FGOエロ小説まとめ 作:お一
恋は、花に似ていると誰かが言った。
確かに、とも思う。正に恋をしている最中は美しい花弁が開いたように心が晴れやかになり、芳しい香りに蕩ける高揚は夢中になる。
いやいや、そうではない、とも。恋は、それを得た瞬間に恋となるのではなく種に過ぎず、その時が来た瞬間に発芽し、花となるのだ。
ブリュンヒルデに初めて会った時も、立香はそれが恋とは思わなかった。
人理を背負う、人類最後のマスターとなった日。盾の英霊、ギャラハッドの性能を受け継ぐ少女を相棒に、終わりの見えない絶望的な戦いに身を投じたあの日、カルデアの召喚システムで縁を紡いだのはブリュンヒルデだった。
どういうことなのかは判らない。英霊召喚のシステムはどちらかに縁となる由来があれば両者を結びつける。立香かブリュンヒルデのどちらかに、当人も知らない縁の素のようなものがあったのか。
長い、あまりにも長い浅葱色の髪に、見惚れたことを覚えている。
「ブリュンヒルデ。クラスは、ランサー・・・・・・」
いきなり真名を名乗り、高名な戦乙女に相応しい巨大な槍を携え、似つかわしくない可憐な声で、囁くように続けた。
「私に、優しくしないでくださいね・・・・・・マスター」
どちらかと言えば華奢な、すぐにも手折られる百合の花を想起させる彼女は、陰気だった。
陰のある、という表現は到底及ばない。声は小さく、歩き方も楚々としている上に背が丸まって、意見もしない。
三歩下がって影を踏まず、常に付き従って指示を待つ。指示があれば、言われた通りに望まれた戦果を挙げてきた。そんな姿が頼もしく、そんな彼女が美しく、気づけばいつも目で追っていた。
ブリュンヒルデは、人格に異常があった。
狂気とは違うのだろうか。呪いではあるのかもしれない。愛した者に対する愛情と殺意がなんの矛盾もなく彼女の内側で同居し、その発露を常に脅え続けている。並の狂人など及びもつかない異常さを、彼女は常に持っていた。
自分など、彼女が指を少し動かせば死ぬ。そんなブリュンヒルデが不満の一つも漏らさず、表情一つ変えずに自分に従っているのは、気分がいい。これは人類なら誰でも抱く優越感。
そして絆を深めて情が湧いた頃、彼女の異常性に儚さを見出してしまい、放っておかれなくなった。
「困ります、マスター・・・・・・私、優しい貴方を・・・・・・」
殺されてはやれない。自分は人理を背負うマスターなのだ。だがそのことと、この優しく美しい戦乙女に対する情は別物。
ブリュンヒルデが英霊となる以前、大神の命で勇士を集めていた頃に見た、どんな戦士とも違う。使命感と情の深さを併せ持つ少年は、まったく別種の勇敢さを持っていた。
ブリュンヒルデ個人としても、このマスターに傅き、人理救済の使命の一端を担いたい。そのためには、ブリュンヒルデの個人的な恋愛感情など些末である。
彼女の中で膨らむ恋愛感情と、背中合わせの殺意を使命感で押し殺し、とうとう彼らは七つの特異点の果て、時間神殿で元凶を打ち果たした。
悲しい別れを経て、ようやく手に入れた平穏。その時の立香の表情を見て、思わず槍を握る腕が動いたほどの愛情(殺意)を覚えた。
「ダメ・・・・・・!」
押し殺した。この勇士の結末がこんなでは、あまりにも無体。自分の腕をへし折るほどに強く戒めて、ブリュンヒルデは自身の主を称えた。
「ありがとう、ブリュンヒルデ」
全ての辛苦と悲しみと寂しさを押し殺し、達成感と安堵に顔を綻ばせる少年。マシュに並ぶ最古参の相棒にしか見せない、無防備な仕草で立香は微笑んだ。
そのすぐ後に、別れの時が来た。人理修復が終わって、全ての英霊がカルデアから退去する。既に世を去った英霊は、現世に生きる彼らを見守る立場。個人としてどんな感情があろうとも、そこだけは揺るぎない摂理である。
自分の気持ちを殺すことに慣れたブリュンヒルデは、全ての悲嘆を押し殺し、眉をひそめた物憂そうな表情で、淡々と別れを告げた。
「待って・・・・・・!」
退去する寸前、立香が走り寄って手を取った。
「マス、ター・・・・・・!」
「あ、の・・・・・・」
なにを言うべきか。一瞬だけ悩んだようだが、胸の中の全てを込めて、
「ありがとう・・・・・・!」
泣き笑いのような、そんな表情がブリュンヒルデの見た最後の立香の表情だった。光に包まれていく視界で捉えたその表情は、この世のどんなものより輝いていた。
もう会うこともない。
ブリュンヒルデが最後に愛した彼は、これから平穏の中で生きて、おそらくは自分と同じくらいの絆を紡いだあの盾の少女と共に、人生を歩むのだ。
それが当然の理屈であり、彼が壮絶な戦いの果てに手にしたあまりにもささやかな権利だが、そこに自分が加われないことへの悲しみを秘めながら、ブリュンヒルデは退去した。
英霊の座には過去と未来の全てがある。体験は全て記録され、初めからそこにある。ただ、意識する瞬間が訪れて、思い出す機会が増える。少年との大切な思い出を意識して、またいつか自分が必要とされる瞬間を待つ。
その筈だった。
「ブリュンヒルデ!」
しかし、次に見たのは立香だった。
「マスター・・・・・・?」
なにがあったのか。
平穏に包まれた筈の立香は全身傷だらけで、顔には真新しい絆創膏が張ってある。そもそもカルデアですらない。全ての顛末を聞き終えて、ブリュンヒルデは唇を噛んだ。
「そんな、ことが・・・・・・」
あったのか。それとも、許されていいわけがない、なのか。どちらが後に続く言葉なのかブリュンヒルデにも判らない。
確かなことは、立香と共に戦い抜いた全てが台無しになり、この少年はまたも命を懸けて人理を背負ったということ。
なんという現実だろうか。あれほどに嘆いた自分の運命など、この少年の背負ったものに比べればあまりにも些事。思わず涙が溢れ、顔を覆ってメソメソと泣き始めた自分の肩を抱きながら、
「また会えて嬉しい・・・・・・」
そう言ってくれた立香の優しさと逞しさと痛ましさに、またも涙が溢れた。
ただ、嬉しくもあった。この少年の果てしない戦いの、一本の槍となって戦えることが。なによりも、シグルドに並び立つほど愛おしい少年の顔を、もう一度見られたことが。
「ああ、これが・・・・・・」
そして、その時が来た。
白の世界。雪と氷と、獣と巨人。そして神。痛みに似た寒さが溢れ、無垢な筈の白の景色におびただしい赤が散る、残酷な優しさに満ちたあの場所。いきなり、仮面の戦士に壊滅させられそうになった、白銀の世界。
そこで、立香は見てしまった。
ずっと心で望んでいたのに、深いところで激しく拒んでいた光景。ブリュンヒルデとシグルドの邂逅である。
恋の自覚は失恋と同時だった。
特定のどんな行為や言葉に中てられたわけではない。二人を見て、そしてその二人の顛末を知るワルキューレたちを見ていて、思ったのだ。
自分の入る余地はない。
炎の巨人と魔眼の少女の最期を見届け、崩れ落ちる空想樹を見ながら、そんな実感が胸に穴を開けた。
そこから幾度も命を懸けたが、常に傍らにはブリュンヒルデ。あの白い世界でのことがなにもなかったように、これまでと変わらず仕える戦乙女の姿があった。
そして、あの場所で紡いだはずの縁が、カルデアにシグルドを連れて来ることはなく、愛情も殺意も全て、それを向ける先を取り上げられて、痛ましい平穏の時間が過ぎる。
なんとなく、ブリュンヒルデに申し訳ない。そんな気持ちが端々に現れたのだろう。ブリュンヒルデはとうとう、立香の態度に我慢が出来なくなった。
(私は、なにかしたのでしょうか・・・・・・)
陰気な性質だ。誰かの態度が変われば真っ先に自分の落ち度を探る。それが、シグルドに並ぶほど愛した男なら当然のことだ。
とはいえ、ブリュンヒルデはそこで単に思い悩むだけの乙女ではない。そもそも神話の時代の女だから例に漏れずどことなくズレているのもあるが、彼女は自身の人生を強い教訓としている。
