※この作品はR-18です。

鏡の国の変態王子様 ~アラサーオタクな私の鏡。繋がった先は異世界でした~   作:もすもす。

151 / 247
お待たせしました。


【151】随分と使い古されたテンプレですねぇ?!(オロロロロロロ・・)

 

急な脱力感と吐き気と共に、冷や汗が吹き出す。

ぐらつき、前のめりになった体を咄嗟に両腕で支えた。

一時の間耐えるも、状況は改善される気配は無く・・

人目を気にする余裕も消失して、崩れ落ちる様にぺしょりと上半身も鏡台に預ける。

 

「魔女さま?!どうなさったのですか?!」

「ぉ、ぇ・・」

 

やっべ、ナニコレ?

貧血?いや、違う。熱中症?

暑いは暑いけど、喉の渇きは無いしそんな体調崩すほど無理もしてないんだが?

 

視界がグラグラで目も開けられず、暗い影が落ちる世界でどうにか原因を探ろうと思考を巡らせかけたその時。

何かに気付いた様子の美人さん(お姉さま)が声を上げた。

 

「もしや・・魔女さま!ペンを、ペンを手に取ってくださいましっ!」

「ぇ・・へ、ん?」

 

「ペン」と言ったつもりだが、もう完全に呂律が回っていない。

これはいよいよアカンのでは?

 

途切れそうになる意識をギリギリで保ち、美人さんに言われるまま震える手で何とか鏡台の上を探り・・

冷たく固い物が手の縁に触れ、やっとの思いでそれを握り込んだ。

 

「手に取りましたら魔力を!いえ、インクを集めるように意識してくださいまし!「戻れ」と念じるのですわ!」

「も、もょれ・・」

 

直感的に『言われた通りにしなければヤバい』と感じて、咄嗟に美人さんの指示に従う。

途端、欠けていた何かが補われたかのように、意識がシャキッとして不快感がすっと消え失せた。

 

「は?・・へ?」

 

あまりに急激な変化に困惑して、疑問符が大量に脳内を埋め尽くす。

 

戸惑い、動揺から伏したまま荒く呼吸を繰り返して、零れそうになった粘度の高い唾液を飲み込んだ。

生理的な涙で歪む視界を瞬きで晴らしてから、そろそろと身を起こす。

 

「魔女さま?!大丈夫ですの?!お気を確かに!」

「は、い。なんとか、大丈夫です・・」

 

今の、何だったん?

 

まだ何となく気持ち悪い感覚が残っている胸辺りを服の上から擦り首を傾げた。

と、落とした視線の先。両親を描いた筈の紙が白紙になっている事に気付く。

 

ショックで固まる中、美人さんは「危機は脱したようで、良うございました」とほっとした後、徐に飲み物の入ったカップを示した。

 

「どうぞ、回復を促す効果のあるお茶ですわ。どうかお召しになってくださいまし」

「あ、あの。絵が・・」

「えぇ。消えているかと存じます。その事についてもご説明いたしますので、どうかこちらを先にお飲みになってくださいませ」

 

そう言って、再度濁った液体が揺れるカップを勧める美人さん。

有無を言わさぬ気配を纏いつつ、そう懇願されては拒否出来る筈もない。

 

「・・ありがとう、ございます。頂きます」

 

困惑も疑問も一旦横に置いておく事にして、こちらからトレイを差し出しカップを受け取った。

手元に引き寄せた器の中には、ややとろりとした感のあるマーブル(すげぇ)色した液体が満ちていて・・

 

え、これ飲まんとダメ?

 

チラ・・と視線を上げれば、扇で口元を隠してにっこりと微笑む美人さん。

 

『圧ぅぅ・・』

 

おーけー。おーけー。拒否権は無い。と。

うぐぐぅ・・ワカリマシタ。ノミマス。

 

若干涙目になりつつ、カップを持ち上げ・・

途端、顔隠しの布を突き抜け立ち上ってきた刺激臭に思わず体が仰け反った。

 

ちょ。ま。くっっっさ!青くっさ!!

匂いのキツイ草をすり潰して酢を混ぜました!みたいなあり得んヤバい匂いがするっ!

