TENZIマジカル珍宝劇 ~ゴーストハーレム~ 作:ポチ&タマ
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二階には扉があったのだが、鍵が掛かっていた。扉の奥からはお経を唱える声が聞こえてくる。
声からして男のようだ。
(ぶち破ってもいいけど、女は居ないみたいだし。ここはスルーでいいか)
未来の俺が送ってくれた記憶を思い出しながら、二階の奥へと向かう。道中、高峰準星氏に同行していた編集者の男を見掛けたが、どう見ても浮遊霊だった。ご愁傷様です。
後を追う形で階段を降りると、一階の囲炉裏がある部屋に戻ってきた。どうやらグルっと一周したようだ。編集者の浮遊霊はすでに姿を消している。
「……ここの反対側の部屋、まだ行ってないよね」
「ああ、そういえば反対側もあったんだっけ。じゃあそっち行ってみるか」
囲炉裏の部屋はもう見るべき点も無さそうだし、違う部屋に行くか。
深紅ちゃんと一緒に部屋を後にしようとしたその時──。
『こっち』
不意に幼い女の子の声が聞こえた。
振り返ると、白い着物に身を包んだ、少々太ふくよかなおかっぱ少女がこちらを見ているではないか。
少女はスッと壁に向かって指さすと、そのまま空気に溶け込むように消えてしまった。
「今の子は……」
「分からんが、敵ではなさそうだな」
少女が指差した場所を視てみる。屛風があるだけだが……。
「あ、もしかして……」
何かに気付いたのか深紅ちゃんが屛風を退かしてみる。
すると、その奥に扉が隠されているのが確認できた。
どうやら、あのおかっぱ髪の少女は行き先を示してくれたらしい。
「また残留思念……」
扉の先は廊下に繋がっており、そこにも残留思念があった。
なにやら鍵を探している編集者の思念だが、果たして見つかったのだろうか。
「しかし、本当に広いなこの屋敷は……」
「そうだね。これは探すのに苦労しそうだよお兄ちゃん……」
「……効率良く進むか」
「効率良くって」
「まあ、ちょっと待っててな」
この屋敷は様々な仕掛けが施されており、特定の手順を踏まないと仕掛けが起動しないなど、絡繰り屋敷もビックリな家となっている。
仕掛け扉を開けるために、遠回りするなどザラにあり、屋敷の最深部に向かうだけでも軽く五時間は掛かるだろう。
俺の目的は高峰準星氏の遺品の回収と、ハーレム候補である幽霊たちの確保だ。言ってしまえばそれさえ達成できれば後はどうでもいい──あ、いや。地下にあるアレは一応どうにかしておこう。
目を輪廻写輪眼に切り替える。
「お兄ちゃんのその目、いつ見ても格好いいね」
「そうか? ありがとな」
漫画だと中二チックで格好いいが実物だと結構グロいというのがあったりする。男の子はともかく女の子には受けが悪いと思っていた輪廻写輪眼だが、深紅ちゃんや深雪さんはすんなりと受け入れてくれたからありがたい。
俺の輪廻写輪眼はカグヤと同じ九つの勾玉タイプ。違う点は眼球が群青色なところか。
また、この体は大筒木一族の血を引いていないにも関わらず、白眼と同等の能力を有している。言ってしまえば輪廻写輪眼に白眼の能力を足したようなものだ。
恐らく転生神によるものだと思うが、今は有り難くこの瞳力をフル活用させてもらう。
輪廻写輪眼で周囲をざっと見回す。迷路のように入り組んだ廊下と数々の部屋が視界に映り──。
(……発見!)