つまり、相手の態度が急に変わったら記憶喪失を疑え、である。
さっそく、魔法寸前の原初のルーンをたっぷり用いて、立香の頭と胸の中の、底の底までも探ってみた。それはもう、海底に地引網を掛けるように総ざらいで。
「まあ・・・・・・」
少年らしい愛らしい秘密も知った。なんなら一人遊びでどこが好きなのかも完全に把握した。
そしておぼろげに察していた好意と、その好意に自ら蓋をする、健気な気遣いも。
「マスター・・・・・・!」
気づけば駆けていた。すれ違った妹たちが、顔色を変えた長姉に何事かと驚いて後に続いたのさえ気づかなかった。
「え、ブリュンヒルデ?」
急に自室に入ってきたブリュンヒルデに驚く暇もなく、立香の顔はブリュンヒルデの胸に埋まっていた。
そこから先の記憶は、断片的にしか残っていない。
思いの発露というのはこんなにも激しいものなのか。翌日の二人はなったこともないような場所の筋肉痛に悩まされることとなった。
後を追いかけたワルキューレたちが、最初の方を覚えていたようで、しばらくブリュンヒルデとも立香とも、目が合うと顔を真っ赤にさせていた。
無理もない。立香の若さの一目惚れなど、それこそ身も世もないほどの情熱だろうし、それを気遣いで抑え込んでいたとなれば、反動も凄いことになる。
ブリュンヒルデは言わずもがな。相手を殺したくなるほどの愛情が、彼女の纏う青い炎に劣る筈がないのである。
とはいえ、思いに従った初めての夜は、その思いが強すぎただけに記憶がおぼろ。それではあまりにもこの真摯な慕情が哀れであり、且つ、勿体ない。
貞淑な性質だから、ブリュンヒルデは自ら立香を襲った(といって過言でない)ことを反省し、二度目以降はずいぶん気を遣った。
ブリュンヒルデを含むワルキューレは、精剛なる勇士をもてなす技術も習得している。英雄は色を好むものだ。来る最終戦争に向けて集められた勇士を満足させられぬ者はワルキューレではあるまい。
誘うのは、どちらがということもない。場所も、人気のない場所であるならばプライベートを保証する条件に拘らない。
「ああ、マスター・・・・・・」
手を繋ぐ。
指を絡めて、胸の高さで結び合う。二人で見つめ合うと、一度目の情景が蘇る気がした。
(白い・・・・・・)
そう、覚えている。頭の中から抜け落ちた激しい情交の光景を、体が覚えているし網膜も記憶している。
ブリュンヒルデの白い肌は、あの時の雪よりも清純で、それでいて優しい。その肌が自分の腹の上で踊っている。表情は思い出せない。目を閉じて、頬を赤らめながら吐息を漏らしていた気もするし、優しく見守ってくれていた気もする。
「ちゅ、む・・・・・・」
唇を押し付け合う。
性行為を楽しむために、心と体をゆっくりと高揚させるための前置きではない。互いの愛情が、表現法を求めて蓄積し、鬱屈にも似た圧縮の末に溢れ出した行為。
口づけ以上に、この胸の中の思いを表現する方法が見当たらない。そんな、男女間で最も真摯なキスは、ひどく優しい。
「ん・・・・・・」
少しだけ開いた唇を押し付けたまま、動かない。
しっとりとしたブリュンヒルデの、愛らしい唇が立香の唇にくっつく。水分が吸着するように、立香の唇にぴったりと吸い付く。
まるで、この状態で生まれたような。初めは繋がったままで生まれたのに、なにかが起きて引き裂かれた二人が、ようやく自然な状態に戻った気さえする。
鼻からの互いの細い呼吸が、少しくすぐったい。
いったいどれほどそうしていたのか。当人たちには判らない。まるで宇宙の時間が止まったように、永遠だったような気がするしこの先も永遠のような気がする。
そっと、どちらともなく唇を離したのは、このまま一つの生き物になってしまっては愛情を交わす機会がなくなるからなのかもしれない。
二人は一つでなく二つだからこそ、こうして愛を交わし合うことが出来るのだ。
「・・・・・・ふふ」
絡めた指と手をにぎにぎ、と。見つめ合ったまま、言葉もない。
額を合わせ、目を閉じながらそんな微笑ましい仕草に没頭する。傍目から実にくだらない。なんの意味もない行動だが、熱中している二人は充分過ぎるほど楽しい。
自然と笑いがこみ上げてくる。照れた笑いを何度もこぼしながら、手を握り合ってじゃれる。
が、ブリュンヒルデがするりと手を抜いた。
喜びとキスの昂奮、なによりも高まった体温が手の内側で温められて、手汗が浮かんできた。ブリュンヒルデの白く細い指が解かれ、立香の手から滑り落ちる。
手汗を恥ずかしがる乙女の仕草に、立香は胸に迫るものを感じ、思わず抱きしめた。
「ああ、ブリュンヒルデ・・・・・・」
言葉にならない。これほどの恋をしたことはない。未成年らしい、子供の恋愛しか知らない立香には、自分の身さえ焦がす恋の炎は初体験だ。
この女性には自分以外にも好きな男が、いや、愛する男がある。そのことが余計に胸の炎を燃え上がらせる。
奪いたいのではない。目の前の女性の、燃やし尽くさんばかりの愛情を自分だけのものにしたいわけではない。嫉妬ですらなかった。
誰もが知っている英雄シグルドとブリュンヒルデの悲恋。そこに並ぶほど、ブリュンヒルデが自分に恋してくれたことへの誇らしさが、立香の恋をより燃え上がらせるのだ。
だから、おそらく他にはシグルドしか知らないであろう、手汗を恥ずかしがるブリュンヒルデが愛おしく堪らない。
男の愛情は不器用だ。いつもは手の中で温めるようにして対象を守りたいと欲するも、その対象を前にすれば嬲り尽くしたい欲求へ変ずる。
この、ブリュンヒルデの体を知り尽くしたい。そして、染め上げたい。純粋な男の欲求は、その寸前の庇護欲と一切矛盾することなく同居し、その許可を求めるように首筋に頭を擦りつける。
子猫が甘えるような仕草の真意を、女は汲み取ってやらねばならない。ブリュンヒルデは立香の頭を撫でて、腰を抱く。その下の、尻の辺りを撫でさすって、拒んでいないことを伝えた。
「ああ・・・・・・!」
立香の、吐息交じりの感嘆には切羽詰まったような切なさが混じる。このまま押し倒して本能のままに蹂躙し尽くせれば、どれだけこの衝動を満たすのか。
しかし、夫が居ながら自分のことをも愛してくれた女性に対し、その衝動任せの蛮行はあまりにも非礼。その非礼は彼女の愛するシグルドにも同様だ。
ぐっと、衝動を押し殺しながら、抱擁を解く。
手を、太ももへ当てる。
「ん・・・・・・」
愛らしい声がブリュンヒルデの唇から漏れる。そこに不快や拒否の色が混ざっていないことを慎重に見極めて、黒いミニスカートから覗く白い肌をゆっくりと撫でた。美術品を扱うかの如く、丁重に。
ブリュンヒルデの鎧は軽装で、基本的には籠手と脛当てで、後は申し訳程度に腹当てがあるだけだ。無論、これは戦う時の装束だから恋人同士の語らいには必要ない。
しかし英霊であれば最も目にする姿はやはり戦装束だろう。長い戦い共にしたのだから、立香は絵に起こせるほどにその姿を記憶している。
印象に残るのはやはり、この白い太ももだろう。身の丈を超える巨大な槍を軽々と扱うくせにひどく華奢な、その体躯を象徴するようなこの細い足が、唯一無防備に覗く箇所だけに鮮烈な印象である。
いたわるような手つきで撫でる。立香の頭には、この少し登った先が、女にとって最も秘めたる場所であることは浮かばない。
(この、方は・・・・・・)
ブリュンヒルデも感に堪える思いである。
立香の優しさが充分過ぎるほどに伝わり、その優しさに応えてやりたい。
(こんな体でいいのなら、好きにしてくださればよいのに・・・・・・)
立香の手を包み、胸へと誘う。
ブリュンヒルデは他の英霊に比べると、現代的な服装をしている。よく判らない露出はせず、意匠も派手ではないので馴染みが深い。
上半身はニット生地のセーターで、胸の形が浮き彫りになるのが隠したエロティシズムという具合で、倒錯的である。本人の慎み深く陰気な性格に反して、少し頭が混乱する。
