FGOエロ小説まとめ 作:お一
宮本武蔵。
本名は新免武蔵晴信。岡山県、または兵庫県に生まれ、父は新免無二斎。早くから生母は父を見放して、武蔵は狂人のような父の下で育った。楊枝を削る手つきを子供に笑われたくらいで、短刀を投げる父親など狂人という他ない。
生来の天才であった。
天才、という華麗な言葉のイメージとは離れているだろうが、僅か十三歳で初めての真剣勝負を演じ、相手を無惨なまでに叩き殺して、村に居づらくなって出奔した。
宮本武蔵が天才であることの最も有力な証拠は、その流儀である。二天一流というこの流儀は、実際の兵法としてはあまり流行しなかった。
同時代の伊藤一刀斎が考案した一刀流、塚原卜伝、上泉信綱を源流とする新陰流が後世にどれほどの影響を与えたかということに比べれば、哀れなほどに伝わり切らない。
それは、武蔵の剣は武蔵の才によってのみ可能な、天才の剣であったからだ。
思えば、生涯に一つの負けもなしという生涯も、宮本武蔵の才によって支えられている。それを教えとして、五輪書などが残っているものの、その言葉の大抵が、
「それが出来れば苦労はしない」
というようなもので、真理ではあるがいつでも実現できる者は天才以外ないであろう。
カルデアと知り合い、友人と協力者を兼ねる彼女は、同じ名前ではあるものの才や技量は同じだろうか。
「そんな偉い人と比べられてもねえ・・・・・・」
人類史の宮本武蔵を語って聞かせると、武蔵ちゃんは困った顔で笑った。
宮本武蔵の名が歴史に燦然とした名を輝かせるのは、剣術史ばかりではない。いや、むしろ剣術史としての名は然程でもあるまい。
北辰一刀流を開き、それ以前の剣術を一新して現代剣道の基礎を築いた千葉周作と比べれば架空の人物のように空想の観が強い。宮本武蔵の名は芸術で輝いている。
二天、という号で後世に残された絵画や彫刻は、日本史の芸術において押しも押されもせぬ勇名を発し、数多の芸術家に影響を与え好事家を魅了した。
「え、これを・・・・・・? こわ・・・・・・」
カルデアのライブラリで二天の作を見た武蔵は、その出来に思わず引いた様子でそう呟いた。
三十を手前に勝負を受けなくなった宮本武蔵は、己の剣をより深く理解するために後援者も多い奈良へ渡り、そこで仏教の影響を受けた。といって、別に宗教家でも思想家にでもなったわけではないようである。
剣とは、ある境地に達すると神秘性を伴う思考法によって新たな境地を開くものらしい。カルデアでは柳生但馬がそうである。彼の場合は禅であり、禅に傾倒することによって独自の境地を開き、その剣はかつて下総で武蔵と交わった。
こういったものは体質であるらしい。現に、千葉周作は仏教にも禅にも触れなかった。
カルデアと縁を結んだ武蔵も、仏教は体質に適うようだが、自ら芸術を創始するほどではないようだ。
剣を突き詰めた結果、自らの起源に迫ろうとする天元の花は、今カルデアと共に在ることを選んだ。
それは人類史の宮本武蔵が奈良へ渡り、後に全国を歩き、最終的に九州に腰を落ち着けたのと同じようなものかもしれない。
宮本武蔵は九州の細川氏に愛されて、そこで晩年を過ごした。生涯、女を近づけることがなかったという。
武蔵が立香を愛したのは、恋愛経験の乏しい武蔵にとっては、細川忠利が宮本武蔵を評価し、その評価に感動して敬愛したものと同種のものであったのかもしれない。
そのことは、体を重ねた後も判然としない。
「ねえ、マスター」
マスター、と武蔵は呼ぶ。
それは恋人である前に主従であるという証左。剣に狂う天才を、仲間として必要としてくれた証でもある。
もしこの少年と出会わなければ。カルデアに触れることなく生涯を終えたなら。
天元の花はこれほどに美しくあれただろうか。空へ至るという確信は得られたか。その空を以て何を為すのかまで、考えられたのか。
恋にも愛にも初心な二人が、寝台の上で過ごす夜は他人から見ればままごとであったかもしれない。それでも幸福だった。戦いの日々の中で二人で営む幸せなひと時が、明日を生きる力をくれる。
それが、なんという不覚か。
不明と言えばこれ以上の不明はない。
武蔵にとって自分の剣と身以上に大切なものを持った経験がないという不明。武蔵が戦って不覚を取る相手などいくらも居ないが、戦って下すばかりが勝負ではない。
他人を気遣う戦いに不慣れな武蔵が、おそらくはその生涯で最大の不覚を取った。立香の喉元に突き付けられた匕首によって、武蔵は両の刀を捨てた。
「よしよし、いいぞ」
思えば、奇妙な敵だった。
普段であればなんのことはない敵性体を、ワイバーンやゴブリンやウェアウルフなどに指示を与え、あろうことか敵性体がその指示を実行して追い詰めてきた。
しかも個々の強さは個体差で済むが、洗脳でもされたように全体の動きが統率されて、つい武蔵は自分の周りの敵の排除に意識を傾けてしまった。
その意識の傾斜を見逃さず、将棋のようにして玉に迫られてしまった。
でっぷりとした中年男の前に、丸腰で引き立てられた屈辱を、武蔵は生涯忘れまい。
「おっとそこだ。そこから近づくな」
複数のゴブリンに、それぞれ違う角度から得物を押し当てて、立香を先に立たせる。武蔵はその後から、それぞれ違う種族で囲って歩かせる。武蔵に対してはむしろ得物を持つ手は外側を徹底させ、反撃の機を失わしめている。
しかも、立香はそのまま歩かせて、武蔵は距離を取って対面した。用心深さとあまりにも合理的な思考に武蔵は舌を巻いた。
(このくらい思慮が深ければ、不覚も取る)
言い訳でも慰めでもなく、この中年男の手管にそう思った。
「見たところ、あんたらデキてるよな。男は殺してもいいが、そうされたくはないだろ。ならどうしたらいいか。処女でもだいたい判るよな? 判らなければそれでもいいよ。教えてあげるだけさ」
立香の姿が視界から消えてしまえばアウトである。
姿さえ見えていれば、なにか行動を起こす前に仕掛けられるかもしれない。しかし見えなくなっては、どんな手配りをしているかどんな配置の場所に連れて行かれたか、それすらも判らなくなる。
兵法者としての合理的な思考が武蔵を焦らせる。
そんなこと、男は最初から承知しているのだろう。だから立香だけを先行させて、止まっている一団を置いて連れ去っているのだ。
「俺なりの優しさでもあるんだ。感謝して欲しいね。それとも彼氏に見られながらがお好みだった?」
のらりくらり、立香の背が見えなくなるまで時間を稼いでいる。立香を連行する一団も、決して速度を変えたりしない。隙が、ない。
「下帯を解いてもらおうか」
「え・・・・・・?」
奥の木々に、それらが作る影に、立香の背中が消えていく。それを見届ける前に、自分に突き付けられた要求に思わず問い返した。
「ゆっくりだ。裾に手を入れて自分で解く。できるな?」
敵が武蔵から距離を取る。
これは好機だろうか。動き出しを、従順に従うふりに晦ませれば反撃は出来るかもしれない。この男を縊り殺すくらいは素手でも出来る。丸腰でも、武蔵の逃げ足ならエネミーからの追撃を振り切れるかもしれない。
しかしもし、この男の指示や統率が途絶え、エネミーが自由になれば。虜の立香など夕食になるか、暇つぶしに生きたまま解体されるだけのことだろう。一瞬脳裏に、立香の惨殺体が浮かんで抵抗の可能性を打ち消した。
言われた通り、短い裾の中に手を入れ、両足の付け根で結ばれた下帯の結びを解く。
ぱさ、と草の上に白い布が落ちた。
「拾うなよ。そのままだ」
「く・・・・・・!」
かつて、これほどの屈辱があっただろうか。
女の身なれど剣士故に下帯を穿き、敗北は死を必定とした勝負を潜り抜けること五十数度。剣のみに生きていずれ空を知り、「」に至ることを目的とした武蔵の人生に、こんな、暴漢に襲われる町娘のような瞬間がこようとは。
「じゃあ順番に脱いでもらおうか。ゆっくりとな」
そう来るだろうと思っていた。武蔵は逆らわずに真っ赤な帯を解いた。
武蔵だけの特徴でもないが、戦国期の兵法者はその道の草創であるが故に、勝負や生死というものに非常に単純苛烈であった。
美学はない。生き残った者が勝ちであり、負けた者は死んだ者。屈辱を与えられたがために死を選んだりはしない。最終的に勝てば良い。そのための屈辱や辛酸など、死なぬためなら幾度でも呑み込める。
そういうシビアな死生観に生きる武蔵は、このあと自分がどうなるかも充分に予見しながら、着物の前をはだけた。
「おお・・・・・・」
冷静だった中年男も、さすがに目を奪われた。
ふっくらとした丸みを見せる胸の膨らみ。喉元から臍まで露わになった白い肌は、剣士のものとは思われぬほどに白く、無垢であった。
戦闘の名残りか、それとも消え去ってしまいたいほどの恥辱のためか、うっすらと汗ばんだ肌は着物の中で香気を蒸して、開かれると共に武蔵の体臭を立ち上らせる。
女の匂いに、取り囲むエネミーも反応した。
「・・・・・・っ」
「心配するな。俺が許可しない限りこいつらはおまえに襲い掛かったりはしない。そういう決まり事だからな。今のところの予定は、愉しむのは俺だけさ」
醜悪で奇怪な人外共に、生殺与奪を握られて嬲りものにされるよりはマシだろうか。単に感性の面でも、生存の機という意味でも。
「さ、その手甲も脚絆も外してもらおうか」
やはり油断のない男である。脚絆の中に予備の小柄を忍ばせていることに気づいたわけでもないだろうが、抵抗の機会を奪うことに余念がない。
