TENZIマジカル珍宝劇 ~ゴーストハーレム~ 作:ポチ&タマ
一九八六年、九月二十四日。
その日、一本の電話が雛咲邸に鳴り響いた。
電話に出た深雪さんに呼ばれ、受話器を受け取る。相手は深紅ちゃんの兄である真冬とのことだった。
「久しぶりだな真冬。調子はどうだ?」
『久しぶり天慈。充実した日々を過ごせているよ。そっちはどう?』
「こっちも毎日充実してるよ。深雪さんたちも変わらず元気だしな」
『それはよかった。天慈がいるから大丈夫だと思うけど、少し心配だったから』
「まああんなことがありゃな……。それで、今日はどうしたんだ?」
『あぁ、実は──』
真剣な声音で語り始める真冬。それは自身の恩師であり下宿先の主である、作家【高峰準星】とそのアシスタントたちが取材に出かけたっきり戻ってこないという。
かれこれ三日が経ち、心配になった真冬が探しに行こうと思い立ったところ、探し物のプロである俺の存在を思い出したのだとか。
依頼を頼みたいと言う真冬に即答で応じた俺は、詳しい話を聞くべく真冬の元へ向かうことにした。
「一時間くらいでそっちにつくから、詳しい話はそこで。ああ、じゃあまた後で」
受話器を戻した俺は、笑顔を浮かべそうになる顔を必死に抑える。いよいよ【零~ZERO~】が始まったのだ。
原作のように勝手に突貫して失踪しないように、真冬が家を発つ際に特定の条件の元発動する暗示を掛けていた。
条件は高峰準星氏が行方不明になること。発動内容は俺の存在を思い出し依頼を出すという軽い暗示だ。
これはもちろん真冬を守るためであり、同時に原作フラグを破壊するためでもある。
「真冬はなんと? 随分切羽詰まった様子だったけど」
「兄さんから電話?」
何の話だったのかと聞いてくる母娘に事情を説明した俺は、これから真冬の元に向かい、場合によっては家に帰らずそのまま捜索を始める旨を伝える。
息子の恩師が行方不明になったと聞き、心配げな表情を浮かべる深雪さん。
対して深紅ちゃんは真剣な表情を浮かべて黙り込んでいる。何か考えているようだ。
「ということなんで、一度電話しますね。晩御飯は大丈夫です」
「……分かったわ。気を付けてね」
とりあえず部屋に戻って荷造りを済ませるか。
「待って、お兄ちゃん!」
自室に戻ろうとすると、突然深紅ちゃんに裾を掴まれた。
何事かと振り返ると、深紅ちゃんはどこか思いつめた顔でこちらを見上げている。
「私も連れて行って!」
「深紅?」
深紅ちゃんの口から飛び出て来た言葉に怪訝な表情を浮かべる深雪さん。
どこか縋るようなに俺の服を掴むと、続けて懇願してくる。
「嫌な予感がするの……。このまま、お兄ちゃんがどこか遠くにいっちゃうような、すごく嫌な予感が……」
「深紅……」
「お願いお兄ちゃん、私も連れて行って! なんでもお手伝いするから!」
いいと言うまでこの手を離さない、小さく震える手からそんな覚悟が伝わってくる。
子供の頃から聞き分けが良く、我儘らしい我儘を口にしなかった深紅ちゃん。その彼女がここまで必死になって我を通そうとする姿に、どこか思う所があったのだろう。
深紅ちゃんの肩に手を当てた深雪さんも、真剣な眼差しを向けて来る。
「天慈さん、私からもお願いします。無理を言っているのは承知の上ですが、この子がここまで言うのですから、恐らく良くない出来事が待っているのだと思います」
「お母さん……!」
「ふむ」
母の擁護に感激したような眼差しを向ける深紅ちゃん。そんな娘に優しく微笑み返す深雪さんたちを眺めながら、顎に手を当てる。