柔らかい素材の向こうに、更に柔らかくもハリのある独特の感触が掌に広がる。少し、指を曲げれば沈んでいく。そして更に、肉の感触が強くなる。
「どう、でしょうか、マスター・・・・・・わたし、その、体つきにはあまり、自信が・・・・・・」
消え入りそうな声だった。
ダウナー気質のブリュンヒルデからすれば、カルデアに数多存在する女性の英霊たちに比べて、自分の体は貧相に見えるのだろう。
(いや、むしろ・・・・・・)
頭より大きな乳房だとか、尻の曲線そのものが芸術になるだとか、そんなのがそもそも異常なのだ。ブリュンヒルデの言いたいことは判るのだが、この美貌にこの均整の取れたプロポーションでそんなことを言えば、世の女性から袋叩きにされても文句は言えまい。
「すごい、ああ・・・・・・すごい・・・・・・」
語彙が溶けた。
ブリュンヒルデは、生前も英霊になっても、一人前の勇士ばかりを見てきたから少年を買いかぶり過ぎている。
思い人に乳房を触ることを許された少年に、その感触を味わう以外に余裕のあろう筈がない。況してや、他の者と比べるなど及びもつかない。
(・・・・・・可愛らしい)
立香の緩んだ表情を見て、思わず漏れた感想。
それは、ブリュンヒルデが抱くには珍しいもの。常に自分の殺意に脅え、その殺意に翻弄され、ともすれば厭世的にさえなる彼女が、心から愛らしいと思うものなどこの世にいくつもない。
彼女は誰かに仕えることに慣れている。しかし、自分を使役する者を相手にそんな感情を抱くのは、初めてのことだった。
胸が高鳴る。
乳房など、ブリュンヒルデにとっては男に差し出すだけのもの。差し出された男がこの胸をどのように嬲るか、それだけのことに過ぎない(シグルドは唯一例外ではあるものの)。
その自分の乳房にときめいて、夢中になってくれて、こんなにも緩んだ表情を見せてくれる。女として自己肯定感がくすぐられる光景であり、優越感をそそる情景でもある。
なによりも嬉しいものだ。自分の体に夢中になっている思い人を見るというのは。
「ああ・・・・・・」
ニット越しに、遠慮がちに乳房を触る立香。表面に指を押し付けるだけで、揉むという行為にさえ至らない。これが少年故の微笑ましい躊躇いからなのか、それともブリュンヒルデに遠慮してのものかは、さすがに判らない。
判らないならどちらにも配慮すればいい。ブリュンヒルデは平素の慎ましい仕草が嘘のように、大胆にニットをたくし上げた。
「へえ、あ・・・・・・!?」
神話の時代にはブラジャーなどないのか。それともブリュンヒルデの好みなのか。ニットの下はノーブラで、形の良い乳房がまろび出るようにして現れ、薄桃色の美しい先端が、立香に向けられた。
白い肌。透けるような、というのはありふれた表現だが、他に形容しがたい。透明感という抽象的な表現が、これ以上ない具体性を持っていたのだと、実物を見て初めて思う。
きめの細かな美しい白い素肌。そもそもこの肌を拝める者がそう居ない。それが、美しい曲線を描いて膨らみ、先端には突起まで備えている。
息も忘れるほどに美しい。
しかし、冷静に観察していられるのも数秒のこと。少年の青い欲情は理性が制止を促すよりも早く、その二つの膨らみを手中にしていた。
二人で愛を紡ぎ合う行為に、ブリュンヒルデの体も熱くなっていた。ほんのりと汗ばんだ乳肌が立香の指に吸い付き、我知らずブリュンヒルデは背を少しそらして、胸を立香にアピールする。
男には判るのだ。そんな、健気な女の媚態は。
両手を動かして、乳房を揉む。指を沈ませ、その感触を楽しむために少し力を入れ、手を僅かに動かして捏ねるように。
「あ・・・・・・」
恥ずかしげに少し顔を逸らし、目だけで立香の手元を見る。到底顔など見られるものではないが、手の無邪気そうな動きを見るだけで、夢中になっているのは判った。
快感というのは、少し違う。乳房自体には別に快感に繋がるような、淫らな神経は通っていない。むしろそれらを集約したように、乳首が敏感だ。立香は敢えて乳首を避けて愛撫している。
今はまだくすぐったいような、肌の奥にある凝りのようなものが解れるような、そんな快さ。性行為の愛撫というよりはマッサージに近い。
そういう快さで、少しずつ肌が火照る。気持ちが、熱くなっていく。自分ではない者が、自分でもあまり触らない場所に触れるという違和感が、薄くなっていく。
ゆっくりと、体が準備を始めていく。
この感覚は、激情のままに押し倒し、記憶も残らない激しい情交を終えた一度目にはなかった感覚である。なんと心地よく、なんと幸せで、なんともどかしい時間だろうか。互いに気遣いと愛情の基礎の上に、快感を積み重ねる行為の尊さが、胸の奥を熱くする。
「はあ、はあ、はあ・・・・・・!」
受ける女ほどに、男は余裕がない。
この乳房を楽しむために一切の余念はなく、なんならこの行為は前戯ですらない。ただ女の体を味わい、楽しむ、それだけの行為。
だからだろう。常に気遣いを忘れない立香が、つい断ることも忘れてブリュンヒルデの乳房に舌を這わせ始めたのは。
「ん・・・・・・」
ぬめった温かい舌が、乳肌を滑っていく。
別に快くはないが、不快でもない。ブリュンヒルデの頭は、自分がもし乳房にまで汗を掻いていたら、その匂いと味がこの少年に伝わってしまう恥ずかしさでいっぱいだった。
「へあ、あ・・・・・・」
立香は既に、脳を焼かれている。
舌に跳ね返る弾力と、なめらかな触感。男の脳の奥を蕩かせる女の香りに微醺を帯びて、軽く酩酊状態である。
むしろ汗を舐めとるように舌を動かし、その肌に唇を押し当てる。
「ちゅぶ、ちゅ・・・・・・っ」
「あ、ん・・・・・・!」
少し痛み。乳肌をつねるような鋭い痛みが一瞬走る。ヴァルハラで勇士を歓待する際に、何度か覚えた痛みだ。
男というのは自分が嬲った女に印を刻むのが好きらしい。粗暴な勇士たちに何度もつけられたキスマークは、ブリュンヒルデにとって決して好ましいものではない。
しかしその印を刻むのが立香ならば、一か所では足りないとさえ思った。同時に、そのキスマークを鏡で見てはいけないと強く自分を戒めた。
(きっと、その瞬間に・・・・・・)
全てを置き去りにした炎のような愛情が、この愛しい主を刺し殺すだろう。記憶を置き去りにしたあの一夜の激情が、情交ではなく殺意として顕現する。
谷間に顔を突っ込んで、左の乳房を舐る。かと思えば急に顔を反対に向けて右の乳房に吸い付く。なんと贅沢な時間だろう。谷間の内側で蒸れた暖気は、ブリュンヒルデの体臭を含んで、視界は乳房で埋まって暗い。ブリュンヒルデに溺れそうな気分だ。
しかし時間は無限ではなく幸福も限りがある。だからこそ、次の段階には無限の希望と楽しみが待つのだ。
一度、立香は顔を離し、狙いを定める。無意識に唇が窄まった。
ブリュンヒルデが、愛らしく喉を動かして唾を呑んだ。我知らず、立香の目は鋭さを帯びて、女を狙う男の逞しさが宿っている。
突進するような勢いで顔を押し付け、唇で吸い付いたのは、ブリュンヒルデの乳首。薄桃色の可憐な先端である。
入念に乳房を嬲られて、ひとりでに硬く屹立した乳首は、立香の目には宝石の如く映った。勢いは突進だったが、立香はむしろ灯りに誘われる虫の気分で、乳首に吸い込まれた。
「あむ・・・・・・」
「ん・・・・・・!」
鋭く走った快感に、鼻に掛かった甘い声が漏れる。
ブリュンヒルデは乳首が弱い。指で優しく転がされるだけで蕩けてしまうのだが、無論立香には判らない。ヴァルハラで歓待を受けた勇士さえ知らないだろう。この慎ましい女性は、自分の弱点を簡単に曝け出しはしない。
立香は単に、恋した女の乳房を味わう昂ぶりの果てに、思いついた遊びに過ぎない。明確な目的もないし、ブリュンヒルデが悦ぶという確信もない。
ついでに、むしゃぶりついた後になっても、ブリュンヒルデの反応に気を配る余裕もない。
(うっま・・・・・・!)