言われた通りに手足の素肌を晒し、最後に着物の袖を抜いた。
紺に染め抜いた着物が落ちる。
生まれたままの武蔵が、陽の光の下に晒された。
「いい体だ。あんまり男を知らんと見える」
下衆な笑いが、武蔵の自尊心を傷つける。
震えているのは恐怖ではない。羞恥と屈辱のための、抑えられない怒りだが、裸に剥かれた女の震えとは哀れでしかない。とても、剣豪の所作ではない。
この瞬間、震えた瞬間に武蔵は剣士ではなく女に堕ちたというべきだろう。そのことが、武蔵にも判った。
「跪け」
「っ・・・・・・どこまで・・・・・・!」
だから、剣士の武蔵であれば従ったであろう命令にも、抗議したくなる。
「俺が二度、同じことを言ったら連れの悲鳴が聞こえるぞ。決めておくか? 二回目にあの男のどこを切り落として欲しいか。最初は決めてあるんだ。次に逆らったら贈り物をしてやるよ。あいつの血まみれのチンポをな」
草の上に膝をつく。だけでは許されず、頭を下げさせられた。手をついて、膝を畳んで、背中を折る。
白昼に陽の光の下で、全裸土下座を強要された。
「なかなかいい眺めだ」
一度、女のものへと切り替わってしまった意識は容易には戻らない。立香と結ばれる前であれば、この土下座も屈辱とは思わなかったろう。従順にこの場を収め、反撃の機を狙えただろうが、今の暴力に屈服した女に過ぎない。
白い肌を全て晒し、小さな尻を足の裏に乗せ、束ねた髪を差し出すように。
特等席で眺めると、これほど痛快な景色もない。
意外にも薄い背中の、左の肩甲骨の傍にほくろがあることは、武蔵本人も知るまい。豊かな乳房が膝と地面に圧迫されて、柔らかそうに歪んでいるのも見える。罪人が斬首の時を待つように差し出されたうなじの、なんと艶めかしいものか。
が、相手は武芸者である。身を自由に使える外では、なにを狙っているか判らない。この優越感に溺れず、武蔵の心に屈辱を刻み込むに留める。
「逆らった相手を生かすんだから、当然感謝してもらわなきゃならん。負けた者が勝った者に慈悲を乞うのは、当たり前のことだと思わんかね?」
「は、い・・・・・・」
目の前が赤くなるほどの、視界いっぱいの草が血に濡れたように赤く思えるほどの怒りを奥歯で噛み殺す。
「この、たびは・・・・・・身の程も弁えず・・・・・・お手を煩わせてしまい、申し訳・・・・・・ございません、でした・・・・・・わたし、新免武蔵守玄信は・・・・・・降参、します・・・・・・」
喉から搾り出すようにして、敗北宣言を終えた。
「うんうん、事実を正しく言えたな。まあ子供でも出来るが。それで、負けたおまえはどうして欲しいんだ?」
武蔵の頭では、ここまでは予想できなかった。これほどまでに、敗者を貶める者がこの世にあるのか。
「・・・・・・わたし、と・・・・・・彼の身を、助けて・・・・・・ください・・・・・・」
「うん? 負けたのに? なんて言った? まさか兵法に生きる者が、如何に女だからといって勝った相手になにを求めたんだ?」
「・・・・・・っ!」
悔しさのあまり、唇を噛み切って血が落ちた。それでも、武蔵は続けた。
「どう、か・・・・・・ころさないで、くだ・・・・・・さい・・・・・・なんでも、しますから・・・・・・」
これは、誰の言葉だろうか。思わずそう自分に問いかけたほど、情けない口上だった。
が、言葉には不思議な力がある。このように宣言させられることで、昨日までの優しくあたたかな時間が永遠に過ぎ去ったことを、武蔵は心の中で理解した。
「なんでもか。なんでもしてくれるのなら許してやるか。明日以降、命があるのは俺の慈悲のおかげだと、坊主が経文を念じるように思うんだな」
男が近づいてくる。
もうこうなれば、頭を踏まれようと足を舐めさせられようと構わない。この屈辱に堕ちきってしまえば、その中から生まれる敵愾心と復讐心でこの先も耐えられる筈だ。
そう思った時、男は武蔵の手を取って立ち上がらせた。
「・・・・・・?」
この場で股を開かされることをも覚悟していた武蔵には、意外な行動だった。
「もう着てもいい。帯も、気が済むくらい結んでおけ。おまえは敗者として取るべき行動を取った。胸を張れ。おまえが負けながらも掴んだ明日だ」
脱ぎ捨てられた着物も、帯も手甲脚絆、下帯までも拾って武蔵に渡してやる。
混乱している武蔵に、男はさっさと背を向けた。
「さて、砦に案内しよう。今日から虜囚だ。いつまで生かされるかはこちらの機嫌次第。今日の気持ちで、明日をつかみ取れ」
男の人物像を測りかねたがついていく。どうにかして、この男の裏をかいて立香と脱出しなければならない。
出来るだろうか。背中についていき、辿り着いた砦を見た瞬間、不安が広がった。
元は、近くの間道を見張る陣屋だったのだろう。それを必要に応じて修繕、補修した結果、粗末ではあるが砦になったものと思われる。
主な建材は、森の中だけあって木材らしい。しかし内部の構造は人が使うためのものにはなっていない。ワイバーンやゴブリンに合わせて建てればダンジョンじみてくる。その真ん中の二階建ての家屋に案内された。
傍に、塔がある。石で造った塔の中に井戸があり、牢があるということだった。立香はここに閉じ込められている。
「知ってるだろうが、牢屋ってのは長く生きられるようには作ってない。牢番も、飽きたらメシを運ぶことも忘れるかもしれん。せいぜい頑張ることだ」
武蔵は、砦内の南東の端で暮らす。そこは、捕まえてきた動物を閉じ込めるための檻があり、錠を下ろせば熊でも出られない。
「つらければ逃げてもいい。身一つなら出来るだろう。だが檻が空になった瞬間に小僧は殺す」
武蔵ならば、砦のエネミーを全て切り伏せて立香を救うことは可能だろう。しかし、立香にどんな仕掛けをされているか判らない。この男なら、牢の場所さえ嘘の可能性もある。
檻の傍には常に見張りが立っているから、居なくなればすぐに判る。救うまでの時間で立香の首が飛ぶのであれば意味がない。
「ま、明日からの心配は寝る前にするがいい。今日は役目がある」
真ん中の家屋に男と入る。
木造の粗末な家屋の二階に、寝床がある。家屋の武骨な造りに反して、寝具はかなり出来がいい。綿を詰めた絹の布団で、布団の下には藁を敷き詰めてある。
「着物を脱いでそこへ寝ろ。うつ伏せでな」
野っぱらで獣のように犯されるよりはマシだ。武蔵は従順に裸になり、横になった。
「ふむ・・・・・・」
と、布団の中心でうつ伏せになった武蔵の傍に座り、その背中にぺたりと手を置いた。
大きな手だった。汗を掻いているらしい生暖かい手が、背の真ん中に押し当てられて動かない。
「・・・・・・?」
てっきり、このまま犯されるのだと思っていた。そのための覚悟も、道中でしてきた。恋人に抱かれた綺麗な体が、取り返しのつかない汚濁と傷にまみれることをも覚悟した。
もしかしたら、二目と見られない無残な弄ばれ方をするかもしれない。生殺与奪を握られるとはそういうことだ。それでも二人に命があればいい。そこまで覚悟した武蔵にとって、肩透かしだった。
「いい体だ」
「・・・・・・どうも」
男の熱が、背中に伝わって広がっていくような。
外気に晒される肌に、不快ではない熱だった。
それから、小一時間もそうしていただろうか。背中に乗った男の手の感触が、不自然に感じなくなってきた頃、男は口を開いた。
「緊張は解けたか?」
「は・・・・・・?」
そういえば、全身の筋肉がの硬直が解けていた。
「女を好き勝手に弄んで楽しいのは最初のうちだけだ。結局、お互いに楽しむのが一番いい。そもそも濡れてないと突っ込んでもいまいちだからな。おまえの準備が出来なければ、今日はこれだけで済ませてもいい」
つかみどころのない男だと、武蔵は思わざるを得ない。
優しさではないのだろう。男の言葉も本心なのだろうが、女という生き物に対していたわりがなければ、そんな発想も浮かばない。
全裸の土下座を強要しながら、自ら手を取って立たせ、ここで脱ぐというのにわざわざ着物を着させ、よく判らないことが多い。
(ダメダメ、こんなことじゃ)
武蔵は己を りつける。
男について理解しようという思考は、男に寄った姿勢である。不可解なら、今は不可解なままにしておけばいい。ここでの生活の中で男の傾向や趣向を把握して、対策を立てればいい。
今のこの段階で男の心中を察しようというのは、ほだされているに近い。この男に親近感のようなものを覚えたら、それが最後だろう。
「答えんか。まあいい」
男の態度にはゆとりがある。女の反応を窺い、女が自分の行動でなにを感じているかを察そうとしている。剣客だけに、それがよく判った。
男の手が少し動いて、腰へ。更に下がって、尻の割れ目へ。
「ひう・・・・・・!」
くすぐったい。男の指が腰と尻の境を這って、割れ目の入口へ差し込まれた。
汗を掻いている。スベスベとした質感の肌にしっとりと汗が浮かび、割れ目の中で蒸れていた。その水気を指にまとわせて、男は指を鼻の前に持っていった。
「ちょ・・・・・・っ!」
「そう恥じるものでもない。普通だ。普通に汗臭いだけだ」
ぺろ、と指先の水気を舐め取った。
やはりこの男は辱めるつもりなのだ。武蔵は真っ赤な顔を隠すように埋めた。
「はは、悪かった。女の汗も美味いのさ。機嫌を直せ」
まるで恋人のように言って、武蔵の尻を撫でる。