ぶっちゃけてしまうと、深紅ちゃんには着いて来てもらうつもりだった。未来の俺が送ってきた記憶には、深紅ちゃんと二人で現場を捜索していたし。ただ記憶と言っても完全なものではなく、所々抜け落ちていたりして、結構穴があるケースが多いのだ。
結果は分かっているけど過程が分からない、そんな感じか。
深紅ちゃんも着いてくるのは分かっていたが、どういう経緯でそうなったのかが不明だったのだが、これで得心がいった。
「分かった。それじゃあ深紅ちゃんにも手伝ってもらおうか。深雪さん、射影機を持って来て下さい」
「……っ! アレが必要になると……?」
「ええ、俺の勘だと。まあ使わないことに越したことはないですが、護身用として持たせます」
「ですが、アレは……」
「大丈夫ですよ。既に使用者と射影機の繋がりは切っていますので、深雪さんの時のようなことにはなりません。それに、いざとなったら俺がどうにかしますから」
「……分かりました」
最後まで渋い顔をした深雪さんが居間を後にする。射影機の実害に遭った本人からすれば、頭では分かっていても不安は取り除けない、か。
でも幽霊を相手にするのだから自衛手段の確保は必須だ。そもそも【零~ZERO~】は射影機を使って幽霊を撃退するゲームだし。曰く付きなのは否定できんけど。
だけど、深紅ちゃんが射影機を使うのはこれが初めてだろうから、彼女の反応によっては別の手段を用意する必要があるか。記憶でも射影機を使っているシーンってあまりないし。
「……お待たせしました」
やがて一台のカメラを手に戻ってきた深雪さん。
古めかしいカメラでレンズの周りには梵字のような幾何学的な文字が刻まれている。このカメラこそ【零~ZERO~】のキーアイテムである射影機だ。このカメラを使って幽霊や怨霊を除霊したり、残留思念や過去の出来事などを見聞きすることが出来る。
元は異界研究者の麻生博士が作り出した作品の一つであり、【あり得ないものを映し出す】カメラとして好事家たちの手に渡っていたもの。
だが、射影機は使えば使うほど、幽霊との繋がりを深めてしまい、強制的に霊感を強化してしまうという欠点がある。それが原因で発狂し自殺する、という流れが後を絶たず。界隈では曰く付きのカメラとして有名だ。
当時、深雪さんの母がこの射影機を所有しており、遺品として娘である深雪さんの手に渡る。
写真を取るのが趣味だった深雪さんだが、射影機を使い続けるうちに幽霊が視えるようになり霊障などにも怯え、徐々に精神的に追い詰められ。
そして、三年前。ついに限界を迎えた深雪さんは中庭の木で首吊り自殺を図ったのだが、以前から監視をしていた俺の分身により間一髪救うことに成功。霊障などで苦しんでいた深雪さんと、自殺現場を偶然目撃してしまった深紅ちゃん、双方のカウンセリングに精を出した結果、現在に至る。
閑話休題。
「深紅にこれを預けるわ」
「これって、お母さんの……」
「これは射影機。あり得ないものを映し出すカメラ。私より霊感の強い深紅なら、この射影機の力を最大限引き出せるでしょう。でも、決して無理はしないで。天慈さんが色々と処置をしてくれたけど、視てはいけないものも視てしまうから……」
「……うん。分かった」
神妙な面持ちで射影機を受け取る深紅ちゃん。母が病む原因となったカメラなのだ、不安に感じるのは当然だろう。
だが、安心して欲しい。原作と違いこの世界には俺がいるのだ。いざとなったらチャクラにものを云わせた神術や魔術で守ってやるから!
