色々エロ掌編 作:放浪するモキュ侍X
>はい
〈一周クリア特典でアルトリアが初期パートナーに追加されました〉
ある日突然この世界に呼ばれた少女リッカは、まずマシュ、カーマ、ジャンヌという少女たちのうち……
〈誰をパートナーに選びますか?〉
>>マシュ
〈盾戦士。カバーリングにカウンター、レベルが上がれば強力な全体補助魔法で冒険を支えてくれる献身的な少女です〉
(パートナークリア回数1、特典が解除されます)
>カーマ
(スカウト。弓攻撃や罠解除で戦闘以外にも万能な働きを見せる妖艶な少女です)
>アルトリア
(サブイベントをこなすことでリリィからオリジンorオルタへと成長する無垢な少女剣士です)
……マシュに案内されるまま王城へ登った。
そして豪勢な客室で制服と引き換えに渡されたこの正装……と伝えられたビキニアーマーと青い鞘の聖剣を身につけて――どうやらこれを着られる事自体が勇者の証明だったらしく――リッカはまっ黒な女王に謁見した。
一言で表すなら絶世の美女と称えたくなる女王マリーは両脇に女騎士を控えさせ、豊満な胸を揺らしながら二人を見下ろし、甘く冷たい声色でリッカにことのあらましを告げた。
(噛み砕いて言うなら、魔王がモンスターを引き連れて世界中で暴れてるから、魔王を倒したら帰してくれるらしいんだけど……)
いっそこれを拉致だといって切り捨ててワガママを貫き通せる……屈強な兵士たちを前にそう切り出せる強さはリッカにはない。しかし自分は生まれてこの方剣など持ったこともないし、モンスターなんて見たことがないから出来るか分からないとはっきり言い返せる胆力はあった。
すると女王様は口元を扇で隠して目を薄める。何が楽しいのかはリッカには分からないが、ただ笑っているのは確かだった。
『伝承曰く勇者とそのパートナーの鎧にはね、どんな経験さえ主人の“力”にしてしまう魔法が宿っているそうなの』
一度鎧に選ばれた者は歩くだけでも、はてはご飯を食べることでさえ“経験”とみなされ徐々に強くなって“レベルアップ”という劇的な成長を遂げる。幸い、この国は魔王の城から最も遠い場所にあるので、自力で旅をすればその頃には魔王を倒せるほど強くなっている、そうだ。
『これなら大丈夫でしょう? さあ、任せたわよ勇者様? 凱旋を楽しみにしているわ』
まだ言いたいことはあったが、有無を言わさない迫力で押し切られ、それでも数日ほど訓練や勉強をさせてもらってから、勇者リッカはひっそりと旅立った。
「気をつけてください先輩! 強敵です!」
「えー……?」
緊張した面持ちの盾戦士マシュとは対象的にリッカは困惑を隠せなかった。
王都から旅立って数時間、怖いから最初は弱いスライムでも出てくれないかと期待しつつ……願い通り出てきた数体の弱い魔物を倒しながら……初めて抜いた剣の重さとスースーする鎧、獣の体当たりを逆に弾き飛ばせる不思議な頑丈さに戸惑いながら少々荒れた街道を歩いていく。
青い草の生い茂る道に入っても葉先で素足がチクチクともしないし、虫刺されのかゆみさえないことに驚きながら、道と道のはざかいにある海に面した砂浜に出る。そこにはペンギンを引き連れた女が待ち構えていた。
「あらあら、スタアを道端に待たせるなんて礼儀がなってないわよ。で、ようやく勇者さまのお出ましというわけ?」
「あ、あなたはもしや魔王軍幹部、クイーンスライムのラムダ!?」
「くいーん……スライムぅ?」
こちらを見るや上着を脱ぎ捨てた少女の格好はビキニアーマーのリッカやレオタードアーマーのマシュよりはるかに過激な、後ろからじっくり見たら見えてはいけない穴が見えそうなTバックのマイクロビキニ姿で、一見モンスターに見えない。しかもその膝や肘の先の四肢は金属、まるでカーボンで作られていそうな義肢であり、リッカとしてはそもそもこんな辺鄙な場所で一人ペンギンと戯れているのが危なっかしく見える。
(ひょっとしたらモンスターのメス……みたいなのは女の子なのかな?)
