鏡の国の変態王子様 ~アラサーオタクな私の鏡。繋がった先は異世界でした~ 作:もすもす。
地底湖に流れ込む地下水脈を全て探し出してみせた
彼、彼女らの活躍により水竜討伐の場は今、ここに整えられた。
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世界を渡る転移陣の研究を進める為、パーガルディア皇国の遺跡調査に護衛の冒険者として同行して早1月半。
道中色々あったが、漸く水竜討伐の段取りが整い『いよいよだ』と思うと期待と興奮で体が自然と熱くなる。
だが思考だけは冷静に。
五感全てで得た情報を精査し、適切に処理できるよう雑念を払って集中する。
水竜討伐には皇国より人魚と巌窟人、そして皇国在籍の冒険者。2等級パーティーの「剛腕の誓い」が戦力やその補助として参加。
王国側からは護衛の冒険者の殆どが参加することになった。
というのも、依頼主である貴族から改めて討伐への参加依頼があったからだ。
私自身は元より水竜討伐に当たるつもりであったので特に思う事は無かったが、討伐となれば護衛より危険度が跳ね上がる為、特に4等級が多い「栄光への導き手」は依頼を受ける事に難色を示した。
だが追加で支払われる特別報酬が破格だった事に加え、メンバーそれぞれの参加の可否はリーダーの判断に任されるという事で頷くに至る。
「栄光への導き手」の4等級のメンバーの殆どは、リーダーより宿泊場で待機するようにと指示された。
ミュレも4等級だが、彼女は武器の調整や補修が行えるため、鍛冶師として同行する。
一方で「不屈の砦」は4等級も参加すると決めた。
個人では4等級でも、パーティーで連携すれば3等級の中でも上澄みに近い実力を持つ故に。
流石、武闘派と周りに認識されているパーティーだ。
結果、王国の冒険者は私とカルセに加え、「不屈の砦」のメンバー全員であるミリアーナ、副リーダーのデラ、フラウリィーラ、リルベル、キーラ、モウロの6名。
「栄光への導き手」からはリーダーのバーグ、副リーダーのアクト、セドリック、シグレ、ミュレの5名。
計13名での討伐参加となった。
冒険者はパーティー毎に動く事になるが、それでも全体での連携が必要になる場面が必ず出てくる。
となると、面識の無かった「剛腕の誓い」とも打ち合わせが必須だ。
そのような訳で現在。
討伐に参加する面々と最終的な話し合いが行われている。
王国の冒険者が集った目の前で男性が5名、揃って名乗りを上げた。
「王国の冒険者諸君、俺たちが2等級パーティー・・」
「「「「「剛腕の誓いだっ!」」」」」
リーダーらしき男が並びの真ん中で笑うと、むき出した歯と頭部がキラリと光る。
その両脇にも2名ずつ立ち、全員で何とも言い表しにくい体勢をとってこちらに笑顔を振り撒いてきた・・
何故、全員上半身が裸なんだ?・・
「俺らの戦法は徒手空拳!」
「魔物は殴る!」
「盗賊も殴る!」
「筋肉こそ基礎であり奥義っ!」
「全ての障害を!」
「鍛え上げた己の肉体のみで打倒する!」
「それが・・俺たち・・」
「「「「「剛腕の誓いっ!!」」」」」
言葉の合間で姿勢を変え、向きを変え。
様々な恰好で筋肉を盛り上げ見せつけ暑苦しい空気を笑顔で押し付けて来る「剛腕の誓い」メンバーたち・・
王国の冒険者は若干勢いに呑まれているようで、誰も何も発さず動かない、いや、動けない。
うむ、その・・
おそらく悪い連中ではないのであろうが、積極的に関わりたくはな「そこの青年っ!」
唐突に、リーダーと思しき光頭の男がこちらを親指を曲げた残りの4本指で「びしっ!」と音がしそうな勢いで指して来た。
自分が呼ばれたのか?