「二人とも、無事に帰ってきてね」
1
身支度を整えた俺たちは、自宅から車で一時間の距離にある高峰家に訪れた。
年季を感じさせる木造建ての一軒家で、出迎えてくれた俺と握手を、深紅ちゃんとは親愛のハグを交わす真冬。
リビングに通された俺たち。テーブルの上には事前に準備してくれていた資料などが置かれていた。
「この人が高峰準星先生。こっちは編集者の緒方浩二さん。そしてこっちが、先生の助手の平坂巴さんだ」
「ふむ」
スッと差し出されたのは三人の顔写真。六十代ほどの男性が、真冬が世話になっているミステリー作家だろう。二枚目の冴えない三十代ほどの男は編集部の男性。そして三枚目の女性が【平坂巴】か。
高峰準星氏の顔は覚えたため、平坂巴の写真をじっくりと眺める。
歳は二十代半ばから後半ほど。髪は茶色がかった黒髪で肩の高さまで伸びており、前髪を七三分けしている。おでこがとてもチャーミングですな。顔は十分美形と呼べるだろう。
切れ長の目にスッと通った鼻梁。薄く口紅を塗っているのが写真からも分かる。クールな印象があるが、怜とはまた違ったタイプの感じがする。
胸は大体B〜Cカップくらいか。写真は胸の高さで見切れてるから腰や太ももまでは確認できない。
だけどまあ、獲物の姿を確認できたのは大きいな。これでモチベーションがさらに上がるというものだ。
その後、詳しい話を聞いて氷室邸の場所が記された地図を受け取った俺たちは、深雪さんに一報を入れてから現場に向かった。
深紅ちゃんも同行することに対して物申した真冬だが、本人に説得させられてしまうことに。兄は妹に弱いものなのだ……。
「深紅を頼む」
そう言って深々と頭を下げる真冬に対し、俺も真摯に返答した。
「任せろ。俺の命にかえても守ってみせるさ」
「お、お兄ちゃん……!」
いたく感激した様子の深紅を伴い、ササッと氷室邸へ。
現場はかなり離れた場所にある山の中。車だと距離があるし電車は本数が少ない上に乗り換えが多い。
そのため、ここは空を飛んで直通で向かうことにした。
飛行はチャクラによるものだ。イメージは重力から解き放たれて自由に空を飛び回れる鳥かな。
転生神の話だとナルトの世界でチャクラの実を食べた俺は、カグヤの血を分け与えられたことにより、大筒木一族の特性を一部受け継いだ状態で魂と同化してしまったらしい。【FGO】の世界やここ【零~ZERO~】の世界でも輪廻写輪眼やチャクラを使った術を扱えるのはそのためだとか。
それを聞き、思わず「カグヤグッジョブ! 愛してる!」と口にしそうになったが、言葉にするとあの世からでも異空間経由で来てしまいそうなので、慌ててお口チャック。彼女はハーレム禁止派なので絶対に喚べません。
深紅ちゃんも俺の異能については知っているため、初めての遊覧飛行に驚いていたものの恐がった様子は見られなかった。
認識阻害と防風結界を張っているため、時速百キロ以上のスピードで飛んでも受ける風はそよ風程度。せっかく整えた髪型を崩すわけにはいかんしな。
さて、夜の街並みを見下ろしては感動し、はしゃいでいた深紅ちゃんだが、遊覧飛行もここまでだ。現場である氷室邸に着きましたよ、と。
「ここが、氷室邸……。なんて禍々しいの……」
「家に入ってすらいないのに、ここまで怨念が届いてきそうだな」
「……気を引き締めて行きましょう、お兄ちゃん」
「だな。でもまあ、俺が居るからそこまで気を張らなくても大丈夫だぞ。あー、ただ射影機の使い方は覚えた方が今後のためにもなるだろうから、何回か実戦は経験してもらうけど、大丈夫か?」
「う、うん。大丈夫……。お兄ちゃんが守ってくれる、だもんね……?」
「応さ。守護神並みの働きを見せてあげよう」
「守護神って……もう、お兄ちゃんったら……。でも、ありがとう。少し楽になったかな」
屋敷から漂う瘴気に体を震わせていた深紅ちゃんだが、俺の小粋なジョークで良い感じに力が抜けたようだ。
「でも辛いと思ったらすぐに言うんだぞ。遠慮とかしないで、マジでヤバくなったらすぐに言いなよ」
「うん」
念のため、一瞬だけ輪廻写輪眼を発動させて暗示を掛ける。少しでも無理だと感じたらすぐに俺に報告するように。
目を元の状態に戻した俺は、改めて装備を整えた。
今の俺の格好は、仕事着である黒のスーツに赤のネクタイ、そして革靴。同色の外套を羽織っている。
ベルトには札が収まったケースが腰の裏に仕込む形で留めてある。スーツの内ポケットの中には予備の札。
外套の胸ポケットにL字型のライトを差し、懐中電灯を二本取り出す。一本は深紅ちゃんの分だ。
そして、
これはそこらの打刀とは一線を画している。価値的にも業物としても。
なにせこの刀は【FGO】の世界で友好を深めた一人である、千子村正から授かった一振りなのだ。
友になった証にと、俺に合う刀をわざわざ打ってくれたのが、この名刀『雪影』。
刀身は通常の刀より長く、柄も含めると三尺半。柄は白色で鞘は朱塗り。三文杉の波紋が美しい我が愛刀である。
国宝級の業物がなぜ【零~ZERO~】の世界にあるのかと言うと、実はナルトの世界でもそうだったのだが、蒐集癖がある俺は気に入った物を異空間に保管しているのだ。輪廻写輪眼を開眼した際にデフォで使えるようになった能力で、三つの異空間を所有している。
そのうちの一つが【白の世界】と呼んでいる空間であり、その名の通り地平線の先まで真っ白い空間が続く場所で、実質倉庫として活用。
【FGO】の世界で入手した魔道具や格好いい武器、お気に入りのお菓子や飲み物などをこの世界に保管しているのだ。ちなみに空間内は時が止まっているのか、食べ物は劣化しない模様。熱々の食べ物も冷めずにそのまま頂けます。
閑話休題。
「よし。それじゃあ行くか」
「うん……!」
「それはそうと、飴ちゃんいる?」
「……頂きます。あ、美味しい……」
ポケットから取り出す振りをして【白の世界】から引き出した飴を、“複製”して一つ渡す。“複製”はチャクラを使った術ではなく、カグヤの血によって発現した【神術・空間支配】の応用によるもの。
【空間支配】はその名の通り、空間を丸ごと支配するため、領域内のものは全て意のままに操ることが出来るという神スキル!
