鏡の国の変態王子様 ~アラサーオタクな私の鏡。繋がった先は異世界でした~ 作:もすもす。
そわそわと落ち着きのない空気を纏い、床に座ってこちらを見上げるアド君の目元は、仄かに染まっていた。
「ちょっとした頼み事、なんだけど・・」
きゅっと口を引き結び期待に目が潤む様子に、こちらもそわりと腰の上辺りを疼かせながら続ける。
「・・髪、乾かしてもらいたいなって」
「・・・・うん?」
虚を突かれたような間があって、アド君がオウム返しに言った。
「・・かみ?」
「そ。私、そこそこ長いからさ。どうしても乾かすのに時間かかっちゃうんだよね。アド君の魔法でちゃちゃっとお願いできたら助かるな~?って」
「どうかな?」と小首を傾げて訊ねると、アド君は漸く合点がいった様子で、僅かに息を吐く。
「勿論、構わない」
頷いて、軽く指をパチっと鳴らした。瞬間。濡れて重く垂れていた髪がふわりと軽くなる。
「えっ。わっ!凄っ!一瞬だね?!」
「早い方が良いのだろう?完全に乾く少し手前の状態だ。どうだろうか」
「そうなの?確かに乾燥し過ぎるのは髪に良くないもんね」
軽くターンして髪をさらりと広げて見せ、にこっと笑ってお礼を伝えた。
「ありがとう!凄く良い感じ♪」
「・・・あ、あぁ。うむ・・」
動揺してぎこちなく答えたアド君の様子に触れる事無く、声の調子を落とし「じゃ、そろそろ」と会話の流れを変える。
「良い時間だし、寝よっか」
そう伝えると、ぱぁっ!と一瞬、嬉しそうな顔を見せたアド君は慌てて咳払いをして「・・そう、だな・・」と頷いた。
「ナニ」を期待しているのか丸解りです。あ~可愛い・・
「ちょっとだけ待ってね~。直ぐに用意するから」
「・・・・・用意?」
「うん。アド君の寝床。流石に一緒じゃ狭いでしょ?アキのお泊り用でごめんだけど、本当に直ぐ出来るから」
そう言って、クローゼットの取り出しやすい位置に置いてある電動エアーマットの大きな袋を引きずり出していると、背後から「同衾するものと・・」とショックを受けた呟きが聞こえて来た。
そこで「ん?何か言った?」と振り返れば、「あ・・いや・・」と視線を逸らして口ごもる。
・・うん。これ以上焦らすと完全に諦めちゃいそう。
『そろそろいいか・・』
今が頃合いと見て、心のギアを意識してガチリと組み替えた。
振り返り、俯くアド君の目のすぐ目の前に移動する。
下から覗き込むようにして、じわりと欲の気配を纏わせた声音で呼びかけた。
「ね。アド君・・」
だらりと力無く垂れ下がっていた手を取り、指を絡めて問う。
「さっきから、なんかそわそわしてない?」
「い、いや。私は・・」
「玄関でキス、したから。意識しちゃった?」
訊きながら、絡めた指と指の間をつ・・と優しく爪でなぞると、「あっ」と小さく声が上がって肩が跳ねた・・
「ね・・私今、凄く。アド君を、構い倒したい気分、なんだけど・・」
「あ、・・ふ・・や・・」
語り掛けながら、絶えず指の間や手の平を淡く刺激し続け、空いていた手の方でもアド君の手を取り、指を絡めてきゅっと握る。
そうやって繋いだ両手を軽く引き、胸を押し付けるようにして密着した。
薄いTシャツ越しに、アド君の心臓が煩いくらいに暴れているのを感じる。
目の前の襟ぐりから覗く鎖骨に、ちろ・・と舌を這わせて。
「ね・・いい?」
有無を言わさぬ圧を持って、優しく同意を求め・・震える耳元で囁く。
「どろどろ にしても」
ひゅっと息を呑んだ音の後。
婚約者はぎこちなく・・でもしっかりと、頷いた。
〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇
ぎちっぎちっとベルトが軋む。
体温で温められた革と、汗の匂いが交じり華やいで。
消音の結界によって外と分かたれた空間に、艶を足した。
「ふっ。ん゛っ!あっ・・んんっ!!」
「こ~ら。声、我慢しないの」
ばぢっ!と弾ける音がして、喉奥で潰された悲鳴が上がる。
幅広いベルトの手錠で両手首を合わせるようにして拘束された青年は、その真ん中に紐を通して、ベッドボードに両腕を上げて固定されていた。
両足も。膝を畳んだ状態でベルトで固定されている。
故に。既にはち切れんばかりに立ち上がり、先走りを垂らし懇願している分身を隠す事は叶わない。
ベッドの上で前開きのシャツだけを申し訳程度に身に纏い、官能的な姿を晒している青年。
