※この作品はR-18です。

鏡の国の変態王子様 ~アラサーオタクな私の鏡。繋がった先は異世界でした~   作:もすもす。

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お待たせしました。


【203】夢と書いて生きる希望と読む!

 

10年前。

クソったれな親戚に拉致監禁されてる間に家財の一切合切を捨てられた上、両親の遺骨は何処とも知れぬ場所に散骨されたワタシです。

 

んでまぁ普通に精神ぶっ壊れて歪な目標設定しちゃいまして。

大学も退学して漫画家になる為に描いて、描いて、描いて、描いて。

それはもう色んな出版社に投稿しまくり。

 

遺産を使わない為に漫画とは別に絵の仕事も沢山したなぁ~

同人の小説の挿絵とか、イベントポスターとか。

お陰で色んなタッチの絵が描けるようになり、元々それなりに早かった作画が更に早くなりました。

ま。一番稼げたのは個人で頒布した同人誌だったけど。

 

そんなこんなで作画漬けの生活をしていたわけですが、肝心の漫画の方は出版社に原稿を送れども送れども入賞しなかった。

イベント会場で編集者の方から声を掛けてくれたのに、後から「すみません、無かった事に」なんて、お断りされることも何度かあったりして。

 

で。『流石におかしくね?』ってなるじゃん?

 

ある時断りの連絡を入れて来た編集者さんにキレて「理由は?!」ってしつこく食い下がったら教えてくれましたよ。

 

「上の方から綾小路さんの作品は通すなって言われてまして・・すみません。私も家族が居るので、上に逆らって職を失う訳には・・」

 

という事だったらしい。

 

暴れたね。

そらもういい大人が恥も外聞も投げ捨てて、近隣住人への配慮も消失させてドッタンバッタン暴れに暴れた。

そんだけ騒がしくしたら当然通報もされるってもんですわ。

ドアスコープ越しに警察官の姿を見たら流石に冷静にならざるを得なかったね。

 

ちな。その時住んでた部屋の上下左右の住人には、後日菓子折り持って謝罪行脚しましたです。はい。

 

マジ反省。

 

もうね。一周回って「何やってんの自分」てスンっ。と落ち着いてしまった。

 

それから数日はぐるぐる、ぐるぐる。

考えて、考えて。

 

『しゃーない。諦めよう』と結論を出した。

 

他人様を巻き込んでまで突っ走る訳にはいかないよね。

そんな責任持てないし。

それに、私は自称親戚の奴らみたいに他人の人生を滅茶苦茶になんか絶対したくないので。

あいつらと同レベルまで落ちて堪るか。マジ勘弁。

 

そんなこんなで盛大に荒んでいた時に、偶然父さんの知り合いの写真屋さんに遭遇したんだよね。

多趣味なお父さんの趣味の1つがカメラだったんよ。

一眼レフ?とかのフィルムカメラで撮って、現像はお店に任せてたんだ。

そんで、その写真屋さんが「お父さんの写真、預かってるよ」と、事故の前に現像依頼を出していたらしい写真とフィルムを渡してくれた。

 

その後すぐ、また別の出来事があって。

 

何度か引っ越してきたのにも関わらず、転送転送で1枚の葉書が届いた。

家具とかの預かりをしてる会社からで、内容は「契約期間が終了するので、預かっている荷物の引き取りに来るか、売り渡すかを決めて連絡くれ」と書かれていた。

 

どうやら母さんが何か預けていたらしいと知って、直ぐに引き取りに行った。

 

それは古い鏡台。

 

確かに、小さい頃母さんがお化粧するのに使っていた記憶があった。

いつの間にか見なくなっていたので、てっきり処分したのだと思い込んでいたが、預かりサービスを契約して置いていたようだ。

 

両親の物は何一つ手元に残っていなかったけど、写真と鏡台が戻って来てくれた。

 

・・久々に、両親の存在を身近に感じた。

何だか「よく頑張ったね。もういいんじゃない?」と許された気がして。

ぶすぶすと燻っていた不甲斐なさや未練、自責の念といったマイナスの感情が随分と軽くなったように感じた。

 

そしたらなんかぐらぐらしていたメンタルがストンと落ち着き。

漸く、ちゃんと漫画家を諦めることが出来た。

 

両親が居なくなって、2年経ってた。

 

それからの私は、精力的に同人活動に勤しんだ。

 

漫画家になるのは諦めた以上、もう1つ決めていた「両親の遺産を使わない」というのはどうしても守りたかったから、描くこと自体は大好きなもあってそれで稼ぐと決めた。

 