そして空間内にある特定の物を“複製”することで、オリジナルと遜色のないものを生み出すことが出来る。これがあるおかげで好きなお菓子や食べ物、飲み物を現物がある限り何度でも味わえるのだ! 現物も【白の世界】に保管しているため、実質無限に食べることが可能という!
ちなみに“複製”は空間内にあるものなら何でも複製できる。そのため、やろうと思えば人間なども可能だ。分体がそれにあたる。少し手を加えて影分身のようにリアルタイムで情報を送るようにしたが、あれは自身を複製したものだ。ただ分身と違って遺体が残ってしまうため、退場する時は塵一つ残さないように消滅している。
空間そのものに作用しているためか、銃などの複雑な精密機械も複製可能。しかも内部構造を知らなくても複製できるというガバ設定! まあ、何かしらロジックがあるのだろうが、知りようがないため放置している。使えればいいのだ。
こういった能力をカグヤは神術と呼称していた。俺の神術は【空間支配】の他にもあるが、それはまた次の機会にでも披露するとしよう。
2
今回、ここ氷室邸に来たのは真冬から依頼されたものとは別に、俺独自の目的があるためだ。
それがハーレム要員となる幽霊たちの確保。
ターゲットは主に七人だ。どの幽霊たちも必ずゲットしてみせる!
「いいな、この土地」
玄関を潜る前に軽く上空から見回してみたが、氷室邸はかなり広大な土地を有する豪邸だ。雛咲邸ですらすごく広いと感じたのに、氷室邸は軽くその倍以上の敷地面積がある。なんか、屋敷の一角に神社のようなものも見えたし。
原作ではすでに高峰準星氏一行はお亡くなりになっているはずだ。せめて遺品だけは回収しないと。
肝心の遺品がどんな物で何処にあるのか、細かな点についてはさすがに覚えていない。未来の俺が送ってくれた記憶もところどころ穴があり、ピンポイントで遺品の場所は抜け落ちている。これは探すのに苦労しそうだ。
「お邪魔しま〜す。前庭広いなー!」
小さな橋を渡り正門を通ると、大きな前庭が。テニスコート四面分はあるぞ。
階段を上り、木製の引き戸を開けて、いよいよ屋敷の中へ踏み込む。
「んー、如何にもって感じがするなぁ」
玄関を入って正面。屋根の梁が一部崩れたのか、大きな柱が道をふさぐ形で倒れていた。
人が通れるスペースがあるため部屋の中に入ると、中央の床が抜けており、その奥に障子がある。右手側には妙な仮面が飾られた壁があり、左手側には扉が見えた。
歩くたびにギシギシと床が軋む。
「俺から離れるなよ」
「うん、分かってる」
取りあえず、通れそうな扉を開けるが、そこは妙な廊下に繋がっていた。
麻縄と思わしき縄が天上から垂れ下がっているのだ。それも一本や二本ではない。十数本はあるんじゃないか?
軽く視てみるが、ただの縄だ。別段、何か仕掛けがあるでもなく、ただぶら下がっているだけ。周囲が瘴気で満ちているため分かりにくいが、霊の残穢らしき気配もない。
「なにこれ……すごい気味悪い……」
「なにか、儀式に関りがあるのかもな。氷室家って禁じられた儀式を行ってたみたいだし」
少し進むと、廊下を横切る男性の姿を発見した。
猫背気味で歩くその人は、捜索対象の高峰準星氏にそっくりだ。ていうか、その人だ!
