※この作品はR-18です。

鏡の国の変態王子様 ~アラサーオタクな私の鏡。繋がった先は異世界でした~   作:もすもす。

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すみません。ちょっと遅れました。


【185】異世界の酒に打ちのめされる。

 

移動宿泊箱の一室には眼鏡貴族、小太り貴族、護衛に騎士隊長ともう1人の騎士。

冒険者のリーダーである虎耳と盾役。

そこに私と傍仕えを合わせ、計8名が集まっていた。

 

魔術陣にて拡張された室内はそんな大人数でも圧迫感が無い程度には広く、魔道具の明りに明るく照らされている。

 

既に今後の動きについての話し合いは終わっており、今は貴族と冒険者の交流を図る場だ。

 

建前としては冒険者の実力を確かめたい貴族へ、狩った獲物を差し出したり手に入れた貴重品や珍品を披露したりするのが定番の流れだという。

 

貴族は目的に見合った実力を持つ冒険者を。冒険者は後援者や伝手を得る為に貴族を。

互いに得る物がある貴重な交流という訳だ。

 

そうして冒険者のリーダー2名はそれぞれ近隣で狩った獲物と取れた素材の目録を出し、貴族側はその中から幾つか購入する。

 

私も何か獲物を狩っても良かったのだが、折角なので異世界(あちら)の品を出すことにした。

これも伝手で手に入れた物に違いは無いしな。

眼鏡貴族は鏡の解析に参加している為、異世界の品を見せてもそう大事にはなるまい。

 

どうせならと冒険者の2人にも勧め、護衛の騎士と傍仕え以外の者で試すことにした。

 

目の前のテーブルに、毒検知の魔道具である盆に乗った小ぶりのグラスが用意される。

ふつふつと沸き立つような泡が踊る淡緑のそれに、琥珀色の液体が揺れていた。

 

眼鏡貴族が「今日の良き日に」と短く乾杯の言葉を伝え、席に着いている全員が軽くグラスを掲げて答えて口を付ける。

 

説明した通りに少しだけ口に含むと、まず強烈な酒精。

驚いて飲み込みそうになるのを堪え、暫し味を堪能・・

痺れるような濃い酒精の奥に、複雑な味が見え隠れしている。

そうしてコクリと飲み込むと、鼻に抜ける甘い果実のような豊潤な香りにうっとりと目を閉じた。

 

ふと見回せば、皆無言でグラスを傾けている・・

そこに気を利かせた傍仕えが魔法鞄から肴を取り出し、盆に乗せてから皆に配った。

 

紙を敷いた平たい木皿に乗せられていたのは、これまた異世界のもの。

 

見た目も楽しい、色とりどりの乾燥果実。

その中からシワシワとした黄色く平たいものを選び、口に運ぶ・・

 

酒精で溢れていた唾液が渇いた果実にじゅわりと染み込むと同時に、舌に広がる甘味でさらに唾液が追加された。

奥歯でぐっと噛みしめると、強い抵抗と滲み出した旨味に意識を持って行かれそうになる。

 

美味い・・美味すぎるっ!

 

口に残った酒精と香りに乾燥果実が混ざると、より複雑な味と香りが生まれずっと咀嚼していたくなった。

噛み砕き、やや植物らしさが出て来た乾燥果実を名残惜しくも飲み込む。

 

そこへグラスを傾けると、果実の甘さが酒で洗われまた違った余韻が生まれた。

乾燥果実の種類ごとに酒の味もこれまた微妙に変わるので、飽きが無く延々と飲んでいられそうである。

 

気付けば、全員無言のまま酒と肴に夢中になっていた・・

 

グラスの中身が氷だけになっても、誰も口を開かない。

 

その気持ちは良く解る。

口内に残った最後の余韻を解き放ちたくないのだ。

 

溶けた氷がグラスにぶつかってカラリと音を立て、漸く小太り貴族が口を開く。

 

「これはまた、とんでもないモノですな・・」

 

確かに。正直、ここまでの物とは思っていなかった。

差し入れられた巌窟人(ドワーフ)の酒も酒精が強いものだったが、彼女が用意したこの「ういすきー」とやらはそれの比ではない。

味と香りや奥深さ、余韻といったものまで何もかも段違いだ。

 

勿論、巌窟人の酒も良いものではあるのだが・・この酒を知ってしまうと何とも味気なく感じてしまう。

 

「アド・・お前さんはもうちょっと加減ってヤツを覚えてくれないかねぇ・・」

「あぁ。これほどまでのモノに出会った幸運と、明日からは味わえない絶望をどう自分に納得させればよいのか、見当もつかん」

 

2人から据わった目でじとっと睨まれてしまい、後ろめたさで視線を逸らした。

恨みがましい圧を避けた先で、手に持ったグラスの氷をコロコロと回し鳴らしていた眼鏡貴族が徐に話し出す。

 

「・・先程の案。この酒があればすんなり話が通るかもしれんな・・」

 

「何本なら出せる?」との問いに、魔法鞄(マジックバック)の中身を思いうか浮かべて答えた。

 

「同じ味でなくても良いのなら、同等の物が3本」

 

回答に満足した眼鏡貴族は、うっすらと赤みが差した顔に笑みを浮かべる。

 

「勝ったも同然だな」

 

 

〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇

 

 

翌日、異世界の酒を携えて訪れたのは巌窟人の職人らの宿泊場所。

 

巌窟人は大きく分けて5つの氏族と流れ者からなる。

生粋の職人である彼らは氏族毎に得意な仕事が異なり、普名として氏族名と得意な仕事を名の代わりに名乗っているのだ。

 

ガ族は武器や防具。

ダ族は装飾品や家具。

ギ族は石材建築。

ド族は木工建築や細工物。

ズ族は土の焼き物全般。

 

といった具合だ。

 

因みに流れ者は各氏族を渡り歩いた凄腕の職人で、彼らの間では強い憧れの対象となっている。

 

そんな訳で、今目の前に居るのは大穴で仕事をしたギ族のまとめ役である巌窟人。

 

「おぅ、冒険者の兄ちゃん。この「ギ・大穴掘り」に何の用でい!」

 

 

 




最後までお読みいただきありがとうございました。
次回の更新は月曜日の予定です。
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