吸い付きながら舌で転がす。
カサついた粘膜の感触は他に類型はない。味らしいものもない筈なのだが、昂奮に陶酔した立香は麻薬患者と同じである。ブリュンヒルデの体臭という麻薬は、脳髄を蕩かせて立香から正常性を奪う。
中毒者がそうするように、夢中で乳首を舐めしゃぶった。
「あ、あっ・・・・・・あ、ん・・・・・・!」
手で口元を隠し、漏れる吐息を押し殺そうと試みるも、抑えられない。
その仕草が余計に、男を昂らせる。
左の乳首から右の乳首へ。
「あっ・・・・・・! マスター・・・・・・!」
哀れを誘う声音は、女の意図を含んでいる。
手心と容赦を乞うくせに、同時に蹂躙をねだっている。適度な反抗が男の獣欲を煽ることを、女は本能で知っているのだ。
ブリュンヒルデは無意識で、立香の男をくすぐる。
「あ・・・・・・ん、うっ、あ・・・・・・は、あ・・・・・・!」
夢中になっている立香に、技巧などはない。ブリュンヒルデを気持ち良くしてやろうという気配りさえない。ただ胸を焦がす激情と昂奮のままに、乳首を舐めて吸って、嬲っているのみ。
だから、容赦がない。反応を見て強弱や緩急をつけるということがない分、立香の乳首責めは激しい。性感帯を容赦なく嬲られて、ブリュンヒルデはもう嬌声を抑えられない。
意図せず、声が漏れる。それも自分でも信じられないくらいに甘い嬌声が。
腰を中心に体が震える。不規則に、抑える暇もなく。
ビクン、と腰が一瞬跳ねて、取り繕ってみても何秒か乳首を責められるとまた弾む。その腰の動きが全身に伝播して、淫らに体が波打つ。
男というのは厄介だ。夢中になっているくせに、そういう光景を見忘れたりはしない。
「ん・・・・・・んっ、んう、ん・・・・・・んっ!」
もう目を閉じて、頭を蕩かせる快感に酔ってしまいたくなる。
しかし、女の頭は時に当人が嫌になるほど冷静なことがある。ここでは、とブリュンヒルデの良識と羞恥心が語り掛ける。
愛情の昂ぶりのままに、倉庫で事に及んでしまっている。シグルドと立香になら、呆れられない程度であるならば、どんな痴態でも演じて見せるが余人の目がコンマ一パーセントでも入りかねない状況では、頼まれない限りお断りである。
「ん・・・・・・」
せいいっぱいに快感に抗って、ブリュンヒルデは自分を取り戻し、胸をより強く立香に押し当てると共に、立香のズボンのファスナーを下ろした。
「ブリュンヒルデ・・・・・・」
男の頭にそういう冷静さはない。されるだけでは物足りなくなったのだろうと、見当違いの当たりをつけて、取り出しやすいように腰を突き出す。
ブリュンヒルデの白い指が、ファスナーの開いた隙間に滑り込み、優しくそれを取り出した。
サイズは平均だろうか。ただ若さを象徴するように天に向かって雄々しくそびえる肉棒は、持ち主から想像もつかぬほど逞しい。うっとりするよりも、この愛しい主にもしっかりした男性機能が備わっていることに安心しながら、ブリュンヒルデは扱き始めた。
「ああ・・・・・・!」
特に触られてもいないのに、とっくに限界まで勃起していた怒張は、ブリュンヒルデが指でさするだけで先端から透明な粘液を溢れさせた。
やはり若いのだ。普段の冷静なブリュンヒルデなら、ここで主に恥をかかせないよう、ゆっくりと優しい愛撫に切り替えて射精を引き延ばすところだが、彼女も乳首責めで蕩けている。状況も状況だから、指使いに手加減はない。
「ああっ・・・・・・!」
白く、細く長い指が、それぞれに別な角度をつけて肉棒をなぞる。
根元から先端に向かってゆっくりと、どちらかといえば嬲るように。指先だけが、楽器を奏でるように繊細に張り詰めた怒張をなぞっていく。
それが、握られるよりも快い。
立香はブリュンヒルデの乳首を咥えたまま、腰を震わせた。
「んむう・・・・・・!」
しがみつきながら、喘ぎながら、乳首を強く吸う。
「んくっ、う・・・・・・ん・・・・・・!」
ブリュンヒルデも強い快感を堪えながら勃起を愛撫する。
我慢比べにも似ているが、終わりは早かった。
「ああ・・・・・・!」
もちろん、根負けしたのは立香の方。絶頂に直接回路が繋がっている性器への愛撫は、この若さでなかなか耐えられるものではない。
勢いよく先端から精が迸り、ブリュンヒルデの太ももに向かって放たれる。
「・・・・・・!」
太ももに愛おしい熱を感じながら、優しく扱いて射精をサポートしてやる。残さないように、尿道を根元から圧迫しながら先端へ。
心得た人妻のテクニックに、為す術もなくありったけの精を放つ立香。他人の手で射精させられる快感と満足感は、自慰とはとても比較にならない。
自分が恋した女の太ももを白く汚したことを自覚したのは、透明な残り汁すらブリュンヒルデの指に搾り尽くされた後だった。
「ああ・・・・・・ごめん・・・・・・」
謝罪の声は消え入りそうに。昂奮の冷めた男の罪悪感は、女には一生理解できないだろう。
「いいえ、マスター・・・・・・」
いつものように陰鬱なくらい小さい声で、しかししっかりと否定しながら、愛しい主に口づける。
褒め称えるように、一瞬だけ。
「ちゅ、んむ・・・・・・」
ハンカチを取り出して、太ももにへばりつく精を拭き取る。粘度の高い白い精液はすぐに拭き取れたが、さらりとした透明な方が肌にまとわりついて拭き取りづらい。畳んだままのハンカチでは足りないので、広げてぬぐい取る。
「マスター・・・・・・」
今度はブリュンヒルデから抱きつく。乳房も晒したまま、立香も下を向くペニスを仕舞えないまま。それでも、抱擁せずにはいられない愛情が突き動かす。
永遠のような数分、そのままで居て、どちらともなく身を離す。繕いをして、並んで出て行ったが、その間ずっと無言だった。
時折顔を合わせては微笑む。まるでオシドリのように。それぞれの自室に引き取るまで、二人は指を絡めて手を繋いでいた。
一度経験したカップルの行為は、大きく分けて二パターンある。
失敗したために次回のハードルが非常に高くなるパターンと、成功して喜びを知ったために、ハードルが極端に低くなるパターンだ。
「ちゅむ、う・・・・・・」
男の勃起に法則性はない。単に血流が良くなると海綿体が膨張して勃起する。性的興奮を覚えておらずとも、最大仰角を見せることがあるのだ。
しかし、女性にはなかなかその原理が伝わらない。それが他人か知人程度なら、女性にとって恐怖となるが、恋人であれば違う。ブリュンヒルデが、立香の何気ない勃起に気が付いた瞬間、一瞬だけ目を逸らし、顔を赤くした。
が、気を取り直したように目線を戻し、おずおずと提案した。
「あの、マスター・・・・・・お口で、して差し上げましょうか・・・・・・?」
サクっと、手軽に、気楽に、気持ちよくならないか、と。
ブリュンヒルデにとっても、自分で恋人が喜んでくれるのは嬉しい。時間、体調、気分などの状況で挿入を伴った性行為が難しいのなら、こういう喜ばせ方もある。
(とんかつは重いけどお茶漬けなら・・・・・・)
意外と、食べ始めれば漬物なり新香なり、なんなら焼き魚や卵も欲しくなる。その気になっていけば、始めてしまえばいい。場所も、立香の部屋だ。誰も邪魔する者はない。
ズボンのファスナーを下ろして、怒張を取り出して先端に口をつける。
隣に座ったままのブリュンヒルデは、上体を寝かせて顔をつけているから、角度的には肉棒の表の部分が目の前にある。