いやもしかしたらモンスターっていう名前の民族……そんなことを考えているせいでマシュの緊張感と同調できないリッカの鼻先に、突如としてメルトという少女の顔が現れ、その青い瞳でリッカを覗き込んだ。
「わっ!」
「で、きれいなお顔でぼけっとしてるあなたが勇者ってわけ?」
「え、うん、そうらしいよ」
こうして近くで、薄紫の髪と自分の赤毛が触れ合うほどの距離まで来ても、まだリッカは少女をモンスターと認識できない。代わりにマシュは先程から盾を構えてリッカとラムダに割って入る隙を伺っている。
一触即発というには少し眠たげでさえある空気の中、リッカの全身をジロジロと観察したラムダはハッとばかにするような笑い声を上げた。
「なんだ、二人共まだ全然レベルの上がってない雑魚じゃない。魔王のヤツが気にしてたから一番手に立候補してあげたのに、やる気出して損しちゃったわ」
「な……!」
あまりに見下した物言いでリッカの顔に朱が刺す。その様子でさらに口角を上げ、ラムダは一層笑みを深める。
「ごめんなさい、マナーがなっていなかったわね……悪かったわ、想像以上にみすぼらしいちんちくりんの小娘どもだったから、ついからかっちゃったのよ。お詫びに……私、弱いものイジメなんて大っきらいだから、今なら豆粒みたいに縮こまって逃げ出しても見逃してあげるわ」
「お願いです! ここは引きましょう!」
>逃げ出す
>戦う
>>戦う
――その一言が決定的だった。
自分どころか、この数日つきっきりで自分にこの世界のことを教えてくれて、特訓では自分の未熟な剣をその大盾で何度も受けては指導してくれた優しい少女への侮辱だけは聴き逃がせなかった。
「取り消して…」
「聞こえないわね、もっと大きい歓声をくださらない?」
冷たい腕が顎をなぞる。自分を侮っていると人目でわかるサファイアのような輝きをキッと睨み返したリッカは、手を腰に伸ばし剣を握る。
「マシュへの悪口は許さないよ!」
そして力を込めて、人を傷つける、最悪殺してしまうかもしれないという悲壮な覚悟をきめて剣を抜き打った。
「何よ、その気になれば戦えるじゃない」
「勇者様……」
剣は空を掠める。一足飛びで刃先の届かないところまで逃れたラムダはこれで嬲ってもプライドは痛まないとほくそ笑み、リッカの怒りを理解したマシュは悲壮な決意を固める。
「勇者様……いいえリッカさん、こうなったらどこまでもお供します」
「ごめんね、マシュ」
両刃の剣には似つかわしくない正眼の構え、その横には盾に隠れて逆手でショートソードを抜けるよう構えた盾戦士が布陣する。対するは、片足を上げ遊雅に回る踊り子。
「馬鹿ね。切り刻んであげるわ!」
〈魔王軍幹部、クイーンスライムのラムダリリスが現れた!〉
>>レベル低、H攻撃耐性なし、処女時のイベント
「やっ!」
「ふふっ、怖い怖い」
振り抜いた態勢のまま走り、もう一度横薙ぎ。リッカの剣捌きは体幹に芯が通っていて、持ち慣れていない金属の塊にさえ振り回されている様子はない。風切る音はピュウと澄み、頑強なモンスター相手でも聖剣の切れ味を十全に発揮できるよいスイングだ。
「簡単なステップも踏めないなんて、全然駄目じゃない」
しかし当たらない。ラムダリリスは先のように跳ぶこともせずブリッジで躱してしまう。淡い輝きをまとった刀身がラムダの体を捉えることはなく、空に光芒を描く絵筆になってしまった。
「いい筆使いね、もしかして勇者じゃなくてアーティストだったの?」
「リッカさんどいてください! たあああ!!」
「あなたは無粋ね」
「うあっ!?」