「ん、く・・・・・・!」
不思議と、いやらしい手つきではない。犬か猫を撫でるように、優しい手つきだった。
さすがにこの状況だからつい身を固くしてしまうものの、尻を撫でる手は優しくあたたかく、不快ではなかった。
「どうだ、機嫌はなおったか?」
白々しい。孫の機嫌を取る老爺のような口調で、これから女として抱くのではないか。
(でも・・・・・・)
やめてもいい、とこの男は言った。
どうかしている。そんな言葉を真に受けること自体が、武蔵が動揺している証拠だ。抱かれるならば抱かれればいいのだ。生き残るための犠牲として覚悟した筈ではないか。
「ふむ、まだ治らんか。なら」
ぐに、と武蔵の尻を開く。
「可愛いもんだ」
開かれた尻の割れ目は、武蔵の熱で蒸れているものの美しい。下にある焦げ茶色の窄まりも、菊に似ていて愛らしい。
そこに、男は躊躇いもなく舌を伸ばした。
「な、はあ・・・・・・!」
完全に予想外の刺激。そして人生初めての感触であった。
「ねろ、ぉおん・・・・・・」
男の分厚く熱い舌の先端が、武蔵の窄まりを舐る。
「あ、あ、ああ・・・・・・!」
ぞわぞわとした、妖しい快さが背筋を駆けていく。
意外なほど、武蔵の体は肛門を舐られる刺激を快感として受け取っていて、そのことが武蔵を戸惑わせる。
その戸惑いに追い打ちをかけるように、男は更に大胆に肛門を舐り、唇を押し付ける。
「うあ、あ、ああ・・・・・・!」
武蔵の喉から漏れる甘い声は、高く愛らしくはあるもののあまり色気がない。
当然だろう。自分自身すら、肛門から得られる甘美な快感が不思議でならないのだ。肛門に接吻され、這い回る舌が窄まりを何度舐り上げても、困惑から逃れられない。
しかし困惑の中に快感を潜ませた嬌声は、男を満足させたらしい。
「むちゅ、うぅうう・・・・・・!」
と、熱烈なほど吸い付いて、男は口を離した。
「腰を上げな。膝を立てて」
言われた通りの姿勢を取るが、自分でも判るほどとろくさい。
不意の快感のために、両の太ももの筋肉が甘く痺れて、力が抜けてしまっている。虫が這うような無様さで、なんとか指示に従うが、その様子が男の嗜虐心を満たす。
「いい子だ。言うことを聞いてれば悪いことにはならんからな」
労うように、持ち上がった腰を撫でる。
また、尻の割れ目に鼻を滑り込ませ、ぺちゃぺちゃと舐め始めた。同時に、無防備になった武蔵の割れ目に指を這わせた。
「く、う・・・・・・!」
武蔵のそこは、土手が盛り上がったふっくらとしている。反面陰唇は薄く、ちょっと指でなぞるだけで花びらが開くようにして膣口が開く。
湿り気があるのは、汗のせいばかりでもないようである。
「べろべろ・・・・・・」
と、男はそのことを口に出さない。血液が集中して熱くなった性器を、指で繰り返し撫でる。
「ちょ、っと・・・・・・うそ・・・・・・あ、は・・・・・・っ」
頭で判っていても、武蔵の女が否定したがっている。
好き好んで人のケツの穴を舐める男が居るなんて。虜囚にして、やりたい放題に嬲れる女の尻にわざわざ顔を埋めて舐る人間がこの世に居るなどと。
そしてなによりも、その行為に対して心理はともかくとして、この体が不快よりも快感が勝っているということを。
「汗臭い、いいケツ穴だ。美味いぞ」
嬲る口ぶりとは対照的に、舐める動作自体は繊細ですらある。用を足した時に、紙で拭く仕草の方がこれに比べれば乱暴だろう。
その事実と衝撃の前に武蔵は気づかなかった。気がついたのは、粘液の擦れる音がしてからだった。
「? ・・・・・・っ!」
嘘だろう、と思わず自分に問いかけた。
自分の股ぐらから、確かに聞こえるこの水音。そこでようやく、男の指が優しく性器を撫でていることに気がついた。
「んぐ・・・・・・っ!」
食い千切る勢いで唇を噛んだ。
股間から背中を通り、頭へ流れるこの甘美な快感の出どころは、一か所だけではなかったのだ。自覚してしまうと、くち、と粘液の中に空気が混じり、小さな気泡を潰す音が耳元で聞こえる気がする。
これほど武蔵の自尊心を傷つけることはないだろう。順序は判らないが、望まぬ男の指で愛する男を受け入れる場所を濡らしていることに間違いはないのだ。
(ごめん、マスター・・・・・・!)
自分も、あまり触れていない場所。夜を共にしたあの少年のみに許した筈の場所が、こんな男の手に触れられ、あまつさえ迎えるように粘液を滴らせている。
男の手管か、武蔵の生来の淫蕩さか、或いは男を知り始めた女体の哀れな学習能力と貪欲さのためなのか。理由は判らない。しかし確かに武蔵の秘所は、男の指を容易く迎えられるほどに濡れていた。
「・・・・・・」
それを男も指の感触で察し、膣に指を滑り込ませる。
「ふぐ、ん、んんう・・・・・・っ!」
押し殺した声が、武蔵の喉から漏れる。
少年の細くしなやかな指とは、もう感触からして違う。ごつごつとした指が、いきなり二本も大切な場所に侵入してきた。
「ん、く・・・・・・んっ・・・・・・んう・・・・・・!」
シーツを握りしめる。中の藁の感触が掌に。その感触に集中して、膣の入り口から登って来る快感から気を逸らしてみる。
「ふ、く・・・・・・っ・・・・・・ん・・・・・・!」
膣内に差し入れられた男の指は、意外にも動きは小さく柔らかい。
一気に根元まで埋めるようなことはせず、ヒクついた膣口の動きに合わせて進む。
「ふむふむ」
と、尻穴に押し当てた舌を蠢かしながら、外科医のような冷静さで膣を探る。
「くふ・・・・・・っ!」
時折、武蔵の息が詰まる。
膣をまさぐられるのは正直言って不快だが、断続的に痺れるような快感が走る。
男は指先の感覚に神経を集中させて、武蔵の膣内構造を掴もうとしている。なにか、意図があるわけではない。単純にこれから犯す女の形状を知っておきたいだけだ。
「くは・・・・・・っ・・・・・・あ、あ、あ・・・・・・!」
思わず武蔵が顔を上げ、戸惑いとも嬌声ともつかぬ声をあげたのは、男の指が深くまで進んだからだった。
(これはこれは)
男が内心でほくそ笑む。
中ほどで窄まりを感じる。しかしその窄まりは、少し強引に指を進めただけで簡単に開き、窄まりを通過すると呑み込まれるようにして奥へ導かれた。
入り口近くの膣はザラついていて、指の腹で撫でると心地よく収縮する。濡れやすい体質らしく、少し指を引っ掛けてやると熱いほどの愛液が指にまとわりつく。
間違いない。名器である。この名器にあっては経験の浅い小僧など他愛もないだろう。きっと、武蔵が女の悦びの、その深い感動を得る前に果ててしまうに違いない。
「どうだい、こんなにじっくり弄ばれたのは初めてかい?」
「ど、どうでしょう、ね・・・・・・! マスターは、貴方よりずーっと優しいんだから・・・・・・っ」
まあ、予想通りである。小僧が自分の女の具合を丹念に確かめるゆとりなどあるわけがない。こんな名器、心構えなしに挿れれば容易く果てる。
(よし)
方針は決まった。こういう、世の無常さを弁えた女には暴力でも恐怖でも意味がない。不本意を体に刻み付け、ゆっくりと女のかなしさと歓びを教えてやらねばならない。
「どれ、ケツ穴も堪能したし、膝も疲れるだろう。仰向けになれ」
「お気遣いなく・・・・・・!」
減らず口が帰ってくる。こういう女とのやり取りは、色事を別にしても楽しいものだ。
「気遣わせろよ。これからずっとつらい目に遭う女への憐れみさ。まあどうしても剣士としての矜持とやらで、強情を張りたいならそれでもいい。カレシをお前の前で刻んでやればいい話だ」
武蔵は、言われた通り仰向けの姿勢になった。
「素直にならなくていいぞ。こういう無駄なやり取りも楽しいもんだ」
「く・・・・・・! なかなか、一人前の外道ね、あなたも」
「言われ慣れない褒め言葉だ。俺は女には優しいで通っているからね」
再度、膣に指を。執拗な触診でほぐれた膣は、男の指を二本もあっさり呑み込んだ。
「ふふふ」
武蔵の腹側の浅いところを、指を曲げて撫でる。
「くあ・・・・・・!」
ビクン、と武蔵の体が大きく弾んだ。
(ちょっと、なに・・・・・・いまの・・・・・・)
膣から脳天が直通で繋がっているような。一瞬で頭の芯まで痺れるほどの鋭利な快感が駆け抜けた。
「無理して声を堪えなくていいぞ。好きなだけ泣き叫べ」
「っ・・・・・・! 誰が・・・・・・ああ・・・・・・!」
同じところを、引っ掻くように撫でる。それだけで、武蔵は他愛なく白い喉を見せた。
そこからは、ゆっくりと、少し間隔を空けて撫でる。一度だけ。
「ふ・・・・・・ふ・・・・・・う・・・・・・!」
呼吸を整えようと、頭を刺し貫くような快感に耐えようと、武蔵が身構えても、
「ふ、うう・・・・・・う・・・・・・んくああ・・・・・・!」
一度撫でられてもこの様である。
背中が反り、腰が持ち上がる。全身が一瞬で熱くなり、指を差し込まれた膣口から愛液が溢れた。
快感の余韻で、体中が甘く痺れる。その余韻をなんとか消化して、のけ反った背中が落ち着くと、また、
「あ、くああ・・・・・・!」
一度だけ引っ掻く。
こんなところで、これほどの快感を得るとは武蔵自身も知らなかった。無論、恋人である立香も知るはずがない。
自分すら知らない弱点をこれほどあっさりと看破され、弄ばれるとは。武蔵は心の中で歯噛みした。
(しかもこいつ、手加減してる・・・・・・!)