可能な限りイベントに参加して常に新刊を出し。

「挿絵描きます」や「絵のお仕事請け負います」のチラシも作って会場で配り何とか食べて行けるだけのお金を稼いでいた。

 

とは言っても本当にギリギリだったけど。

 

安い鶏胸肉買って大量にハムみたいなの作って食べたり。

もやしとワカメと、あと安売りしてた缶詰とかがメインの食事だったな。

家賃と水道光熱費と毎月の電話料金(光回線込み)支払ったらマジでカツカツもカツカツ。

有難い事に本の売れ行きは良かったから、何とか生きて行けてた。

 

で。

そんな生活続けてたら、もともと身長150とかでチビなんだけど。それを考慮してもあり得んくらい体重が減りまして。

ちっさいのにガリってたもんだから、色んな人から心配されたな。

 

いやまぁ、その頃はイベントでもトラブル(例のストーカー絡み)とかあったもんだから余計に、ね。

顔色とか相当悪かったんだと思う。

 

その時は親友とは言わないまでも、友人として楽しいお付き合いしていたアキに助けられた。

両親の遺産を使う事を渋る私を説得し、引っ越しを手配し、イベント関係者に根回しもしてくれ、一先ずストーカーから身を隠す事に成功した訳だ。

 

で、もろもろあって現在に至る。と。

 

ぐわ~っと蘇ってきたこの10年の記憶に、我ながら呆れ気味に『成人した途端に波乱万丈過ぎんか私・・』と脳内で強めの溜め息を吐く。

 

しかしまぁ、「後悔しない人生」か・・

確かに親友の言う通り、これまで色々と後悔してきたな。

大きいのも、小さいのも。

取返しつくやつに。つかないやつも。

 

皆、それぞれに後悔を抱えて生きている。

そりゃ、「後悔しない人生」を生きて行けたら、楽しいだろうとは思う。

 

でも。

そう。何度でも「でも」と考えてしまう。

 

解っている。

 

最初から自分を卑下してしまえば。高望みや努力なんかしなければ、失敗した時。上手く行かなかった時に傷つかないで済む。

 

両親が居なくなってからというもの。

心が傷つく事を極端に忌避するようになってしまった私の、自分でも嫌いな自己防衛法が、私の為にならないって事は。

 

責任を負うような事は極力避けて、出来る事だけして無理な挑戦はしない。

するにしても、「楽しい事だけ」なんて、情けないほど生ぬるくて限定的だ。

だから人間関係も深入りせずに、大切な人を作って来なかった。

 

・・そんな拒絶を突破してきた親友の言葉は、私の内に重く響く。

 

盲目的ですらある信頼も。重々しく依存を伴った友情も。

ケロリとした顔で「光栄だね」と受け入れてくれた親友。

 

こちらが申し訳なくなる程の献身ぶりに最初は戸惑ったし、若干引いたりもしたのだけど・・

 

親友は純粋に「私のファン」という事に気付いたら、安心した。

親友から与えて貰える諸々に対し、私も色々な形で返して行けると確信したから、私も心底安心して付き合いを続けられている。

 

人間関係はwin-winじゃないとね!

バランスとれてないとすーぐ破綻するんだから!

 

さて。

そんな親友に発破を掛けられて、以前に首から下をまるっと永久脱毛したりしたんですけども・・

 

う~ん・・してみたい事・・憧れ・・でも諦めていた事・・

 

考えを巡らせていると、ふっと脳裏によぎった純白に一瞬心臓が跳ねて、胸がざわついた。

 

うん。とても。

とっても恥ずかしいけれど・・1つ、思いついた。

 

「う・・」

「う?」

 

悩みに悩んで、漸く言葉を発しかけたものの、恥ずかしさと妙な緊張で喉が渇き声がかすれてしまった。

 

片手を上げて『ちょっと待って』と合図して、冷めきった紅茶を一口。

 

咳払いをして、姿勢を正し改めて真正面の親友に視線を向ける。

 

「う・・」

「う?」

「ウエディングドレスを、着てみたい、なぁ~。なんて・・」

 

言ってる途中から、顔が真っ赤になっていった自覚がある。

『何様だ』と羞恥に身悶えそうになる体を、両手の拳を強く握り膝に押し付ける事でなんとか耐えようとした。

 

したけど、直ぐに色んな我慢の限界が突破して叫び声を上げそうになった瞬間。

親友は素晴らしい発見をしたかのようにパァ!っと顔を輝かせて、弾む声で言った。

 

「それめっちゃ良いじゃんっ!やろうやろう!!」

 

・・自分で言っといてナンだけど・・マ?

 

 

 




最後までお読みいただきありがとうございました。
次回の更新は月曜日の予定です。
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