合図を受けたリッカが引くと同時にマシュが盾の重量を活かし突撃するが、ラムダは曲調を変え、地に根を張るような力強い踏み込みの蹴撃で盾ごとマシュを遠くに蹴飛ばして圧倒する。
「マシュ! このお!」
入れ替わって接近したリッカは何度も斬りつけるが、剣がラムダに食い込むことはなかった。腕を狙った小手打ちは体を横に反らすだけ、足を狙った脛切りには義足をまるで本物さながらに動かしてタップダンスのように跳ね、危うさなど微塵も感じさせない多用な舞でリッカを魅了する。
「リッカさん、もう一度、いけます……やぁあああ!!」
「アン……ドゥ!」
「あぁっ!?」
そして態勢を立て直したマシュが再度突撃を敢行する。今度の迎撃は受け止め、どうにか踏みとどまって盾で横薙ぎの打撃を振るうが、それも足でたやすく蹴り払われてしまう。
「トロワ!」
「ぐぅ!?」
蹴飛ばされた盾の勢いに負けてよろめくマシュの腹目掛けて、回転の速度が乗った足が突き刺さる。隠し持っていた剣を鞘ごと蹴り砕かれ、くぐもった悲鳴を上げたマシュが更に追い打ちで突き飛ばされると、戦いはラムダリリスの差配によりリッカの手番に戻った。
……そして、何度めかの突撃が押し返される。ついに着地もおぼつかなくなり尻もちをついて盾に押しつぶされそうになるマシュの屈辱的な光景に思わず見とれつつも、その隙に切り込んでくる様子のないリッカに向き直ったラムダは更にあらあらと口角を上げた。
「その顔、たまらないわぁ。演技力は合格点よ」
とうとう肩で息をし始めたリッカに、ラムダリリスは首を掻っ切るしぐさと、女の秘密を少ししか隠していない紐のようなビキニを上下ともにクイッととずらしてせせら笑う。
「どうしたの? 首はここ、急所は……ここかしら?」
「はぁ、はぁ……!」
リッカの剣筋には明確な殺意が欠けていた。無心の攻撃ならまだしも、狙いすました剣撃は全てラムダの義肢にしか向けられていない。
人の形をした生きものを狙うことへの忌避感が、戦闘のための思考と計画性に致命的な空白を生んでいる。もし偶然掠めたとしても、そこから血しぶきが吹き出たら手が震え剣を取り落とすかもしれない今の段階では、ラムダに傷一つつけることが出来ない。
「……くっ」
盾の下で臍を噛むマシュも、段々と伝来の大盾を支える力が失せていくのを実感していた。魔物退治の経験こそあるが、幼少より鍛えていてなお体躯に見合わない盾の負担、店売りの剣を砕かれた上に他人がいては咄嗟に突撃と圧殺以外の盾技を選択できない技術不足が如実に表れている。
剣も盾も、二人が無言で連携し同時に攻撃できるのであれば通じる銘器だ。しかしそれが出来ない以上、この二人には万に一つの奇跡も、何かしらの例外もなく、ただ負けるだけの無慈悲な運命しか用意されていなかった。
「まだ1stステージなのに最後まで保たないなんて……観客がいなかったことに感謝しないといけないわ。いくら私がスタアでも、最初のプログラムがこんなサル回しじゃ皆を退屈させてしまうもの」
目元を隠し悲嘆にくれるラムダの演技に代わり、ペンのように鋭い義足の先からツツと雫が溢れて砂地を濡らす。
想像以上だった勇者一行の未熟さを踏みにじり、歓びの余り冷酷な本性を双眸に顕現させたラムダは軽蔑の視線で獲物を射すくめた。
「トレーニング不足ね。もしかしたらちゃんと磨けば見どころはあったのかもしれないのに……ここで終わりなんて残念だわ。でもこれでお仕舞い、私が熱いエッジをあげる…!」
戦いが始まってからずっと踊ってばかりだったラムダリリスが初めて構えた。
リッカからすれば男子が見ていたグラビアアイドルの写真集にあるようなM字開脚の、両足に力を込める屈み込み。
(飛びかかってくる?)
