※この作品はR-18です。

碇アスカのプロローグ   作:アキみかん

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二人の朝

 土曜日はあいにくの雨模様だった。

 

 休日は明日もある。

 シンジとアスカは海への日帰り旅行をあきらめて、近場のレストランでの昼食と、食材の買い出しだけ済ませて、あとは自宅でのんびり過ごすことにした。

 

 昼食にはパスタを食べた。

 眺めのいい窓際をいつもシンジは譲ってくれる。

 雨には雨の景色がある。

 二人で外を行き交う人の傘の色を数えた。

 食事を待つ間、テーブルの上でお互いの手を絡めているところをウェイターに見られて少し気恥ずかしかった。

 

 書店に立ち寄って、夏に行きたい旅行先の写真を二人で眺めた。

 輸入雑貨店でコーヒー豆を200グラム購入する。

 先日手に入れた手挽きのミルを使って、シンジはコーヒーを淹れることに凝っている。

 

重たい食材は少なかったので、荷物は片手でおさまる程度で済んだ。

 空いた方の手で手をつないで帰路に着く。

 

 アスカが湯船で疲れを落としている間に、シンジが夕食の下ごしらえをする。

 アスカの髪をドライヤーで乾かし、入れ替わりでシャワーを浴びてから、二人で夕食のオムライスを作った。レトルトのビーフシチューをかけて、少し豪華にした。

 お酒はグレープフルーツの缶チューハイを一本、二人で分けて飲む。

 

 ゲームで少し遊んで、お揃いのブラシで歯を磨いてから、映画を一本見た。

 去年の夏に話題になった海外のアクション映画だ。

 シンジはアクションシーンよりも、紆余曲折を経た主人公とヒロインが最後に結ばれたことに涙を浮かべていた。

 気の強いそのヒロインはアスカに少し似ていて、アスカは、だからシンジが泣いたんだったらいいなと思った。

 

「? なにかついてる?」

 ジッとこちらを見ているアスカに、シンジは首を傾げる。

「うん。いいのかなって……。こんなにしあわせでさ」

 シンジは当たり前だよというように、アスカに笑顔を返した。

「いいんだよ。アスカはもう、しあわせになって」

 

 音量をしぼって、バラエティ番組を流す。

 特に観たかったわけではない。きっかけがほしかっただけだ。

 アスカはソファーに座るシンジの膝の上に腰かける。

 背中をシンジに預けて、わざと身体を深く密着させた。二人の鼓動が同時に速くなったことがわかった。

 

 夜がふけるにはまだ早い時間だった。

 雨で週末の予定が前後したが、明日も休日だ。

 

「いいよ、シンジ……」

「うん……」

 

 お互いに顔を近づけて、唇をあわせる。

 

 二度目のキスの後、テレビを消して、アスカはシンジの正面に向き直った。

 

 

   ※

 

 

