鏡の国の変態王子様 ~アラサーオタクな私の鏡。繋がった先は異世界でした~ 作:もすもす。
「ありがとう・・」
感謝の言葉を口にしたアド君は、握った私の手を祈る様に額に当てて顔を伏せる。
微かに伝わる震えから彼の心情が伝わって・・つられて、私もちょっとだけ泣いた。
お互い照れながらティッシュで目元を拭った後は、これからの予定というか流れ?的な事を告げられる。
なんと本日。昼前に私とご家族との顔合わせをする・・と?
マ ジ か ! !
現時点ではアド君がいつ
その時に婚約した事も知らせる・・と。
『こ、心の準備がっ!!』
内心
あっ・・・うん。
コレハ逃ゲチャ駄目ナヤツ・・
私がアド君の家族と顔を合わせる事に、なんの不安も疑問も心配もしてない、キラッキラなおめめを直視したら、一瞬で覚悟が決まりました。
ふ~・・「乗り越える」なんて言っておきながら、なんて情けない。
まぁ人間、そう簡単に気質は変わらないって事なんだろうけど、そりゃ変わろうとしなきゃ変わるモンも変わらない・・よね。
よし。とにかく、先ずは「恋人の家族(王族)への挨拶」というミッションをサクッとクリアしてやっか!(震え声)
「なんでもないよ?ご家族って、どなたが来るのかな?と思ってさ。ご両親とお姉さんと・・後他にお兄さんが2人と、弟さん妹さんが居るんだっけ?」
まぁまぁ大家族。
私一人っ子だから、兄弟姉妹居るのちょっと羨ましい。
「上の兄は結婚しているから、義理の姉と、甥と姪も居る。顔合わせの時間を作る、とは聞いているが・・皆忙しい身の上だからな。正直、姉上以外集まれるかどうか・・弟妹は学園の寮で暮らしているし、甥と姪はまだ小さい。今回は見送る筈だ」
「そ、そっか~」
おふ・・大人は全員集合の可能性アリっすか・・ガンバレワタシ。
「・・よし。分かった。それじゃさ、皆さんの事を訊いても良いかな?お名前とか、お仕事とか、性格とか・・えと。心構えの材料が欲しいので・・」
「よろしくオナシャス!」と勢いよく頭を下げると、アド君は「分かった」と頷いてご家族について話してくれた。
「最初に両親だが、父はカルカロルド。母はベスティア―チェという。王位を長兄、ゼクレウスに譲ってからは王都から離れた直轄地でゆっくり過ごしている。父と母は大変仲が良くて「やっと引退したのだから余程の事が無い限り呼ぶな」と、殆ど王都に出て来ない」
「ほうほう・・」
話を聞きながら、内容を覚える為にタブレットに繋いだキーボードでカタカタとメモを打ち込む。
一度聞いただけでは覚えられる自信がありませんのでねっ!
「王となったゼクレウス兄上は婚約者だったアレクシア・サーバルディア公爵令嬢を王妃に迎え、王子アクセルと王女マリアンナを儲けた。兄上夫婦も仲睦まじく、オレグラント王国の民を守る為、日々政務に励んでおられる」
「ふむふむ・・」
「姉とは何度か話をしたそうだな。姉と次兄は双子で、姉の方が先だ。数年前、当時侯爵だったガルドフ家に降嫁し、次期当主であるグランジェイド卿に嫁がれた。これによりガルドフ家は陞爵して公爵家となったんだ。これまでの功績が認められた形だな」
「なるなる・・」
「次に次兄だが、名をフィガロル。王都守護騎士隊の副隊長を務めている。因みに、隊長はグランジェイド卿だ。成人した家族の中で私を除き唯一の独身で、剣の腕は王国随一。一部の騎士からは「氷の副隊長」と恐れられる一方、信奉者に近い者も居ると聞く」
「ふんふん・・」
「弟と妹はトトカとルルカ。姉上兄上と同じ男女の双子だ。こちらは弟の方が先だから私たち兄弟は上から男女男男男女、となる。先程も言ったが弟妹は王立学園の貴族寮で生活していて、最近は祝典などの公務がなければ中々顔を合わせられない」
「ほむほむ・・」
カタカタカタ・・
キーを叩きながら、戦慄が止まらないワタクシ・・
おぉん・・情報量が、情報量が多いっ!
いや、人数が人数だから当然なんですけどもっ!
親戚付き合いで最初から躓きたくないから頑張りますけどねっ!
自分の両親が親戚と没交渉だったから、初めての経験過ぎて色々不安だっ!
けどけど、
その為にはっ!