そう判断したマシュは慌ててリッカとラムダに割って入り、盾をどっしりと置いて守りの姿勢をとる。
「マシュ!」
「反撃はお願いします!」
「う、うん!」
ようやく取れた、それらしい戦型、追い詰められた未熟な二人の呼吸の合致、もしかしたら一矢報いる事ができるかもしれないという希望の混じった声。
今からこれを踏みにじれる事を想像したラムダリリスはとうとう笑いを堪えきれなくなった。
「ふ、ふふふ、フフフフフ、アハハハハ!!」
天へ向け哄笑を上げたラムダが跳ね――泳いだ。
「え……!?」
「いくわよいくわよいくわよ!!」
こちらへ一直線に来ると予想していた二人の想像を上回り、ラムダリリスは砂上どころか空中を自在に動き、マシュとリッカの周りを人魚のように泳ぎ回る。
水圧による飛翔。足先から放たれる水は彼女の体積をゆうに上回る量で――それもまた空中に留まり、戸惑う二人を取り囲んでいった。
「こ、これなに? ラムダって、スライム、なんだよね」
「はい、私は軍の方からそう聞き及んでいます。遭遇報告書にも……」
「うぇっ!?」
半開きになった口に飛沫がかかる。リッカはその飛び込んできた“しょっぱさ”に驚き、思わず咳き込んで必死にその水を吐き出した。
「ぺっぺ、しょっぱあ……これ海水?」
『ええ、ええ、そうですとも。私の種族はスライム、ただし海だって飲み干せる亜種の海スライムとでも言うべきかしら』
リッカを包みこんだ渦の勢いがゆるやかに収まり、やがて完全に消え去ると、そこには水底のような音が跳ねない世界が残されていた。
海水を原料として完成した金魚鉢のようなドームの中心、真上から差し込む太陽の光が乱反射して目が眩む静かな空間に、ラムダリリスの声が泡の音と混ざって響き渡る。
『その女王の称号は麗しさを称えてくれるアクセサリじゃないの、私の力にふさわしい魔王からの勲章……水辺で私と戦う事を選んだ愚を恨みなさい』
水気で足元の砂がじわりと滲みだす。
サンダルや脚甲の隙間から侵入してくる濡れた柔らかい砂の気持ち悪さと戦いながら、二人はどうにかここから逃れる手段はないかと眼を凝らすも、脱出するための隙間はおろか、ラムダの姿さえ何処にも見当たらない。
「ラムダは一体どこに……」
足元はジワジワと水が染み混んでいるせいか徐々に脆くなっている。それだけではない、水に包まれているのにここは暑く、先程までに比べて呼吸が苦しい。しかもきらきらと乱反射する光のせいで目が辛い。
(太陽の光が反射で強まって、あと酸素も水で遮られてるのかな)
まるで魔法のような芸当で為された技だが、その結果は冷静に観察するとどこまでも科学的で現実的だ。おそらく、このままだと自分たちは何かする前に疲労と酸欠で参ってしまうことになるとリッカは気付かされた。
「ねえ、マシュ。勇者の鎧って健康も守ってくれるんだっけ」
「え? は、はい。私達の衣装は何も装者強くするだけではありませんから」
リッカはここ数日、旅立ちに備えキリエライト家の屋敷で勇者の持つ聖剣や鎧、その従者への恩恵について即席で知識を叩き込まれていた。
――勇者とその従者の衣は聖剣と同じように成長し、自己修復機能と治癒能力を備え、ひとたび袖を通しさえすれば寒さ、そして暑さのような環境の変化を含めてあらゆるダメージから体を保護してくれる。
見た目は白地にオレンジ色で縁取ったシンプルなビキニだが、まさに万能の鎧だ。ただ、もしこれが本当だとしても酸素切れにはどの程度のものか。深呼吸して、今のところは本当に息の心配はないと動揺を抑え込む。
何処かに潜むメルトを倒すかには……リッカは水壁へと歩き出した。
「リッカさん、何をなされるんですか」
「もし、もし本当にラムダがスライム、私の知ってるあのぷるぷると同じで……それで海水を使える海のスライムっていうなら、この水そのものがラムダかもしれないんだ」
(……だったらいいなあ!)
