設定に無理があったというか、ピンチの世界を見捨てて五条を選ぶ夏油って事やんと気付き、異世界ピンチ設定やめました。
ここまで読んでくださったのに申し訳ない。
平和な異世界(当社比)ということで書き直しです。
ジジ様の故郷は異世界でした
『16歳になったら、じーちゃんの故郷に行こう』
ずっとそう言われて育ってきた。
祖父の故郷は誰にも内緒の秘境で、機械もないらしい。
治安は悪いが美丈夫が多く、景色は絶景で、それはそれは凄い場所らしい。
別に行きたくない。私は文明の豚でいい。
「あーあ。誕生日の家族旅行、憂鬱」
「旅行、いいじゃん夏油」
「未開の地で得体の知れない成人の儀とやらをやらされるんだよ? 嫌だよ」
「何すんの?」
「神様に歌と演奏と踊りを奉納するらしいんだ。神聖だから無闇にしちゃダメな舞で、ぶっつけ本番だから、それが出来るように歌とか踊りとか演奏とかメチャクチャ色々習わされた。あと言葉。しかも、それから30歳になるまで10月は異国で神様への奉納の儀! 義務!! そもそも、宗教的理由で私、医者に掛かるの禁止だし。ありえないよ、機械を使った診療が教義に触れるなんて」
「傑の戦い、そういえば綺麗だよな。踊ってるみたい」
「父にはすごい怒られるけどね。ゴリラのようで醜い、武神の祝福を受けた子とは思えないって。あ、武神って父さんが信仰してる神様ね。毎日奉納の演舞させられてもう癖だよ」
「ひど」
「いいじゃん、ゴリラ。ビデオ撮ってきて」
「機械駄目なんだって」
「つまんねー」
「だろ?」
全くもって期待してない。期待してなかったのだが。
旅行当日、私は震えていた。
両親も祖父母も非術師だったはずだ。
なんか扉が現れてるんですけど?
平気な顔して、父さんと母さんは荷物を持ち上げた。
「行くぞ、傑」
「術師だったの? ジジ様」
「ほら、おいで」
扉を通った先は石造りの部屋だった。
「傑。まずは、傑が生まれた時にお守りくださった神様に詣でるぞ。こちらの世界では神様は本当にいるから、気をつけなさい。いや、その前に勉強だな」
「な、どういうこと……!」
祖父に連れられて、部屋を出る。
巫女様という意味の囁き声が聞こえた。注目受けてる?
部屋に入ると、布を何重にも重ねた服の人とそれを囲む子供達がいた。
髪の色が違うなんて序の口。エルフドワーフ獣人鬼、ファンタジーの世界みたい。
『巫女様! お帰りなさいませ』
『良い良い、この子は私の孫の傑だ。皆と一緒に勉強させてやってくれ』
それから、恭しく頷いた神官は、手の中で光を操った。
色とりどり、さまざまな形の光による紙芝居で、神様の事を語ってくれた。
どうやら、この世界の神様はマジで存在して、人々に力を授けてくれるらしい。
そうして、人々は生まれた時に加護をくれた神様(大抵親が信仰する神様で生神という)と成人の時に選んだ神様(育神)の二柱に仕えるらしい。人生の一大事なので、私はすぐに決めなくてもいいという。
祖父は旅神、父は武神が育神らしい。私が頑丈なのもその為だろうって。なるほど、ありがたい。祖父に何かあれば行き来ができなくなるという事、便利な加護が多い事で、祖父の激推しは旅神だそうだ。でも教義でいえば正義の神、加護で言えば魔法とか錬金術とかもすごく興味があるんだ……。祖父が元気な間はじっくり考えさせてもらおう。
生神から育神への申し送りもあるという事で、生神にご無礼は厳禁とのこと。
緊張しながら、外国語で作法に従い武神にお礼と成長の報告を述べた。
何か懐かしい、偉大なものの息吹を感じた。
緊張しながら、部屋に戻る。
そして、祖父はナイフを出してきた。
「魔法や錬金術は加護がなくとも学ぶ事はできる。よく考えるんだ、傑。仕える神も、住まう世界も」
「はい、ジジ様」
「お前の父は見る才能はとんと遺伝しなかったが、傑は穢れをはっきりと見る目を持って生まれた。それはとても特別な才能なんだよ」
「はい」
「ピアスを取りなさい。それはお前の力を封じていたもの。力を補助するものと付け替えよう。場面によって付け替えるといい」
「!」
傑はピアスを外す。解放感がすごかった。今ならなんでも出来る気がする。
周囲の呪霊が、軒並み落ちて地面に転がった。
「?」
「やはり、力のコントロールは必要なようだね。傑。今、お前は穢れに肉体を与えた。これぞ我が一族に伝わる力。魔王堕ろし、妖精堕ろし、獣堕ろし、肉堕ろし、毒堕ろしの五種類を持って堕天という」