追い込むのは容易いはずだ。武蔵の意思を無視してこれほどの快感を得てしまう弱点を、息もつかせず責め立てればいい。さすがに武蔵も呼吸を乱すし、心構えや態勢を整える前に翻弄されてしまうだろう。
しかし、男は武蔵に猶予を与えている。
快感を、その余韻までも味わい尽くしてから、同じ快感を与えている。屈辱であった。
しかし、無垢な武蔵は知らないのだ。ゆっくりと味わい、消化した快感は体に浸透して、違和感をなくし、更に強い快感の渇望へと進化することを。
「ふ、う・・・・・・ふうふう・・・・・・う・・・・・・うう・・・・・・う、ひ・・・・・・んきぁああ・・・・・・!」
身構えても、貫くような甘美な快感はどうしようもない。しかし、僅かに慣れてきた。断続的に与えられる刺激を学習し、次に来る快感に予測がつくようになった。
もう無様な悲鳴はあげない。そう決意した時、
「・・・・・・?」
同じ間隔で襲ってきたはずの快感が来なかった。
身構えていた分、肩透かしを食らった。同時に、快感を期待していた膣がきゅん、と疼いた。
(うそ・・・・・・)
膣奥から、粘っこい愛液が溢れるのが自分でも判った。
無理もない。生物は快感を拒絶するようには出来ていない。たとえ意思から外れた快感であろうと、一度その味を知ってしまえば望んでしまうものだ。
予測して身構えたということは、その快感を望んでいるということでもある。その期待を透かされれば、誰でも次の快感に対して飢える。
「う、く・・・・・・!」
こくん、と武蔵の喉が動いて生唾を呑み込んだ。膣がキュっと締まって、男の指に次なる快感をねだる。
しかし、男の指は動かない。甘く締め付ける膣を完全に無視して、愛液の海の中で静止している。
「この・・・・・・!」
どこまで嬲るつもりなのか。武蔵が屈辱と欲求不満に耐えかねて男を睨みつけようとしたのを見計らって、
「んはぁあん・・・・・・!」
不意打ちで弱いところを撫でる。
体に浸透した快感とそれへの欲求が、その一撫でによって満たされる。体中に走る甘い快感に、武蔵は他愛もなく嬌声をあげて腰を持ち上げる。
「意地悪だったな。好きなだけ撫でてやるよ」
男の声も、耳に入ったかどうか。
ただ言葉通り、男の指は武蔵の好いところを撫でて戻り、また撫でて戻り、とさっきと打って変わって連続的な愛撫に変じた。
「うあ、あっ・・・・・・! は、あぁ・・・・・・ん!」
こんな悩ましい声が、自分の喉から出ているのかと、思わず疑いたくなる。女を捨てた覚えはない。しかし町娘のように、男のために着飾ったり白無垢を着て嫁いだりという自分は想像もつかない。
その自分から、こんなにも悩ましい声が漏れるのか。少年と結ばれる日にも、こんな声は出たことがない。そのことが悔しくもあり、申し訳なかった。
「うあ、はぁあん・・・・・・! ん、んく・・・・・・ん、んんう・・・・・・!」
指が往復するたびに、膣全体が震えて悦んでいる。
その指から逃れるためか、それとも無意識に媚びているのか。武蔵の腰はブリッジをするように持ち上がり、美しくも淫らな曲線を描く。
「不幸だな。素質ありありなのに、全然触られてこなかったらしい」
ならばその不幸の分を取り返すほどの悦びを与えてやるのが、男としての礼儀だろう。切なそうに奥から狭まる膣の感触を感じ取って、男は指を止めた。
「あ・・・・・・は・・・・・・く、ふ・・・・・・う・・・・・・」
余韻で体全体が甘く蕩けそう。なんとか、頭を覆う桃色の霞を振り払って、呼吸を整える。
「あ・・・・・・おわり・・・・・・?」
無邪気な問いだった。敵愾心も反骨精神もなく、純粋にこれで終わったのかを問うている。男は笑いを堪えながら、また指で優しく撫でてやった。
「ひう・・・・・・!」
楽器を奏でる気持ちで、武蔵から喘ぎ声を引き出す。
「んっく・・・・・・ん、あ・・・・・・ひあ、あぁ、ん・・・・・・! ん、う・・・・・・んうう・・・・・・!」
ぞわぞわと、体中に鳥肌が立つような感覚。甘いだけだった快感に切迫したものが混ざって、少し怖くなる。
あまり経験のない武蔵だが、さすがに覚えがある。胸の奥に蓄積された快感が爆ぜる予兆だ。
(イク、て・・・・・・こと・・・・・・? こんな、やつに・・・・・・)
イカされそうになっているということなのか。武蔵は己の体から発する欲求に歯噛みした。
背中の反りが大きくなる。持ち上がった腰は弓なりに。恋人との行為では迎えたことのない絶頂が、己を嬲る中年男の指によってもたらされようとしている。
「あ・・・・・・は、あ・・・・・・! あ、あぁ・・・・・・ん・・・・・・!」
喘ぎ声が変化する。体が強張り、制御しようのないあの甘美な感覚に備える。
しかし、
「・・・・・・ん・・・・・・あ・・・・・・?」
指が止まった。
あの強さ、あの間隔、あの場所で得られる筈だった絶頂が遠くなる。武蔵の体は、寸止めの耐えがたい切なさに震えた。
「まあそう焦ることはない。じっくり悦ばせてやるよ」
嘲笑を込めた男の声が武蔵を嬲る。
指が動く。
憎たらしくも、要領を掴んだらしく武蔵を絶頂に導く加減で指の愛撫が再開される。
「あ・・・・・・や・・・・・・! こんな・・・・・・ひう・・・・・・!」
拒んでも、ここまで準備された体は抗えない。
男の指に導かれるままに快感を昂らせ、絶頂の予感を感じるところまで押し上げられた途端に、
「んく・・・・・・! う、く・・・・・・っ・・・・・・う・・・・・・!」
また寸止めされる。
ギチギチと、男の指を食い千切らんばかりに締め付ける膣が、その欲求の深さを示していた。武蔵の持ち上がった腰は戻らず、ばかりか少しでも快感を得るためにカクカクと上下し始めた。
赤子がむずがるように、体は忙しなく蠢いて、迎えられそうだった幸せの頂点を惜しんでいる。そういう体の動きに、武蔵自身は気づく余裕もないのか、気づいていても止められないのか。
シーツをつかみ、肘を曲げて表情を隠しているので判らない。しかし、涎のこぼれそうな唇から食いしばった歯が見える。
寸止めの切なさ、絶頂への欲求、男への反抗心、女の尊厳、そういうもので頭をぐちゃぐちゃにされながらも屈しようとしない、美しい表情だった。
「あむ」
追い打ちをかけるように、男は武蔵に沿うように寝そべって乳首を口に含む。
とっくに固く尖って屹立していた乳首である。待ち望んでいた刺激に甘く蕩けた。
「くひぃいん・・・・・・!」
乳首を舐めしゃぶられながら、また同じように膣を撫でられる。
同じ刺激なら慣れることもあるだろう。慣れてしまえば、この絶頂への切なさも軽減される筈なのに、男は快感に飽きさせない。
それがどれだけ武蔵の精神を追い詰め、体力を消耗させるのかをよく知っている。
「うは・・・・・・は、は、あ・・・・・・は、はぁああん・・・・・・!」
どれだけ続いたのか。水を掛けられたように汗の浮かんだ体で、必死に呼吸を繋ぎ、衰えることのない切なさに耐える武蔵。
絶頂寸前で快感をコントロールされ、少し落ち着くとまた高みへ。生殺し状態で小一時間は嬲られて、そろそろ武蔵も限界だった。
「イカせて欲しいか?」
待ち望んでいた問いかけ。明確に言葉として欲求を伝えこそしなかったが、仮に伝えたとしても男がこのように慈悲を見せなければ、残酷な寸止め地獄はどこまでも続くだろう。
救いが見えた。悔し泣きのような表情から、武蔵の顔はぱっと明るくなった。
が、まだやはり抵抗がある。ここで懇願するような女が、囚われた恋人と共に脱出など出来るだろうか。
内心を見透かしたように、男は続けた。
「おい、あまり深刻に捉えるな。誰も一回限りだなんて言ってないぞ。これから毎日、日に寄っちゃ一日に何度も相手をするんだぞ。初回でいきなりこんなに消耗してちゃ体力が保たんぞ」
その通りである。たった一度でこんなに体力も精神も削られて、ここで強情を張っては更に消耗する。それは、得策なのか。武蔵は自問する。
「おまえはなんだ? 囚われた哀れな女だろう。ならここは、仮にでも媚びへつらって自分を救うのが先じゃないのか? そんな短気じゃあ、とても脱出なんて叶わないぞ」
これは甘言なのか、真理なのか。
寸止め地獄でぐちゃぐちゃにされた武蔵の頭では、もう判断がつかない。
「おまえがイケば今日はこれで終わりだ。イカせて欲しければ言う通りにしろ。出来るな?」
耳元で囁く。父親が娘に言い聞かせるような優しい口調だったが、内容は真逆だった。
一瞬、顔面蒼白になった武蔵だが、選択の余地はない。なによりも、またあの終わりのない寸止め地獄を味わうのかと思うと、飛びつかずにはいられなかった。
上げた腰に手を伸ばす。男が離れて、武蔵の足側に立った。
その男に見せつけるように、膣口へ指を。
男の指を恋しく、開いたままの膣口の両端を更に開いて、
「挿れ、て・・・・・・ください・・・・・・わたし、の・・・・・・そこに・・・・・・」
「八十点。そこってどこのことかな?」
