鏡の国の変態王子様 ~アラサーオタクな私の鏡。繋がった先は異世界でした~ 作:もすもす。
皇国の地下遺跡から姿を消したアドの行方に当たりがついたため、彼の護衛であった面布のカルセは1体の半精霊を残して急ぎ王国へと戻った。
残された半精霊は「音」を司る精霊「I」
主であるカルセの「声」を用いて依頼を出していた冒険者からの魔石の買い取りや人魚との交渉、貴族の護衛までしっかり熟した。
面布に印された「I」の文字が無ければカルセ本人と何ら変わらない姿に戸惑う者も少なくなかったが、常にふわふわと浮遊する様子から然程時も掛からずに「うん。精霊様だ」と皆納得した。
最初の内は恐れ多くて遠巻きにしていた者たちも、カルセ本人とは違って楽し気に仕事を熟す「I」の様子に、自然と「人」に対するように接し始める。
すると、どうどうだろう。
遠慮は鳴りを潜め、ぎこちなかったやり取りはいつの間にか気楽に会話をするまでになり、終いには軽い調子で「I」に頼み事をするようになった。
無論、精霊に対する敬意はそのままで、あくまで「頼み事」の範囲であり、精霊使いがするような命令とは根本からして違うものだ。
半精霊である「I」は主人であるカルセから冒険者に付き添い、貴族が王国に戻るまで護衛をするようにと命じられていた。
その間、王国人からの依頼には極力協力するようにとも言いつけられていたのだ。
そんな理由もあって、「I」は頼まれ事の悉くをきっちりと遂行した。
勿論対価は必要だが、通常なら願っても叶わぬ精霊との関りに、貴族と護衛の冒険者たちは夢中になって「I」と交流を図った。
結果、「I」は疲れというものを知らぬ精霊であるにも関わらず、王国に戻りカルセと合流した時には、げっそりとやつれて見えたとか。
その経験が活きたのか、カルセが契約している半精霊10体の中で「I」が一番最初に精霊へと至るのだった。
「I」の騒がしくも楽しい一連の冒険は、また別の話。
〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇
さぁて。
やって参りました。
アド君のご家族と面談のお時間です!
今まで
そんなワケで。
見苦しくない程度の服をと思って鏡の前に立ちましたら何だか違和感。
そこで今更ながら裸眼で過ごしていた事に気付くワタクシ。
Оh・・
いや、言い訳だけど。ずっとコンタクトしてたつもりだったんよ!
めっちゃクリア!って程じゃないけど、ちゃんと見えてるから態々眼鏡に意識が向かなかったんだよね~
あと、なんかこれも回復薬飲んだ所為だと思うんだけど、お肌がえらいピチピチ!髪がツヤっツヤ!
更には『何かヘンだな?』と思って体重計に乗ったら引くくらい減ってるんですががががっ?!
私大丈夫?!
こんな急に色々変わって何かの病気だったりしないっ?!
てな感じであわあわしてたらアド君が魔力的な身体精査?みたいなことしてくれて。
「問題ない」って太鼓判押してくれたから、安心できて落ち着いたけども。
いやもう心臓に悪いって絶対。
アド君来てから酷使しちゃってる自覚あるもの・・寿命縮んでないかな・・
いや、だとしても絶対アド君と同じだけ生きるけどね!
そんなこんなで。
少し前に
(ちょっとサイズが合わなくなってたからアンピンと紐で誤魔化した)
過剰にならないように気を付けてメイクもしまして。
(びっくりするくらいファンデのノリが良くて怖い)
ちょっとしたアクセなんかも着けまして。
(買えって言ってくれた親友サンキュー!!)
