※この作品はR-18です。

鏡の国の変態王子様 ~アラサーオタクな私の鏡。繋がった先は異世界でした~   作:もすもす。

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こちらは二話同時投稿の二話目です。


【92】暫しのお別れに、ちょびっとしんみり・・

 

鏡を挟んで向かい合い、縁側で日向ぼっこする老夫婦よろしく暑い季節だというのに温かい飲み物を一緒に啜る。

 

う~ん。このチープな感じがたまりませんなぁ。うまうま。

あとクーラーばんざい。

 

『レトルト最高』と便利な発明品と開発者に感謝を捧げたところで「あ、そうだ」と思い出した事を口にする。

 

「これと同じやつを食料と一緒にジャスパーさんに渡してあるから、旅の途中でも飲めると思うよ~他にも幾つか種類もあるからね」

「ほう?それは道中楽しみだ」

 

嬉しそうに微笑む青年の様子にこちらも嬉しくなって、胸がほっこりする。

渡した諸々の道具や食料が、旅する主従の役に立ってくれそうで何よりだ。

 

「もう明日出発するんだっけ?」

「あぁ・・帰りは一月半後を予定にしているが・・伸びることはあっても、短くはならんだろうな」

「そんなに?長いねぇ。移動は馬車とかで?」

「いや、草食の劣竜種(レッサードラゴン)が引く幌付き荷車が主だと聞く。後は鳥馬(シュトラオス)か徒歩だな」

「・・鳥馬ってどんな?」

「鞍を乗せ、人が乗って御する大型の鳥だ」

 

お、おぅ。チョ〇ボですね。分かります。もしくはナウ〇カのトリ〇マ。

 

「ちょっと見てみたいカモ・・「デジカメ」貸したら撮って来てくれたりする?」

 

ん?思い付きをそのまま口にしちゃったけど、これ良い案じゃね?ついでにあっちの色々な風景を撮ってもらえたら作品の資料になるかもだし!

 

「「でじかめ」・・「かめら」と似たような道具か?」

「そうそう!「スマホ」の「写真」を撮る機能だけを使えるようにした道具って感じかな?ちょっと古いヤツだけど十分使えるはず!」

 

空のSDカードを何枚か一緒に持ってってもらえば、結構な枚数が撮れるんじゃない?

確か防災バッグにソーラーバッテリーがあった筈・・なら充電も問題なし!

 

「お願いしてもいいかな?余計な荷物だろうから無理にとは言わないけど」

 

顎を持つように指を添えた青年は暫し考え「分かった」と了承して頷いた。

 

「ただ、その「でじかめ」を遺跡の調査に使っても良いだろうか?作業効率が上がりそうだ」

「やった!勿論良いよ!たくさん撮れるように準備するから、鳥馬以外も撮って来てくれると嬉しいなっ!」

「引き受けた。アヤが街中の「しゃしん」を見せてくれたように、私も色々写してくるとしよう」

「よっし!んじゃ早速準備するね!」

 

軽くデジカメを充電して操作を教え、バッテリーとSDカードの交換の仕方なんかをレクチャー。

ソーラーバッテリーの繋ぎ方やその他もろもろのやり方を教えて、お試しに何枚か撮ってみる。

 

「どう?大丈夫そう?」

「あぁ。大体理解した。使い方も「のーと」に控えたからな。後でジャスとも共有しておこう」

 

「2人で仕様が分かっていれば何かあっても対処できる」と言う青年に「そだね」と同意したところで、話に出た傍使えさんと親友の件を思い出した。

 

「そういえばさ、昨日ちょっと話したけどアド君から見てジャスパーさんとアキってどう思う?」

「あぁ、2人の件か・・昨日言った通り、やはりそれぞれの気持ち次第だろうな。昨晩はなかなかに良い雰囲気だったと思うが」

「だよねっ!いやさぁ、アキにはたくさん迷惑かけてきたからさ。幸せになって欲しいのよ・・勝手にそう思ってるだけだけど・・」

 

同人関係のイベントは勿論、ストーカーの件でもたくさん、本当にたくさん迷惑を掛けたし、世話にもなったのだ。

なったというか、現在進行形で税金やら金貨の換金やらお金関係でも色々と頼りっぱなしである。

 

『あれ?アキが居ないと私、生きてけないんじゃね?』

 

常日頃の己の行動を思い起こし・・直ぐに結論が出る。

 

駄目カモね・・てへり。

 

情けない話だが、出来れば末永く今と変わらぬ友人付き合いをお願いしたいところだ。

損得を抜きにしても、こんなに自分に良くしてくれる大事な親友の幸せを願うのは当然の流れで、人情というものだろう。

 

