ライカンにされてしまった魔物ハンターが人狼の王に愛されて幸せになっちゃう話 作:ナメクジ次郎
人里から離れた、昼間でもあまり陽の差さない森の奥地。そこで俺は依頼された獲物を追っていた。
それは人並外れた運動能力で山道も意に介さないかのように走るが、見失うほどのものではない。
そうして付かず離れず、長い追いかけっこの果てについに隙ができる。直線上に相手を捕らえた。
ドン、と構えたマスケット銃から轟音が鳴り、獲物へと銃弾が突き刺さる。
獲物が倒れた音がした後に、一瞬の静寂。しかしまだ生きている可能性はあるので油断はせずに、マスケットからナイフへ持ち替えてゆっくりと近づいていく。
近寄ればそこには半人半狼。狼と人の中間のような生物が倒れていた。もはや息は無いようだが念には念を入れて、首へと銀のナイフを突き立てる。
ライカン、という魔族が居る。
見た目はそこに転がっているように、半人半狼の獣人といったような姿。一応他の動物の姿をした個体も居るらしいが俺は見たことがない。
この種族が持つ特徴は見た目通り人間の知能と獣の身体能力。そして更に恐ろしいのは吸血鬼のように噛まれたものを同族に変えてしまうという性質だった。
更に言ってしまえば奴らに吸血鬼ほどプライドの高さや選民意識はなく無差別に仲間を増やしてしまう為、見つけ次第早急に始末してしまう必要がある。
特に小さな村なんか狙われてしまえば一晩で村人全員がライカンに変わるなんてこともあり得るだろう。
だからこそ、俺に依頼が来たのだろう。闇に潜んで人を恐怖に陥れる魔物や魔族、そんな存在を狩る魔物ハンターである、この俺に。
「……もう居ないよな?」
殺したライカンに他の仲間が居ないか、周囲を警戒しながらもマスケットに次の弾を込めていく。
十秒、二十秒……気配も物音も無いことを確認し、ヘルメットを脱いだ。
「っだぁ~! 暑かった~!」
噛まれたら終わりのライカン対策のためとはいえ重装備のまま山を走り続けるのは流石に堪える。とても蒸れるからだ。
火照った頭を冷やすように手で扇いで風を送るが焼け石に水、暑いものは暑い。
「しっかしこの森虫が多くて鬱陶しいな……ああっ!? くそう蒸れて痒いのかと思ったら刺されてるじゃねえか!」
革鎧の前面を開いて服の中に風を送り込んでいると、ふと胸のあたりに虫に刺された腫れが目についた。
結構しっかり着こんでたはずなのにどこから入り込んで来たのやら。
まあいい、依頼が終わったんだから早く村に戻って宿で数日様子を見てからさっさと帰ろう。不衛生な森の中に居て腫れが酷くなったりしたら嫌だし。
「ああ、それにしても痒いな……蚊かよ俺を刺したのは……」
後から思えば、ここで昔噂に聞いたあの話を思い出していれ何かできたのかもしれない。
ああしかし、やはり俺はもうこの時点で知らず知らずのうちに詰んでいたのだろう、悪意を持った奴らの術中にハマっていたのに気が付けないまま。
◇◇◇◇
村に戻って村長に討伐を終えた事と数日経過を見ることを伝えた後、俺は宿の部屋で休んでいた。
経過観察、といったものの実際は数日村内や周辺の森の見回りをするくらいで大変なことはあまり無い。
なんなら動きが悪くなるからと今まで減らしていた食事量を戻せるのでこの期間は楽しみまであった。
ということで事前に買って宿に置いておいた保存の効く食料や村人からお裾分けしてもらった料理と酒を楽しんでいたのだが……。
「うぷ……」
体調が、どうにもおかしい。飯も酒もあまり喉を通らない。
用意した食事は多いと言っても普段なら問題無く食べきれる量だったはずだ。だというのに三分の一程度で食べ進める手は止まってしまう。
体が熱い、酒が悪くなっていたのか? それとも保存食が悪くなっていたのか。それとも……。
ダメだ、頭が働かない。考えれば考えるほど、熱が思考を奪っていく。
こうなったらもう一度寝てしまおうかと立ち上がった瞬間、全身に激痛が走った。
「ぐっ……うぅ……ガァッ!?」」
あまりの痛みに立っていられず、そのままテーブルに突っ伏すように倒れてしまう。
テーブルの上にあった皿や酒瓶が落ち割れる音すらも遠くに聞こえるほどに薄れていく意識の中で、次の異常事態が始まった。
ミシリ、ゴキリと。体が音を立てている。まるで全身が悲鳴を上げるように、こねくり回されていくように。
熱と痛みで飛びそうになる意識は、絶え間なく更新される熱と痛みによって強制的に戻される。
「ぐぅっ……あ゛ぁっ!」
止まらぬ痛みの奔流に慣れて来てしまったのか一瞬冷静になれた頭に浮かんだのは……以前見た、ライカンに噛まれた人間のこと。
熱病のような症状にもがき苦しみながら、その体が人ではないものへと変わっていく様子を。
まさか自分も……しかし何故、俺は噛まれもしなかった。無傷で安全に殺したはずなのに……!