 じっくり、時間をかけて互いの唇をついばむ。

 時折わざと音を立てながら、シンジがアスカの上唇に吸いつくようにキスをする。

「ん……」

 先に吐息をもらしたのはアスカの方だった。だから、彼女の方から先に舌を絡めた。

 お互いの息と唾液がせつない音をもらす。シンジは唇に角度をつけて、より深いキスへと移行した。

「ん……ちゅ……」

 舐め合うように、互いの口内を舌が行き来した。時々唾液が糸を引いて、それを呑み込むようにまた舌を合わせる。

 どれくらいの時間、互いの唇を貪っただろうか。それでも名残り惜しそうにシンジが顔を離した時、アスカはシンジのシャツの裾に手をかけた。

「服、邪魔……」

 その台詞を先に言うのが、いかにもアスカらしい。

 シンジがシャツを脱ぐ間に、アスカはシンジの首筋から胸にかけて、斜めに舌を這わせた。

「う…あ……」

 思わず情けない声が出た。

 その反応に気をよくしたのか、アスカはそのままシンジの乳首にキスを始める。

 すでにシャツは脱ぎ終えていたが、シンジはされるがままにしていた。アスカはシンジの上半身をもてあそびながら、下着ごとスウェットのパンツも脱がしにかかる。

 シンジのそれはすでに硬く直立していて、アスカはなでるようにやさしく触れながら照れ笑いを浮かべた。先に脱がせておいて、その反応は卑怯だろう。

「どうしてほしい、シンジ……?」

「……アスカも、服…邪魔」

 アスカの顔がぼっと赤くなる。

「具体的に、どこが見たいわけ?」

 下から覗き込むように、赤い顔のままアスカは囁いた。

「……………」

「シ〜ンちゃん?」

「……アスカの……おっぱい、です」

 よくできました、とアスカ。

 知っていて、アスカはわざとそれを言わせる。

 アスカはシンジの先端から少しだけ溢れた透明な愛液を親指でぬぐいとると、それを口に含んでうれしそうに目を細めた。

「シンジの味」

 シンジの中の自制心がひとつ、決壊した。

 アスカはシンジに背中を見せると、パジャマのボタンを首元から順番に外し始める。

 我慢できなかった。

 後ろからアスカを抱きすくめる。彼女の短い悲鳴を無視して、シンジはパジャマの裾から両手を侵入させた。

「は……ん……」

 うなじにキスを繰り返しながら、シンジはアスカの豊満な乳房を下から揉みしだいた。

「まだ途中だよ、アスカ」

「うん……」

 アスカがソファの脇にパジャマを脱ぎ捨てると、すでにシンジの両手でやわらかく形を変化させている彼女の乳房があらわになった。

 うなじから耳たぶ、唇へとキスを移してから、シンジは乳房の突起へ指を這わせる。

「あ……や……っ」

 やさしく、痛くならないようにーシンジはゆっくりとアスカの乳首をもてあそんだ。時々、少し……ほんの少しだけ力を加えてつまみ上げる。それだけで、アスカは軽く達したように甘い吐息と共に身体を震えさせた。

「下が……まだだよ、アスカ」

 少しいじわるな言い方になったかもしれない。アスカは身をよじりながら、パジャマを腰から下へずらした。

 ショーツがアスカの足先から落ちる。

 二人とも呼吸が荒くなっていた。シンジはアスカの両脚を大きく開かせて、だがその中心にはまだ手を触れず、内腿をなでるように右手の指をゆっくり往復させる。その間も、左手は彼女の乳房の先端をせめ続けていた。

「お風呂」シンジの指が、アスカの恥部のすぐそばをなぞる。

「一緒に入りたかった?」

「うん……。でも、早くした、かった…から……ん……」

 すでにむき出しになっているアスカのそれを、シンジの指がかすめた。

「僕も……したかった」

 焦れたアスカの手がシンジの指を導く。

 彼女のクリトリスは、すでに大量の愛液をたたえていた。

ーやさしく……痛くないように……。

 呪文のように唱える。

 胸に触れる時よりも遥かに慎重に、シンジはアスカの一番敏感な部分にそっと中指を当て、ゆっくりと、小さな円を描くように動かした。

「あ…っ」

 シンジが指を動かす度に、アスカの押し殺した声がシンジの耳を刺激した。

ーこの眺めは……だめだ。

 アスカの肩口から覗き込むように視線を下げると、自分の両手がアスカの乳房と恥部を愛撫している光景が目に入る。あのアスカの身体を、自分がもてあそんでいるという事実に、シンジは頭がくらくらした。

 シンジはアスカのうなじや頬にキスを繰り返しながら、右手の中指を彼女の陰部に移動させた。そこもすでに大量の愛液で濡れそぼっていて、ソファに大きいシミを作っていた。

 中指は、すんなりと奥まで沈み込んだ。

 薬指も……挿し、込むー。

「あっ! ん……っ」

 アスカの気持ちいい場所は熟知している。二本の指で斜め上を刺激すると、彼女はよがって身体を震えさせた。

「シン、ジ……」

 横目でこちらを見つめる彼女が愛おしい。両手は休めずに、シンジはアスカに向かって顔を近づける。アスカは貪るようにシンジの唇に吸いついた。

 ソファのシミがさらに広がった頃、アスカはシンジの頬をなでながら懇願した。

「ベット…が、いい……」

 