決意を込めて喉に絡む塩気をツバでまとめてペッと吐き捨て、浮かんだあてずっぽうに賭けて心を奮い立たせる。
(剣の先生とマシュは、聖剣には魔のものに対する特攻があるって言った)
今、リッカはそれは正しかったのだと思っている。
先ほど自分の攻撃は全て避けられ、切っ先が触れることさえ叶わなかった。しかし、マシュの攻撃はどれも盾ごと捌いたではないか。かわし続けたのはこちらを挑発するためだけではない。
「何回かモンスターを切ってみて分かったんだ、モンスターは剣に触れられない。だからさっきも躱すしかなかった……なら、これがラムダの体そのものとして……!」
水壁の前に立ち、剣道のような正眼からの振りかぶり。これで斬れたらそこから必死に逃げればいい、意味がないなら倒れるだけだ。
「たああ――んひゃ!?」
「ああんっ!?」
いざ剣が振りおろされるその瞬間、リッカとマシュは奇妙な声を上げて悶えた。
――サンダルに守られた足の裏が、そしてむき出しの脇が突如としてくすぐられた。
「んひっ、んひゃひゃひゃ! くすぐった、え、ちょ、ひゃっひっひひひ?!」
思いがけない横槍に、聖剣を取り落としそうになり慌てて地面に刺して杖とする。
せっかく貯めた力と息をどうにか留めようとするも、脇に背中や横腹をはしるくすぐったさに笑うことしか出来ない。
「ゆ、勇者さ……きゃン!?」
マシュの様子はまた違っていた。
股守や胸当ての中で何かがせん動し、そしてお尻と鎧の間を何かが這いずり回っている。そこに手を回し必死に抑え込むが、指でちくちくとつつくような刺激に負けて何度も蕩けるような声を漏らしてしまう。
「は、あ、あ、ああ、あああああ!! いやっ、そこは、そこはああああ!」
「あひっ、あ、ま、ま、マシュ? うひぇっ」
「見ないで、見ないでえええええ!!!」
とうとう立つ力をなくして膝を折ったマシュは絹を裂くような悲鳴を上げ、顔から濡れた砂のクッションに倒れ込む。
どうにかその大きな胸とお尻、大事な股の付け根から伝わってくる疼きを止めようと顔を真赤にして尻を突き上げ、秘部に必死に手を当てる様子は、リッカにすれば産まれて初めて見る他人の自慰の光景そのものだった。
「も、も、もうだめえ、いく、い、いいく、いくううう!?」
レオタード鎧の柔らかな部分、その隙間からねばっとした体液が迸ると、嬌声を上げて絶頂に達したマシュは息切れと疲労感、そして襲い来る微弱な眠気に負けて砂のベッドの上に横たわり、とうとう動かなくなってしまう。
「なんで……何が………あっ!」
そのあまりにも突拍子もない光景を目撃し、リッカは刀身が半ばまで砂に沈み込んだ剣を杖にしたまま呆然としている。くすぐりが弱まっている事にも気づかず、何が起こったのかを必死に考えるリッカの前に、マシュに痴態を晒させた元凶が姿を表した。
「す、スライム?」
息も絶え絶えでまだ悶えているマシュの鎧の隙間、そして体液が染み込んだ砂から姿を表したもの。それはリッカがゲームで見たことのあるものと比べると瞳や口はないが、まさしくファンタジーな世界にいる液状の魔物そのものだった。
「もしかしてさっきから私をくすぐってるのも……うわっ!?」
「小知恵は回るのね。ひょっとしたらマネージャーなんか向いてたのかしら」
「ラムダ――ってんぎゃああああ!?」
突如ずしりと肩口に重く冷たいベタベタな何かがのしかかったかと思うと耳元から響くラムダリリスの声に、リッカは驚き振り向く――そこにあった光景を見た途端、大声が喉から飛び出した。
生首だ。
肩から背中にかけてを覆うほど大きなスライムから伸びるろくろ首、その先にある青い色のゼリー質のラムダの顔を見て、剣を手放さないまま――ビビりすぎて指が硬直しているだけだが――とうとう腰を抜かして女ずわりの姿勢で地面にへたりこんだ。
「あ、え、ひぇ、あ、ちょ、ちょ、ま、え」
「なによ、そんなに怖がらなくていいじゃない。さっきあなたもマシュって子も私をスライムって言ったでしょ。人型は擬態よ、ギ・タ・イ」
「え、で、でも」
「デモもプレもないわ。さっきあなたが言ったことは少しだけ当たりよ。壁だけじゃないわ、この空間にある全ての液体は私の一部になるの。おわかり? 砂に染み込んだ水も、そしてあなた達のお肌に浮かんだ汗だって、もうとっくに私そのものなのよ」