少し新鮮ではあった。女性の大抵は肉棒の裏をよく目にする。鏃のように、凶悪な膨らみを見せる亀頭に、感心する気持ちだった。
カリ首との段差の辺りにキスをする。指を裏筋に添えて、逃がさないように。
「ちゅ・・・・・・ちゅ、ちゅ・・・・・・むちゅ、う・・・・・・」
ブリュンヒルデの薄い唇を窄めて、出来るだけ設置面積が増えるように押し当てる。せいいっぱいの好意を乗せて。
「ちゅ、ちゅっちゅ・・・・・・ちゅ、ちゅむう・・・・・・」
無言である。もとより口数の多い女ではないが、それよりも唇で奉仕している時に気の利いた言葉は出てこない。男を称えたり、奉仕する喜びを伝えたりすれば昂奮してくれるかもしれないが、さすがにまだ恥ずかしい。
頬に朱色を差しながら、入念にキスをしていく。
立香は立香で堪らない。
単純な快感もそうだが、自分も意図していない勃起を丁重に愛撫される充足感はその類型すら未経験。胸に迫るものがある。
しかも、膝枕でもするようにブリュンヒルデの頭がすぐ傍にあり、美しい髪の放つ微香であろうか、かぐわしいものまで鼻をくすぐってくる。
思わず愛しさと感謝で、ブリュンヒルデの耳の辺りを指でなぞってみた。
「ん・・・・・・」
猫のように、或いは褒められた子供のように、ブリュンヒルデは目を細めて愛情を受け取る。そしてお返しをするように、更にキスを激しくさせた。
「くあ・・・・・・!」
キスマークは鬱血である。首やなんかの、皮膚の厚みのある部分では一瞬だが、性器でやると痛みが強い。心情としては、この張り詰めた肉棒の至る所にキスマークをつけて、不穏当な感情を向けている女の英霊をけん制したいが、かろうじて押しとどまる。
唇をめくれるまで広げて、接地面を広くしてキス。とても他人に見せられる表情ではないが、顔が見えないこの体勢でなら出来てしまう。
もっとも、どんな表情を見せようともこの主は見損なったりはしないだろうが。
「へあ・・・・・・」
満遍なく亀頭にキスした後、舌を伸ばす。
細い舌だ。が、それだけにちろちろと細かくよく動く。多少、自信もある。
カリ首のみぞに舌先を滑り込ませ、ゆっくりとなぞる。傘の裏側に舌のざらついた部分を擦りつけるように、焦らすように。
「んくっ・・・・・・!」
立香の腰が跳ねる。
昨日今日女を知った坊やには強すぎるほどの刺激だが、愛情に狂ったブリュンヒルデは容赦しない。
「れ・・・・・・え・・・・・・れ、る・・・・・・れ・・・・・・」
じっくりと逃がさないように。二本の指で震える肉棒を捕まえ、入念にカリ首を舐っていく。顔を、のぞき込むように移動させながらカリ首だけを集中攻撃。溝は裏筋で交わる。そこまで達すると、また戻る。左半分だけが二回分舐られる。
思わずシーツを掴み、喉を反らせて息を詰まらせる。チリチリと、焼けるような快感が肉棒の左半分から登ってくるのに、右側は完全に放置されてもどかしい。
ブリュンヒルデは表側の中心まで舌を戻すと、今度は右側へ沿うように舌を滑り込ませた。
溝を舌で埋めるように、大きく伸ばして絡みつかせる。
「れ・・・・・・え・・・・・・」
舌を出して戻し、絡みつかせた舌の表面を擦りつけるように前後に動かす。
大きく開いた唇から涎が垂れて、立香の陰毛に滴る。
たっぷりまとった舌からも垂れ落ちて、あっという間に右半分が光を反射し始めた。
「うっく・・・・・・!」
もどかしさを取り戻すように、右半分のカリ首にいっぺんに快感を叩き込まれて、思わず腰が浮く。無論、そんなことでブリュンヒルデが逃がしてくれる筈もない。
「じゅ、ず・・・・・・る、れ・・・・・・れうれう・・・・・・」
蛇が蠢くように、舌全体でカリ首だけを集中攻撃。
逃れたい気持ちと、刺激を受けていない他の部位からの切迫した要求の板挟みで、立香の頭はぐちゃぐちゃである。
「く、は・・・・・・!」
息が詰まる。知らず、腰をへこへこと上下させた辺りで、ブリュンヒルデは舌を引っ込めた。
切なさが一気に広がった。なにか、気分を害するようなことをしたのだろうか。そんな不安も一瞬、立香は女の恐ろしさを見た。
「レロレロ・・・・・・」
ブリュンヒルデは肉棒の根元を指で固定し、ぷっくらと膨らんだ先端に舌を伸ばす。
女の、こういう場面でのサディスティックさはいったいどこからくるのだろうか。あの楚々としたブリュンヒルデからは想像もつかない。
亀頭だけを集中的に舐り始めた。
「レロレロ・・・・・・れる、る、れうれう・・・・・・」
しかも休まない。一瞬の間隙さえ許さず、亀頭を愛撫される鋭い快感を与え続けてくる。自分のどの愛撫で男がどう感じるのかを、完全に心得た責めである。
「うくあ・・・・・・! はっ、あ、ああ・・・・・・!」
単に表面で舐めるだけではない。この角度でしか出来ない責めだ。
亀頭の面積が広いのは表側。カリ首と同様に、女性はあまりこの角度でペニスに接することはない。その広い部分に対して満遍なく舌を這わせるのは、ブリュンヒルデにとってはむしろ当然の行為。
テクニックはここから。下の裏側までも先端に擦りつけ、表裏のどちらの感触ででも肉棒を愛撫する。まるで、美術品を磨くよう。表面を傷つけないよう、優しく、しかし執拗に徹底的に、舌を擦りつけていく。
「は、あ・・・・・・! ふあ、ああ・・・・・・!」
表面の、細かな肉のブラシのついた部分で亀頭を鈴口ごと一気に舐め上げたと思うと、
「へあ、あ・・・・・・」
舌の裏側をぺっとりと押し当て左右に擦りつけ、亀頭に沿うように回していく。
舌の裏を刺激されて、ブリュンヒルデの唾液もよく分泌される。咥えてもいないのに、肉棒は涎でべとべとになってしまった。
「レロレロ、レロ、レロレロレロ・・・・・・」
それを舐めとるように、亀頭を執拗に舐る。
立香は見えないが、ブリュンヒルデの舌はまるでプロペラのようによく動く。下の動きが激しくなると、単に擦りつけるというよりは弾くような動きにもなる。
これほど敏感な場所へ、これほど繊細に、多彩に快感を叩き込まれたことはない。腰が弾むのを抑えられない。ブリュンヒルデには悪いと思いつつ、どうしても腰が上下にへこへこと震えるのを止められない。
気が狂いそうだった。ぐつぐつと沸き立つような精巣から、尿道に向かって熱いものがこみ上げるが、その途上は快感で舗装されていない。ただただ快感を叩きつけられる先端に引っ張られて登っていくが、その速度は緩やかだ。
これがもどかしい。堪りかねてもうギブアップしそうになった頃、見計らったように、
「あ、んむ・・・・・・」
ブリュンヒルデが大きく唇を開き、その温かい口内に先端を迎え入れた。
いや、今度は先端だけではない。咥えたまま進み、あっという間に根元までを口内に収めてしまった。
焦らされた挙句の、あまりに優しい快感。温かい粘膜に包まれた瞬間は、やすらぎさえ覚える。
一瞬前の切迫した吐息が、一変して湯に蕩けるようなため息に変わった。
「ぶぷ、う・・・・・・! じゅぶぶぷ、ず、ちゅぶぷう・・・・・・!」
いったい、本当にあのブリュンヒルデの唇から奏でられている音なのか。この角度では立香には見えないので、疑ってしまいたくなる下品な音。しかし、昂奮を誘う音。
そんな疑いを消し去るほど、現実感のある粘膜と唾液の感触。それらが性器を擦り上げる快感。
「ちゅぶ、れ・・・・・・ちゅ、む・・・・・・ちゅぷぷう・・・・・・!」