「──! お兄ちゃん、今の人……!」
「あぁ。あの人が高峰準星氏だな。だが、今の気配……」
生気を感じられない負の気配。間違いなく霊のそれだ。恐らく浮遊霊だな。
廊下の突き当りまで進むと巨大な鏡が。心霊現象にお馴染みの「鏡に人の姿が!」といった現象はなく、そこに映っているのはイケメンの俺と美少女の深紅ちゃんの姿のみ。
やだ、お似合いのカップル。
「ここは、居間か?」
廊下の突き当りの左右には扉があり、取りあえず右手側の扉を開けてみた。
居間だろうか。部屋の中央には囲炉裏があり、壁際には棚や箪笥、何故か甲冑が置かれている。様々な調度品は色あせており、嘗ての煌びやかさは見る影もない。
パッと見回す限り幽霊の姿はないが、ふと視線を感じた。
視線の先──二階を見上げると先程の人物、高峰準星氏らしき男がこちらを見下ろしている。なに見とんねんっ!
『うぅっ……』
思わずメンチビームを放ってしまった。無意識に霊力を乗せてしまったのか、ダメージを食らったみたいでノックバックしていた。ごめん。
「……っ! 今、なにか聞こえた……?」
「ん、そうか? 俺には聞こえなかったけど」
流石に今のやり取りは見せられない。絶対、ジト目を向けてくるに違いないもの。
取りあえず棚や箪笥に何かないか開けてみるが、埃を被った着物や、調合などに使う材料みたいなものしか置いてなかった。
次は高峰準星氏がいた二階に向かってみよう。
サクサクと捜索を続けていると、懐中電灯で周囲を照らしながら小動物のように着いてくる深紅ちゃんからこんな質問が。
「お兄ちゃんは、こういう仕事をよく引き受けたりするの?」
「こういうって、人探し?」
「それもそうだけど、その、ここみたいな場所っていうか……」
「ああ、幽霊屋敷のような場所に行くのかってこと? そうだなぁ、失踪者の約半数は死亡しているケースが多くてね、大抵そういうケースの場合、何故か幽霊が好む場所にいることが多いんだ。事故が多発するトンネルとか、自殺の名所とかね。だから必然とそういう場所に赴くことはあるよ」
「じゃあ、お兄ちゃんも、幽霊とか見えるの……?」
「えっ、今更!? いやいやいやいや、誰が深雪さんの邪気や家の浮遊霊を払ったと思ってんの! 見えるどころか触れることもできるし!」
驚きの発言に思わず振り返ってしまう。まさか今の今まで俺、霊能力ないって思われてた?
真冬は天然なところがあるけど、まさか深紅ちゃんもか。兄妹の意外な共通点に流石の俺も驚きを隠せないわ。
「あ、そ、そうだよね。って、え? 幽霊って触れるの?」
「普通は無理だろうけど、俺は触れるぞ。感覚で言えば、生きてる人と全然変わんないな。まあ体温がないから冷たいけど」
この世界での転生特典【霊能力欲張りセット】。幽霊との接触や霊体の治療、さらには霊核から生前の肉体情報を得ることも出来るという、まさに欲張りな特典。
何故こんな特典を選んだかというと、それはもちろん、幽霊とセックスするためだ。
【零】の世界に登場する幽霊や怨霊たちは、生前の可憐さが伝わってくるほど美人・美少女が多い。
それだけでも勃起ものだというのに、未来知識によると大半の幽霊たちが悲惨な死を遂げたというエピソード持ちが多いらしい。
男を知ることはもちろん、人並みの幸せを夢見ることすら禁じられた幽霊たち。
そんな彼女たちをハーレムに迎え、男に抱かれる幸せと愛を教え、救済する。それが、今世における俺のハーレム計画なのだ。
俺は美女たちを抱ける上にハーレムを築けて幸せ。妻たちは女の幸せを毎日その身で味わい、愛されて幸せ。まさにWINWINな関係というやつだ。
俺のハーレム計画はとっくに始動しており、すでに深雪さんと深紅ちゃん母娘、恋人の怜はハーレム入りが確定しているが、肝心の幽霊枠がまだだった。
この氷室邸にはハーレムに迎える、嫁幽霊を探しにやって来たと行っても過言ではない。というかハントしに来ました。
「お、何か落ちてる」
「ノート、だね。それにこの感じ……残留思念?」
床に落ちているのは一冊のノートだった。深紅ちゃんは感覚的に捉えたようだが、ノートからは紫色のオーラのようなものが漂っており、明らかに手に取ったら何かありますよサインを出している。
呪いの類ではなさそうだから、深紅ちゃんの言う通り残留思念か何かだろう。原作知識も「そういえば、そんなこともあったような」と呟いているし。
案の定、手に取ってみると、ノートから残留思念が流れてきた。
内容は高峰準星氏ら三人がこの屋敷を探索している姿。そして、そんな三人を追う多数の手を引き連れた巫女の幽霊。
「ふむ……」
あの巫女が霧絵さんか。この氷室邸で行われてきた惨劇の犠牲者にして、瘴気が溢れる原因となった人物。
そして、俺のハーレム要員の一人!