リッカにしてみれば、ラムダの言うことはむちゃくちゃだ。だが彼女は何も嘘をついていない。領域にあるものなら際限なく水を取り込み支配する流体、それがクイーンスライム・ラムダリリスだ。
ラムダのそっけない物言いとくすぐりに調子を狂わされて戦いの緊張を削がれて行くリッカの体を、ラムダの体が飲み込もうと這いずる。しかしその動きは非常に緩慢で、やはりリッカの思った通り聖剣には近づくのを避けているようだった。
「あ、や、ひゃっ、くすぐったいって!」
「ああもう、動かないで! その鎧に入れないじゃない! まったく、そっちの鎧には入り込めたのにどうしてダメなのかしら!」
「それもやめてよ!」
――自分にもあんなエッチな攻撃をする気だったのか。
今も肌にぴっちりと食い込ん侵入を塞いでくれているビキニに感謝しつつ、寒さに負けて焚き火にすがるような必死さで聖剣に体を寄せて全身にまとわりついたスライムを片手だけで押し剥がす。
聖剣の傍にいるせいで感じる微小な頭痛と、こうも必死にご自慢の愛撫を拒絶されたせいだろうか、とうとうラムダリリスは苛々とした声を隠さなくなっていった。
「なによ、女なのに気持ちよくなるのがそんなに嫌ってわけ?」
「当たり前でしょ、このエッチモンスター! 女の子になんてことするの!」
リッカは顔を真赤に腫らし、瞳に涙を湛えて叫んだ。
攻撃したのはこっちからだが、ラムダリリスのやっていることはむちゃくちゃだ。すくなくとも女の見た目をしたモノが強姦魔のようなことをするなんて、学校と自宅の間で生きてきたリッカの常識にしてみればありえないことだった。
「え……?」
その一言にリッカの体に覆いかぶさったラムダの顔は目を丸くして固まってしまう。さきほどまで水に垂らしたインクの用に脈動していた液体が完全に静止するというのは、むしろ怒るか嘲るかと思っていたリッカにしてみれば予想外の反応で――しばし声を失ったラムダは恐る恐る口を開いた。
「あなた、ひょっとしてその歳でまだ処女なの?」
「へ? ……いやいやいや! 当然でしょ!?」
――リッカは、この世界をゲームのように剣と魔法が息づくファンタジーな世界だと思っていた。
それは間違いではない。旅する騎士もいれば侍も魔法使いもいて、火山や砂漠、そして氷河とジャングル、あげく原理の分からないダメージ沼が不自然に点在した地形をしたゲームのような世界であり、魔法の力が人間やモンスターに宿る、まさしくJRPGのようなファンタジー世界だ。
――だが違う。
――致命的なところで認識がズレている。
――男性用は布の服とポイントアーマーで、女性用の伝説の鎧がビキニアーマーな時点で少女は気づくべきだった。
「ああ……なんてことかしら」
リッカの答えを聞いた途端、体を這い回りもぞもぞと動いては少女の陰部へ押し入ろうとする流体は静まり、スタアを自称する事ができる少女のスガタへと変化し、ぱあっと笑顔を形作る。
「もっと早く気づくべきだったわ、そうね、そうよ、良かったわあ。もうちょっとで過ちを犯してしまうところだった」
足にまとわりついたものは義足へ、背中に触れているところは胴へ、二の腕と脇を舐めるものは義腕へと練られ、その粘体は美しさを取り戻す。
まるで、口ぶりだけなら心変わりしたかのような熱を込めて歌い上げながら、リッカの表情はそれとは真逆に、ギリギリと四肢を抑えられ苦痛を発していく。
「いた、痛いっ!」
「せっかくの処女なんだもの……その目、その肉、その奥底……ぜんぶじっくり味わってから……たっぷりと鳴かせてあげましょう」
愛するにはほど多く、言祝ぐには近すぎる距離、呼気のない唇から伸びた透明な舌がリッカの頬を味わった。
「ひ……!」
頬からこめかみ、そして首筋に流れていったぬめりでリッカの体がすくみ上がる。
雷雨から洞窟に逃げこむ獣の心地でこれまで以上に聖剣に体を近づけ――その木は突如ずんと音を立てて地面へと崩れていった。
「え、や、やだ!?」
「まあまあ、こんな砂場でポールダンスをやるにはダイエットが足りなかったみたいね」
沈んでいく。
金属の刃がスポンジよりも柔らかな濡れた砂土を裂き、じわりじわりと地の底を鞘として、夕の地平線に沈み込むように、光が失われていく。
「待って、待ってよお!」
「はいはい、もう諦めなさいな」
「あっ!」
ラムダリリスに触れられた途端、リッカの全身を火花が駆け巡る。
背後の少女はまるで蜘蛛のような姿勢。うなじには舌、硬質な義足で足を絡め取り、鋭角な義手の先でつんつんとビキニ鎧の乳房を出っ張りを、股間を収める三角をきつく、潰しかねない強さで押し込んでいく。