 

 雨は上がって、月明かりがカーテン越しに二人をやさしく照らしていた。

 ぴちゃ……ちゅぷ……という淫靡な音が室内に響く。ベッドの上で直立しているシンジは、アスカの口が下腹部で前後する度に息を荒くした。

「気持ちいい……?」

 アスカはシンジの先端の裏側も丁寧に舐めあげながら、時折指先でやさしくしごいた。しごきながら、付け根の陰嚢まで口にふくんで舌先で転がす。

 アスカの問いに、シンジはとても答えられない。

「はぁ……あっ…アスカ……」

 アスカは両手をシンジの腰に添えて、再びシンジ自身を口にふくんだ。口だけで……シンジの好きなやり方だ。こうしてもらうと、アスカの豊かな双丘が揺れている様子も堪能することができる。アスカもまた、シンジがよろこぶ方法をよくわかっていた。

「ん……ん……」

 浅く、ゆっくりとした刺激が繰り返されて、シンジは体中の思考と熱が下腹部に集中していくのがわかった。

「アスカ…で、出ちゃう……ダメだ」

「ん……いいよ、出して……」

 シンジは必死に理性を振り絞ってアスカの頬に手を触れた。こんな風に彼女を見下ろして、自分だけ気持ちよく達するのは嫌だった。

「一緒に……が、いい……」

 照れて、声が掠れた。

 名残惜しそうなアスカを、ベッドに横たえる。ちゅっちゅっと二度口づけを交わしてから、シンジはアスカの全身に、上から順番にキスをした。

 アスカの全身がしっとりと汗ばんできた頃、シンジはいよいよ彼女の乳房に手を伸ばした。

「ん……」

 右手でアスカの左胸を揉みしだきながら、右乳首に舌を這わせる。途端に、アスカの身体がビクンと跳ねた。

「は…ん……っ」

 アスカは右の方が敏感だ。

 アスカの乳頭は桜のように淡いピンクで、それが舌の動きにあわせて徐々にぷっくりとかたくなっていく様は、言いようのない興奮をシンジにもたらした。

 つんと隆起したそれを、舌先でつつき、なめ、吸いつく。アスカは荒い呼吸を繰り返しながら、赤ん坊のように乳房を愛撫するシンジの髪を、愛おしそうに両手でなでた。

 アスカがよろこんでくれるなら、シンジはいつまでもそうしていたかったが、頃合いをみて顔を彼女の下腹部に移行させた。

「寒くない? 毛布、かけようか?」

「だいじょうぶ……。毛布でシンジの顔が見えなくなると、なんか…やらしい」

 シンジは頷いて、アスカの間に顔を埋めた。

 すぐに味わうのはもったいなかった。シンジは内腿にキスを数回繰り返し、アスカが切ない表情でこちらを見ているのを確認してから、彼女の一番恥ずかしい場所へ舌を差し込んだ。

 自分だけが知っている、アスカのにおい。味。

 何度も、何度も……シンジはわざと音を立てた。

 アスカの恥部を口全体で覆うように吸いつき、その奥へ舌を這わせる度に愛液が溢れて、全てをすくいとることができなかった。

 二人とも、もう限界だった。

「ほしい、シンジ……」

「うん……」

 シンジはベッドサイドの引き出しから避妊具を取り出した。

「付けるの?」

 それは甘い誘惑だった。だが、シンジは首を横に振った。

「ちゃんと、したいんだ」

ーアスカと、これからもちゃんと二人で歩いていくために。

 アスカはそれ以上何も言わなかった。代わりにシンジを手招きすると、跪いたシンジのそれを寝転びながらもう一度口に含んだ。

 決して萎えかけていたわけではないが、たった数回の往復でシンジのそれはさらに痛いくらいに勃起した。

 たまらなくなって、シンジもアスカの乳房にもう一度手をやる。乳首から、腹部、彼女の中心部へ。触れる度に、アスカは小さく喘いで、その動きがシンジ自身への刺激をさらに加速させた。