己の手で作り出したこの状況に興奮している自覚はあるものの、頼子は青年に気付かせる事無くただ楽し気に話し掛ける。
「こうするのも久々だから、かな?先走り凄いねぇ・・」
つつ、と。
先程打ち鳴らした乗馬用の鞭の先で、跳ね逃げようとする先端を捉え滑らせた。
「あっ、あ・・」
「本当に、赤い跡が似合う肌だね。白くて、きめ細かくって・・素敵」
体液で滑らせた先端で、今度はわき腹を下から撫で上げる。
「ひっあぁっ!」
「うん。やっぱりいいね・・君の声」
はっ、はっ。と弾むような呼吸に合わせ、赤い跡が散りばめられた胸が上下した。
官能的な光景に誘われて、指先を伸ばす。
たらたらと透明な体液を流し、期待に先端を膨らませ。
びくっびくと跳ね動く分身を放置したまま。
汗が薄っすらと滲む肌の上を。臍の上辺りからじり、じりと。
時間をかけて、つんと尖る右の先端を目指した。
青年にとって気が狂いそうな時が過ぎ。
漸く、丸い爪先が泡立つ輪郭に触れそうになった、瞬間。
意識の外にあった左側の先端、を。ぎゅうと押し潰されて「いぎぃっ!!」と濁った声を上げる。
ぎゅううと強く摘ままれた先端から生まれた痺れが、青年の腰の後ろをびりびりと擽るように刺激した。
腰の深いところに蓄積されていく快感に、堪らず身を捩る。
「胸。すっかり感じるようになっちゃって・・離れてる間も、ちゃんと弄ってたんだね・・」
ふふっと小さく笑った頼子が「可愛い」と続けると、青年は嬉し気に目尻を下げ、ぶるりと震えた。
「いい子には、ご褒美をあげないと。ね?」
赤くなった左の先端から指を離して、今度は優しく、円を描くようにくるくると輪郭をなぞる。
「あっあっ・・」
小さく声を零しながら青年が身を捩る度。ベッドがきしっと鳴いた。
熱の籠る息を吐き、与えられる刺激に耐える事数分。
突然するり、と胸が擽られて。青年は刺激に集中する為に閉じていた目を、開ける。
視線を下げると、黒髪を掻き上げた頼子と目が合った。
「舐めるとこ、見てて?」
告げられ、返事の代わりにごくりと喉を鳴らした青年は薄い唇から長い舌が現れ・・伸ばされる様子を、呼吸を忘れて凝視する。
最初に、暖かな呼気が触れて。
細長く尖った先端が、ざらりと泡立つ先端の際を、つっとなぞった。
「―――っ!!」
それだけで。
視界を埋め尽くす煽情的な場景と、触れられた肌から脳髄を直撃した快感だけで、青年の分身から白濁が飛び散る。
上下に跳ね動きながら、びゅくっびゅくっと断続的に吐き出された精は、青年の脚の間に収まっていた頼子の腹部にべっとりと跡を残した。
あまりの快感に、喉奥で張りつめさせていた息を吐いた瞬間。
吐精しても尚固い分身をぎちりと握られ、「あぎっ!!」とくぐもった悲鳴を上げる。
「・・ねぇ」
低い。その最初の一言を耳にして。
青年の背筋を恐怖と快感を綯い交ぜにした感覚が、ぞわぞわと駆け上がった。
「私。まだ許可を出してないけど?」
耳元で囁かれ、強く根本を握られたまま。絶頂後で敏感な先端を包み擦られる。
「ぎっ?!あ゛っ!あ゛っ!」
強すぎる刺激から逃れようにも、拘束された脚の間には頼子が居り、両手の間から伸びた紐はピンと張って腕を下げる事も出来ない。
柔らかな手の平が、出したばかりの体液を絡めてぐちゅぐちゅと容赦なく先端を攻め立てる。
「ひいっ!あ゛いっ!あ゛っ!あぐっ!ぎいっ!」
精は潤滑剤には向かず、肌を滑る感覚はぎゅちっぎゅちっと強い物になっていた。
それでも、頼子の手は上下に動く事を止めない。
「辛い?でも、悪い子にはお仕置きが必要。ね?」
「あ゛っ!や、あ゛あっ!ごめ、んなさっ!あ゛っ!」
「何を謝ってるの?ちゃんと理由も言ってくれないと、分からないよ?」
会話する間も、絶えずぎちぎちと刺激は続く。
青年はぼろりと涙を零しながら、悲鳴の合間に許しを請うた。
「あ゛っ!勝手に、イって、ごめんなさ、いっ!ごめんなさいぃっ!」
「・・うん。ちゃんと言えたね。いい子」
「あ゛ぎゅっ?!」
一際強い刺激を最後に与えられ、青年は漸く拷問じみた悦楽の奔流から解放される。
しかし、くたりと脱力する青年を見る頼子の目には、ちろちろと鈍く光る欲が依然灯ったまま。
どうやら真なる開放は、まだ遠い。
最後までお読みいただきありがとうございました。
次回の更新は月曜日の予定です。