※この作品はR-18です。

鏡の国の変態王子様 ~アラサーオタクな私の鏡。繋がった先は異世界でした~   作:もすもす。

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お待たせしました。


【214】冒険者たちの奮闘。

 

洞窟内。

点在する、身の丈を超える大きな魔力結晶まで辿り着いた者たちが居た。

地が裂け火の雨が降る天変地異が生ぬるく感じる程、絶え間なく続く水竜の攻撃に恐怖と悲鳴を飲み込み、その影でただ耐えている。

 

高い魔力を有する魔力結晶の力場は、ある種結界のような効果を生み出し、水竜の直接攻撃を阻んでいた。

だがその力場も、攻撃によって破壊された岩や割れ飛んでくる礫からまで守ってはくれない。

 

皆少なくない傷を負いながらじっと耐えているものの、このままでは後が無いと理解していた。

身動きが取れずにいる中、焦燥ばかりが募っていく。

 

そんな時、足元の影から現れたのは「栄光への導き手」の副リーダーであるアクト。

 

水竜の攻撃によって魔法の発動に必要な周囲の魔力が乱されている中、幾人か固まっている所を回り、連絡要員として人魚(マーメイド)を送り届けていたのだ。

 

そして連れて来られた人魚たちを介し、水竜排除の為の作戦が伝えられる。

 

「不屈の砦」のリーダー。ミリアーナとその仲間たちは不敵に笑う。

 

「うちのリルベルが命がけで解析してんだ。なら、その仲間のウチらが出張らないでどうするさね!」

 

届けられた回復薬を呷り、「やるよ皆!」と気合の入った声に、デラ、フラウリィーラ、キーラ、モウロの4名は力強く応えた。

 

 

「栄光への導き手」リーダーのバーグは虎耳を震わせ、「シグレは無事」との朗報に静かに頷いた。

 

「これで懸念の1つは消えた。その上、精霊様の守りと回復薬まで与えられたのだ。これで引いていては冒険者の名折れ・・アクト。人魚と共に後方にいるミュレに武器を預けて来てくれ。調整が済んだら出る。リック、ここが正念場だ・・絶対に全員で生きて帰るぞ!」

 

黒髪のセドリックが「はい!」と応え、回復薬で傷を治した副リーダーのアクトも頷きを返した。

 

 

皇国の冒険者パーティー「剛腕の誓い」のリーダーは、つるりとした頭と歯を光らせてぐっと仲間に上腕を見せつけた。

仲間たちは各々わき腹、腹、胸、背中を強調してそれに応える。

彼らに言葉は要らない。

いや、彼らにとって筋肉の煌きこそが意思を伝える手段であり、言葉そのものなのだ。

 

回復薬で回復した5人は肌をよりツヤツヤと光らせ、はち切れんばかりの闘志を筋肉に滾らせて戦闘への意欲を高める。

 

そんな彼らの所に連れて来られた人魚は潤んだ瞳で頬を染め、ほぅと溜息を吐いて耳の位置にあるヒレをぱたぱたと動かしていた。

 

 

幾人かの巌窟人(ドワーフ)らは仲間を失った悲しみや不甲斐ない自身への憤りを水竜排除への意欲に変え、ぐつぐつと煮えたぎるような思いを胸の内に押し込めて、今出来る事を淡々と熟した。

 

即ち、移動速度が遅い彼らが戦力の代わりに提供できる最大の支援・・武器、道具の作成。

目の前の素材・・魔力結晶を使用した投擲ナイフや短刀。

急所を守る部分鎧。結晶の力場を利用した小盾。

込められた魔法を瞬間的に増幅、暴走させる使い捨ての道具等・・

 

限られた道具。限られた素材。限られた時間の中で、巌窟人らは限界まで腕を振るい、あっという間に作り上げたそれらの品を、人魚と半精霊の力を借りて戦う者たちに送り届けた。

 

巌窟人らは腹を決める。

足手まといにならぬようじっと身を潜め、後は「結果を見届けるのみ」と。

 

冒険者らの共通認識として「排除」とは転移陣によるもので間違いなかったが、それでもその「排除」の中に「討伐」の選択肢が含まれていたのは、彼、彼女らの矜持故だろう。

 

そうして時は満ち。

水竜を排除するための行動が始まった。

 

場に張りつめる緊張で耳鳴りがしそうな中、水竜の攻撃の合間を縫って飛び出したのは虫人のモウロ。

 

冒険者の中で物理的な速さは随一。

光を透過する4枚翅を震わせ、水竜から放たれる攻撃魔法の悉くを避けてみせ、水竜の注意を引く。

 

その隙を突き、最初に攻撃を仕掛けたのは褐色肌のキーラ。

巌窟人から託された「魔法増幅魔道具」とも言うべき危険な代物を矢に括り付け、放つ!