嗜虐的に先端だけを弄んだことを詫びるように、刺激を与えられないままだった幹部を労わるように。
唇全体で扱き、粘膜を絡め、唾液を塗りたくっては啜り取る。
色事にも長けたワルキューレである。ブリュンヒルデも本来なら、ここで妖しい言葉をささやいて男の気分を盛り上げてやるところだが、もうそんなことは頭にない。
一心不乱に肉棒にしゃぶりつく姿は、街頭に立つ淫売のようだが、その本心は労わりが九割である。
この、痛々しいほどに張り詰め、ヒクついた肉棒を射精に導いて楽にしてやりたい。胸を締め付けるのは慈愛と使命感だった。
「ぼじゅ、ぶぷっ・・・・・・! んぼ、おぶ、じゅぶぶ、ぷ・・・・・・!」
頭の上下が激しさを増す。せいいっぱいに舌を絡め、口内の粘膜を全て使って、肉棒を扱き上げる。
「うく・・・・・・!」
熱い予感はすぐに訪れた。当然である。先端だけを入念に責められたのだから、限界はとっくに見えていたのだ。
無論、ブリュンヒルデは心得ている。すぐに止めを刺してやるべく、根元を優しくさすりながら、中ほどまでを咥えて浅いストロークで激しくしゃぶった。
「んぶ、じゅず、ちゅぶぷ! ぶぷ、んく、ちゅず、じゅずず・・・・・・!」
「ああ・・・・・・!」
男の矜持など置き去りにした情けないうめき声は、抑えることさえ出来なかった。同時に、迸る熱い感触に抗うことも。
腰をビクン、と大きく弾ませると、ブリュンヒルデの口内に煮えたぎった精液を放った。
「んぶう・・・・・・!」
口から喉に向かって、激しく叩きつけられる熱い粘液の感触。三度の拍動と腰の震えを全て受け止め、精液も同様に全て口内で受け止めてやる。
精液以外ではあまり味わえない感触だが、やはりそれ以上に鼻に抜ける生臭さが凄まじい。眉根を寄せ、健気に唇をぴったりと閉じ、漏らさぬよう気をつける。
溢れそうになる分は、白い喉を愛らしく動かして嚥下し、射精が収まるのを待つ。
「ちゅぷ、ぷう・・・・・・っ」
腰の震えが小さくなり、射精の勢いがなくなった頃、尿道に残った精液を指でさすって押し上げる。とぽ、と吐き出し損ねた透明な粘液までしっかりと搾り尽くして、ブリュンヒルデは唇を離した。
零れないよう、顎に両手を手皿にしながら体勢を戻す。
唇の端から垂れた精液が一滴、顎を滴って手のひらへ落ちた。
「あ・・・・・・」
精液を口で受けた女の礼儀として、ブリュンヒルデは口を開けて見せつける。女の口腔を汚し尽くした、男の勲章を。
「うあ、あ・・・・・・」
立香は言葉もない。年頃には刺激の強すぎる光景と、ブリュンヒルデを汚した征服感に胸が詰まる思いだ。
「ん・・・・・・こくん、ん・・・・・・」
やがて、上品に唇を閉じたブリュンヒルデが喉を動かす。目を閉じ、時折眉をひそめながら口内の精液を全て飲み下した。
唇の端に付着した部分も、指で拭き取る。さすがに男の前でその部分を啜り取るのは恥ずかしいのか、目を伏せて、立香からの言葉を待つ。
それは、役目を果たした犬がするような、健気な仕草だった。思わずブリュンヒルデの長い髪に手を伸ばして、一束を手に取り、そこにキスをした。
「愛してる、ブリュンヒルデ・・・・・・」
ありきたりな言葉だが、それだけによく伝わる。
ブリュンヒルデは恥ずかしげに目を逸らしたまま、消え入りそうに、
「私もです、マスター・・・・・・」
そう、呟いた。
立香の自室に物が増えた。
同棲を始めたカップルにも似ているが、ノウムカルデアという、大所帯を包む施設は寮にも似ていて、生活用品をわざわざ持ち込む必要はない。
歯ブラシやなんかは自分の部屋にあるものだから、増えるものといえば専ら私物で、しかも小物だから傍目にもなんとも微笑ましい。
そして同棲を始めて少しすると、変化を求めて特別なことをする。
この夜、いつものように愛を語らうために立香を訪ねたブリュンヒルデは明らかにいつもと違っていた。
半透明な巻きスカート。タヒチの民族衣装のパレオに似ている。そして眼帯のような白い水着が形の良い乳房を隠し、意外な鋭角の水着が足の付け根を見せている。
「どう・・・・・・でしょうか、マスター・・・・・・」
いつか、あり得たかもしれない夏。彼女が愛してやまない、殺したくて仕方がない夫と満喫したかもしれない夏の情報を、ルーンによって仕入れた彼女が模倣した水着霊基。
胸を寄せるように、自信なげに垂らした右腕を左手で抱いて、へっぴり腰で見せつける夏の装い。煽情的という言葉はあまりにもありきたり。なかなか際どいくせに清楚で、ブリュンヒルデが後ろめたそうにしているのがまた倒錯的でそそる。
この装いは、あり得たかもしれないいつかに、夫と共に考案したもの。今のブリュンヒルデはそれを盗み見て、憧れのあまり再現しただけだから、自信がないのも当然である。もちろん、夫のものである眼鏡も、備わっていない。
しかし立香には関係ない。愛した女が自分のために、平素とは考えられない大胆な水着を見せてくれているのである。それも、海でも川でも湖でもなく、自分の寝室で。
興奮しない筈もない。こちらもなかなか平素になく、目を血走らせて凝視するものだから、ブリュンヒルデはなんとなく安心した。
数分の、無言の鑑賞タイムはなんとなく終わった。二人とも、見るだけでは、見せるだけでは収まらなくなってきたのだ。
ところで、立香の自室には差し入れがある。二人の恋を応援してくれている職員たちが、出歯亀気質で余計な気を利かせた物で、それをブリュンヒルデが手に取った。
「楽にしていてくださいね、マスター・・・・・・」
立香にとって多少意外だったのは、ブリュンヒルデは性に消極的ではないことだった。イメージとしては、あまり性行為とそれに準ずる行為を好まず、愛情が昂った時や望まれた時に応じるといったものだったが、割りとブリュンヒルデから誘うこともある。
もちろん、生に言葉で誘ったりはしない。なんとなくそういう雰囲気になると、指で手の甲をつっついたりなぞったりして悪戯をし、尻込みをしていたりすると肩を抱いてきたりする。
ついでに、意外と行為が始まると積極的だったりもする。むにゅ、と腕を胸の前で寄せて乳房を強調し、手に取った半透明のボトルを傾ける。ベッドの縁に腰かけて、その様子を呆気にとられて見つめていると、さっさと準備が整っていく。
ローションが注ぎ口から落ちて、ブリュンヒルデの乳房を濡らす。それを、谷間を寄せて両の乳房を擦り合わせて馴染ませる。
あっという間に、ブリュンヒルデの白い肌に光沢を出し、粘液の橋を架ける淫らな光景が出来上がった。
「ゆるりと、堪能してくださるだけでよろしいですから・・・・・・」
奉仕体質だから、自分の奉仕を受け入れてくれるだけでも嬉しい。
とっくに勃起してしまっている若い肉棒をそっと指で導き、谷間へ誘う。
「う、は・・・・・・」
思わず吐息が漏れる。
さすがに頼光やブーディカといった、規格外レベルの大きさではないからすっぽりと収まりはしないものの、包まれる感覚は正に極上。
温かくきめの細かい、そしてなによりも柔らかい感触に性器を包まれる感触というのは温泉に蕩ける心地に似ている。
嬉しいものだ。男は自分の勃起に対して、罪悪感のようなものを感じやすい社会に生きている。それを、好きな人に肯定してもらえて、愛されるという感覚は、何物にも代えがたい幸福感だ。