「そろそろ……アスカ」

「きて、シンジ……」

 コンドームを付ける。こういう時に、アスカが顔を赤らめながら目を背けるのは、やはり卑怯だろうとシンジは思う。

 アスカが両脚を開く。そこにシンジが身体を入れると、アスカは両手で彼の顔を抱き寄せた。

 ひとつになる時は、キスをしながらと決めている。舌を絡め、お互いの唇を紡ぎながら、シンジはアスカの中に自分自身を深く沈めた。

 

 ゆっくりと、やさしくー。

 

 アスカもシンジを受け入れる。

 

「ん……。あ……」

 一番深い場所へシンジが到達してしばらく、二人は一時見つめ合った。アスカの双眸はせつなく細く、シンジを捉えて離さなかった。

 やがてアスカがシンジの頬をなでて、シンジはゆっくりと身体を律動させた。

「痛くない……?」

 シンジの問いに、アスカは甘い吐息で応える。

「あっ……あ……っ」

 よく濡れている。

 アスカが痛みなく自分を感じてくれていることが、シンジはたまらなくうれしかった。

 シンジは両手をアスカの膝に添え、さらに大きく彼女の両脚を開いた。ともすれば乱暴に動こうとする自分自身を必死に自制して、やさしく腰を前後させる。

 シンジはこの体位が好きだ。自分の最も敏感な部分を、彼女の最も敏感な最深部までやさしく突き上げることが出来る。大切な人の全てと、その表情が見える。

ーアスカとつながっていることを実感できる。

 ゆっくり、腰を大きく離し、また深く突き入れて密着させる。アスカの最奥までシンジが到達する度に、例えようのない高揚感が二人の下腹部に集中して、アスカの吐息と愛液はとめどなく溢れた。

「シン、ジっ……あっ!」

 少し速度を上げながら、シンジがアスカの乳首にむしゃぶりつく。

ーう……あっ。

 我慢できず、シンジは数回獣のような荒さでアスカを突き上げた。瞬間、アスカの中心からさらに大量の愛液が溢れて、シンジ自身をあたたかく包み込むのがわかった。

「はぁ、はぁ……ごめん、アスカ。大丈夫?」

 そう口にしながら、シンジの動きは止まらない。止められなかった。

 アスカは喘ぎ声をもらしながら、シンジを抱き寄せてめちゃくちゃにキスをした。それでシンジの動きが緩慢になった瞬間を見計らい、耳元で囁く。

「上がいい」

 シンジはひとつ頷いて、アスカを抱きしめながら後ろに倒れ込んだ。

「シンジばっかり、ずるい」

 アスカの表情が妖しく煌めいた。

「アス…う、あっ……!」

 シンジが名前を呼ぶよりも早く、アスカは腰を激しくシンジ自身に擦りつけた。シンジが情けない声をもらすと、彼女はさらにリズミカルに、動きを激しくする。

「アスカ」

 シンジは、目の前で揺れているアスカの乳房の中心を口に含んで、舌先で転がすように舐め回した。

「んっ……シンジっ」

 アスカの表情が甘くゆがむ。

 彼女のお尻に両手を添えて、シンジは下から何往復も突き上げる。

「あっ! やっ! ダメ…っ!」

 そう言いながら、アスカ自身もシンジの動きにあわせて下半身を上下させた。

 シンジのそれは明らかに硬く充血して、気を抜けば爆発してしまうその一歩手前で、先に二度目の絶頂に達したのはアスカの方だった。

 アスカ自身が、シンジを呑み込むように締めつける。

「……っ!」

「シ…ジ……っ」

 言葉にならない。

 アスカは小刻みに震えながら、シンジにしがみつく。

 二人の呼吸にあわせるように、アスカの愛液がまた溢れてシンジを自身の中に内包した。

「はっ……はっ……」

 シンジはアスカの頭をなでた後、こちらに身体を預けるように倒れ込んでいたアスカごと上体を起こすと、そのまま彼女をやさしく抱きしめた。

「ちょっと、休憩」

「うん……」

 二人の呼吸が落ち着くまで、静かに抱き合う。

 