 

短弓故、勢いが足りずやや弓なりに飛んだ魔道具が水竜を包む水球に触れた瞬間、轟音とともに炎が広がる!

 

最初こそ水竜は人種如きの攻撃を意に介さなかったが、発生した熱量に認識を改めたらしい。

地上を走り回り、魔力結晶から魔力結晶へと走り渡りながら矢を向けて来るキーラに、巌窟人を屠った不可視の攻撃を放つ!

 

目で追う事叶わぬ、正体不明の攻撃がキーラを襲った!

誰もが「無事では済まぬ」と緊張し毛を逆立てる中、キーラは弾き飛ばされゴロゴロと転がった後に、なんと受け身を取って立ち上がり叫ぶ!

 

「無事だ!精霊様の防御と巌窟人の盾は有効!」

 

そこまで伝えたところで、またしても襲い来る魔法!

だが今度は片足を引いて半身となり、正面からの攻撃を避ける事に成功する!

そして気付き、知り得た情報を皆に伝えるべく声を張り上げた。

 

「今の攻撃は「水」だ!「水」を飛ばしてる!」

 

不可視の攻撃は、水弾や水礫と同じく「水」を使った攻撃であった。

水をどの様に飛ばせば体を切断するまでに至るのか、理屈は理解出来ずとも、冒険者らはその情報を元に対処を講じる。

 

と言っても、出来る事は少ない。

水竜の魔力が尽きるか、水を取り上げでもしない限り攻撃魔法は止まらないのだ。

 

ではどうするか。

結局のところ、「避ける」に尽きる。

 

「精霊様の防御もずっとは持たない!当たったら死ぬつもりで動きな!」

 

「不屈の砦」リーダー、ミリアーナが激を飛ばしながらキーラに続き飛び出し、次の遮蔽物である魔力結晶へ駆ける!

 

それに続き、攻撃を分散させ命中率を下げて被害を抑えるべく他の者たちも飛び出した!

 

右に左に忙しなく眼球を動かした水竜は、目標を定める事無く攻撃魔法をばら撒く。

当然、そのような手を抜いた攻撃が冒険者らに当たる筈はなく、余計な魔力を消費するだけとなった。

しかも塵芥の如き矮小な存在共は、ちょこちょこと攻撃を返して来る・・

そんな風に有象無象が視界を飛び、駆け回るのを挑発と受け取って、水竜はキレた。

 

1つ1つすり潰し、じっくりと恐怖を与えるつもりでいたが、もうよい。

何1つ残さずに消し飛ばしてやる!

 

音の無い怒りの咆哮と共に、水竜の魔力が周りに伝播。

込められた殺気により、その意思は明確に冒険者らに伝わる!

 

「最大警戒!」

 

尾の毛を逆立て、牙をむき出し叫んだ虎耳のバーグの声が皆に届いたその瞬間、左から右へ撫でるように等間隔で「線」が走った!

 

ほぼ全員が迫る「線」を「避ける暇なし」と待ち構え、素早く防御姿勢を取る!

 

「ぎっ!」

「ぐぁっ!?」

 

「線」を逸らす事に成功したものの、傷を負った数名が僅かに悲鳴を上げた。

だがそれはマシな状態の者たちで、かなりの人数が薙ぎ払われたように右側に弾き飛ばされ、次々に岩肌へとぶつかり止まる!

 

同時に、「線」は入り口側の高い位置で支援を行っていた人魚らにも届いており、支援魔法が途切れてしまった。

途端、襲い来る本能的な恐怖に、冒険者らの体は強張り固まる!

 

姿を晒したまま、身動きが取れぬ冒険者らの様子を嘲笑うように、水竜はゆっくりと体を揺らし起こした。

そして、今度は見せつけるように魔力を動かし、纏っていた水球から一抱え程の大きさの水球を次々と生み出す。

 

その水球が見る者達の視界一杯に浮き広がると、それはきゅうと縮(・)ん(・)だ(・)。

 

冒険者らは察する。

先程と同じ攻撃が来る、と。

 

皆、それぞれに足掻いた。

 

脚よ動け。

 

盾を構えろ。

 

魔法を。

 

見ろ。視ろ。そして避けろ。

 

それでも動かぬ体に絶望が蔓延り、思考すらも逃避しかけたその時。

 

何の前触れも無く、水竜の頭上から濃(・)い(・)緑(・)色(・)を(・)し(・)た(・)物(・)体(・)が落ちて来た。

 

水竜は目を眇め、煩わし気に水球から放った「線」でそれを薙ぎ払う。

 

瞬間。真ん中から斜めに断ち切られた物体から、大量の白煙が湧き広がった!

 

 

 




最後までお読みいただきありがとうございました。
次回の更新は月曜日の予定です。
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