鏡の国の変態王子様 ~アラサーオタクな私の鏡。繋がった先は異世界でした~ 作:もすもす。
ちょっと遅刻しました。
頼子とアドが世界を越え再会を果たしたその時。
パーガルディア皇国の地底湖にある遺跡では、主を見失い愕然とした冒険者カルセの姿があった。
「アド様が・・消えた?・・」
先程まで確かに目の前に居た筈なのに。
敬愛する主の影も形も、気配すら、どこにも無い。
目の前の状況は、カルセにどこまでも非情な現実を突き付けていた。
暫し呆然としたが、直ぐに意識を切り替え「なんて事だ・・」と顔色を無くしている眼鏡貴族ことケイオニクス・ストークスに鋭く問を投げる。
「ストークス卿。アド様はこの魔術陣によって転送された、間違いないですね?」
「・・断言はできん。だが、その可能性は高い」
「どこに転移したかを探ることは出来ますか?」
「魔術陣はある程度読み解けている。だが、転移先を調べるとなると時間が必要だ」
「それは如何ほど?」
当然の質問に対し、貴族は絞り出すように「分らん」と答えた。
視線の先、固い地面に刻まれている古代の魔術陣は、強烈な光を放ったのが嘘のように沈黙している。
ぎり、と拳を握りしめたカルセは1つ覚悟を決めた。
そこへ、アドの行方を心配した冒険者らが集まって来る。
「おい、カルセ。アドはどこに行ったんだ?」
「さっきの光はなんだったんだい?」
「なぁ!アドは?!無事なのか?!」
瞬く間にカルセを取り囲んだ冒険者らは、現状を確かめようと次々に疑問を口にした。
「アド様は・・消えました。恐らく、魔術陣の暴走でどこかに転移させられたのだと・・」
その言葉に騒めきが大きくなるが、喧噪を切り裂くようにカルセは続ける。
「そこで!皆さんに依頼があります。先程魔力充填に使った魔石を、全て買い取らせていただきたい」
「どういう事だ」と冒険者らが疑問を投げかけられ、カルセは簡潔に説明した。
「半精霊たちを世界中に放ってアド様を捜索します」
「・・成程。つまり、精霊様方に対価として支払う魔石が必要って事だね?」
確認してきた「不屈の砦」リーダーであるミリアーナに頷き、カルセは続ける。
「その通りです。アド様の魔力で満たされた魔石なら、対価としては十分ですし、捜索の手がかりにもなりますので」
「分ったよ。金は要らない・・と恰好付けたいとこけど、ウチらも遊びで冒険者やってるワケじゃないんでね。相場の半分で手を打とうじゃないか」
にやっと笑って告げたミリアーナに続き、「栄光への導き手」所属の黒髪の魔剣士。セドリックが割り込むようにして声を上げた。
「俺の分の魔石なら直ぐに渡せるぜ!それによ、足りなくなったら外で狩ってくればいいだろ?!」
「確かに。他の魔石でもアド様の魔力を移せれば・・」
一瞬考え込んだカルセに、今度はボサ髪の魔法使いリルベルが手を上げて発言する。
「それならわたしが手伝える。魔力を移す魔術陣を組める」
「それは助かります!依頼という形でお願いできますか?」
「ん。問題ない」
そこにドワーフの1人が質問の声を上げた。
「確認したいんじゃが、魔石は大きさ関係なく数が必要なんかの?」
「そうです。出来るだけ多くの半精霊と契約したいので、数はあればあるほど良いです」
「そんなら大きい魔石は小さく加工してやるかの。なぁに。砕くだけならそう手間もかからんて」
「助かります。依頼料は弾みますので!」
「いらんいらん!だが、どうしてもっちゅーなら、美味い酒でも頼もうかのう!」
「感謝します・・」
集まった冒険者と皇国のドワーフたちの協力により、瞬く間にアド捜索への流れが出来上がる。
手際よく役割が割り振られ、洞窟内の熱気が高まる中。貴族が声を張り上げた。
「聞け!皆の者!冒険者が行方不明になった責任は我にある。よって、かの者の捜索に携わる者には、金貨1枚を与えることを約束しよう!」
貴族とは思えぬ太っ腹な発言に、集まっていた者たちは騒き更にやる気を漲らせる。
早速とばかりに動き出した喧噪の中、カルセは貴族に深々と頭を下げて言った。
「感謝いたします。ストークス卿」
「当然だ。一刻も早く探し出さねば・・」
「はい」
2人が話しているところへ人魚のロアーナとリルベル。そして「栄光への導き手」所属である白角の鬼人、シグレがやって来る。
人魚らとの連絡要員と、魔術陣関連の手助けの為だ。
「セレーネが~。出来るだけ手をかすって~」
「おらんとこのリーダーも「最大限協力する」と言ってたべ」
「再戦の約束。果たしてもらわないとだから」
アド捜索への協力を口にする面々に「皆さん、ありがとうございます」と礼を伝えたカルセは、すぐに魔術陣の近くへとその場の全員を連れて移動する。
「他の方に魔石を用意して頂いている間に、ここに居る皆さまには少しでも魔術陣の解析を進めて頂きたく」
「分かった。直ぐに取り掛かる。ロアーナ。外の仲間に新しく紙とインクとペンを用意するように伝えて」
リルベルの言葉に頷いたロアーナが音を届ける前に、貴族が「それなら」と割り込んだ。
「我の部下に用意させよう。外で待機している者に我が「筆記用具を所望している」と伝えるが良い」
「え~と~。・・かみとインクとペン?を~。貴族さまが欲しいって~。て言えばいい~?」
「それで良い。あるだけ持ってこいとな」
「分かった~」
ロアーナが跳ねるような音で仲間に伝言を飛ばしている間に、シグレは腰の袋から符を取り出して言う。
「んなら、おらは残った水竜の魔力ば回収しとくっぺ!その方が調べやすいべや?」
「正解。よく知ってる」
「鬼人の「符」と「魔術陣」は大本が似てっからな!」
得意気に笑って見せたシグレの言葉に、貴族は気付きを得てはっと顔を上げた。
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次回の更新も月曜日の予定です。