目的の人物を見つけた。
件の怨霊──霧絵はすでに俺たちを補足しているらしく、徐々にこちらに近づいている。
現在彼女がいる場所は縄の廊下。丁度壁を隔てた向こう側だ。
霧絵のところへ向かうため、ただの壁がある方向に体を向ける。
「深紅ちゃんには、俺の目的を教えておこう」
「目的? 高峰先生たちを見つけることじゃなくて?」
「高峰準星氏らを探すのはもちろんだが、それとは別に俺個人の目的だ」
そう言って俺がこの屋敷に来た理由を話すと、深紅ちゃんは苦笑を浮かべて得心がいったように頷いた。
「そっか。どこかウキウキした感じだったのはそういうことだったんだね。それにしても幽霊までお嫁さんにするなんて、お兄ちゃんらしいというか……。まあ確かに私たちだけじゃ、お兄ちゃんの性欲を受け止めきれないから、仕方ないかもしれないけど……」
「大丈夫。俺は博愛主義者だからな。等しく全員平等に愛すよ」
「……贔屓しないでちゃんと愛してね」
「おう。と、いうことで」
鞘から刀を抜いた俺は壁に向けて振るう。
幾重もの剣閃が走ると、扉サイズに斬り開いた。
「ショートカットだ」
「……ゴリ押しにも程があるよ」
「自覚してるけど、廃屋だし良いかなって。所有者がいればまた別だけど」
そして、その所有者や縁者は全員お亡くなりになっているし。
切り崩した壁を越えて再び縄の廊下に躍り出ると、凍てつくような気配が辺りに漂い始めた。
深紅ちゃんも異様な気配を感じたのか、怯えた様子で身を寄せてくる。
そして──。
「お兄ちゃん、あの人……!」
「居たな」
幾重もの縄がぶら下げられた廊下の奥から、無数の怨霊の手を引き連れた霧絵が姿を見せた。
霧絵の出現に合わせて廊下の壁から怨霊の手がいくつも出現する。
「お、お兄ちゃん……」
「大丈夫大丈夫。俺の後ろに隠れてな」
大きな鏡を背にした俺は、鏡に札を貼って背後からの奇襲を未然に防ぐと正面を見据える。
白装束に身を包んだ怨霊、霧絵がゆっくりとした足取りで近づいてくる中、彼女の背後から伸びた怨霊の手がこちらへ殺到してきた。
生者である俺たちをあの世へ引き込もうと伸ばしてくる腕だが、間合いに入った瞬間、居合ですべて斬り捨てる。
霊力を浸透させた【雪影】は実体のない霊体も捉える。武器術も達人レベルであると自負する俺の腕前なら、一瞬で十の腕を斬り落とすくらい朝飯前だ。
次々と飛ばしてくる腕を間合い──制空圏に入るたびに斬り捨てながら、深紅ちゃんに札を渡す。
「こいつで結界を張ってくれ。壁に目掛けて投げれば、後は札が自動で働いてくれるから。出来るだけ広範囲に頼む」
「う、うん!」
玉藻直伝の結界札を深紅ちゃんは一枚一枚投げつける。慣れると数枚一気に投げるテクも身につくのだが、初めの頃は俺もそんな感じだったな。
郷愁にも似たどこか懐かしい気持ちになりながらも、制空圏に入った怨霊の手を全自動で斬り続ける俺の腕。達人になるとオート機能が実装されるのは、ケンイチの世界では常識のことだ。
かれこれ五十は斬ったが、見た感じ霧絵の背後に控える怨霊の腕の数は減っていない。多分、黄泉から直接補充しているのだろう。
「お、やっぱりそうか」
結界札で廊下一帯を隔離すると、目に見えて怨霊の腕の数が減り始めた。
もう残り三十もないだろうから、一気に終わらせよう。
「瞬神・疾走居合い」
受けの姿勢から攻勢に出る。チャクラを全身に回して身体能力を強化した上で、前傾姿勢となって重力の力を利用する縮地法を使用。同時に足裏から爆発的にチャクラを放出して推進力を得る。
瞬身の術ならぬ瞬神の術。
一瞬にして音速の壁を超えてトップスピードに達すると世界はモノクロと化し、不気味に蠢いていた怨霊の腕もピタリと静止する。
すべてが静止した世界の中で唯一自由に動き回れる俺は、鯉口を切りながら疾り、霧絵に纏わりつく腕と、彼女の背後にいるスタンドのような怨霊を斬った。
納刀はせずにそのまま疾り抜け、Uターンして元の位置へ戻ると、ようやく世界に色が戻る。
「きゃっ」
