湊友希那は美人だった。
目元はぱっちりと造られており、黄金色の瞳は常に未来を見据えていた。つまり強い意志を宿した眼光というものであり、そういったものは、歌姫、という友希那の肩書きによく合っているような気がした。頬は艶やかだったが温かい印象で、鼻先はツンと小さく、口元は柔らかい肉で形作られていた。頭髪はあまり複雑な形をしていなかった。伸びているものをそのままに、ただ手入れを怠らず自由にさせているといった具合だったがそこに乱雑な印象はなかった。頭頂部から毛先まで、どんな部分もするすると整っており、風が吹くとたおやかに揺れてみせた。
友希那という女子高校生は美人だった。世間一般でよく語られる、美女の基準を十分に満たした童顔だった。
そんな友希那も、眠っている間は無防備な顔を示すようだった。
「友希那……」
友希那は制服姿のままで眠っていた。
灰色のブレザーに焦げ茶色のスカート姿だった。スカートは短く、ブレザーは硬い質感をしていた。友希那はその学生専用の制服のままベッドに仰向けだった。とはいえ仰向けというものではなかった。今、寝具に横たわる友希那の体勢は崩れており、何度か寝返りを打ったことがわかった。故に硬い質感の制服ブレザーは至る箇所が少しずつ歪み、長髪もスカートも、シーツの上で自由にばらけていた。しかし男が何より注目する箇所とは顔面だった。友希那は眠っていた。大きく、光輝く瞳は閉じられた瞼によって完全に視えなくなっており、口元も緩く閉じていた。頬は何か弛緩した印象で、鼻の部分からスウスウという薄い寝息が聞こえていた。
女子高校生という年齢にして、音楽世界を席巻せんとする歌姫、湊友希那も眠ってしまえばただの娘だった。
「友希那……」
友希那の自室にこうして進入した男はそのベッドに身体を乗り上げた。膝を沈めるとマットレスが窪んだ。男は友希那が覚醒しないよう、慎重に眠り姫に接近した。友希那の寝そべる、その形に寄り添って肘をついた。それは友希那に背後から寄り添う形だった。今、身体の右側をベッドに落として寝そべる友希那だったが、男はその背面から身体を寄せ、肩に肩を寄せ合わせていた。そうなると、この美しい眠り姫の顔を視ることはできなくなるが、代わりとして、両腕を伸ばせばその五指に、友希那の身体を感じることができた。
「友希那、好きだよ……」
友希那の胸や腹部、太腿などを触ることができた。胸と腹部は制服ブレザーによって少し硬かったが、それは男にとってガッカリする要素ではなかった。むしろ、女子高校生という限定的な身分の友希那の『今』を体験できる貴重な質感で、そこから腕を降ろしスカートを撫で、スカート裾部分から落下するように太腿を這った。今、友希那は両足に靴の類を履いていなかったが、黒色のソックスがそのままだった。男は友希那の足についてひとつ想った。友希那は学校では上履き、外では靴を履いているはずだった。男は、そういった着衣によって蒸れた友希那の足裏について妄想した。足裏から分泌される香ばしいものたちが、その熱気と共にソックスに染み込んでよく仕上がっているはずだった。そして今、友希那はそんなものを脱がずにベッドに寝転んでいた。シーツたマットレスにも、友希那の普段の寝汗が少なからず染み込んでおり、この寝具の上とはまさしく友希那の熱気の楽園だった。
また、男の眼前には友希那の後頭部やうなじがあった。首を少し伸ばせば鼻先がそれに触れた。男は簡単に、また十分に友希那の体臭を嗅ぐことができた。
友希那の体臭とは男にとって美味な体臭だった。
女子高校生といえば『少女』から『女性』に成長しかけている中途半端の段階のことだった。幼さを脱ぎ捨て、雌らしさを身に纏う中間の部分のことだった。男は幼い友希那のことももちろん好きだった。ツンとした『少女』を湛える友希那の所作に魅了されていた。しかしこれが成長し、まさしく女王と呼ぶにふさわしい『女性』に成長した友希那に対してだって十分に期待していた。そういった中で、今の友希那とは両方の要素を兼ね揃えていた。幼い友希那と大人の友希那の二種類の香りが同時に通う、女子高校生とは極上の期間だと男は考えていた。