何故、何故、何故! 混乱する頭、しかし無慈悲にも体は変化し始める。
腕を見れば薄い藍色にところどころ白が混じった、狼のような体毛が手の先から生えていく。
変化による熱と急に生えた体毛によって更に上がった体温を逃がそうと本能的に服に手をかければ、いつの間にか鋭く長くなっていた爪によって少し触れただけで服が切り刻まれる。
その衝撃で一気に開放された胸の辺りでぷるん、と重い何かが揺れる感覚。
「あっ……胸っ……? なんでこんなっ! 女みたいにぃっ……!?」
思わず手をやってみれば、まるで女の胸のように大きく膨らんだ胸。
ただライカンに変わっているだけじゃない!? さっきまで突っ伏していた体勢だから気が付かなかったが、気づけば目線の位置も少し下がっている気がする。
まさか……そう思い今度は股間に手を伸ばせば、もうほとんどわからないほど小さくなってしまったそれが無慈悲にも更に小さくなっていくのがわかった。
「やだ……やだ、やめろぉ……無くなるな……」
口から漏れ出る弱々しい抵抗の声も、女のそれのように高くなっていた。
そして抵抗虚しく、俺の男性器もその存在を失い。股間には割れ目が生まれていた。
「はぁ……はっ……なんで……俺、なんで……」
俺が俺であった証、それが全て消失してしまう。
それどころか人間という種族さえも失ってしまった、そんな失意の中うわごとのようにただ何故、どうしてと呟きながら周囲を見回していると……。
恐らく俺の声を聞いて異常を察知し、部屋に入って来たであろう宿屋の店主と目が合った。
さっきまで体を蝕んでいた熱が、一気に消えていく感覚。
見られた、見られてしまった。
変わってしまった体を、女になって、それどころかライカンになってしまった体を。
脳裏には、昔自分の故郷でライカンに噛まれて変わってしまった人間が、親からも村人からも石投げられ追われた光景が脳裏に浮かぶ。いやそれだけじゃない、今まで自分が殺して来たライカンの、死ぬ間際の顔も。
「どうして俺が」という、絶望の顔。
狩る側から、狩られる側へ。変わってしまったのは明白であった。
ここが二階だということを忘れ、思わず窓から飛び出した。
いつの間にか獣脚へと変わっていたのか、想定していたよりも勢いが出たが、着地してもほとんど痛くない。
これなら……俺は一目散に、今日殺したあのライカンが居た森へと走り出していた。
◇◇◇◇
「うぅ……くそっ、くそっ」
どれだけ走っただろうか、もう覚えても無い。ただただ疲れて、休むのにちょうどいい大きな木の洞を見つけてそこでひとしきり泣いていた。
「くそっ……なんで、なんで死ねないんだよ、死ななきゃいけないのに……くそっ」
ライカンになった人間は、大抵の場合人を襲うようになる。
それは同族を増やすためであったり、食うためであったり。理由は様々だが根底にあるのは迫害されたことによる、もう人に戻れないという絶望からだ。
きっと自分もいずれそうなってしまう、だからそうなる前に自分でケジメを付けなきゃいけないのに、勇気が出ない。
宿に置いてきた銀の弾丸や銀のナイフ、ライカンの天敵であるそれらがあれば簡単に死ねただろう。だが、自分の爪で自分を貫く度胸は俺には無かった。
「誰か……誰か俺を……こ、殺して──」
「おう、なんだお前死にたいのかよ」
絶望の中口について出た言葉に、応える者が居た。
低く、地の底から響くような重厚な声。頼もしさすら感じる男の声。