「おまん、こ・・・・・・オマンコです・・・・・・私の、オマンコに・・・・・・チンポ、を・・・・・・」
生まれて初めて口にする淫らな言葉。武蔵の自尊心を削る哀願を、まだ続けさせる。
「どんなマンコかな?」
「ぐちゃぐちゃ、の・・・・・・濡れ、て・・・・・・っ!」
頭がぼうっとする。恥辱のために思考が崩れる。意識が遠のく気がした。
これが現実だろうか。昨日まであの少年と睦み、語らい、愛されていたはずの自分が、望まない男に股を開いて自ら誘いの言葉を口にして、行為を待っている。
夢であれば覚めて欲しい。しかし、痛いほどに勃起した乳首と、刺激を待ち望んでヒクついている膣が、夢であることを否定する。
この飢えを、疼きを止めるには続けるしかない。武蔵は血を吐くような思いで叫んだ。
「武蔵のスケベなオマンコに、あなたのオチンポ突っ込んでください!」
生まれてからこれ以上の恥辱はなかったろう。
それほどの恥辱を呑み込んだ武蔵の絶叫を、男は値踏みするように言った。
「ま、ほとんど処女としてはよく言った方か。もうちょっと色気が欲しいが、まあいい」
剛直を取り出して、武蔵の足の間に身を入れる。
男の態度や言葉に、腹を立てるゆとりもない。天井を向いた、凶悪な男性器を見た瞬間から武蔵の膣口は小刻みにヒクついたまま、武蔵自身も思わず生唾を呑んだ。
「そら・・・・・・!」
持ち上がったままの腰を支え、膣口に宛がった亀頭を一気に沈める。
「はう・・・・・・!」
息が詰まる。喉が反る。瞼は開いているのに目の前がチカチカと白く明滅した。
「は・・・・・・っ、か、は・・・・・・あ・・・・・・!」
下腹部から波打つようにして震えたのは、無意識のことであり、武蔵の体が武蔵の制御を離れた証でもある。
不幸なことに、男を知っている武蔵の体は膣で感じる幸福を知っている。ここまで焦らされて熟成された膣は、もうこの肉棒の持ち主が誰であるかなどどうでもいい。襞が独りでに蠢くほどの疼きを満たす、この熱く固く太い感触を愛さずにはいられない。
「食べごろだ・・・・・・!」
小憎らしくも愛らしく、絡みつく膣肉に舌つづみを打つ。
とはいえ、まだ半分である。
武蔵の膣に埋めたのは肉棒の半分で、もう半分は溢れた愛液に濡れているものの、肉の味を求めて蠢動している。
(この窄まりだな)
指で調べた武蔵の膣内構造は、半分ほどから少し奥に進んだところに窄まりがある。慣れていなければここが一番奥だと錯覚してしまうだろう。亀頭に吸い付くようなその窄まりを、腰を進めて強引に割る。
「ふぐう・・・・・・!」
ただでさえ快い膣に、更に衝撃が走る。
念入りに閉じた膣奥に、何者かが踏み込む感触。自分の大切なところを踏みにじられる感覚は、信じがたいほどに包み込むほどの幸福感であった。
「お・・・・・・んお、お、んぉおお・・・・・・!」
もう、恥や外聞も気にする余裕もない。
正直なところ、挿入される瞬間まで武蔵は甘く見ていた。さんざんに弄られた浅いところにある性感帯以上に、感じるところなど自分の膣にはない。何故といえば、立香に抱かれた時にもそれほどの快感を得たことはないからだ。
自らが体を許した男ですら、見つけられなかった性感帯をこんな男に許すわけがない。だから平気だろう、と。軽い絶頂でこの飢餓感から逃れられれば、意識を保ったまま終えられるだろうと思っていた。
(なるほど、まあ小僧には無理だろう)
中ほどの窄まりを割り入ると、亀頭がすっぽり入るほどの部屋がある。その更に奥の窄まりが精子を貯蔵する場所であり、降りてきた子宮口が精子を吸い出すための部屋だろう。
不運にも、武蔵の膣における最たる性感帯が、この部屋の背中側にあるらしい。
武蔵自身も知らなかっただろう。こんなところ、指では届かない。恋人である少年もここまで達しなかったに違いない。
(まったく、お笑いだなこのカップル。俺のために準備してくれたようなもんだ)
経験の浅い少年では、中ほどの窄まりが膣奥だと錯覚するだろうし持ち主は言わずもがなである。少し強く腰を押し付けてやれば、柔らかく開く膣の扉で引き返し、性交の真似事で満足し合っていたのなら、この奥の悦びなど知るわけがない。
それを、この肥満した中年男の手で刻み込んでやる。これ以上に痛快なことはなかった。
「は、はは・・・・・・!」
激しくはしない。武蔵自身も初めて知った性感帯の良さを教えるように、亀頭を擦りつける。
「うお。お・・・・・・! お、んおお・・・・・・!」
腰を支えて揺さぶるだけ。
たったそれだけで武蔵は平素から想像もつかない野太く無様な叫び声をあげ、不規則に体を震わせる。
「く、くくく・・・・・・!」
痛快な笑いを嚙み殺しながら、武蔵から悦びの声を引き出す。この作業はなんとも楽しい。
膣口から噴き出すほどに溢れた愛液が腹の中で攪拌され、悦びに震える膣肉は極上の柔らかな肉のブラシを絡みつけ、締まる。
男の弱点である裏側に好んで絡みつく襞は粒状で、無心で腰を遣えばどれほど快いだろうか。
しかし今は我慢である。この肉体を好き勝手に味わうのは、武蔵の体に忘れられない法悦を刻んでから。
「むうぁあああ・・・・・・!」
哀れな姿だった。
シーツを掴み、背を反って、意識をかき乱すほどの快感から逃れようとしても、体の中から湧き起こるものから逃れられる筈もない。
逃げようのない快感にむせび泣くしかない女の姿は、哀れなうえに美しい。
「ううあ、あっ、んああああ・・・・・・!」
イヤイヤをするように、髪を振り乱して対処のしようもない快感に泣きわめく。
「ふはは・・・・・・!」
追い詰めてやる。とことんまで。許しを乞うても。その体が限界を超えるまで。
少し角度をつける。
武蔵の持ち上がった腰に自分の腰を斜めから打ち据えるように。こうすれば、武蔵の性感帯である背中側の膣肉を擦る角度が変わる。
揺さぶられるだけでこれだけ翻弄されるのだ。変化をつければどうなるのか、想像するだけでも楽しい。
「ふ・・・・・・!」
ずん、と強く揺する。
これが決定打。張り詰めた糸が切れるように、武蔵はその意識まで一度停止した。
「は・・・・・・」
時が止まった。武蔵の時はこの瞬間、確かに停止して、限界を超えた体は一瞬先を予見して硬直した。
「~~~~~っ・・・・・・!!」
悶絶という表現が正しかろう。
心筋さえも甘く痺れさせるほどの快感が、全身を流れる。意識がトばなかったのは武蔵が剣士だったからかもしれない。
叫び声もなかったのは、喉の筋肉まで硬直したからだ。他の部位など、言うまでもない。
電気椅子に掛けられた死刑囚のように、武蔵の体は弾むほどに震え、黒目も瞼の裏に隠れてしまった。
喉が震えているから無意味なのに、死を恐れて口は開きっぱなしになり、舌がはみ出た。
「おいおい、もうちょっと堪えろよ。こっちはまだだってのに」
予想以上の反応に、男は腰を小刻みに振る。
まだ射精に至っていないのに、女の方が先に根負けしてしまった。男にとってこれ以上に迷惑なこともない。
自慰と同じように、自分本位で腰を遣い、
「う・・・・・・!」
と、作業を終わらせるように精を放った。もちろん、武蔵の膣内に。
恋人のそれしか注ぎ込まれたことのない無垢な膣が、中年男の黄ばんだ粘っこい精液で汚される。そのことを悲しむ余裕さえ、武蔵にはない。
白く染まった視界。開いたまま何物も移さない目を見開きながら、この、世界の終わりのような絶頂が去るのを待っている。
「・・・・・・ぜ・・・・・・」
なんとか武蔵の喉と胸が甘い痺れから脱出し、呼吸を再開したのは二分ほど後だったろうか。
ぜんそく患者のような荒く細い呼吸をなんとか繋ぎながら、武蔵は床でのたうった。
「やれやれ、先が思いやられる」
その頃には男は始末を済ませ、無様な姿を見下ろしている。
この女をこれからどのように嬲るかということを思案していると、武蔵が睨んでいることに気がついた。
「なんだ?」
「つぎ、は・・・・・・こうはいかない・・・・・・から・・・・・・ね・・・・・・」
息も絶え絶えのくせに、そんなことを言う。
腹の底から湧き上がる笑いを殺しながら「それは楽しみだ」と返してやる。
(次をもう考えだしているとは、潔いのかチョロいのか)
と、そのことがおかしくて、殺しきれない笑いに噴き出してしまった。
それから何度か、武蔵は抱かれた。
抱かれてない時間はほとんど拷問と言ってよかった。
別に、男に刻まれた快楽に依存したとか、そういうことではないのだが、扱いが家畜以下だったのだ。
檻の中では衣類を身に着けることは許されず、両足を完全に伸ばして寝転ぶことも出来ない狭さで、食事も餌並み。監視の目こそあるもののそれもあまり熱心でない。
誰に話しかけられることもない。素っ裸で檻の中の自分に興味を向ける者もない。一日の大半はそうして過ぎる。
男に呼び出される時だけ、人間並みの扱いをされるのが一番堪えた。
「く・・・・・・!」