いや、まさかな。
私の他に「青年」と呼ばれるような風体の者が居る筈だと周囲を見回す。
が、認めたくはないが近くに居たのは傍仕えのみ・・
実際は兎も角、流石に弟妹と同じ年ごろに見える傍仕えを「青年」と言い張るのは無理があるだろう。
「どこを見ている?君だ!金髪の!!」
「私、か?」
諦めを胸に恐る恐る問うと、音がしそうな程に筋肉を盛り上げたメンバー全員で代わる代わる話し掛けて来た。
「あぁ!そうだとも!君だ青年!君は実に鍛え甲斐がありそうな筋肉をしているな!」
「どうだ?!俺らと共に筋肉の高みを目指さないか?!」
「筋肉は良いぞぉ!鍛えれば鍛える程に応えてくれるっ!」
「筋肉を鍛えると魔力の保有力も増える!気がする!!」
「さぁ!どうだ!一緒に鍛えたくなってきただろう?!」
油を塗ったように光を反射する肌表面をむきっむきっと動かしながら、じりじりとこちらに寄って圧を掛けて来る「剛腕の誓い」
「いや、私は・・」と発した断りの言葉を遮り、光頭はニコリと笑うと「なぁに遠慮はいらん!」と、両腕を顔の横で曲げてむきっむきっ。
「共に研鑽を積もう!」と、その右隣の男が頭の後ろに両手を回し、両脇腹を見せつけるようにしてむきっむきっ。
「素晴らしい体験になるぞ!」と、光頭の左隣の男が腰に両拳を当て、胸を強調してむきっむきっ。
「最強への一歩を踏みださないか?!」と、右端の男が腰の位置で手首を掴んだ状態で腰を捻りむきっむきっ。
「一緒に気持ち良くなろう!」と、左端の男が前屈みすると胸の前で両拳を合わせてむきっむきっ。
むきっ、むきっ、むきっ、むきっ、むきっ。
仰け反りそうになる圧の中、得体の知れぬ耐え難きモノが限界を超えた私は凪いだ感情のまま答えた。
「悪いが興味ない」
スパッと切り捨てるような言い方になってしまい、はっとして謝罪を口にしようとしたが光頭は強調の構えを解くと「そうか残念だが仕方ない」と頷き身を引いた。
「だがもし筋肉を鍛えたくなった時には、何時でも声を掛けてくれ!」
「去る者は追わず!」
「来る者は拒まず!」
「筋肉への門はいつでも開かれている!」
「それが俺ら・・」
「「「「「剛腕の誓い!!」」」」」
横一列で並び、びしっ!と幻聴が聞こえそうな程に鍛えた筋肉を強調する「剛腕の誓い」メンバー・・
・・・・・うむ。
一周回って何だか憎めないやつらだな。
王国の冒険者たちは独特な雰囲気を持つ皇国の2等級冒険者パーティー「剛腕の誓い」の空気に完全に呑まれ、その在り方を強制的に理解させられたのだった。
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筋肉を見せつける姿勢を解いた「剛腕の誓い」を交え、戦闘時の動きなどを出来る限り綿密に話し合う。
やがてその話し合いも終え、先に離れた「剛腕の誓い」に続いて王国の冒険者らが解散しようとしていた場に近づいてきた集団がいた。
それは白いローブを纏った王国の貴族と、彼らを警護する護衛騎士。
集団から一歩前に出た者が徐に
「傾注せよ!閣下よりお言葉を賜る!全員、伏して拝聴するがよい!」
王国の小太り貴族。ヒンヒ・ベラルドルダであった。
そしてもう1人。
小太り貴族に常日頃から手厚い補助を受けている眼鏡貴族・・ケイオニクス・ストークス。
冒険者らの依頼主にあたる公爵家次男は銀縁眼鏡の位置を調整し、一段高い所からやや戸惑い気味に立ち並ぶ冒険者らを見下ろし、言葉を発する。
「顔を上げよ・・まず、今回の護衛の任務ご苦労。だが我らの目的は遺跡を調査し、詳しい情報を王国へと持ち帰る事だ。皇国からの戦力が心許無い以上、貴様らの働きに調査の成否が掛かっている事を心せよ」
貴族なら当然ではあるが、尊大な態度での発言に険者らは内心は兎も角、表面上は冷静に耳を傾けていた。
だが、続く言葉にその静けさは崩れ去る。
「・・なに、安心するが良い。報酬は弾む。そして、戦闘が有利に進むよう我らの研究成果も投入する。遺跡の保護も必要故、我も戦場に出て遺跡の守りに付く」
ざわりと場に動揺が湧き上がるのと同時に、傍に控えていた小太り貴族が「閣下?!」と悲痛な声を上げた。
「わ、我はそのような話、聞いておりませぬぞ?!そんな、御身を危険にさらすような事、絶対に看過出来ませぬ!」
「もう決めた事だ。遺跡の情報を得る為に出来る事は全てやる。我が開発した結界魔道具ならば、水竜の攻撃など恐るるに足らん」
「そ、それは・・ですがっ!」
場に動揺が広がる中、恐らく冒険者全員の意識は「余計な事を」という思いで一致しているだろう。
だが、私には眼鏡貴族がそのような暴挙とも言える行動を起こした理由に心当たりがあった。
最後までお読みいただきありがとうございました。
次回の更新は月曜日の予定です。