「呪霊に肉の体を?」
「そう」
そうして、祖父は呪霊にナイフを入れる。呪霊は悲鳴をあげて生き絶える。祖父が呪霊の中から出したのは石だった。祖父は解体していく。
「肉の体だから、死体は消えないし、こうして資源も取れる。魔王堕ろしは術者が核と成って呪霊を集め、一つの大きな魔物を作り上げる事で周辺の穢れを一層し、尚且つ生まれた魔物の行動を阻害する命と引き換えの秘奥義。妖精堕ろしは穢れをいい感じに改造して肉の体を与える奥義。獣堕ろしは、穢れをある程度浄化しつつ肉体を与える、まあ標準。肉下ろしは、穢れの特殊能力を奪い、物質により強く押し込める。ちょっとむずいができん事はない。毒堕ろし。毒性を残したまま物質化してしまうこと。食えたもんじゃないし、死骸の処分も面倒になる。これは肉堕ろしだな。毒はかろうじてなさそうだ。焼いて食うぞ」
「は、はあ!?」
祖父は何ごとか唱えると、火が肉を焼いて香ばしい匂いをさせた。
塩を振って食べる。
初めて食べた肉の呪霊は、癖があるが美味しかった。この味は覚えがある。
「美味いだろう。これが魔力の味だ」
「うん。家庭の味だと思ってたのは、呪霊の味だったんだね……」
「成人の儀式では、獣堕としをして、それを皆で倒して喰らう。力のコントロールがある程度出来るようになったら神殿の外に出かけるぞ。儀式場ではいつも獣堕としがされているからな」
「うん! 結構簡単そう。やってみるよ」
もう、退屈だなんて思わなかった。
新しい力を得られるのは楽しい。
よく見えすぎて、堕として物質化させた呪霊とその前の呪霊の区別がつかない問題点はあったが、そこ以外は極めて順調。
それに確かに景色は素晴らしく、みんな美しく、種族が多彩で楽しかった。
呪霊が多いので、呪霊の収集もすこぶる捗った。
儀式は大成功。友達も出来た。
聞くと強くなる歌、魔法、錬金術、そして儀式。
一ヶ月が矢のように過ぎた。
あっという間だったが、悟たちも恋しかった私は、秘密を守りつつ、どんなお土産話をしようとウキウキと帰った。
神様は旅神を選んだ。千里眼が欲しかったのだ。
「ああ、傑。もう一つ大事な事を言い忘れていた。うちの一族は、男女問わず、錬金腹を持って産まれることがある。病院で検査させねーのは、魔物の血が混じってて、血液検査にしろレントゲンにしろ困った結果が出る可能性があるからだ。こっちの医者に診て貰っておけ」
「わかった。けど、錬金腹?」
「両親の素養を受け継いだ優秀な子を孕める極上の腹って事だ。動乱時の魔物との血の交わりやら加護やら錬金術の実験やら魔法の実験やらの名残りだな。この世界、割と何度も滅びかけてんのよ」
「私は男だよ!?」
「まあな。一応だ、一応。錬金腹はすげーんだが、動乱の前触れとか不吉って言われて狙われる割によく思われないしな」
「ないと思うけどね」
錬金腹だった。嘘だろ?
すわ動乱だ、スタンピードの前触れだ、と騒ぎになりかけた。
そこで予知の儀式をする事になった。
更地にされた街。次元の違う戦い。胴体を切断される大人の悟のビジョン。
両面宿儺。私の仇。
私はこの一ヶ月で強くなったつもりだった。
つもりだけだった。あんな戦いについていく? 無理だ。では悟を見捨てるのか。
悩んでいたら、神様が声を掛けてくれた気がした。それは言語化するとこんな感じだろう。
『傑。お前は強い。我の加護を得ているのだから』
『傑。貴方と悟は2人で最強なのでしょう? 信じなさい。自分と友を』
最強。もしも、呪霊操術と千里眼と六眼を併せ持つ子が生まれたら、悟の役に立つのではないか。いや、子供にあんな化け物と戦わせるつもりか? ふざけるなよ。
私は、私は、そんなものに頼らず、悟の隣に立って見せる。
決意と共に戻った。
それはともかく、姫巫女って呼ぶのはやめて? やめよう。
私は男なので男にプロポーズされても嬉しくないんだ。
こっそり感想はこちら
マシュマロ
https://marshmallow-qa.com/lucaluca
今度からマシュマロ返信していくことにしたので、よろしくお願いします!
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こっそりな感想はこちら
https://odaibako.net/u/karin2022v
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