「4人の戸籍は? 勉強はどうなってるわけ。教育は? ちょっとちっちゃくない?」
「予防接種はどうした。細いのが気になる。それと栄養ちゃんと取ってんのか」
「一応、向こうとこっちの文字はわかるし、早くも向こうで生計も立てる目処はついてるから大丈夫だよ」
立て続けに募られ、夏油は耳を塞ぐ。
「は?」
五条から殺気が迸る。
『優くんはおねぇさんと健康診断しよっか。甘い物は好き?』
『果物あるの!?』
パァッと優の顔が明るくなる。
『お菓子もあるぞ。美々子と菜々子だったな。君たちもおいで』
『嘘だ。それいう人って大抵誘拐犯だもん。そんな高級なものがタダで食べられるわけがないじゃん』
身を引こうとする優。硝子は視線を合わせて、夏油を指差した。
『夏油がそこにいるだろ。私は夏油の友達。それにこっちだとお菓子は普通の食べ物だよ』
『ほんと? 覚の分もある? 覚、甘いの食べないと具合悪くなるの。僕の分も覚に持ってく』
『私達も覚にあげるよ。ね、美々子』
『うん、菜々子』
いい子達である。そしてかわいそう。
『4人がお腹いっぱい食べても余裕なくらいあるから心配しなくていいよ。お腹減ってないか? 覚君はどこかな? ホテル? 迎えをよこそうか』
『お腹は減ってない。覚は今、お家で寝てるけど呼べば来るよ。力を使った後は甘いの食べないと具合悪くなっちゃうけど。ほんとに甘いのいっぱいある?』
『あるある。すっごく甘いのがたくさん。覚君体弱いなら、尚更呼んでほしい。お姉さんはお医者さんだから』
「五条。お前のお菓子箱漁るぞ」
イラッとして、ギッと夏油を睨みつつも五条に一言。
「頼んだ、硝子」
「あ、あの。悟。こっちの食生活に慣れると、子供達が帰れなくなるかなーって」
「栄養失調はそれ以前の問題だろ……」
恐る恐るいう夏油に、おどろおどろしい声で悟はいう。栄養失調は決定事項のような言い草である。多分あってる。
「ちゃ、ちゃんと果物を煮詰めて食べさせてるよ……。野菜だって三日に一度は手に入れてるし」
「傑。戸籍はまだ登録してないんだよな?」
いっそ優しさすら感じる声で、五条は夏油に問う。
「う、うん」
「俺が親で認知する」
「あの子達は私の子だぞ!!」
「俺の子でもあるんだよ!」
「違うかもしれないじゃないか!!」
「よーし親子鑑定で白黒つけようぜ。親権は俺な。お前が女だったとしても扶養義務が果たせるかどうかって点で俺の方が余裕で親権取れるからな」
「っ君は由緒正しい五条家だろ! 一般出の私との子供を認知できるはずがない」
「認知は常識だバカ! 家で引き取るに決まってるだろ! 術式なくても当主の血を引いてれば確保ぐらいするわ! 術式あれば尚更だ!」
夜蛾学長は頭が痛そうにして聞いている。
「悟。子供達の所に行ってやれ。傑は私が説教しておく。夫婦間……夫婦間? の話ではあるだろうが、子供が優先だ」
「わかった」
悟が足早に行くと、ちょうどお菓子の準備が終わった所だった。
「ほら、食べな」
『甘い匂いがする……』
『覚呼んで、優』
『早く早く』
『うん。覚ー!』
呼ぶと、宙から悟のミニチュアが現れた。
『どうした優!! やっぱ悟、切れてた!?』
『僕の事どう言ってたのかな。初めまして。君のパパの五条悟だよ』
悟は頭の中で夏油を罵倒した。糖分の不足による体調不良は仕方ない。六眼は糖分を使うのだ。そう、五百年に一度の六眼が二連続で生まれる奇跡を傑はさっぱりわかってない。そして五条家の宝にひもじい思いをさせんな。そして、この子も呪霊操術を持っていた。ありえない。
『わっ』