音速を超えたことにより生じる衝撃波が廊下を駆け抜け、ただでさえボロボロだった床がさらに損壊。一部の床が抜けてしまった。
衝撃波に驚き可愛らしい悲鳴を上げる深紅ちゃんを尻目に、スパァンッと勢いよく納刀する。これぞバージル流スタイリッシュ納刀。武蔵ちゃんと一緒にメチャクチャ練習しましたね。
取り巻きの怨霊とスタンドっぽいものまで祓われた霧絵は目を見開いていた。どうやら狂気に呑まれながらもその辺の感性は残っているらしい。そういえば、原作でも真冬を嘗ての想い人と重ねて殺せなかったっな。
まあやることは変わらない。邪魔な取り巻きを排除したし、いよいよお楽しみタイムだ。
1
俺が只者ではないことに今更気づいたのか、逃走を図ろうとする霧絵だが、残念。結界が張ってあるため逃げられないんだな。
狼狽する霧絵を横抱きにした俺は、呆然とした深紅ちゃんに顔を向ける。
「とりあえず、隣の着物があった部屋に行くよ」
「……あ、はい」
「なにか考え事?」
「ううん。ただ改めてお兄ちゃんの凄さを知ったっていうか。純粋に驚いちゃって。お兄ちゃん凄すぎ」
「ハッハッハッ。だろ? もっと褒めていいぞ」
「それはそうと……その人、すごく暴れてるけど、その、大丈夫なの?」
俺の後ろからヒョイと顔を覗かせる深紅ちゃん。
彼女の言う通り横抱きに抱えられた霧絵が俺の腕の中で暴れていた。
憎悪に満ちた形相で手足をバタつかせたり、異様に伸びた爪で引っ掻いてきたりと、俺の腕から抜け出そうと頑張っている。
「あぁ、大丈夫大丈夫。霊力でガードしてるからダメージはないし」
着物の部屋に着いた俺は、部屋を覆う形で隔離結界を張る。
部屋の中央辺りに【白の世界】から取り出した布団を敷き、その上に霧絵を寝かせた。
動けないようにチャクラで編んだ鎖で手足を地面に縛り付けているため、これで逃げることはほぼ不可能と言っていいだろう。
『みんな、死ねばいい……私と、同じ苦しみを……』
「ふーむ、まずは正気に戻すところからだな」
霧絵に纏わりついている瘴気は濃度が強い上に頑丈にこびり着いている。まるで風呂場のしつこいカビ汚れのようだ。
鬼の形相を浮かべて体を捩る霧絵の胸元──心臓部に手を当てた俺は、莫大な霊力を一気に流し込んだ。
『ぁ、ああぁああぁああああああああぁぁぁ──────!!』
除霊に使う霊力を聖属性とするなら、この瘴気を祓うのは無属性といったところか。
純粋な霊力のため、霊子で構築された幽体にはノーダメージだが、霧絵は長年強い瘴気に当てられていたため剥がすのに少し霊核を傷つけてしまったようだ。
まあ、霊核も霊子で構成されてるし、後から補填できるから今はいいだろう。それに傷も微々たるものだ。
無属性の霊力の奔流は、霧絵に纏わりつく瘴気を根こそぎ洗い流し、散らしていく。
瘴気から開放されたのを確認した俺は、目を見開いたまま固まる霧絵に声を掛けた。
「霧絵さん。氷室霧絵さん。聞こえますか?」
『──ぁ』
目の焦点が合わさった霧江は、しっかりとした声で返事をした。
『はい……聞こえ、ます』
怨霊だった時とは違って憑き物が落ちた顔つきだ。
やはり間近でみるとかなり美人だな……。
「よかった、どうやら正気に戻ったみたいですね。痛いところとか、違和感を感じるところはありますか?」
チャクラの鎖を解き、解放する。霧絵は小さく震えながら、自分の手を見下ろした。
『私ったら、なんてことを……こんな……こんな……っ』
「……難しいでしょうが、あまり気に病まないでください。正気ではなかったんですし、貴女もどちらかと言えば被害者なんですから」
手で顔を覆い、後悔の念に苛む様子の霧絵。
原作や未来知識がある俺とは違い、事情を知らない深紅ちゃんも痛ましい面持ちを浮かべている。
彼女の隣に腰を下ろした俺は、霧絵の背中を優しく摩った。
「貴女の事情はある程度分かっています。この家の儀式のことも。身も蓋もない言い方になってしまいますが、遅かれ早かれ儀式は失敗していたでしょう。生贄を必要とする儀式はいずれ、失敗する定めですから」