鎧装着者を守らんときつく肌に食い込み侵入を食い止めようとするが、それは逆効果だった。
「うゅ、きゃ、や、やだぁ…」
「ソロライブなのよ、もっと声を張り上げなさいな」
乳首が、クリトリスが、リッカが必死に守りたがっている部分が鎧に押され、真芯から濡れていく。
こすれあう痛みはない。まるで金属の内側なのに綿に守られているような柔らかさで、甘い痺れが全身に食指を伸ばす。
強く押し、緩急をつけ、弱めて、また強くなる。
「あっ、あっ、ああ!」
「そうよ、その調子よ勇者さん。スタアのボイスレッスンを受けられるんだから、もっともおっと頑張ってもらわないと」
ゆさゆさと体を揺らされるたびに柄にかかった残り数本の指が震え、最後の希望が、星のような聖剣の輝きが地に堕ちていく。
かといって片手だけではラムダに抗うこともできず、顔を押して引き剥がそうにもまるでウォータークッションのように手応えがない。
かちかちと歯を鳴らして食いしばった隙間から、誰にも聞かせたことのない恥ずかしい声がすり抜けていく。
「はなして、はなしてえ……!」
流した涙が目尻で蠢き、意思を奪われ粘体に吸い込まれていくさまはまるで自分の醜態そのものだと、カラダが熱を持つ。
愛撫ではない、秘部への強烈な圧迫。リッカも知らない言葉で言うなら電気アンマをされ続けるのに似た快感の押し付けが力を奪い取る、頼りになるはずの鎧が恨めしくさえある。
「さあ、そろそろ閉幕よ」
マシュと同じように尻を持ち上げ、重力でスライムを引き剥がそうと身を捩り、熱を鎮めようと必死に冷たい砂へおでこをこすりつけ、どうにか火照りを鎮めんと抗うリッカの無様な舞を愉しんだラムダリリスは満足気に微笑んだ。
「あーん」
戦う中で何度も聞いたカウント。マシュに何度も打ち込まれた大気さえ裂く音の蹴りを予想し、リッカは身をこわばらせる。
「どーぅ」
逃げようにも抗うにも気力がない。汗も涙を食い尽くされ、今の勇者は精根尽き果てた。
もう駄目だ――そう決意し襲い来る一撃を想像して歯を食いしばることしかできず――体から一瞬でスライムがいなくなる。
「あ――」
予測していなかった自由で体が戸惑う、フッと暗くなった先、見失った太陽を探し自然と天を仰ぐ。
「はい、どーん」
上から降りてくるのは膨大な質量――この空間を覆い尽くしていたラムダリリスの溶けた瀑布。
(そっか)
渾身の力を込めて聖剣を振り抜いても、マシュの盾に隠れていても、どう足掻こうが受け止めきれないほどの激流を他人事のように眺め、少女は微笑んだ。
(ほんと、勝てっこなかったんだね)
眼前に迫った水に浮かんだ顔は、諦めの静けさで――敗北と終わりの安堵に包まれ、少女は水底へと沈んでいった。
>>次回、処女喪失
『メルトリリス』エネミーデータ制作メモ 担当者 殺生院キアラ
1,流体の性質を再現するため、基礎ステータスは作成キットのブロブやスライムを加工し、ボス属性不定形エネミーにカテゴライズ。以後人格データは大奥内に取り込んだ際のメモリを保持している共同開発者に任せ、マテリアルに従い能力面のバグフィックスを行う。
2.吸収能力ならびに変形機構の再現は完了。ただし足の義足による攻撃に斬属性を付与すると全身が刃物扱いになるバグが浮上、魔剣ジゼル再現の難度から到達目標をラムダリリスに変更する。
3.肝心のセックスシーンのために感覚を再現すると、手先の触覚が無い状態が他の感覚に優先されて読み込まれるため特定状況で全身マグロになるバグを発見。再現性を確認。
4.3の対処のため手をNPCのものに仮置きし通常人型エネミーと同じ五感配置を行うと、次はスライム形態になる途中で感覚が鋭敏すぎるため処理に負担がかかり、リリスの人格AIどころか世界そのものが処理落ちを起こした。BBの意図した挙動ではないだろうが、触覚封印は負荷軽減の利点となっていたようだ。
5.あくまでラムダリリスを“その形になっているスライム”と再定義した上で、変態する生物をモデルに感覚の配列と変形途中の腕扱いや足扱い部分の場所移動までを指定し管理することで処理を安定化させる。また、腕だけ感覚がない状態は特例として容量が大きすぎたので、節約のため義手にモデルを変更し装備アイテムとして扱う。これを初期最終盤として提出。なるべく設定を守れと怒っていたが知らない。