『ね、格好いいよね、僕達のパパ。パパのお菓子分けてくれるんだって』
『いいの? まじで? 毒とか入ってない?』
戸惑いがちに聞いてくる覚。
『大丈夫だよ、ほら』
ヒョイっとお口に入れる。
『いただきますっ』
『いただきますっ』
覚と優はお菓子を口に入れ、目を見開いた。
『あっっまっっ』
『ふぇぇ。甘い。甘い。信じられない。甘い』
『持って帰ろ。これ皆貰って帰ろ』
『だ、駄目だよ、菜々子。貰って帰っちゃ悪いよ』
『はいはい、心配しなくてもこれから3食プラスおやつの時間、いっぱい食べさせてあげるから安心してね。後、君ら今日からここに滞在するから、帰らないよ』
『俺らの事、やじゃない?』
『パパは僕らの事好きだよね❤️ 好きっていえ❤️』
『全然嫌じゃないよ。大好き』
頭を撫でると、優は目を見開き、戸惑い、幸せそうに笑った。可愛い。
『今日は硝子に見てもらって、ご飯食べて、午後は色々買いに行こうね』
『うん❤️』
『優っ お、俺は優みたく簡単じゃないからな!』
『お昼は僕がパン用意するー!』
『じゃあ俺、お肉!』
『お、お手伝いしてくれるのか? 凄いじゃん』
硝子に褒められ、得意になった優はお守りを持って跪き、お祈りを始めた。
ぱあっとお守りが輝き、パンが現れる。
「は?」
『神様のパン! こんなに大きい❤️ 神様も僕のこと大好きすぎでしょ❤️』
『3級呪霊でいいよね』
呪霊を出して、輪切りにする。
何事か唱えると、炎が肉を焼き、その上にパラパラっと塩らしき物をかける。
「今君ら何やった?」
「何これ」
『神様にお祈りしてパンを貰ったんだよ』
『後、呪霊を肉堕とししてお肉に変えた』
『私達、お昼用に果物持ってきてるよ』
『少し早いけどお昼にしちゃう? しちゃう?』
「……もしかして、お昼いつもこれ?」
悟は恐る恐る問うた。
『そう! 僕ら術師だから、いっつもお肉が食卓にあるんだよ! すごい? スゴイでしょ❤️ 褒めてくれてもいいよ❤️』
『果物は俺以外はいつもじゃないけどな』
えっへんとする優。
『野菜は?』
『たまに薬草を刻んで入れたスープを食べる』
『私、夏油をぶん殴ってくる』
『子供の健康診断を先にして、硝子。あとで僕も叱っとくから』
結果はやはり軽度の栄養失調でした。
「まともなもん全然食わせてねーってことじゃん!」
「そ、そんな事は」
「あるんだよ!! あと何なの、パンを出したり呪霊を物質化させたり」
「神様って本当にいるんだよ。それで神様に祈るとパンを貰えるんだ。祖父の故郷では貴重で神聖な食料なんだよ。あと、呪霊の物質化は私の祖父の一族の得意技らしい。私も出来るよ」
「それが悪いとは言わないけどさ。どう考えても栄養価は低そうじゃん。呪霊の肉もだけど、まともな栄養入ってると思わないんだけど? もっと色々食べさせろ」
「向こうはお野菜高いんだよ……」
「子供の事考えろ。諦めてこっちで子育てしろ。傑も食べろ。子供産んでから体調悪いってきいた」
未開の外国で育った我が子。
今から教育に頭が痛くなる悟だった。
「大体、なんで十年も消えたんだよ」
『もうすぐ動乱が起きるんだって。俺と優、その為のテコ入れに生まれたの』
『動乱?』
覚が水晶を掲げると、映し出される激しい戦いと五条悟の死。
「これを防げたらいいねって」
「傑。いい子だから久々に夜通し語り合おうか……」
「おう、しっかり絞ってやれ、五条」
そして、絞られまくる夏油だった。
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