そういう、男の心理を知ってか知らずか、ブリュンヒルデは感触を馴染ませるようにしばらく、肉棒を抱いたまま動かない。
その間、特に言葉はない。湯に蕩けたように反った喉を戻して視線を向けると、ブリュンヒルデと目が合う。細い目の端を少し下げ、優しい微笑みをくれた。
シチュエーションも忘れて、どきりとするほど優しい表情だった。
「マスター、私・・・・・・頑張りますから、楽しんでくれると、嬉しいです・・・・・・」
相変わらず囁くような小さな声。しかし意気込みのようなものが見えて、その健気さに思わず生唾を呑んだ。
「ん・・・・・・」
先端に吐息が掛かると同時に、肉棒を挟んだ乳房を上下に揺さぶる。
上半身全体を動かして、挟んだ肉棒を逃がさないよう両手の指で谷間に蓋をして、乳房で擦っていく。
青い静脈の浮かんだ白い乳房の感触は、この指で知っている。その味も、この舌が覚えている。その乳房が今度は肉棒を楽しませている。いずれ、この体でブリュンヒルデの乳房を知らない場所はなくなるのではないかと、妙な征服感が背中を駆け上った。
「は・・・・・・ん、ふ・・・・・・ん、は・・・・・・あ・・・・・・」
ぬちゅぬちゅ、と谷間でシェイクされるローションの音と、ブリュンヒルデの弾んだ吐息だけが部屋に響く。そのことが少し恥ずかしいのか、頬に朱が差して目線が少しずつ外れていく。
その様子をじっと見下ろすことの、なんという優越感か。
正直パイズリというものは快感があまり強くないが、心の満たされ方が他にはない。
「こっちを見て、ブリュンヒルデ・・・・・・」
思わず、自分でも意外な意地悪が口を吐く。指摘されると、ブリュンヒルデはおずおずと従って目線を絡める。が、やはり自分の胸から立つ音が恥ずかしいのか、すぐ伏し目になる。
おそらく意識してのことではないのだろうが、その所作はひどくそそる。
「ん、ふ・・・・・・ん、う・・・・・・ふ・・・・・・ん・・・・・・」
恥ずかしさに堪えられなくなったのか、ブリュンヒルデはパイズリに没頭することに決めたようだ。
添えるようだった手が、がっちりと乳房を鷲掴みにしてパイズリを激しくしていく。
「ああ、気持ちいい・・・・・・」
立香も、この愛らしい生き物をイジメるのを意識して抑え、この快さに没頭することにした。
とはいえ、手持ち無沙汰も違いない。
抑えきれない悪戯心と、なによりも行為中にはブリュンヒルデにも悦んでもらいたいという思いが合わさって、ほぼ無意識に指が動いた。
「あ・・・・・・!」
ぴくん、とブリュンヒルデの体が跳ねる。
両手の人差し指が、ブリュンヒルデの乳首を捉えていた。
「嫌だったら言ってね」
水着越しにすりすり、と乳首に指の側面を押し付けるように擦る。水着は意外に生地がしっかりしているから、少し強くてもやり過ぎではない。簡単に屹立してしまった乳首は、指の側面に弾かれるようになってしまっているが、間に挟まる水着が程よい緩衝材になっている。
「あ・・・・・・ダメ・・・・・・! そんな、ああ・・・・・・!」
困ったように眉根を寄せ、しかし敏感な乳首から迸る快感に抗えず、ブリュンヒルデは他愛なく声を漏らす。
それでも、決して挟んだ肉棒は逃がさない。根っからの奉仕体質らしい。
「マスター、そんな・・・・・・っ、ああっ・・・・・・困って、しまいます・・・・・・あっ」
愛らしくそんなことを言われると、続けたくなるのが人の性である。
水着の隙間から指を滑り込ませ、直に乳首を弾く。
それだけで、上半身を揺さぶってパイズリをするブリュンヒルデの体が不規則に跳ね、リズムを乱していく。
目にも耳にも楽しい。このままパイズリで果てるよりも、この楽しさを続けていたくなるほどだ。
「もう少し激しくして、ブリュンヒルデ・・・・・・」
優しく、乱れた髪を耳に掛けてやりながら囁く。
意地悪をされているというのに、そのことを忘れたかのように、ブリュンヒルデは言われた通りパイズリの速度を上げる。
鷲掴みにした乳房だけを上下に揺さぶって、挟んだ肉棒を扱いていく。
硬い肉棒に押し当てられる、ハリのある乳房の柔らかさと弾力がローションで滑って、得も言われぬ快感である。
ブリュンヒルデにしても、自分の乳房より熱く、跳ね返す硬さは胸にときめくものがあり、胸元から立ち上ってくる生臭いにおいが、乙女の秘奥を疼かせる。
更に、パイズリを激しくすることによって、立香の指に乳首をより高頻度で擦りつけることになってしまい、時折、
「あっ・・・・・・! あ、ん・・・・・・んんっ・・・・・・!」
腰がよじれてしまうほどの快感をもたらす。
不思議なものだ。こう素直な反応を見せられると、パイズリで快感を得るよりもブリュンヒルデをいじめてやりたくて仕方がない。
とうとう二本指でブリュンヒルデの乳首を捕まえて、クリクリと転がしてやった。
「あ・・・・・・っ、そん、な、ああ・・・・・・!」
他愛ない。ブリュンヒルデは快感のあまりパイズリを完全に停止させてしまい、そのままの姿勢で快感に震えた。
指で挟んだ乳首に、指のおうとつを擦りつけるように転がす。あくまでも優しく、反応を窺いながら、しかし執拗に。
「はっ・・・・・・あ、あ、あっ・・・・・・ん、んっく・・・・・・ひう、ん・・・・・・!」
動かなくなってしまうと、自分から乳房と乳首を差し出すような姿勢だ。翻弄されたように、鼻に掛かった甘い声を漏らすしかない。
時折、蓄積される甘い快感を抑えきれず、体がビクリ、と跳ねるのが目にも楽しい。
「あ、や・・・・・・あ、は・・・・・・ひう・・・・・・ん、あ、あ・・・・・・」
声に切迫感のようなものが混じってきた。それに、おそらく無意識であろう制止の言葉を、総動員で止めたようだ。
ブリュンヒルデもここでやめてほしくはないのだ。楽しいままに乳首を転がしていると、不意に目が合った。
「・・・・・・!」
言葉は要らなかった。絡み合った視線だけで意思が通じ、立香は指を離し、ブリュンヒルデも乳房で捕らえた肉棒を解放した。
「え、と・・・・・・」
少しだけ立香が迷うと、ブリュンヒルデが身を接して押し倒す。
さっきまで手中で弄んでいた乳房が、目の前に覆いかぶさっている。快感に汗ばむ肌から、ブリュンヒルデのかぐわしい体臭が鼻腔をくすぐった。
眼帯ビキニを外す。見るには煽情的で良いが、いざ行為、ということになると少し邪魔である。巻きスカートを外し、内側から濡れたボトムスをずらす。
それの意味するものを感じ取って、立香は生唾と息を呑み込んだ。
と、同時に、初めての夜の記憶が蘇る。
強烈な体験というものは、全体を記憶することが難しい。たとえば特異点での戦闘のように、一瞬一瞬に集中しているため、その全てを思い出せることは稀である。
フラッシュバックして蘇る記憶は、経験しているというのにどこか他人事にも思える。現実とあまりにも乖離したその瞬間は、頭に焼き付いてはいても自由に取り出せるものではない。
それは、ブリュンヒルデも同じなのだろう。初めての夜をなぞることで、その経験を記憶へ留めようとしている。
そっと跨り、立香の怒張へ手を添えて、自らの秘部へ誘う。
「あ・・・・・・!」
思わず声を詰まらせたのは、既に熱くなった割れ目から、粘っこい雫が垂れ落ちたからである。
怒張へ垂れ落ち、根元に向かって垂れ落ちる愛液と、そうなってしまうほど充血して解れた膣口は、まぎれもなくブリュンヒルデの女が昂っていることを示している。