いつも裸で垢まみれの女には食指が動かないのだろう。抱かれる直前に水を、時には湯を使うことを許され、上がると取り上げられた礼装が畳まれている。人間が動物でなくなるのは服を着ている間だけなのだと、武蔵は思い知った。
「おいで」
男はいつも優しく武蔵を抱いた。
行為中の遊びという範疇を超えた責め方はしなかったし、体に傷がつくようなこともしたことがない。
判っている。これが男の手口なのだ。これ以上はないほどに冷遇し、それを自分が慰めることによって追い詰めた女の精神を救い、篭絡しようというのだ。
しかし、判っていても心に響く。
「マスターは?」
「心配するな。食っているのは俺と同じものだし、牢は少し広めに作ってある。湿気で病まれても困るから、一日に三回は外に出して陽を浴びさせている。今のところ健康だ」
となると、武蔵より待遇は良いことになる。
抱かれる前後以外、家畜にも劣る扱いの自分と比較すれば雲泥の差だろう。安心するよりも先に、羨ましさや恨めしさが起こって、そんな自分に舌打ちした。
「気づいてるか、自分で」
男は囁く。部屋に入るなり、下帯の隙間から潜り込ませた指を見せつけて、
「もう濡れている。ここのところずっとだ」
誰にも求められない日々に、人間の自尊心は耐えられない。この宮本武蔵という英霊は求められる嬉しさのあまり、カルデアと共に何度も死地に身を投じたほどだ。
求められるのが剣ではなく女としてであっても、それを拒むには武蔵の精神は健全であり過ぎた。
かっと赤くなった顔を逸らしながら、否定できない。
初めて抱かれた日、恋人や自分も知らなかった性感帯を開発され、そこを嬲られ、遂には自分から快楽をねだった『事実』が、なによりも武蔵を苛む。
いっそ、浅ましい女としての自分を受け入れるべきなのか。抗うことさえすり減る精神を温存することが、最適解なのか。武蔵本人にはもう判らなくなっている。
「なあに判ってるさ。自分と恋人のためだろう? 女は賢いからな。それくらいの壁を作って、体を馴染ませるくらいはする」
肩に手を置いて、抱くために用意された床へ。
「だから手は抜かない」
と、男は言外に語っている。そのことに、唾を呑んだ武蔵の心境は、不安か期待か武蔵自身にも判らない。
裾から手を入れて、下帯の中に滑り込ませて土手の盛り上がった武蔵の秘所を撫でる。
撫でられた場所が熱くなる。男の指の熱が自分の肌に染み渡り、応えるように自らも熱を発するのが、浅ましさを体現しているようで消えたくなる。
「ん、む・・・・・・っ」
後ろから抱かれ、顎を指に乗せられて向きを整えられる。男の唇が重なった。
「む、ちゅ・・・・・・ぶ・・・・・・ちゅぶ、んむ・・・・・・」
貪られるままに、唇を犯される。
全身が強張る。何度か抱かれ、膣を犯されることには慣れてきたが、唇だけはどうしても嫌悪感が勝る。虫が肌を這うような感覚は、心がこの男を拒んでいるということでもあり、そのことがかろうじて武蔵を安心させる。
男との接吻に違和感を覚えなくなれば、その時が宮本武蔵という英霊の終わりだろう。その時はもう、潔く腹を切ってやるつもりだった。
そのことは、男も判っているのだ。
武蔵の柔らかな唇を自分の唇で挟み、その感触を楽しむ。唾液を送ったり啜ったりということはしない。
胸の前で握られた拳が、その固さを増す直前に止める。嫌悪の感情が大きくなれば行為が弾まない。程度を弁えて楽しむ。
仕方がない。この女の唇が美味すぎる。大きな瞳に自分が映るだけでも、年甲斐もなく心が躍る。少女と大人の両方を併せ持つ、童顔ながら鋭い表情。唇は荒れた生活でもぷるんと潤い、童女のように愛らしい。
これを味わわずにはいられないという心地にさせる女だ。堪えられるわけがない。
「ふふ・・・・・・」
いずれ、自分から唇に吸い付くようにしてやる、と男は武蔵の帯を解いた。
合わさっていた前が解かれ、白い肌が露わになる。真ん中から割れた着物の隙間に手を差し入れて、乳房を手中に収める。
「ん、く・・・・・・!」
ビク、と体を跳ねさせる初々しい反応が、男心をくすぐる。
五指を広げて、掌をカップにすれば収まるサイズの乳房は、娘らしい瑞々しさに溢れている。滑らかな感触の肌は吸い付くよう。水滴を弾くハリの肌に包まれた乳房は、しっかりとした弾力がある。
ゴム毬に似ている。指を少し押し込めば反発するように感触を返し、その小生意気な弾力が愛らしい。指を沈ませながら撫でて、少し揉んでやると小さな突起が隆起する。
少しの引っ掛かりもない滑らかな肌の中に、突然現れるポッチが更に愛らしい。ピン、と屹立して先端を尖らせる乳首は、コリコリと独特な感触で、指で弄ぶだけでも楽しい。
「ふ・・・・・・う、く・・・・・・! んく・・・・・・んん、う・・・・・・く・・・・・・ん・・・・・・!」
なかなか敏感らしく、優しく指で転がし、軽く圧し潰し、時々弾いてやると、抑えきれない快感の声音が漏れだす。体も快感を堪え切れずにビクビクと弾み、腕の中に抱いた女がそのようにして啼くと、否応もなく男は昂るものだ。
「・・・・・・」
すぐにも押し倒して、既に濡れ始めている秘所に、滾り出した剛直を埋めたいが、ぐっと堪える。まだまだ準備が要るし、この女を快感で追い詰める痛快さを思えば、急くのは勿体ない。
「ふ」
と、耳に吐息を吹きかける。
「あ・・・・・・っ!」
それだけで、武蔵は甘い声を漏らす。
不幸なことに、この女は自分の体が女の悦びを得やすいことを、教えられるまで知らなかった。剣士として半生を費やしながら、それ故に女の悦びに飢えた体が、その才能を開花させ始めている。
望まぬ男の腕の中で。そのことが、武蔵を更に追い詰める。
「どこを取っても美味そうな体だ。堪能しなくてはな」
武蔵の肩に顎を乗せ、丸まりそうな武蔵の体を撫でまわす。
「く・・・・・・!」
女であることはいい。しかし物として扱われるのは許せなかった。無意識に男の手を掴んで、無遠慮な手つきを咎める。
(いいな、やっぱり)
男としては満足な反応だった。
全て諦めて、無気力に体を差し出す女など面白いはずもない。恋人を救うため、自尊心との狭間で足掻く姿を見ながらが、こういうシチュエーションの醍醐味である。
「気に入らなかったか。ならしばらく肌に触れるのは止そう」
武蔵の予想に反して、男はあっさりと撫でまわす手を離した。
今日はこれで終わりだろうか。また裸に剥かれて、檻の中で過ごす時間が来るのか。この男に抱かれるのとどちらがマシだろうかなどと、考え始めていた自分に気がついて武蔵は首を振った。
「初心だな。別に直接触らなくてもやりようはある」
その初心さが好い。男は感嘆するように呟いて、武蔵の下帯に手を伸ばした。
武蔵の下帯は要するに六尺ふんどしで、臀部は露出している。が、帯が解かれたとはいえ着物は来ているから尻に触れても直接肌に触れたことにはなるまい。
しかし目当ては尻ではない。
下帯の、前布の上部。へその下で広がっている布地を左右から摘まんだ。それを、
「よっと」
持ち上げる。武蔵の体が浮くほどに強く。
「ひ・・・・・・っ!」
下帯が、武蔵の秘所に食い込む。
尻の割れ目、会陰と肛門の間、そして秘所に愛用の褌がきつく食い込んで、その乱暴な手つきに布地が悲鳴をあげた。
一度持ち上げて、緩め、また持ち上げる。
「なにを・・・・・・ひう・・・・・・!」
何故、こんな声が出るのか。
自分の弱点はもう知っている。この男の指と肉棒によって充分に思い知らされて、秘所で得る快感に弱いことを、武蔵は思い知っている。
撫でられれば快い。舐められれば悶絶する。挿れられて達しなかったこともない。
しかし今されているのは、愛撫だろうか。子供が同年代にするようなイタズラに等しい。ふざけて下帯を食い込ませ、戯れているだけなのに、どうして甘い声が抑えられないのか。
じんわりと、食い込んだ前布に広がる染みは、どういうことなのか。
「ひ・・・・・・っ、ひ、ん・・・・・・う・・・・・・んっく・・・・・・ひう・・・・・・!」
食い込まされるたびに、鮮烈なほどの快感が頭を貫くのは何故なのか、武蔵には判らない。人体というものの悦びの深さを知るには、あまりにも初心だった。
「面白いか? どれ、こっちも」
武蔵の背中に垂れ下がった着物の裾をまくり、尻の上でまとめられたねじりを掴む。
それをぐっと上げて、戻す。
「ひうう・・・・・・! な、なんで・・・・・・んんう・・・・・・!」
前と後ろを交互に、乾布摩擦をするように擦り上げる。
敏感になった武蔵の秘所と菊門が、食い込んだ布地に乱暴に擦られて、愛液を滴らせる。
布地で吸収しきれないほどに溢れた愛液が、表面から染み出して床に伝い落ちた。
「んひう・・・・・・! う、く・・・・・・くひ・・・・・・っ!」
腰が砕けそうになる。なんとか踏ん張っても、前のめりに腰を引いた、無様な体勢になってしまうのを堪えられない。
屈辱だった。