顔を上げると、いつの間にか目の前には二人の……いや、二匹のライカンが立っていた。
片方は巨大な男、いやオスと言った方が正しいだろうか。こちらが先ほどの声の主だろう。
普通のライカンよりも二回り大きい体躯をしており、かぎ爪も見るからに鋭そうだ。
太く、筋肉に覆われているのが見て取れる体。そしてその顔はライカンであっても端整で、こちらを見つめる瞳には野生の中に確かな知性を感じさせる。
見つめていると、きゅん。と何かが、疼くような感覚があった。
顔が熱くなるのに、何かまずいと感じて今度はその傍らに居る人物へと目を向ける。
もう一人は、一般的なライカンよりも少しだけ小さい。そしてそのしなやかな体躯や艶のある毛並から、雌の個体なのだろうと推測できた。
基本的に服は着ないライカンという種族には珍しく、白いとんがり帽子にこれまた白い外套を羽織っている。
あれは確か魔物ハンターが集まる場で見た事がる、魔術師たちに広く普及している法衣だった相手の魔術に対する抵抗力を高めて、反面自分の行使する魔術の出力は高くするものらしい。
ライカンが元は人間だったことを考えると、元魔術師のライカンが居てもおかしなことではない。
そんな事を考えながら見つめていると、その女はにこり。と遠慮がちに友好的な笑みを見せた。
「お前、死ぬのは勿体ねえぞ。ニンゲン辞めて社会から解放されてからが人生面白いんじゃねえか。それに前までのつまらん男の姿と違って今のお前は……美しいメスだ」
ゆっくりとこちらに近づいてきたそいつは俺の顔にそっと触れながら、そう言った。
それだけ、たったそれだけなのに。優しく触れられ、その顔が目の前にきただけなのに。
またきゅん、と。体の中で何かが疼いた。
ってそれよりも、なんでこいつ俺が男だったって知って……!
「なんで、って顔してんな。俺達はずっとお前を見てたんだよ。このメス……メアリが二流だが魔術師でな、遠見と虫を操ることしかできんが偶然狩りをしてるお前を見つけたんだ。よく仕事のできるやつだよ」
「ご主人様ったら……そんな事言われたら私、嬉しくなってしまいます……♡」
メアリと呼ばれたライカンの女は、顔を赤くしてその肢体をくねらせながら照れている。
「まあそんな事はどうでもいい、些細な事だ。本題はだな……お前、死ぬくらいだったら俺の群れに来いよ。今なら好待遇も約束するぜ?」
そんな提案の後、聞いても居ないのに目の前の男は語りだした。
曰く、自分はライカンの王国を作る為に動いているのだと。
ニンゲンだった頃から優秀な者を探し出し、ライカンへと変える。それを繰り返してまずはプロフェッショナルな集団を作り名を上げ、他の群れを従えていくのだと。
どうやらこの男も人間だった頃は優秀な軍人だったらしい。野生的な集団を、その野生と残虐性はそのままに統率の取れた軍隊のように扱いたいらしい。
とんだ夢物語だ。現に、それを語るこの男の目には熱に浮かされたような狂気の色が混じっていた。
「どうだ! 素晴らしい計画だと思わねえか!? それにお前はハンターとしてのノウハウを持つだけじゃなく今すぐにでも抱きたいくらいの極上のメスになっちまった……いずれは俺の子種を」
「断る! 俺はこんな体になっても魔物ハンターだ! 決して魔族には手を貸さん! そっ、それにこ、こ、子種なんてそんなものも要らない!」
ずい、と顔を近づけて息荒く語るそのライカンに、キッパリとノーを突き付けてやる。
