※この作品はR-18です。

鏡の国の変態王子様 ~アラサーオタクな私の鏡。繋がった先は異世界でした~   作:もすもす。

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お待たせしました。


【212】模索。

 

黒鍔帽は抱えていた人魚(マーメイド)を地面にそっと置き、「後は任せた」と一言だけ言い残してまた影に沈み消えた。

 

残された人魚は長い手足をぎゅっと縮めた状態で固まり、地面にころがっている。

が、急にはっとした表情で辺りを見回し、こちらに気付くと慌てて這い寄り、そう広くない岩陰に並び隠れた。

 

「き、急に影に入るとか言われて~!死ぬかと思った~!」

 

自分の両肩を擦りながら「気を失ってる間に~夢でお父さんに会った気がする~」と薄ら恐ろしい事を零す。

 

普段ならば同情して励ましの言葉の1つ2つ伝える所だが、今そんな余裕は無い。

絶えぬ攻撃音に負けぬよう、声を張って訊ねた。

 

「何故ここに?!」

「れんらく係になれって~、セレーネに行けって言われて来たの~!」

「連絡係?!」

 

大声で問い返すと「そう~!」と頷いた人魚はチッチッチと弾むような独特の音を出した。

 

「せいれいさまが魔法をかけてくれたから~ここでも息できるし、水の中みたいに遠くてもなかまと話せるの~!」

 

成程。見れば、人魚の肋骨下にあるエラに水が纏わり付いている。

水竜が使っていたのと同じ魔法を半精霊が人魚らに掛けたらしい。

 

発する音が伝わるのは「I」の補助魔法のお陰だろう。

確か、人魚たちは水中で独特の「音」を介して意思疎通を行うとか。

その短い音の連なりで膨大な情報のやり取りをする・・となれば、彼女らを介して離れた者達と連携が取れる!

人の「声」で直接やり取りするよりも、より迅速に!

 

「協力、感謝する!」

「あちしたち、「りく」では遅くて逃げられないし~。手伝った方が生きられそうだから~!」

 

確かに、水の無い場所での移動は難儀するだろうと頷いたところで、ふっと疑問が湧いた。

 

『そうだ。今ここに水はない・・では、あの水竜は、どこから来た?』

 

殆どの水を抜いた上、流れ込む水も止めた。

地下水の流れから隔離されたこの空間に・・どうやって?

 

「カルセ!」

「なんでしょう?!」

「ストークス卿はどこだ?!」

「遺跡のどこかに居るかと!」

「半精霊に探らせろ!確認したい事がある!」

「畏まりました!」

 

傍仕えが指示を出している間にも断続的に地響きが起こり、悲鳴や破壊音が途切れない。

天井からも岩が接がれ落ち、そこかしこで結界に当たって砕けている。

 

残された時間は、そう多くはない!

 

焦りを覚えたその時、傍仕えが「居ました!」と眼鏡貴族の発見を知らせた。

 

「よし!ロアーナと共に卿のところまで移動する!」

「はっ!」

 

短く了解を伝えた傍仕えが半精霊の「G」を呼び、直後に全員が影に沈む。

泣き出しそうな「また~?!」という人魚の悲鳴は、途中でぷつりと消えた。

 

一瞬の浮遊感の後、地に足が着き体に重みが戻る。

私と傍仕えは慣れていたのもあって難なく着地したが、ロアーナは先程と同じように手足を縮めて地面にごろりと転がった。

 

「も、いやぁ~・・」

「すまない。だが、ロアーナの力が必要なのだ」

 

きゅーん。と、出どころ不明の高音を発する人魚に申し訳なく思い伝える。

 

「わかってるよぅ~・・」

「本当にすまない。無事にこの危機を乗り越えたら何か詫びをさせてくれ」

「・・・きたいしとく~」

 

下がり切っていた耳のようなヒレが少し上向いたのを見て、どうやら多少の慰めになったらしい。と、そう思う事にした。

 

そして意識を切り替え、周囲を警戒してくれていた傍仕えに近寄り「卿はどこに?」と問うと、「こちらです」と城壁門のような建造物の影へと誘導される。

 

そこでは抱える程の大きさの結界魔道具に、必死の表情で魔力を充填している眼鏡貴族と小太り貴族が居た。

 

「ストークス卿!」

「殿下?!ご無事で?!」

「あぁ、何とかな。それは結界の魔道具か?」

「そうです!ですが水竜の攻撃で消費する魔力量が多く、我らの魔力量ではもう持ちそうにありませぬ!」

「解った。私が代わろう!」

 

魔力を充填し続け、限界が近かったのだろう。

眼鏡貴族は「頼みます」と素直に場所を空けた。

 

眼鏡貴族に代わり、魔道具へ触れて一気に魔力を流す!