毎日自分が着用している下帯も、この男の手にかかっては自分を辱める道具になる。その辱めで悦んでしまう自分が、堪らなく惨めだった。
「ふふ、あんまり汚しても後が困るからな。どれ、このくらいにしておくか」
やっと男が下帯から手を離した時は、下半身の甘い痺れが取れなくなった頃で、無惨なほどに武蔵の悦楽の証拠が布地に刻まれた後だった。
「は、あ・・・・・・は・・・・・・は・・・・・・う・・・・・・」
息も乱れ切っている。達したかどうかは自信がない。これほどに息を乱し、体温も上がって、頭がぼうっとするほどの快感に対して、軽い絶頂に至らなかったのかどうか、武蔵にも判らない。
前かがみで呼吸を整えるのがせいいっぱいという武蔵の下帯の乱れを直してやる。さすがに乱暴にしたので尻のねじりの食い込みには隙間が出来てしまっているが、構うまい。
屈んで、解いた帯を手に取った。
「手を出せ」
命令口調で言われると、考えたり抗議したりする前に、もう従ってしまう。平素ならともかく、一度呼吸を乱すほどの快感を与えられるとそこまで従順になってしまっていた。
両手首が、武蔵の着物の帯で結ばれる。当然、か弱いおなごではない。引き千切ろうと思えば簡単に千切れるだろうが、その時が恋人が傷つく瞬間だと弁えている。
「寝ろ」
仰向けに、命じられた通り横になる。また犯される。しかしそれも、この屈辱の時間が終わりに近づいた証だと思えば、少しは気が楽だった。
体を汚されるたび、恋人に申し訳ない気分になることだけが憂鬱だったが。
「まあ存分に鳴いてくれ」
武蔵の足側に回り込んだ男は、予想に反して覆いかぶさることはなく、武蔵の両足首を持ち上げた。
強引に両足を割り、下半身を持ち上げて、右足を武蔵の股間に押し当てた。
「いくぞ」
体重は左足。股間に押し当てる右足は添えるだけ。
右足でグリグリと踏む。
「んなあぁあああ・・・・・・!」
武蔵の背が仰け反った。
間接的で、優しめの愛撫から一転して、小陰唇の全てから伝わる暴力的な快感。俗に電気あんまという責めだが、プロレス技としての知識なら武蔵にもある。
耳年増でもあるから、女が男にする遊びとして聞き及んでもいた。武においても男の急所が股間にあることは知っているから、理に適っていると思ってもいた。
それをまさか、自分が受けるとは思いもよらなかった。
「な、はぁああ・・・・・・ん・・・・・・! んう・・・・・・! く、くく・・・・・・うひぃいいん・・・・・・!」
こんなことをされては痛いに決まっている。男のように露出した弱点がないから多少マシではあろうが、女の大切なところを足蹴にされる苦痛は、想像するも恐ろしい。
はず、だった。
「んんううぅあ、あ、んなぁああああ・・・・・・!」
縛られた両手首で頭を庇うように、髪を振り乱して泣き叫ぶ。
これは、決して苦痛からではなかった。
では果たして快感であろうか。武蔵にはそれも自信がない。
ただグリグリと、強く細かく股間を揺さぶられる感覚は、痺れるよう。その痺れが下腹部の深いところをキュンと疼かせて、腹や背中を通って脳天へ届くと、叫ばずにはいられない。
「いや・・・・・・! あ、うう、あっ・・・・・・ひゃあぁあああ・・・・・・!」
これが「」に至ることを夢見る剣豪の姿か。
己を叱りつけても、股間を踏みにじられるたびに流れる痺れと、そのあまりにも甘美な余韻が頭の中に霞を生む。目の奥で火花が散るように、チカチカと瞬くこの感覚は、この男にさんざんに味わわされたものに似ている。
「ちょ・・・・・・これ、は・・・・・・! は、あ・・・・・・ひぃん・・・・・・!」
なにか、抗議をしようというのか。
足裏で股間を踏みにじられて、乳首も固く尖らせて泣き叫ぶ女が、いったいどんな言葉を口にするのか、興味があって少し弱めてやった。
「くく、う・・・・・・っ・・・・・・は、は・・・・・・あ・・・・・・!」
反りっぱなしだった背中が戻り、大きく息を吐く。不足していた酸素を取り込むために、震えながら胸を上下させた。
「べつ、のに・・・・・・しない・・・・・・? ちょっと、度を越えて・・・・・・悔しすぎて・・・・・・」
陳腐な抵抗や負け惜しみではない。明け透けな、正直すぎるほどの弱音であった。
が、単なる弱音ではない。剣士らしい、相手の考えや狙いを見透かし、己の望む方向へ導くための問いかけである。
目の奥に光がある。狙いは何だろう。武蔵は確かに、この屈辱でありながら未経験の激しい快感に翻弄されていた。そのうえで、こんなことを言うのは続けさせるためなのか。
(いや、違うな)
考えさせようというのか。そうして男が思考を巡らせる間に休憩して、動揺するほどに未知の快感を消化し、学習して対処しようとしているのか。
「じきに悔しくなくなるさ。負けるのは当たり前なんだからな」
浅知恵だと言わざるを得ない。
女性器は入り口を撫でられるのに弱い。これはペニスが摩擦に弱いのと同じことだ。確かにこの体勢は屈辱的だろうが、与えられる刺激は電動マッサージ機で振動を与えられるのと同じだ。
少し角度や緩急を変えてやるだけで、変化する快感に女の対処は追いつかず、容易く音を上げるものだ。
土踏まずの辺りを股間に押し当てて、上に少し大きく動かして震わせてやる。
「んおおおおお・・・・・・!」
細かく痺れるような快感から、全身を震わせる衝撃へと。
踵の出っ張りで膣口をぐっと押し、その衝撃的な快感が引く前に土踏まずで優しく撫でる。
「おっ・・・・・・! お、ひ・・・・・・ひ・・・・・・うひぃいいい・・・・・・!」
歯を食いしばってみても溢れる嬌声を堪え切れない。涎が唇の端からこぼれ、黒目が半分瞼に隠れても、電気あんまは止まらない。
一つの緩急、一つの角度に慣れる前に変化をつける。心構えや予測のつきようもない快感に、武蔵は対処のしようもなく翻弄されるばかり。
男としてはたいした労力でもない。片足で体重を支えるのだけが億劫だが、それも武蔵の両足を支点にすればそれほどのこともない。この程度の運動なら、一時間程度は苦でもない。
「くひ・・・・・・! ひ・・・・・・ひ・・・・・・う・・・・・・は、あ・・・・・・!」
しかしイカせない。
いつまででも続けられそうなこの暴力的な愛撫で、いつでも武蔵に止めをさせるのに、武蔵が絶頂へ至ろうとすると全ての動きを中止する。
「う・・・・・・っ・・・・・・くう・・・・・・!」
泣き叫ぶほどの快感なのに、ぞわぞわと怖気が立つようなあの、寸前の感覚にまで押し上げられるのに、最後の法悦の瞬間に至れない。
悔しかった。己の体の、感覚さえも弄ばれる事実が。この男の足でイカされることに抵抗のなくなっている自分が。
「イキたいか?」
足が、股間から離れた。
「イキたいよな、そりゃ。毎日イカせてやってるんだ。お前の体はもう、イキたがってる」
武蔵の両足を離し、帯で縛った手を取って上体を起こしてやる。
「だがな、虜の身で与えられるばかりっていうのもつまらんだろう。自分でも勝ち取ってみたくないか?」
武蔵の下帯を解く。
水分を吸ってぐっしょりと重くなったそれを剥ぎ取って、真っ赤に充血した膣口を露わにさせた。
「跨れ」
拒否する権利はない。武蔵は唾を呑み込みながら、横になった男の上にがに股になった。
「・・・・・・良い趣味してるって言われるでしょ? よく、こんなにいろいろ考えつく」
減らず口を叩いてみても、隠しようのない火照りが武蔵を苛む。
圧倒的弱者の立ち位置からの女の憎まれ口など、可愛いものだ。男は笑ったまま指で腰を下ろすことを命じた。
「く・・・・・・!」
先端が、膣口に宛がわれる。それだけで、甘い快感が走ってしまう。
クチュ、と滴り落ちるほどに溢れた愛液が擦れて粘っこい音を立てる。脚が震えているのは、不安定な体勢だからではないだろう。
「無理するな。一気に咥え込め」
武蔵にも判っている。
お預けをくらってこれほど出来上がってしまった武蔵の体は、その意思に関係なく、挿れれば達する。
快感に飢えた膣肉は、待ち望んだ肉棒を咥え込む前からきゅっと切なく狭まり、あるはずの熱さと硬さと太さを求めて襞が蠢いている。
こんなところに挿入されたら、たちまちに妖しい快感が全身を包み、無様なアクメを迎えてしまうだろう。それはゆっくり挿れても同じことだ。
ならば、この疼きを満たすために一気に腰を落としてしまいたい。結末が同じなら、もう焦らされるようなことはごめんだった。
(でもそれは・・・・・・)
そんなことをする女が、自分だろうか。新免武蔵守玄信だろうか。葛藤があった。
しかし命じられれば別だ。従うしかないのだから、否も応もない。それが武蔵が武蔵にする言い訳であろうことも、男がそこまで察していることも判っていても、従わねばならない。
「ふ、く・・・・・・!」
腰を下ろす。
先端が、柔らかくなった武蔵の膣口を拡げ、花弁が開くようにして男を迎え入れる。
「んふ・・・・・・う・・・・・・!」
