※この作品はR-18です。

鏡の国の変態王子様 ~アラサーオタクな私の鏡。繋がった先は異世界でした~   作:もすもす。

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お待たせしました。
こちらは二話同時投稿の一話目です。


【47】知らぬ間に不義理をやらかしてるとか凹む。ちょ。聞いてないよ~・・

 

持参した飲み物が入ったグラスを持ち上げ「どこか変か?」と首を傾げる青年に、頼子は少し慌てて抱いた感想の説明を始めた。

 

「いやいやごめんね?こっちだとこんな青色が出る果実は・・知らないだけで実際にはあるかもしれないけど、見た事なかったからちょっと驚いただけ!飲んでみたらすっごい美味しいから、本当にビックリしちゃった!」

「そうか。世界が違えばそういう事もあるか」

「それにさ!こうしてみるとキレイだよねぇ・・涼し気で夏にピッタリ!」

 

グラスをひょいと掲げて、窓からの光に透かし見る。

そうすると、ほんのり薄く結露したガラス越しに透き通った青が、夏の高い空の色なのに気が付いた。

 

「・・この色好きだなぁ。アド君と同(おんな)じ・・」

 

思わずといった感じでぽろりと零れた言葉の後、急に青年が「げほげほっ!」と激しく咳き込み出して驚く。

 

「えぇ?!だ、大丈夫?咽た?!気管に入っちゃった?!」

「げほっ、ぐっ、だい、じょ、げほげほっ!」

 

手の平をこちらに向け、反対の手で口元を隠した青年は暫しの間咳き込み、グラスを勢いよく呷ってようやく落ち着きを取り戻した。

 

「ん゛、んっ!・・失礼した」

「や、全然良いけど、大丈夫?苦手な味でもあったかな?」

「いや、どの品も素晴らしく美味だ。少々咽ただけだから、どうか気にしないでくれ」

「そ?なら良いけど・・」

 

赤い顔で「問題ない」と言われ、渋々頷く。

 

でもやはり心配だ。咽ると苦しいもんね。耳まで真っ赤だし。

 

空になったグラスに自分でお代わりを注いで、青年は焦った様に「と、ところで体調はどうだ?」と質問してきた。

 

「ん?寝不足気味なこと以外は、特には?・・あ、改めて。昨日・・もう一昨日か。ありがとうね?助けてくれて」

 

体調に意識を向けると、連鎖的に怪我と青年に助けられた事が脳裏を過ぎり、咄嗟にお礼の言葉が口を衝いて出る。

グラスを持ったまま、一瞬きょとんとした青年は苦笑気味に唇の端を持ち上げて「言ったろう?気にするな」と言って果実水を口にした。

 

「それに、助けたのは私一人の力ではない。あの時は兄二人と姉も一緒だったからな」

 

「私だけでは、ああ上手く行ったかどうか・・」と少し肩を落とす青年に、頼子は慌てて訊ねる。

 

「へ?ちょい待ち。私ってばお兄さんたちにまでご迷惑を?」

「どうしてそうなる・・確かに、回復薬を譲ってくれたりと色々協力してもらったが、別に迷惑でも何でもない・・と思うぞ?私と同じで、咄嗟の行動だ」

 

おぉぅ、マジか・・ナンテコッタイ・・

 

突然知らされた事実に、行儀悪くも頭を抱えて鏡台に肘を付いた頼子はじわりと背中に汗を掻きつつ脳内で荒ぶる。

 

あ、アカーン!

どどど、どうしよう?

友だちのご家族にまでお世話になっていたとはっ!

 

え?こんな場合どうしたら良いの?!

何処の板で相談したら良いかな!?

知らなかったとはいえ、お礼を伝えるのに時間経ちスギィ・・

 

あ~、う゛~、・・・よし。

 

ぐるぐると考えあぐね、一周回って腹を括った頼子はすっと身を起こし、何事かと心配そうにしていた青年に真剣そのものの様子で言った。

 

「アド君。帰る時にお礼の品を預けますので、お兄さんたちに渡してもらっても良いですか?」

「あ、あぁ。だが、何故そんな反応になる・・?」

「いや、後ろめたさというか、申し訳なさが半端ないんで・・せめて良い物を贈らせて頂きたいです・・」

「?・・よく解らんが・・分かった」

 

青年は小首を傾げつつ、こくりと頷く。

 

仲の良い(誰にも言えないアレやコレを致した)友だちに世話になっただけでなく、そのご家族にまで良くしてもらっていたとは・・

羞恥心というか罪悪感というか・・申し訳ないという思いに色々な感情が混ざってグルグルしている。説明が難しい・・

 

ナンというか、今すぐ地面に埋まって「ごめんなさいっ!」て叫びたい・・

 

