も理性的ではなかった。普段の意識から逸脱するほどの感情が彼に向かっている。使命だとか役割というものではなかった。役目などという単語を使って仰々しくいつものように表現したが、実は別に特別なことじゃない。結局はあらゆる理論の部分を度外視した完全な奉仕精神というか、恋人相手になら誰でも感じる思いやりの意識を友希那も当然彼に対し十分に持ち、このアナル舐めを成功させたいと願っていた。
(この人に、全てを――)
四つん這いを披露する恋人の背後に跪く友希那は意気込んだ。
右手で彼の亀頭を包み込んでいた。左手で竿の部分を握り込み、それぞれ手のひらの皮膚をこすり付けるようにしごいていた。尻穴へ進入した舌を友希那はその内側で動かした。時おり啜り上げ、竿をぎゅっと握ってまた奥を舐った。彼は背中を反らせたり湿った声で呻いていたが友希那はほとんど無視して舌を動かし続けた。何か自分が本当に彼の尻穴を清掃しているような感覚にあった。『尻穴清掃係(女)』あるいは『オンナの形をしたただのケツ拭き』にまで意識を高ぶらせている。そのため友希那は彼の内部で激しく動いた。汚れを洗うため忙しなく動き続けた。舌先は彼のことを詳しくほじくり廻し、友希那は真剣な顔つきのままだった。淡々とした様子で尻穴の中でできるだけ舌を伸ばした。彼専属の『ケツ拭き』として彼の尻の汚れを見逃すことは許されない。友希那は自らの口そのもので尻を広げるみたいに強く彼へ突っ伏し、それから顔全体を少し揺さぶった。唇をぶっちゅりと押し込んでよく啜った。粘膜の上で唾液がこすれる音を引きずり、それに呼応して手の中の竿が元気になった。友希那の舌の形にぽっかり拡張された尻の穴がきゅっと狭まった。友希那はそれでも彼へめり込みながら尻穴を啜り出し続けた。両手で亀頭の竿部分の二箇所を撫で続けた。背中を反り上げる彼は少女のような声で小さく呻き、やがて竿の先端から優しく熱いものが飛び出した。
「んっ……」
射精に合わせて友希那は舌と手の動きを緩めた。射精途中の彼のことを優しく補助するように、その射精の蠕動に合わせるようにゆったりと身体を撫でた。彼はそんな友希那の手の中で何度か爆ぜた。陰茎は上向きに強く跳ねながら精液を漏らし、その全ては友希那の手の中にねっとりと落ちていった。
彼の射精が終わった後に友希那は彼の尻穴の中から舌を撤退させた。
この時も友希那は執拗に彼を舐った。引きずられてゆく舌の表面でできるだけ彼のことを圧迫し、自らの痕跡をべっとり残しながら少しずつ舌を抜いた。
最後にふち部分をぐるんと撫でてから完全に離れると彼の尻と友希那の唇の間にはいくつもの唾液の透明な糸が引いていた。
それでも友希那は平然とした顔つきだった。ゴクンと喉を強張らせ、それから両手を意識した。手元には彼の萎んだ竿があるのだが、この陰茎はいつまでもとろとろと精液を下向きに垂らし続けている。友希那は指先でその様子を撫でていた。竿は精を垂らすことをやめず、そんな様子が何か生意気のように視えたので友希那は本当に軽く指先で竿を突っついた。すると肉棒はとぴゅっ……、と返事をするみたいにまた唸った。
「ママ、ママ……」顔を上げて数秒後、彼が呻いた。「ママ、ちゅーして……」
「待って」
友希那は身体を動かすより先に傍らを視た。木目調の丸いサイドテーブルの上には水が入ったペットボトルが置かれていた。
「口をゆすぐわ」
友希那はサイドテーブルに手を伸ばした。長袖の腕はひどく汗ばんでいた。