その情景と、恥じらいに顔を真っ赤にしたブリュンヒルデは逆上せあがってしまうほど煽情的だが、ぐっと堪える。
恥ずかしさを誤魔化すように、ブリュンヒルデが腰を落とす。
ゆっくりと、躊躇するように。
足を震わせながら、見せつけるように。
「ん・・・・・・う、う・・・・・・っ」
綻んだ膣口が先端を咥え込む。口、という言葉が表す通り、女の下半身に広がった穴は男を迎えるために存在するのだ。
「うあ・・・・・・!」
先端をちゅっと吸われるような感覚。錯覚ではなかった。ブリュンヒルデが両足を四股のように踏ん張って腰の高さを維持しているから留まっているだけで、膣口はもごもごと蠢いて、肉棒を奥へ咥え込もうとしている。
「く、ふ・・・・・・」
自分の体の、あまりに素直な反応が恥ずかしくて堪らないのか、またもブリュンヒルデは羞恥に顔を逸らす。もういい加減に、その所作が余計にそそることに気が付いてもらいたい、と立香は噛みついてやりたい気持ちで思った。
足は震えている。英霊の足腰だから、この程度がキツいということはまずあるまい。となると、肉棒の咥えたさに、その時に走るであろう快感を期待して、震えるのを堪え切れていないのだ。そう思うと、そのいじらしさに胸が締め付けられる。
半身を少し起こして、ブリュンヒルデの腰に手を回し、
「その・・・・・・」
なにかを言おうとするが、小僧の頭では良い言葉が浮かばない。全ての思いを込めて、
「好きです、ブリュンヒルデ・・・・・・貴女のことが」
平凡な言葉だろう。ブリュンヒルデほど美しい乙女なら、シグルドに出会う前に何人もの勇士に投げかけられたことだろう。
しかし、ブリュンヒルデはまるで雷にでも打たれたように、体を小刻みに震わせた。
(あ・・・・・・わた、し・・・・・・)
信じがたいことだが、軽く達したらしい。
膣の入り口で先端をもごもごと咀嚼し、素朴な愛の言葉を囁かれただけで、ブリュンヒルデは軽い絶頂に登りつめてしまったようだ。
そのことが自分でも信じられない。そしてそのことに気がつかない筈はないのに、優しく見守る立香を前に、ブリュンヒルデは自分の浅はかさに気がついた。
「私も、です・・・・・・マスター・・・・・・大好きです・・・・・・!」
どんな自分も見せよう。必ず受け止めてくれるから。
そう決意して、無様な自分を曝す覚悟を決めて、ブリュンヒルデは一気に腰を落とした。
「くっふ、う・・・・・・ふ、う・・・・・・は、ぁ・・・・・・」
息が詰まる。下腹部から背筋を通って脳天へ貫く甘い快感に、全身が震える。
ブリュンヒルデの白く華奢な体が幾度も小刻みに跳ね、
「うあ、は・・・・・・あ、ああ・・・・・・っ」
堪え切れぬといった様子で、快感の息を吐く。
なんと愛らしいのか。飛んで行ってしまいそうな体を支えるように、両手を立香の腰について、震えの止まらない体を持て余す姿の、なんという美しさか。
これで逆上せるなという方に無理がある。
この二度目の初めてを大切にしたい気持ちとまったく同じ強さで、ブリュンヒルデの肢体を貪り尽くしたい欲求が湧き起こった。
通常、騎乗位は女性が主導権を握っている。ブリュンヒルデもおそらくそのつもりだったろう。しかし、快感に翻弄され、男の腹の上で体をくねらせるブリュンヒルデはもうイニシアチブを手放している。
それは、嬲られるのを待っているようにも見えた。立香はブリュンヒルデの腰を掴んで、ぐっと腰を突き上げてみた。
「はう、う・・・・・・!」
大きく跳ねるブリュンヒルデの肢体。愛しい女が自分の怒張で、自分の腰つきで快感に翻弄されているのを見ると、得も言われぬ優越感と達成感が胸を占める。
夢中で腰を突き上げる。
「っ・・・・・・は、あ・・・・・・! あ、あっ、は・・・・・・うあ、あ・・・・・・!」
弾む体と、それに遅れてブルン、と揺れる乳房は目にも楽しいが、正直それどころではない。ブリュンヒルデはおそらく無意識だろうが、快感を恐れるように少し腰を捩って、拠り所を求めるようにして立香の太ももや腰を掴んで離さない。
青あざが残るだろうと確信するほどしっかり掴まれているが、それだけに余裕がないことが知れて、どんどん余裕がなくなっていく。
加えて、ブリュンヒルデの膣は本人の気性に反して貪欲で、いくら突き込んでもまだ足りぬとばかりに奥へ向かってうねり、そのおうとつの激しい襞を絡みつかせて来る。
粘っこい愛液に満たされた蜜壺は、うねりながら奥へと狭まり、そこに更に快感のため不規則な震えが交じるものだから、先のパイズリも相まって限界はすぐに訪れそうだった。
それを堪えて、ブリュンヒルデを弾ませる。
ひとえに、この姿をもっと長く見ていたいからだ。
「ああ・・・・・・! あ、ん・・・・・・んく、く・・・・・・っ、ふあ・・・・・・あ、ああ・・・・・・!」
ブリュンヒルデには愛を囁く余力もない。
荒波に浮かぶ小舟の如く、快感に気をやってしまわぬだけでせいいっぱいだ。
(この女を・・・・・・!)
立香の胸にこみ上げる唐突な使命感。
それは或いは、下腹部から登っていく熱い予感の使命感だったのかもしれない。
腰の感覚を短く早くしていく。ブリュンヒルデの膣奥に打ちつけるように、腰をしっかり掴んで追い詰める。
「は・・・・・・あ・・・・・・はっ、あ・・・・・・あ・・・・・・あ、あ、あ・・・・・・!」
ブリュンヒルデも感じ取る。自身の明確な限界点。体の奥に蓄積される快感が溢れ出す、あまりにも甘美なる瞬間の予兆を。
同時に、膣で感じる男の限界。熱いものを受け取るため、子宮が下りるのを感覚で悟った。
(この人の・・・・・・!)
ブリュンヒルデに突き上げる使命感もまた、立香と同様のものであったろうか。
そのことは察せられない。察する暇もなく、二人は法悦の彼方の幸福を見た。
「ああ・・・・・・!」
閃光のような明滅。それは真実、閃光であったのかもしれない。視界どころか意識が小刻みにオンオフを繰り返したような、凄まじい絶頂だった。
戦場でのダメージボイスに似ているな、と絶頂から降りてきた立香は振り返って思った。
ブリュンヒルデの最奥にたっぷりと精液を吐き出し、貪欲な膣の求められるままに残り汁まですっかり膣に吐き出し終えた立香は、恋人の忘我を見守った。
ブリュンヒルデがようやく思い出したかのように、呼吸を再開させ、下りてきたのはどれくらい経ってからだったのか。
絶頂に震える恋人は、何時間でも見ていられる。上体を起こし、繋がったまま優しく抱き締めた。
「大丈夫・・・・・・?」
髪を撫でる。いたわるように、ねぎらうように、優しく。
ブリュンヒルデは立香に甘えるように身を預けながら、
「ええ・・・・・・あなた・・・・・・」
そう呟いた。
シグルドではない、あなた。
シグルド以外には使ったことのない、あなた。
殺意と狂化が少し収まったこの霊基だからこそ、言えた言葉。
意識して使った、愛する者を呼ぶ言葉。
きっと明日から、この少年への殺意に脅える日々が始まる。しかし今だけは、相応しいこの呼び名に全ての思いを込めて、呼んでおこう。
「あなた・・・・・・好き、です・・・・・・きっと・・・・・・ずっと・・・・・・」
悲しい運命を背負う戦乙女。
その悲哀の全てを救うことは、きっと出来ないのだろう。立香は、ブリュンヒルデが壊れてしまうほど強く、抱き締めてやった。