ーあたたかい……。

 

 シンジのそれはますます屹立したまま、アスカを奥深くまで貫いている。抱きすくめた彼女の身体からは、はちみつのように甘い香りがした。

「どうして泣くの?」

 全身でアスカを感じているよろこびと安堵感に、気づくとシンジは涙を流していた。

「アスカだって……」

 シンジの胸元に落ちた雫が小さな水溜まりを作って、アスカはようやく自分も泣いていることに気がついた。

「ねぇ、シンジ」

「うん」

「ずっとそばにいてね」

「いるよ」

「ずぅーっと、そばにいてね」

「うん。アスカだって、ちゃんと僕のそばにいてよ」

「うん……」

 深くつながっている時ほど、言葉がほしくなるのはなぜだろう。

 ただやさしく、二人はつながったまま抱き合った。

 このまま、時間が止まればいいのに。

 言葉にはしなかったが、二人の気持ちは同じだっただろう。

 

 

「はっ! あっ……やっ!」

 四つん這いのアスカを後ろからシンジが突き上げる。覆いかぶさるように後ろから乳房に両手を回し、指先でこねるように彼女の乳首を味わってから、最大限の振り幅でシンジ自身を突き入れた時、アスカは今日何度目になるかわからない絶頂を迎えた。

「はぁ……はぁ……」

 シンジに支えられながら、アスカは仰向けでベッドに倒れ込む。

「アスカ……僕も、もう……」

 キスを繰り返しながら、シンジは懇願するように囁いた。理性は度重なる快楽に押し込まれて、どうにかなってしまいそうだった。

 アスカはやさしくほほえむと、自分から脚を開いてシンジを招き入れた。

「ほら、シンジ……」

「アスカっ……」

 凶暴な熱と硬さで直立したそれを、シンジはアスカの中へ三度挿入した。

 もはや、やさしくできたのは最初だけだった。荒々しい口づけを唇や乳頭に繰り返す度に、シンジの律動は激しさを増していった。

「シンジ」

「アスカ!」

 二人の汗と愛液が混ざり合って、男と女の匂いが充満する。

 何度も大きく腰を離して、密着させる。いっそ避妊具を外して自分の全てをアスカにぶち撒けたい欲求を、シンジは必死に押し殺した。

 アスカにやさしくしたい、愛してあげたいという想いと、アスカの奥深くに印をつけて自分だけのものにしたいという欲望が、ひと突きごとにせめぎ合う。

「んっ…シンジ……あっ!」

 アスカの右手がシンジの頬をなでる。

「いいよ、シンジ……いっしょに、いこ?」

「あぁ……」

 想いが二人の全身を激しく突き動かす。あまりの快楽と幸福感に、二人重なったまま溶けてしまいそうだった。

「はぁっ! はぁッ!」

「シンジ!」

「イクよ、アスカっ……!」

「あッ! あッ!」

 唇と身体を深く重ねた瞬間ー。

 

 二人の身体が大きく跳ねー。

 

 シンジはアスカの中に射精した。

 

「う…あ……っ」

「ん……」

 離したくなかった。

 必死にしがみついたまま、シンジは腰を目一杯密着させ、アスカは両脚をシンジに絡めて、シンジは何度もアスカの中に放出した。シンジ自身が膨張する度に、アスカの身体が大きく震える。