「おけおけ・・したら皆さんの好きな物とか地雷・・苦手な物や避けた方が良い話題とか・・あ、後。訊いて良いなら年齢とかも教えてほしいかな?」
「あぁ、構わない。父が45。母が47。長兄が28」
「はいはいはい」
頷きながらキーをカタカタ叩く。
終わったら、入力を待ってくれていたアド君に目線で合図。
「義姉と姉と次兄が25で、甥と姪がそれぞれ5歳と3歳・・弟妹が・・確か13。あぁ、義兄は竜人で長命種なため姉と歳が離れていて、父と同じ45だったと記憶している」
「むーいむいむい・・」
タカタカタ・・
軽快なタイピングをピタリと止めて、ふと浮かんだ疑問を何も考えずにポイと投げる。
「そういえば、アド君はいくつなん?」
今まで何となく訊かないままだったけど、『多分23とかそれくらいだろうな~』なんて予想は、ひょいと返された解答で木っ端微塵に弾け散らかした。
「私か?18だ」
「・・・・・・・・・・・・・え?」
聞き間違いかと思って「ごめん、何て?」ともう一度訊ねる。
「18だ。2年前に成人してる。そういうアヤはいくつ―「くぁwせdrftgyふじこlp!!」・・ど、どうかしたか?」
急に頭を抱えて奇声を上げた私にアド君が心配そうに声を掛けてくれたけど、今は返事をする余裕がなっしんぐっ!
マジか、マジか、マ ジ か っ!!
十八、18、じゅうはちーっっ?!!
ちょっと待って?!じゃあ私、アド君と一回りも離れてんの?!
姐さん女房にも程があるよね?!
コレ完全に青少年保護法違反?!未成年略取?!
いや、18だからギリセーフ!だけど多分世間一般から見たら完全にアウトおぶOUT!
ひぃぃ!
知らなかったとはいえギリ未成年とも言える年齢のコにあげなコトやそげなコトを仕出かしたワイは・・ワイはぁぁああああああ!
いやぁあああああああああ!!ごべんなざいぃぃぃぃぃ!!
頭を抱え、キーボードを凝視しながら冷や汗を流す私は、脳内で関係各所に土下座行脚侍。
やばいやばいやばい、どうしよう!?
そりゃ年下なのは分かってたけど、こんなに離れてるなんて、全く考えもしなかった。
アド君だって、恋人が12も上の年増だなんて知ったら、流石に引くかも・・
でも。言わなきゃ。ちゃんと、本当の事を。
『怖い。けど、嘘は吐きたくない・・』
傍に居たい。離れたくない。
彼も同じ気持ちだと確かめて、傍に居ると約束した・・
だけど、それは私の年齢を知る前の話で。「知らなかった」と言われれば頷くしかない。
「約束は?」なんて、縋る事をすれば彼を。困らせてしまう・・
『幻滅される事だけはすまい』なんて、アド君から拒絶された時の事を考えて、悲観的な身の振り方にまで思考が及んだ時、そっと声を掛けられた。
「アヤ、大丈夫か?」
心配そうな声と共に右肩に優しく手が置かれて、びくりと跳ねさせてしまった肩からじんわりと伝わる熱に、泣きそうになる。
そっと顔を上げると、テーブルを回って隣に来ていたアド君は私の顔を見て一瞬動揺を見せた。
けど、直ぐに安心させるような笑みを浮かべて「どうした?」と優しく訊ねてくれる。
「・・・・あの、ね・・」
そう言ったきり、拒絶されるのが怖くて。言葉が続かない・・
長い長い時間が過ぎ―・・でも実際はほんの僅かに間が開いて。
固まる私を、アド君はそっと胸に抱き寄せた。
「・・怖がらないでくれ。私は、ずっとアヤの傍に居る」
「何があっても・・」と、耳元で優しい声音で囁かれて。
羞恥を通り越し、安堵に包まれた私は・・漸くぽつりと口を開いた。
「アド君・・私、ね。・・30歳、なの」
「・・30?」
そっと、顔が見える程度に離れると、驚きに見開く目を見返して頷く。
「うん。今年でね?30歳・・です。がっかり―「全く見えない!!」・・え?」
言葉を途中で遮られ、両肩をがしっと掴まれたかと思うと、念を押すように問われた。
「アヤ。本当に30歳なのか?20歳では無く?」
「え、いや。流石にそれは無理があるよ。サバ読み過ぎ。というかさ・・嫌じゃないの?」
「何がだ?」
「・・恋人が12も年上とか・・こっちでは割とナシな話なんだけど・・」
小首を傾げたアド君に恐る恐る問うと、きょとんと擬音が聞こえそうな顔を返されてしまった。
その顔を見てアド君の中では年齢差は問題にならないのだと察し、安堵のあまり盛大な溜め息が零れた。
最後までお読みいただきありがとうございました。
次回の更新は月曜日の予定です。