途端、今にも消えそうな様子で明滅していた魔道具の内側部分が強く発光し、安定して回転を始めた。

 

「助かりました・・流石の魔力量ですな」

「礼には及ばん。それより、訊きたい事がある」

 

疲労困憊で座り込む眼鏡貴族に、同じように顔色の悪い小太り貴族が無言で魔力回復薬の小瓶を手渡す。

一気に呷り、一息ついた眼鏡貴族は「失礼しました」と一言詫びて姿勢を正して続けた。

 

「訊きたいのは「水竜はどこから現れたか」という事では?」

「あぁ。何か情報は無いか?」

「あります。というのも、我らは水竜が現れるところを直接目にしましたので」

「見たのか?!あの水竜はどこから来た?!」

 

それが解れば、来た場所に追い出すなり誘導するなりして戦闘を回避出来るかもしれん!

 

「後から現れた水竜。あの個体は・・ここに転(・)移(・)し(・)て(・)き(・)ま(・)し(・)た(・)」

「てんい・・転移だと?」

「その通りです。我らは戦闘を観察するため、全体が見渡せる位置に居りました。あの水竜が現れた瞬間も視(・)て(・)いました。恐らく、若い水竜が倒れる際に発した「音」。その「音」に引き寄せられたもう1体が、この遺跡の「転移陣」を利用したのだと推測します」

 

確かに。あの時、視界が白に染まった次の瞬間には、あの水竜はそこに居た!

 

「遺跡の陣はやはり、転移陣だったか!」

「はい。しかも随分とゆるい・・利用できる範囲の広い陣、ということです。でなければ、水竜が使用するなど無理な事」

「こちらでも転移陣を使えそうか?水竜を倒すより、陣を利用してどこぞに送り飛ばしてしまえば、皆で楽に脱出できると思うのだが・・」

 

提案に、眼鏡貴族は首を振り却下すると、その理由を告げる。

 

「まず、あの陣を解析する必要があります。我と部下だけでは人手が足りません。そして、解析出来たとしても、利用するには多くの魔力が必要になります。それこそ、竜の身に宿る程の膨大な魔力が」

 

眼鏡貴族の言葉を頭の中で整理しながら考え・・また幾つかの案を思いついた。

 

「ロアーナ!リルベルという魔法使いに連絡を!魔術陣の解析に協力するように伝えてくれ!」

「わかったよ~」

 

「殿下?」と説明を求める眼鏡貴族に、魔術陣に詳しい冒険者がいると話す。

 

「どれだけ助けになるかは分らんが、試す価値はあるだろう」

「成程。市井の者ですか・・使えると良いですが」

 

自尊心が傷ついたか、眼鏡貴族は不敵に笑うと小太り貴族に何やら指示を出し始めた。

そこへ人魚が「リルベル、かいせき?するって~」と回答を伝える。

 

「カルセ」

「既に半精霊を向かわせました」

 

状況を読み、先回りして動いた傍仕えに頷いたところで、柱の陰からボサ髪がぬうっと現れた。

そして次の瞬間には目の前に移動し「魔術陣はどこ?!」と叫ぶように問う。

 

今にも胸倉を掴まれそうな勢いだったが、小太り貴族が「陣はこちらだ冒険者」と呼ぶと、すぐさま飛んで行ってしまった。

その後を追い、3人で小難しい話をしている所へ近づいて会話が途切れたところで訊ねる。

 

「解析出来そうか?」

「ここの陣だけでは無理」

「ここの陣?」

「この遺跡の陣は複数の陣を同時起動で1つの陣として機能させている、と見た」

 

床に広げられていた何枚もの紙を手に、自ら取り出した大きな羊皮紙へ鬼気迫る勢いで書き込むボサ髪。

眼鏡貴族に視線で問うと「可能性はあります」と返された。

 

「ですので、他の陣の解析も進めば、あるいは・・しかし、解析出来たとしても起動に必要な魔力をどこから・・」

 

その問題に対し、私は「これは使えるか?」と大きな魔石をごろごろと取り出して見せる。

 

「これは?」

「倒した水竜の魔力を込めた魔石だ」

「・・足しにはなりますが、恐らく足りないかと」

「なら、あの水竜の魔力をこの魔石と同じようにして集めるとしよう」

「・・大量の魔石が必要になりますな」

 

色々な疑問を飲み込んだ顔でそう零した眼鏡貴族へ答えを返す前に、別の声が割り込んできた。

 

「魔石がいるんだべか?んなら、おらのさ使ってくんろ」

 

そんな言葉と共に、すぅっと姿を現したのは白い角をもつ鬼人。シグレだった。

 

 

 




最後までお読みいただきありがとうございました。
次回の更新は月曜日の予定です。
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