「シンジ……」

 アスカの声はか細くせつない。

 彼女はシンジを受け入れながら、夢中でシンジに何度もキスを繰り返した。

「好き、シンジ……。大好き……」

 二人はしばらく目を閉じて、互いの身体をやさしく抱きしめあった。

 やがてシンジが名残惜しそうに自分自身を引き抜き、避妊具を外した時も、シンジのそれはまだ硬く直立したままで、シンジは自身の節操のなさに苦笑した。

 それを見ていたのだろう。

 ベッドサイドからテッシュを取ろうとしたところで、アスカが覆いかぶさってきた。アスカは荒い呼吸のまま、シンジのそれにしなやかな指を這わせる。

「アスカ、まだ、拭いてな……」アスカの美しいリップがシンジ自身を呑み込む。「い、から……」

 コンドーム越しでは味わえない、途方もない快感の波が押し寄せる。射精直後で過敏になっていることも手伝って、シンジはまたすぐに達してしまいそうだった。

「ん……ん……っ」

「アスカっ……だ、ダメだ、また……っ!」

 シンジの差し出した右手をやさしく押し退けて、アスカは口の動きを加速させた。

ーイ……ク……っ。

 逃げ場がなかった。込み上げる射精感に頭の中が真っ白になる。行き場をなくした右手が自然とアスカの乳房に伸びて、気づくと中指と薬指の付け根で乳首を挟み込むように揉みしだいていた。

 シンジの腰が浮き上がる。

 次の瞬間、シンジはアスカの口内で膨張しきった自分自身を解き放った。

「あっ! あー……」

「んっ! ……んっ……」

 身体のどこに残っていたのか、アスカの中で果てた時と同じくらいの量をシンジは射精していた。その全てを残さず吸い上げて、アスカがシンジ自身から口を離すと、彼女の唇から白濁した愛液が滴り、糸を引いた。

「ごめん……」

 シンジは今度こそベッドサイドからテッシュを数枚取ってアスカの前に差し出したが、それを受け取る前に、彼女はこくりと喉を鳴らしてシンジの愛液を飲み下してしまった。

「シンジの味」

 アスカの笑顔に、シンジの背筋はゾクリとする。

 アスカはシンジからそのままテッシュを受け取って、シンジ自身を丁寧に拭き始めた。

 代わりにシンジは枕元からペットボトルを引き寄せ、それをアスカに手渡す。

 ミネラルウォーターがアスカの喉を鳴らす。飲み終えてから、アスカはシンジにあらためて小鳥のようなキスをした。

「おいで、アスカ」

 たまらず、シンジはアスカを抱き寄せる。

 普段なら「ナマイキ」と殴られるところだが、アスカは素直にシンジの胸に飛び込むと、そのまま二人でベットに倒れ込んだ。

 

 

 しばらく、他愛もない話をしたと思う。

 腕枕をしながら、シンジはその手でアスカの髪をなで続ける。シンジの胸に手を添えて、やがてアスカは猫のように丸まって安らかな寝息を立て始めた。

 シンジは手を止めて、そのままアスカをそっと抱きしめた。あの頃から変わらずはつらつと元気な彼女の身体は、こうしているとひどく頼りない存在に思える。

 シンジは、いつも眠りにつく前、祈るようにアスカに捧げる台詞を今夜もつぶやいた。

「好きだよ、アスカ」

 ありきたりな台詞だ。

 でも、とても大事な言葉だった。

 

 

   ※

 

 

 目覚めた時、アスカは一人だった。

ーえ……?

 昨日の雨は深夜に降ることもなく、カーテンの隙間からは朝日が差し込んでいる。

 外から子どもが走っていく音が聞こえる。

 春の風は鳥の鳴き声を運んでいた。

 だが、アスカは一人だった。

「シンジ……?」

 アスカの瞳から、涙がぼとぼととこぼれた。視界がぼやけて、自分が何を視ているのかもわからなくなった。

 

 シンジのいない世界。

 

 自分はそれを知っている。

 長い長い時間、ひとりぼっちだった世界。

「ふ……うぅ……」

 アスカは自分自身を殴るように涙を拳で拭いた。ぐりぐりと押し付けるのに、涙は隙間からとめどなく溢れて落ちる。

 しあわせなんてない。

 いつもの夢だ。幻だ。

 シンジが私だけを見て、あんなにやさしいなんて、あるわけがないんだ。

 他には、何もいらないのに。

 いつもそれは、砂粒のように手の平から流れて消える。

 

ーアスカ……?