あの世と繋がっている門を封じるため、代々選ばれた巫女の手足と首を縄で引きちぎり、その血を吸った注連縄でもって門を閉ざす。
それだけでも残酷なのに、選ばれた巫女は現世に未練を残さないようにと十年も監禁されるのだ。
子供の頃から、それが巫女としての務めなのだと洗脳して、一族のためにその命を捧げる。そんな一族、滅んで当然だろう。
『……ありがとう、ございます。こんな私に気を遣って下さるなんて。優しい方、なのですね』
そう言って小さく微笑む霧絵。静謐な微笑は今にも消えてしまいそうな儚さがあり、何を考えているのかが手に取るように分かった。
『それでも、私がしたことは赦されないことに、違いありません。お願いします、退魔師様……その宝刀で、私を──』
「あ、すみませんがそれはお断りします」
『……え?』
断られるとは思っていなかったのか、キョトンとした顔を浮かべる霧絵に苦笑を返す。
「実は俺がここに着た目的の一つは霧絵さん、貴女なんですよ」
『私、ですか……? 私を祓うのではなくて?』
「ええ。単刀直入に言います。俺のお嫁さんの一人になって下さい」
俺は元々頭で考えるより先に体を動かすタイプだ。策を巡らせるより猪突猛進して敵をぶん殴るスタイルを好む。
それは、恋愛面でも同じで百の言葉を飾るより魂を込めた一の言葉が一番だ。
『……え? え、えっ? お、お嫁さん?』
嘘偽りないド真ん中の直球勝負。突然の告白に霧絵も困惑を隠せない様子でいた。
「実は嫁さん探しをしてまして。霧絵さんを見た瞬間ビビッときたんですよ。あ、この人、俺のお嫁さんにしようって」
『そんな、急に言われましても……私、幽霊で、もう死んでいる女ですよ……?』
「関係ないです。幽霊たろうと生者であろうと。貴女に惚れた、その事実だけで十分だ」
『……っ! ……わ、私には好いている殿方がいます……!』
「あぁ、想い人さんね。知ってるよ、その人のことも。貴女がそうなってしまった原因も知ってる。あの世でなら想い人さんと再会できるだろうが、残念ながらそれも束の間のことだ」
あの世で魂の輪郭が保っていられるのは少しの間だけ。すぐに輪廻転生し魂にこびり付いた記憶がリセットされてしまう。
稀にこびり付いた記憶が落ちず、前世の記憶が記録として残ることもあるが、それでも前世で培った人格は消滅していることが殆どだ。
そう説明すると、霧絵は絶望に染まった顔で俯いた。
『……それでは……もう、あの方とは……』
「会えない、と思った方がいいだろうな。酷なことだが」
その点に関しては本当に同情するよ。なまじバックボーンを知る身としては、ね。
だからこそ、絶対にこの人を幸せにするんだという気持ちが強まってくる。
不幸な目に遭ったんだから、今度こそ人並以上の幸福を手にしてほしい。いや、してみせる。
俺の熱い想いが伝わったのか、俯いた顔を少しだけ上げる霧絵。
その顔には絶望の色はなく、ほんのりと頬が朱に染まっていた。
『…………そ、それに、私は裂き縄の巫女として……役目を、全うしないと……』
「地下にあるアレは俺がどうにかする。だから霧絵はもう、巫女の立場に囚われなくていい」
『黄泉の門をどうにかするって……』
「俺、こう見えて最強無敵を謳っているんでね。あれを封じるくらいなら、いくらでも手があるよ。生前は一族のために人生のすべてを費やしたんだ。死後くらい、自分の幸せを願ってもいいんじゃないかな。俺が必ず幸せにしてみせるからさ」
女の幸せは人生の幸せ、なんをて言葉をどこかで聞いたことがある。その言葉を借りるなら、女としての幸せを転生神に誓って保証しよう。
『貴方様は、一体……』
「俺は鬼龍院天慈。よろしく」
次回は「禍刻霊」とのエッチです。
♡マークはあり派? なし派?
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あり
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なし