男は友希那のことをめいっぱいに嗅ぎ取っていた。
うなじに鼻先を突っ込んで猛烈に吸引した。肺の中が友希那で満たされると今度は脇だった。男は友希那の左腕を軽く持ち上げ、その隙間に顔面を突っ込んだ。頬が、制服ブレザーの硬い布の質感に触れた。鼻先が、脇そのものに触れ合って男は深呼吸をした。爆裂するかのように激しい鼻呼吸で、鼻孔を通って友希那の新鮮な体臭が流れ込んできた。脇、という体臭が凝縮されやすい箇所のため、その風味はより酸っぱくて香しかった。友希那から香る濃厚な雌のにおいだった。
「友希那、いいにおいする……」
友希那の脇を嗅ぐ男は報告し、それからベッドの上で下半身を動かしはじめた。
「友希那っ……」
友希那の脇に顔面を埋めたまま、男はまずズボンとパンツを脱いだ。両足をばたつかせて拭い取るような動きだった。男はすでに勃起していた。それは友希那の私室に入った瞬間からだった。この、友希那の私室に散布されているあらゆる友希那の成分や、友希那の私室の中に置かれたあらゆる友希那の私物という要素に男の雄の部分は素早く反応し、生殖本能が肥大化していた。男はその勃起した陰茎を寝そべったまま露出させた。陰茎は前方、つまり友希那に向かって大きく屹立しており、男はそれを握った。根本を強く引き締めると、先端部分を友希那の太腿部分に擦り付けた。陰茎はカウパー汁によって十分にぬめめっており、男はその粘液を友希那に塗りたくるように細かく揺れ動いた。ベッドが軋み、シーツや制服ブレザー、男のシャツが擦れる音が薄く鳴り響いた。友希那の太腿はすぐに光沢を帯び、男は手を離して腰を前後に動かしはじめた。
男の陰茎と友希那の太腿は十分に潤滑していた。そのため男が腰を動かすだけで、陰茎の先端は友希那の太腿の上で蠕動した。男はそれを利用して腰をへこつかせた。両腕は友希那の腹部に廻し、顔面を脇に埋めながら男は小刻みに震えた。動けば動くほど酸素が必要になった。男の鼻先は今、友希那の脇に差し込まれていた。男は友希那の脇から、友希那の体臭が籠った酸素を吸引して友希那の太腿に陰茎を擦り当てていた。まるで友希那と性行為をしているような光景だったが、その友希那は男が入室した時と変わらず眠っていた。
「友希那っ、友希那っ、でちゃう……」
呻き声と共に男は腰を突き出した。同時に陰茎が勢いよく跳ね、先端から白いものが噴き出した。精液だった。眠っている友希那を嗅いで造られた精液たちは、飛び掛かるように友希那の制服スカートにぶちまけられた。途端に何か異臭がした。それは精液が放つ特異なにおいだった。においはこの友希那の私室の空気と混ざり、友希那の私室とほぼ同化してすでに循環しはじめていた。
「ふぅ……」
射精を終えても男は友希那にしがみついていた。両腕で友希那のことを抱き寄せ、胸板で背を撫で、顔面を脇に埋めていた。射精直後であるためひどく消耗しており、友希那を嗅ぎながら男は穏やかな呼吸を続けていた。それは当然のことだった。激しい射精終了後、男が頼れる相手とはその射精の原因である友希那だけだった。勃起開始から陰茎の肥大化、カウパー汁の分泌に射精まで、男の中の雄としての機能は全て友希那によって発動し終息していた。射精後の弱った様子を介抱してもらうことだって、もちろん友希那に任せるしかなかった。
ふと、すぐ近くで何かがモゾリと動いた。男は跳ね上げるように顔を上げた。同時に股間に何か触れた。友希那の太腿の上に乗り、ぐったりくたびれた陰茎が起床した友希那の指先によって保持されていた。
「あなた……」
寝起き彼女の低い声が響いた。瞼が開いており、あの鋭い眼光が男を視ていた。男は、再びそんな友希那で勃起することとなった。