ただ、押し付けは良くない。

良かれと思った事でも、本人が不快なら本末転倒も甚だしい・・難しい事だ。

 

「・・似た者同士だな」

「ん?なんて?」

「いや、何でもない」

 

『加減がなぁ・・』と、如何にすれば親友に幸せを引き寄せられるかと思案していたところで、青年が何やら小さく呟いたようだが気が逸れていて聞き逃してしまった。

 

「何でもない」と言ってるし、まぁいっか。

 

「アキは周囲に居る人に恋愛感情が湧かないみたいで、時々「自分は一生恋愛とは無縁かも」とか言ってんだよね「二次元に行きたい」が口癖だし・・だからジャスパーさんにあんなに分かりやすく興味示してるの見て、なんか嬉しかったんだ・・お節介かもしれないけど、アキが本気になったら応援したいと思ってる」

 

親友の恋模様に全くワクワクしないといったら嘘になるけど、決して興味本位で言っている訳ではない。

ただ親友の幸せを願っているだけだ。

 

「気持ち次第とは言ったが、ジャスの方から動く事はまず無いだろうと思う。と言うのも彼は少し厄介な「体質」を抱えていてな・・アキ殿がそれを知ってどう感じ、動くかが重要になってくるのではないかと思う」

「そっかぁ。ま、暫くは様子見かな?周りがあーだこーだと言うもんじゃないしね」

「あぁ。とは言っても、明日から旅に出るのだから進展も何も、変わりようが無いがな」

「そだね。帰ってきてからの話だね・・」

 

そうだ。青年と傍仕えさんには、暫く会えないのだった・・

 

分かっていた筈なのに、急に「会えない」という現実が重く伸し掛かって来て、猛烈な寂しさに襲われる。

 

こうして顔を見て話す事も、一緒にご飯を食べたり、お茶をすることも出来ない・・

たった数週間の短い期間にも関わらず、いつの間にか青年と過ごすひと時が当たり前になっていた・・そんな楽しい時間が失われるのは、酷く辛い。

 

「ね・・アド君。気を付けてね?怪我とかなるべくしないように・・無事に帰って来てね?」

 

青年を心配する気持ちが、するりと口を突いて出る。

 

余程不安そうな顔をしていたのか、青年は少し驚いた様子の後ふっと柔らかく微笑んで、安心させるように「大丈夫だ」と力の籠った目で頷いてくれた。

 

「時間はかかろうとも、必ず帰ると誓おう。絶対に、今こうして話しているように、アヤの元へ戻ると」

 

握った左拳を胸に当て、真剣な瞳が真っすぐにこちらを見つめて来る。

金の縁取りに、煌めくような夏の青が何だか眩しい。

 

こちらに向けて押し当てられた右の手の平に、何かに導かれるようにして自然と自分の手を重ね当てた。

 

鏡越しに、仄かな熱を共有する。

 

「・・いってらっしゃい・・本当に、気を付けて」

「あぁ、行ってくる。待っていてくれ、必ず戻る・・土産を持ってな」

「ふふっ・・うん。待ってるよ」

 

 

何度目かの再会の約束を交わして、4人で撮った昨日の写真を受け取った青年は鏡の前から離れて行ってしまった。

 

青年を見送り一人になると、少しの間ぼーっと月を見上げる。

ふと時計に目を向ければ、なんと2時近い・・

随分と長い間話し込んでいたのだと驚いて、慌てて作業机に戻った。

 

ゲーミングチェアを引いて座ると、視界に入ったモニター横に置かれた封筒に目が留まる。

中には親友の分と自分の分の写真が入っていて、何となく1枚取り出し改めて眺めた。

 

真ん中でこちらとあちらに分かれている、ちょっと不思議な集合写真。

 

珍しくお洒落な恰好をしている自分と、綺麗にドレスアップした親友。

そして白い詰襟のいつもの堅苦しそうな服をカッコよく着こなす青年と、一分の隙なく完璧な執事といった風の傍仕えさん。

 

傍仕えさんはほんのり口角の上がった笑みを浮かべ、他の3人はそれぞれ楽しそうに笑っている。

全員、とっても良い表情(かお)だ。

 

『意外と自分の見てくれもそんなに悪くないのでは?』と思えるくらいには、イイ感じに撮れている。

 

青年とのツーショット写真を張った作業机の前の壁。その隣に、手元の集合写真も両面テープで張り付けた。

 

ゲーミングチェアに座り、それらの写真を眺めていると何だか『もう少し頑張ろう』という気になって、スリープしていた液タブを起動して作業を再開する。

 

結局、寝たのは4時近くになってからだった。

 

 

 




最後までお読みいただきありがとうございました。
次回の更新は金曜日です。
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