一気にそれを落とす。
膝を畳み、重心を両脚から体の中心へ移す。体重を支える場所を失って、武蔵の腰は落ちていく。
「んきゅう・・・・・・!」
切なく狭まった膣を、男の肉棒が強引に割り入っていく。真ん中辺りの窄まりも矢じりのような先端に開かれて、奥まで一気に。
「んひ・・・・・・! ひ、う・・・・・・っ・・・・・・んん・・・・・・っ!」
圧迫感。内臓に他人のものが侵入する感覚。
そういうものに一瞬遅れて、下腹部から頭、胸の奥に向かって流れる甘美な刺激。
「んんう、ぅあっ・・・・・・あ、ひぃあああああ・・・・・・!」
引きつった女の悲鳴は、怪鳥に似ていた。
女という体裁を整える余裕もない。ずっとお預けされて、待ち望んでしまっていた絶頂が訪れる。飢えていただけに、その深さもひとしお。
武蔵は、意識がここではないところにトぶのを感じた。
チカチカと白い明滅の隙間に見える景色。黄金色の雲の向こうに如来が見える。紫金の如来はその手に摩尼宝珠を掲げて武蔵を迎えている。
「あ・・・・・・か・・・・・・は・・・・・・!」
縛られた両手を胸の前で畳み、顔を天に向けて震えている。
串刺しにでもされたような無様な痙攣は、武蔵の体が敗北のアクメに至ったことをなによりも如実に示していた。
「は・・・・・・かひ・・・・・・ひう・・・・・・う・・・・・・っ・・・・・・!」
しかしそれは永遠ではない。意識を半分彼方に押しやるほどの強く、甘美な絶頂も引く。体の内側より起こる快感の奔流を持て余して、震えながらではあるが武蔵は戻ってきた。
(違う、あれは・・・・・・)
確かに見えたあの景色は、武蔵の目指す空ではない。禅を続けると時折見える華美なる空想。何事かを掴んだような錯覚。その類のものだろう。
自分さえもそぎ落とした先に見えるものは、武蔵の目指すものがあんな、絢爛豪華なものである筈がない。
第一、 剣境を極めた先にある筈のそれが、敗北アクメで見えて堪るものか。
「どうした、動け。お前がどれだけ達しようが俺が満足するまで終わらないぞ」
「く、くく・・・・・・う・・・・・・!」
目尻に浮かんだ涙は、激しすぎる絶頂に飛び出たものか。それとも悔しさか。
武蔵は両手を、男のぶよぶよとした腹の上に乗せて腰を振った。
「ふぐ・・・・・・う・・・・・・! くふ・・・・・・あ・・・・・・んああ・・・・・・!」
絶頂を迎えたばかりの、蕩けてしまった膣には刺激が強い。殺しても殺しきれない快感が立ち上り、甘い声を漏らしてしまう。
「ま、悪くない」
自分から男に跨って腰を振ったことなど、経験がないのだろう。もちろん、恋人であるあの少年にもしてあげたことはない。
それだけに稚拙な、単調な腰の遣い方だが、今はそれでいい。
飢え切っていた膣が絡みつき、熱く粘っこい愛液に包まれる快さに、もう少し浸っていたい。すぐに果てるのは勿体ない。たっぷりと味わうには、不器用な腰の振り方がちょうどよかった。
「ん・・・・・・ふ・・・・・・ふ・・・・・・あ、く・・・・・・んっく・・・・・・んう・・・・・・!」
武蔵には、余裕などあるはずもない。
襞を擦り上げる肉棒の感触が、そのまま快感で、下りてきたばかりの武蔵を苛む。
クイ、と腰を持ち上げると亀頭の出っ張りが膣肉を擦りながら出ていく。肉棒の感触を失った奥の窄まりが、その瞬間に切なく震える。
「んぎ、ひ・・・・・・ひぐう・・・・・・!」
パツン、と肉音が鳴るほど激しく腰を落とす。切なくなった場所もまとめて、硬い肉棒が擦り上げて、武蔵の頭の大切なところを蕩けさせる。
「ん、は・・・・・・あ・・・・・・はあ、ん・・・・・・んあ、は・・・・・・あ・・・・・・!」
少し慣れてきたのだろう。腰の動きが早く、滑らかになってくる。
ここまで昂ぶり、嬲られた体は夢中にならざるを得ない。
気持ちいいという感覚が連続して襲い掛かる。奥の好いところを擦られると、思考が溶けていく。
「は・・・・・・は・・・・・・は・・・・・・!」
馬を駆るような動きで、武蔵の腰は上下する。
もう、誰の上に乗っているのかも判らない。夢心地になってしまった女に、その快さを妨げる情報は入ってこない。
「ふふふ・・・・・・はは、はははは!」
堪え切れない笑いが溢れた。
なんと痛快な光景だろうか。
ゴブリンも、翼竜さえもその二刀の前では露も同然。一瞬、刀が空に煌めいたかと思えば血を吹く肉塊と化す。それほどに強い剣士でありながら、容貌は正に花のよう。
それも温室で育てられた人工の花ではない。野原に誇るが如き沈丁花のような。
そんな女が、自分の上で腰を振っている。最早命じられたからではなく、快楽に我を失って。
部屋の中に響く肉の音も、腹の奥で愛液をかき混ぜる音も、武蔵が自らの意思で奏でている。
小生意気に締め付ける膣肉の快さも、妖しく肉棒をくすぐる襞の蠢きも。
「あっ、あはぁん・・・・・・!」
汗の雫を散らしながら、官能の吐息を漏らすのも全て、武蔵が肉欲に溺れて演出しているものなのだ。
当人は、そんな演出はもののついで。貪る快感のおまけでしかないのが余計に男心を満たす。
「はあ・・・・・・! あ、は・・・・・・はあ・・・・・・! あ、あっ、ああ・・・・・・!」
目を閉じて悩ましげに吐息を漏らしながら、腰の動きが変化する。
切なさに耐えられなくなっている。
もう一瞬でも武蔵の奥から肉棒の感触を脱したくない。深く咥え込んだまま、上下の激しい摩擦を失って、そこからでも快楽を得られないかと考えている。
カクカクと、小刻みに腰が動く。膝を立て、一番奥に亀頭を擦りつけるような動きに変わった。
「く・・・・・・!」
うぞうぞ、と肉のブラシが肉棒を舐るように撫でていく。切なさに堪え切れないように一段と締まる膣肉は、キツいとさえ思う。
「うああ・・・・・・! あ、あひ・・・・・・ひぃ、ん・・・・・・ん・・・・・・ん・・・・・・んう!」
細かな上下に加えて、円を動くグラインド。
膣の好いところで、肉棒の感触を味わい尽くそうという貪欲な動きであった。同時にそれは、武蔵の更なる絶頂が近いことを示し、熱く粘っこいものを奥の小部屋に注ぎ込んで欲しいという哀願であった。
「あっ・・・・・・あ・・・・・・は・・・・・・はぁん・・・・・・! う・・・・・・んあ・・・・・・あ・・・・・・はあ・・・・・・!」
吐息にも切迫感が混ざる。
武蔵の体が内側に硬直し、離陸体勢を整える。体が勝手に、絶頂に向かって準備を整えている。
「は、は、あ・・・・・・あ、イク・・・・・・! あ・・・・・・く・・・・・・んくう・・・・・・!」
受動的に、挿入されると同時に達したのとは根本的に違う。
武蔵が肉欲に逆らえずに快感を貪り、自ら絶頂を追い求めているのだ。
「く・・・・・・!」
男の方も限界が近い。快感を貪る膣の動きは激しいうえに変化が大きい。本能的に、射精への導き方を心得た動きをする。
「あ・・・・・・あ・・・・・・っ、は・・・・・・あ・・・・・・ああ!」
きゅっと、膣口が締まる。連動するように奥に向かって狭まった。
「あ、ひ・・・・・・んっ・・・・・・んんう・・・・・・!」
ピン、と背を弓なりに反らして硬直。下腹部から波打つような震えが起こり、全身に伝播する。
「・・・・・・っ!」
言葉もなく、武蔵は達した。そのあまりにも甘美な余韻に堪えかねるように、体は不規則な震えを繰り返している。
「ふ、う・・・・・・」
染み一つない武蔵の白い腹。うっすらと筋肉の浮かぶ引き締まった腹の奥に、男の粘っこい精液が注がれている。
女の体は、女の思い通りにはならない。
望まぬ男のものであっても、下りてきた子宮口は貪欲に精液を吸い上げ、自分の卵子と結合させるために精子を導いていく。
(ああ・・・・・・いま・・・・・・結構まずい、かも・・・・・・)
深い絶頂に、忘我の心地に浸りながらも武蔵は自分の腹の奥が感覚で判った。
何度もこの男に注がれた精ではあるが、こんな感覚は今までなかった。
聖杯のような形をした子宮が、この中年男の精子の到達を悦んでいる。器の中に白い粘液が満たされることに、疼くような悦びを見出してしまっている。
(これはもう、斬れない・・・・・・)
たとえ、恋人を救い出せたとしても、もう武蔵にはこの男を斬ることは叶わない。眠っていた武蔵の悦びを引き出し、子宮さえも満足させた男の命をこの手で断つことを、武蔵の心が否定している。
(でも、それだけ・・・・・・大丈夫、マスター・・・・・・まだ、武蔵ちゃんは折れてないからね)
線引きは生きている。この男は敵に違いない。
最早言い訳のしようもないほどに、体はこの男に堕とされた。陥落されたことは、誰よりも武蔵自身が判っている。
しかしそれだけのこと。誰のためになにをすべきか、それは何一つ変わっていない。
「よくできたな」
余韻の甘い痺れが取れず、横になって呼吸するだけの武蔵の頭を男が撫でる。
胸が疼くような気がしたのは、きっとなにかの間違いであろう。