「・・昨日食べた苺のタルトとか、喜んでもらえると思う?」

「あの赤い実が乗った菓子か?喜ぶと思うぞ!凄く美味かったからな!」

「おっけー。したら早速注文しとこ。お昼までには届くでしょ」

 

善は急げとスマホを取り出し、出前アプリを立ち上げる。

スイーツのページまで進んで『そういえば冷蔵物の扱いは大丈夫かな?』と気になって訊いてみた。

 

「昨日のお菓子、食べる直前まで冷やして保管しないといけないんだけど大丈夫?」

「成程、そういえば冷たかったな・・「問題ない」と言いたいところだが、そちらの事は大っぴらには出来んからな」

 

「このくらいの大きさまでなら保管できる」と手でおおよそのサイズを示す青年。

ふむ。と一つ頷いて席を立ち、冷蔵庫に仕舞ってあるタルトの入った箱を取り出して見せた。

 

「この大きさだとどうかな?」

「それだと少々大きすぎるな・・」

「そっか了解。じゃあサイズを小さくするか別の品にしますかな・・」

 

箱を仕舞って、シャシャっとスマホの画面を流す。

少し悩み「これなんかどう?」とプチケーキ4個つ詰め合わせの商品画像を開いて画面を青年に向けた。

 

内容はピンク色したマカロンと苺のタルト。白い生クリームケーキとツヤっとした生チョコのケーキ。

 

「あぁ。良いのではないか?見た目も華やかで美味しそうだ」

「大きさは、まぁ、こんくらい?かな?」

 

先程青年がしてくれたように、自分も大体の大きさを手で示して「これを1人一箱で3つ。いけるかな?」と首を傾げてみた。

「それなら大丈夫だ」と頷いてもらえたので「んじゃ」と購入ボタンをぽちぽちぽち。

 

「よし。購入完了っと。後は待つだけで届きます!」

 

これにて一先ずは安心。と、食事を再開。

 

あー・・。すっかりパンが冷めちゃってら・・くすん。

 

もう一度温め直すかなぁ・・とか考えていたところで青年が眉根を寄せて言った。

 

「・・・本当にそれで買い物が出来るのだな。何をどうやっているのか解らんが・・支払いは?届いた時にするのか?それとも後で纏めて払うような感じか?」

「基本受け取る時かな?あー。でもクレジットは月払いか。ま、都合によりけりだよ」

「そう、か・・便利なものだな」

「ほんそれな~有難いわ」

 

疑問を解消しきれなかっただろうに、首を傾げつつ「便利なもの」とだけ理解するに留め、詳しく聞こうとしない青年の気遣いが嬉しい。

詳しく説明しても良いのだけど、ぶっちゃけ面倒くさいので有難くそのままスルーさせてもらう。

 

それからは食材について時折質問などされながら、美味い美味いとお互い食事に集中した。

 

 

〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇・〇

 

 

彼女の用意する食事は、どれもこれも本当に美味いものばかりだ。

 

苦い筈の野菜は勿論、加工された肉はどれも歯応え良く、程よい塩味の美味い油が美味で箸が止まらない。

魚の切り身を焼いた物も、箸だけでほろりと崩れる柔らかさで、口に含めばバターと魚の油が舌で踊り、目が覚めるような美味さだった。

意外だったのが、カリっとした皮部分が一番おいしいと感じた事だ。

そして、卵を炒めただけの物が何故こうも美味いのか。

つぶつぶとした黄色い実らしきものはほんのりとした甘みと食感が面白い。

何種類もの野菜が入っているスープは前に食べた物と似ていたが、具材が違うだけでこうも印象が変わるかと驚いた。勿論美味しくてお代わりした。

2種類あったパンは触感は違えども、どちらともふわっと軽くバターの旨味と香りが楽しい。

「たくさんあるから」と、これも満足いくまで追加してもらった。

お陰で満腹だ。

 

差し入れた果実水は気に入ってくれたようで、とても嬉しかった。

しかし、まさかあのような・・

 

急に「好きだ」などと言われて、激しく動揺してしまった。

 

あれを事前に予測しろというのは無茶だろう!

 

いや、他意が無いのは明白であったのだが、相手の色を褒めるのは好意を表す常套句であって・・動揺するなというのは無理な話だったのだ。

 

私も、いつか「アヤの髪は、星煌めく夜空の様で好きだぞ」と言ってみたい・・

近いうちに機会が巡って来るのを期待・・しても、良いだろうか?

 

直接あの艶やかな髪に触れ、唇を寄せて愛を囁きたい。

 

その為にも。

隣国の遺跡で何としても転移陣の情報を得なければ。

 

私は固い決意を胸に、彼女が教えてくれる「風」についての知識を「のーと」にしたためた。

 

 

 

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