 

「ささ。魔女さま。躊躇うと後が辛うございますわ。ここは一気に!」

「ひゃ、ひゃい・・」

 

~~~っ・・ええい、ままよっ!

 

『南無三!』

 

布を避けた手で鼻を摘み、思い切ってカップを傾けた。

なるべく味を感じないように、息を止めて一気にゴクゴクゴクっと飲み干す。

 

・・ん?お?・・味は意外と普通のお茶・・・・

 

「いや違うダメだこれ無理だわ苦くて甘くて酸味が後から登って来てすっぱ塩辛いっ!」

 

くっそマズ!やべぇ感じの唾液が溢れて止まらんっ!

何じゃこりゃ毒か?!毒なのか?!寧ろコレで毒じゃないとか嘘だろ?!

 

慌てて立ち上がり「水飲んで来ます!」と断って、返事を待たずに背景隠しの天蓋を捲りシンクに走った。

 

ヤバイヤバイ死ぬ死ぬ!はよ水飲まんと味覚が死ぬっ!

 

洗い物のカゴからコップを引ったくって水を汲み、口に含んで濯ぐ。

それを二回繰り返し、口の中から劇物が消えてからごっごっと喉を鳴らしてコップ半分程の水を飲み干し、ようやっと一息つくことが出来た。

 

ぷは~っっ!!

ひでぇ目に会ったぜぃ・・

 

『SAN値がモリっとゴリっと削られたでごんす・・』

 

猫背でヨタヨタと鏡台に戻り「お待たせしましたぁ・・」と詫びながら着席する。

美人さんは「無事にお戻りくださり安心いたしましたわ」と帰還を喜び、ころころと笑って言った。

 

「大変なお味で驚きましたでしょう?」

「はい・・それはもう、超弩級の衝撃でした・・何だったんですか、アレ。というか、一体私の身に何が?」

 

当然の疑問を口にすると、やはり答えを持っていたらしい美人さんは僅かに眉根を寄せ、扇を閉じて居住まいを正し答える。

 

「・・魔女さまは、魔力枯渇に陥ったのですわ」

「魔力、枯渇・・」

「はい。魔力はどんな物にも宿っており、生き物の内では身と魂を繋ぐ重要な役目を担っております。故に、その役目が果たせなくなるほど魔力を消費しますと、吐き気や眩暈といった形で体が危険を知らせるのですわ。症状が重い場合は昏倒して、そのまま魂が離れ儚くなる事も・・」

 

えっ。ナニソレ怖い。

 

まさか自分がそんな状態になっていたとは露知らず、内心gkbrで震えていると、美人さんは申し訳なさそうに続けた。

 

「魔女さまの魔力保有量を確認もせず筆記の魔道具を使わせてしまいました事。誠に申し訳なく、言い訳のしようもございません。どうか、魔女さまの気が済むようにわたくしに罰をお与えになってくださいませ」

 

そう深々と頭を下げる美人さんにぎょっとして、慌てて手を振りつつ言葉を返す。

 

「いえっ!そんな、顔を上げてください!クリスさんがそこまで謝る必要は!」

「いいえ魔女さま。今お伝えしました通り、こ度の事は命に係わる重大な過ちですわ。情けは無用に願います」

 

と、こちらに旋毛を向けじっと沙汰を待つ美人さん・・

 

そ、そう言われましてもぉ・・・・

 

まぁ確かに、魔法関連については美人さんの方が詳しいでしょうよ。

こっちにはそんな便利現象認知されてないんだから。

 

でも、美人さん側からしたら「魔法皆無な世界?ナニソレ?」ってな感じじゃないの?

つーか私もめっちゃ迂闊だし。

電化製品使う感覚で良く知りもしない道具に身を委ねたのは、私自身の判断だよね?

 

つまりさ。今回の件は不可抗力っつーヤツっすよ。

結果は自己責任で負うべき事だし、美人さんに謝罪してもらうようなモンではないと判断しましたっ!

 

お互いの認識不足による不幸な事故だよ事故。

これを教訓にして、今後気を付けて行けばいいだけの話っすわ!

 

てな感じの事をぐだぐだ感満載で語り、「だから罪は問いません!罰も無し!」と半ば無理矢理ご納得頂きましたとさ。

 

・・いやまぁ、納得はしてないかもだけど。

てか多分してないけど。

一応そういう事にしとくってことで。

 

「と、いう訳で!このペンを無事に使えるようになるには、何をどうすれば良いのでしょうか?」

 

かなり無理矢理ではあるけど「何か方法をご存じですか?」と話を振りましたら、不思議道具が対価になるかどうかの瀬戸際って事もあり、美人さんは渋々と・・

本当に渋々とではあるけれど、会話に乗ってきてくれました。

 

「・・・ひとつ、心当たりがございますわ」

 

よしよし。このままなし崩しに罪だの罰だのの事は忘れてもらう方向で!

だってそんなの面倒この上ないからねっ!

ええやんけ!厄介な問題は棚上げ!保留保留!

 

「あ、良かった。あるんですね対応策。では、それは一体どのような?」

 

半分ポーズで興味津々に訊ねると、美人さんは扇を開いて口元を隠し「時に魔女さま」と質問を返してきた。

 

「張形をお使いになった事はございますか?」

 

・・・・・・・・・おハイ?

 

 

 




最後までお読みいただきありがとうございました。
次回の更新は月曜日の予定です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。