※この作品はR-18です。

呪術師×呪術師   作:かりん2022

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入学

悟にとって、夏油傑とは決して推しはかれぬ人間である。いや、本当に。

悟の心をミキサーのように掻き乱し、根こそぎ飲み干して去っていた、まさしく嵐のような存在だ。

 

前触れもなく乗っかってきて、卒業までだけだと恋人のようにイチャイチャして。

三ヶ月で美々子と菜々子を連れて家族ごと出奔した。

ちょうど夏油を受け入れ、プレゼントなど考えていた時期である。

客観的に見ても酷いと思う。何せ、別れようの一言もなかった。

せいぜい前日に、君が先生になった姿、格好良かったと謎の発言を残したくらいだ。

 

「卒業までだって言ったじゃんか……」

 

 思わずつぶやいてしまう。

 傑の家族ごと行方不明になり、後に残るは傑のプレゼントのお守りと、傑が忘れていった外国語の辞書のみ。ネットで調べても、その言語の言葉なんて見つからない。

 

 不思議なお守りだ。

 自分に良く合う色の蒼い石、それを覆う細工と中に浮かぶ紋様を見て思う。

 これを身につけていると、体のキレがいつもより良い。

 硝子も、勉学がよく進むようになったという。

 呪具ではないが、確実にご利益があるように思う。

 今傑がいると思われる、「祖父の故郷」は今も謎のままだ。

 

 

 2008年。七夕の日。

 柄にもなく、傑に会いたいと書いた短冊に、「2016年にね、五条先生」と傑の字で書かれた走り書きを見て、本当に驚いたものだ。

 これで怒れないのだから、ほんっとうに惚れた弱みって奴である。

 傑とまだ別れてないから。

 

 そんな言い訳をして、悟はまだ誰とも付き合ってはいない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2017年3月。

 僕、五条悟はその残穢を感じて走った。

 南国のように派手で色っぽい服を着た男が、2人の女の子を従えてヘラりと笑っていた。

 夜蛾学長と硝子がそれを出迎えている。

 

「傑……!」

「やー! 久しいね、悟!」

「お前、十年もどこに行ってたんだよ!」

「いやぁ。子供達を呪専に入学させたくてね。後、こっちの服とかも色々買わないとだし。お小遣いは渡してあるから、面倒見てやってくれないかな」

 

 そう言った傑の太ももに隠れるように縋り付く存在がいた。

 傑によく似た男の子。

 

『この人が僕のパパ? 覚にそっくり』

「この子、お前の子?」

 

 言葉が重なる。

 

「そうだよ。私の宝物」

 

 傑の声は優しくて、慈愛がたっぷりで。

 絶句。衝撃。諦観が形になるよりぶん殴られるような衝撃。

 その心情を表すように、ガシャンと硝子がコーヒーカップを落とし、割った。

 いうまでもなく硝子も辞書を見てるし、パパママくらいの単語はわかる。

 傑の後ろに隠れる子をよく見ようと目の高さを合わせる。

 術式は呪霊操術と五条家の相伝の一つ、結界術の二種。二種って嘘でしょ?

 

「僕は五条悟。君は?」

「夏油 優……」

「……マジで?」

 

 傑の辞書を丸暗記してて良かった。

 とりあえず、混乱しつつも優をぎゅっと抱きしめる。

 ちっちゃい。暖かい。えっ 僕の子? どういうこと?

 

「傑。この子についてちょっと聞きたい事があるんだけど」

「うん? ああ、祖父の故郷で可愛い女の子とその場の勢いで子供作っちゃってね。責任とって向こうに滞在してたんだ。ごめんね?」

「うん、まあ、そうね。えっ 何一つ納得できないんだけど?」

「頭バグってんぞ悟」

『ふふーん。パパ、混乱してる? 面白ーい。ざこ、ざぁーこ❤️ 呪術師は冷静さが大事なんだぞ❤️ 仕方ないから僕と覚が守ってあげる❤️ お礼は撫で撫ででいいよ❤️ パパ格好いいしね❤️』

 

 硝子が背後で吹き出している。

 

『こら、ダメだよ、優。言葉がわからないからって揶揄っちゃ』

 

 わかってんだよ。簡単な単語なら聞き取れるし、そこから意味も類推できる。

 こう見えても海外だって行ってて語学は苦手ではない。

 っていうか、このメスガキっぽさはなんなのか。傑が仕込んだのか、傑と僕のハイブリッドなのか。えっちじゃん。小1でエッチってなんなんだよ、ちくしょう。薄い本を捨てて保健体育から出直してこい。

 

「とりあえず、傑。どういう教育してんの? ちょっと色々文句言いたいんだけど」

「いやまあ、とにかく美々子と菜々子を頼んだよ。私と優は帰るから」

「帰るからじゃねーんだよ、お前も優も逃すか。というか覚も連れてこい」

「え? 覚の事言ったっけ?」

「恋人がしょっちゅう言ってる場所の言葉くらい覚えてんだよ、こっちは」

 

 さーっと傑の顔から血の気が引いていく。

 

『さ、覚は悟にそっくりなんだ。色々言われちゃうよ』

「仕方ねーだろ事実なんだから」

「悟。どういう事なんだ」

「こいつ、俺と傑の子供。少なくとも五条家の血を引く子で傑の子供なのは間違いない」

 

 夜蛾学長のサングラスが壊れた。




夏油は美々子と菜々子の入学時期、一年間違えてます。
後から怒られるやーつ。

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