いつの間にかアド君もパリッとした王子服(普段着らしい)に着替えましたら。
いざっ!・・・・・・
「お初にお目に掛かる。異界の魔女殿。我がオレグラント王国国王。ゼクレウス・オレグラントだ。我が弟、アディード・オレグラントの保護。心から感謝する」
んお゛っ!(あまりの美丈夫に目が潰れた)
「初めまして魔女様。私はフィガロルと申します。王都守護騎士隊の副隊長を務めております、アディードのすぐ上の兄です。以後、見知りおきください」
んぎぃっ!(声良すぎて耳が死亡)
「こんにちは魔女さん。ようやくお顔を拝見することができて嬉しいですわ♪あまり緊張なさらず、と言っても難しいでしょうけど、出来るだけ気を楽にしてくださいませ」
あふっ・・(唯一の癒しに召された)
集まった3名のご家族が一通りアド君と会話した後、紹介され挨拶された私は、笑顔を張り付けたまま内心で七転八倒。
感情のジェットコースターがスクリューコースを爆走中でございますれば。
『いやいやいや。いつものノリで現実逃避してる場合かっ!!』
気をしっかり持つんだ頼子っ!
例え始めて挨拶する婚約者のご家族が美男美女過ぎて目が潰れそうだからって、それがどうした!
長男国王様が髭のお色気ヤバ気なイケオジでもっ!
次男副隊長さんが眼鏡を掛けたS味のあるイケボでもっ!
そこに毎度美人過ぎて絵画の如くな長女さんが加わったからって脳内シャッター切りまくってんじゃないよ!
受 け 答 え !
れっつこみゅにけーしょんっ!
しっかり動揺したまま、恋人を困らせたくない一心で表面を取り繕い、ぎこちなく口を開く。
「ご、ご丁寧にありがとうございます。異界の魔女と呼ばれています。アヤと申します。アディードさんと、お付き合いをさせて頂いております。不束者ではありますが、よ、よろしくお願い致します」
『挨拶ってこんなんでいいの?いいのか?いや駄目かも』なんて、ちょっとぐるぐるしながら深くなり過ぎないように気を付けて頭を下げると、イケオジ国王様が「そう固くならずに」と着席を促してくれた。
「この場は非公式、家族の顔合わせをする場だと思ってくれ。礼儀だなんだと固い事は言わん」
「そうですよ。大事な弟が選んだ方と話すのに、所作がどうだとかくだらない事で貴重な時間を使いたくないですからね」
「えぇ。その通りですわ魔女さま。いえ、もうすぐ家族になるのですもの。これからはアヤさんとお呼びしてもよろしいかしら?」
アド君と同じ、金髪碧眼のキラキラ美男美女からのウェルカム且つ何だか「逃がさんぞ?」的な若干の圧を感じつつ「ありがとうございます」とお礼を言って、名前呼びも承諾したところで隣に座ったアド君が会話に参加。
「兄上、姉上は気が早すぎます・・と言いたいところですが、実は。アヤに婚姻の申込をしまして・・承諾を頂きました」
そうしれっと報告したアド君に、ぎょっとして視線を向ける。
もっと勿体ぶってこう、仰々しい感じで伝えるものだとばかりっ!
てか待って、まだ心の準備がっ!
「なんと、そうか!婚約したか!」
「おめでとうございますアディ。今から婚姻式が楽しみですね~」
「まぁ!素敵!アディ。アヤさん。おめでとう!腕の良いお針子なら既に押さえてますわ!だから安心なさってね!」
3人とも一斉に笑顔になって、口々に祝福を伝えてくれる・・
まさかこんな。
手放しで喜ばれるとは思っておらず、拍子抜けしてポカンとしてしまった。
固まる私の右手に、そっと隣からアド君の手が乗せられる。
釣られて隣を見ると、幸せそうに微笑んだアド君と目が合った。
「・・アヤ。不安に思う事はない・・私が傍に居る」
「アド君・・」
その言葉で何かがふっと解けて、強張っていた体から力が抜けた。
「うん。うん・・ありがと・・」
お礼を言って、私は頼もしい婚約者に笑みを返した。
最後までお読みいただきありがとうございました。
次回の更新は月曜日の予定です。