高峰準星氏と一緒にいた平坂巴さんもハーレム要員の一人だが、俺個人の性癖と照らし合わせると、霧絵さんの方が好みだったりする。
(お、来たか)
不意に、俺と深紅ちゃんしかいないこの空間──囲炉裏の部屋に、新たな気配が生じるのを感じた。その人物はゆっくりと、俺たちがいる二階へ近づいてくる。
「深紅ちゃん、何か感じるかい?」
「いえ、まだ何も。ただ、誰かに見られているような……」
「ほう。深雪さんから太鼓判を押されるだけあるね、良い霊感だ」
後ろを振り向いてみようか。その言葉に恐る恐る後ろを振り返る深紅ちゃん。
丁度、同じタイミングで階段が軋む音が聞こえ始める。
音は徐々に大きく、そして近くなっていく。
「お、お兄ちゃん、誰か、登って来てるよ……」
「ふむ。丁度いいから、射影機を使った戦い方を覚えようか。大丈夫大丈夫、相手はただの雑魚だし、危なくなったら助太刀するから」
「えっ! きゅ、急すぎるよ!」
「ほらほら構えた構えた。すぐそこまで来てるぞー」
深紅ちゃんも俺も霊感が強いため、ハッキリと幽霊の姿を捉えている。
負の気配が浮遊霊より一段と強い。恐らく怨霊の類だろう。見た目的にはミイラのように干からびており、服の上からでも分かるほど骨が浮き彫りになっている。
憎悪で満ちた形相で俺たちを睨む怨霊。
その姿に少しだけ怯んだ様子だが、気を持ち直してカメラを構え直す。
「ほう、やるねぇ」
天性の除霊能力というべきか。あっという間にカメラの使い方を覚えた深紅ちゃんは、さほど時間を掛けずに怨霊の撃退に成功した。中々の撮影技術だ。これは、後が楽しみになってきたな。
除霊された悪霊が射影機にセットされたフィルムへと封印されそうになるが、その前に。
「シッ!」
鞘走り一閃。封じられる寸前に怨霊を居合で斬り払い、強制的に成仏させた。
この【雪影】は霊力を込めることで、霊にもダメージを与えることが出来るのだ。いや、この場合【雪影】固有の力ではなく転生特典の恩恵だろうけど。大事なのは、幽霊も斬れると言う点だ。
これで男をバシバシ斬っていく予定です。
「お兄ちゃん? 封印出来そうだったのになんで斬って……?」
「その射影機は知っての通り除霊した幽霊を封印できるんだが、封印すると邪気がカメラに少なからず纏わりついちゃうんだ。定期的に祓ってもいいんだけど、どうせ祓うなら元を絶った方がいいだろう」
「そうなんだ。でも、それじゃあ除霊するたびにお兄ちゃんが……」
「まあ毎回斬ることになるけど、別にそのくらい苦じゃないよ」
「ん、分かった。でも、疲れたら言ってね」
俺の心配をしてくれるなんて、良い子だな俺の妹分──いや、妹嫁は。
これは後でいっぱい、いい子いい子してあげないと。どこを、とは言わんがね。
次回もエロなしです。
エロを書くのが苦手なのですが、エロシーンはどの程度読みたいですか?(投稿速度に影響あり)
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ガッツリ(投稿速度は約半年)
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ザッと内容がわかる(投稿速度は約3ヶ月)
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軽い描写でササっと(投稿速度約1~2ヶ月