 

 欲しかったその声が自分のすぐ耳元で聞こえて、アスカは涙でグシャグシャの顔を上げた。

「シン、ジ……?」

 シンジがいた。大人のシンジが。

 赤い……なんだ? 浜辺で、シンジに、さよならを、言わ、れて……。

 何を考えているんだろう。私は子供の頃のシンジを知らないはず。会社の他の女に取られるのが嫌で、私だけを見てほしくて、私から告白したはずだ。

ーなのになぜ、この笑顔を見ると、なつかしさに胸が締めつけられるんだろう。

「ごめん、アスカ。よく眠ってたから、キッチンで朝食作ってたんだ」

 シンジはベッドの脇に腰掛けて、アスカをやわらかく抱き寄せた。

「怖かったね。怖い夢見た? 僕がいなくなる夢?」

「バカ……バカシンジ!」

 アスカはシンジに抱きしめられたまま泣きじゃくった。すごい形相をしていることが自分でもわかったが、止められなかった。

「かっで、に…い、いなぐなるな!」

 シンジはそこにいるのに。

 ちゃんと目の前にいるのに、なぜ私は泣いているんだろう。

「ぞ、ばに……いて! ずっど、い…いでよ」

「いるよ。今度はちゃんと、そばにいるよ」

 アスカはなおも泣きじゃくりながら、シンジの背中に両手を回した。

「どっがいっちゃ…い、いや、だ……。ずきなのに、はなれるなんて、や…やだ……」

 シンジは、アスカの言葉のひとつひとつにやさしく相槌をうち続けた。

 アスカが発作的にこうなるのは初めてではない。記憶の中の何かがフラッシュバックするのだろう、孤独を感じた時、ふとした拍子に、彼女はシンジを探すことがある。

 十四年。

 同じ年月を二人で重ねることができれば、僕らは先に進めるだろうか?

 どこかでそうも思っていない。そんなに時間はかからない。こうしている今も、二人で前に進んでいるとシンジは思う。

“バカシンジ!”

ー久しぶりに聞いたな。

 シンジは懐かしいその響きに、ふっと笑って目を伏せた。

 やがてアスカは泣き疲れて、シンジの膝の上にずるずると倒れ込んだ。シンジは毛布を裸の彼女の上からかけて、ゆっくり何度も頭をなでる。

 シンジはもう一方の手でアスカの手を握った。

「シンジ……いる?」

「いるよ」

「ちゃんと、そばにいる?」

「ずっとそばにいるよ」

 人は時々、心が迷子になるから。

 言葉が大事な時がある。

 アスカのその問いかけが何万回続いても、シンジはそれに応え続けただろう。

「……起きる」

 早起きとは到底言えない時間になってから、アスカはようやく涙を止めた。

「朝食の続き、作るね」

 シンジが立ち上がると、アスカもそのままくっついてきた。シンジの腰に両手を回して、ひっつき虫のように、ぴったりと。

「アスカ……さん?」

「どっかいっちゃ、やだ」

 裸のアスカが抱きついている。

 あぁ、だめだ。このまま押し倒してしまおうか。そうすると、きっと僕はもう何も我慢ができなくなって、作りかけの朝食もせっかくの日曜日も全部放り出して、このまま二人で夜までー。

「じゃあ、朝食一緒に作ろうよ」

 大人のシンジは、自制心が上回った。

 シンジには、アスカとやりたいことがあった。

「昨日買ったコーヒーも、二人で飲みたい。せっかく晴れたんだし、お弁当のサンドイッチは僕が作るから。電車に乗ってさ……」

「海?」

 アスカが楽しそうに聞き返したので、シンジもつられて笑顔になった。

 アスカと二人、やりたいことがたくさんあるのだ。

「そう。新しい思い出を、いっぱい作ろうよ、アスカ」

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