ライカンの王国? 王の子種? ふざけるな、魔物ハンターである俺がそんなものに手を貸すはずがない。体が変わっても心までは変わってたまるものか。
「……そうかよ。じゃあ今日のところは帰らせてもらうぜ。明日また来るから心変わりしたら言ってくれや」
「帰れ帰れ! 何度来たって同じことだ!」
少ししょぼくれた顔をして俺から離れたそいつに、さらに拒絶の言葉を放つ。
心変わり? そんなものするわけがないだろ。
「あぁそうだ、そういえばお前に見せたいものがあるんだった。すっかり忘れてたぜ」
「見せたいものだと……一体なっ!? ~~~~!?」
振り返ってこちらを向いたライカンは、俺の目の前にあるものを見せつけてきた。
赤黒く、あたたかく、いやとても熱く脈打っていて。グロテスクで、少し形状は違うけど昨日までの俺にもあったもの。
しかし人だった頃の自分と比べてもあまりにも巨大なそれが、眼前に。目と鼻の先にまろび出て来た。
男性器、ペニス、チンポ。それが突然視界に現れたというのに、何故か嫌悪感は抱けないで、目を逸らせないで。
「すぅー……はぁー……すぅー……あっ♡ はぁ~~~♡」
「おいおい、随分と熱心に見つめてくれるじゃねえか」
男の声で、ハッと我に返る。
お、俺は一体何を……あんなものを見つめるなんて、あんな。
あんな立派で、雄くさくて男らしいものを……♡
「ククク、口では抵抗する割にもう一押しって感じになってんな。じゃあ今日のところは帰るからよ、明日はいい返事を期待してるぜ」
あばよ、と手を振りながら帰っていく、ライカンの男。それに続いて雌ライカンもその後ろを歩いていく。
一人残された俺は、目に焼き付いてしまった。焼きつけられてしまった王のチンポの大きさと匂いを、ただただ頭の中で反芻するしかなくなっていた。
「くそっ……くそっ! なんでこんなっ、興奮っ! するんだよ!」
ライカンの男が去って暫くした後、木の洞の中で眠りに着こうとした俺は何故か、自分の体を慰めていた。
乳、尻、ふともも。それに、女性器。
変わってしまった体は、毛深い体毛に覆われていながらも触るだけで気持ちよくて、一度無くなった理性を戻してくれない。
それどころか、あいつはもう居ないのに触れば触るほどあいつの顔を、体を思い出してしまってしょうがない。
あの大きな手で触られていると考えるだけで、顔に触れられた時のきゅんきゅんがまた襲ってきて。
男の頃には無かったはずの女性器を、本能のままに弄ってしまう。それだけで体は痙攣するようにビクビクと震え。もっと、もっと欲しいと愛液を滴らせる。
何が欲しいかなんて、明白だった。
「チンポ……っ!?」
たった一言、欲するものを口にした。
それだけで体に降りかかる快楽は何倍にも跳ね上がる。
「チンポ……欲しいっ! あいつのっ、王様のチンポっ!」
あのチンポのことだけを考えてただ、気持ちよくなるために口を、指を動かして快楽を貪る。
そうしていくうちに、いっそう大きな快楽の波がやってきた。
「あっ♡ ダメっ! イくっ、俺っ、イく! ライカンの体でイっちまう~~~♡」
大きな快感に体はビクンビクンと痙攣し、女性器からはプシッ、プシッと、愛液が噴き出てくる。
自分では止められない大きな絶頂に体力がどんどんと持っていかれ、体に力がはいらず腕がだらんと垂れ下がった。
もう動けない、そんな状態で心地よい快楽に包まれて。俺は眠りについた。