FGOエロ小説まとめ 作:お一
酒呑童子が可愛い。
立香はそのことに頭を抱えた。
まずはファーストインプレッションがまずかった。羅生門で、切り落された腕を炎の化身にして、民話寓話に語られる荒れ狂う鬼となった茨木童子に、物語の姫のように担がれていた酒呑童子。
力で屈服させられ、昏睡して眠るあの、悲劇的なほどに無垢な寝顔。あれを一目見た時、持ち前の善良さで助け出さねばと使命感に燃えたのが過ちの始まりだったように思う。
その後、意識を取り戻し、言葉を交わした時の妖しさ。
囚われの姫などではない。あまりにも永い時を生きたため、生存という生物本能を超越した感性を持つ彼女の言葉は、妖しく、危うく、艶めかしく、しかしどこか優しかった。
自身の享楽を第一に考える信条を持ちながら、他の生物の存在意義を認める器量を持つあの振る舞いに、目を奪われたのだ。
運よく縁を結び、カルデアへの召喚も叶い、行動を共にした。
鬼ヶ島では丑の化生の源頼光の半身と戦い、その命を犠牲にして好機を作ってくれた。本人の意図や思惑はともかく、あれがなければ丑御前を鎮めることも、源頼光と縁を結ぶことも叶わなかったろう。
その後は鬼と人に揺れる巴御前に要らぬちょっかいを掛けて結果的に救ったり、本人の別側面を強調して敵側に召喚されたバーサーカー衆合地獄に助けられたりした。
しかもなにを間違ったのか、護法少女なる奇怪な霊基を得て、前垂れと褌のみの恐ろしく煽情的な格好で助けられたこともある。
しかし、その本性は鬼。生存や進化に現在の突端を向ける人類種とは根本的に価値観が違う。嫌いになったから、煩わしくなったから、許せなかったから、そんな負の感情で命を殺めるのではない。
好きだから、楽しいから、愛らしいから、そういう正の感情が容易く殺害理念となり得る怪物なのだ。その危険性は、触れ合えばすぐに判る。彼女の言動の危うさは、正に命の危うさ。微笑みかけた次の瞬間に臓物を抉り出されても、不自然さは微塵もない。
しかしだからこそなのか。
「どないした、旦那はん?」
唄のような優雅な調べで紡がれる言葉。しっとりと濡れたような、耳から頭に入って脳髄をぞわぞわと蕩かすような、妖しい声音。
それだけでいちころに心がざわつく。
身長は一四五センチ。二十センチ以上の身長差は、否応なく胸を締め付ける愛らしさを呼び覚ます。
うっかり酒を飲んで良い感じに酩酊した酒呑童子と出くわせたら、もう危ない。
「旦那はんの脚、細うて柔らかそうやのに随分働かされとるんやねえ。なんやら気の毒やわあ。立ちっぱなして疲れへん? うちの隣、丁度良う空いとるんやけど座る勇気は、旦那はんにはちょっと足りひんかなあ?」
誘うような流し目でそんなことを言うものだから、違うところを勃たせてしまってそそくさと背を向けてしまう。
「帰ってまうん? あん、もう、いけずやわあ。
ま、その方がよろしいわ。鬼の酒宴に混ざったら、つまみになるんは請け合いやからね、賢いお人は帰るのがよろしいわあ」
酒呑童子の顔近くもある大きな酒器の中ほどまで酒を満たし、それを傾ける。
立香はまた踵を返し、早鐘を打つ心臓に突き動かされるように、隣に座った。
「あら、偉うて賢い旦那はんも、血迷うことがあるんやねえ? そういうところ、うち好みやわあ」
一筋縄ではない、単純ではない、食えない、という意味だろう。流し目をして、蠱惑に笑う。
「でも・・・・・・厭やわあ、ぷんぷんとなんか匂ってきたわあ。酒とは違うて酔わせるより逆上せるような・・・・・・旦那はんから香るのは初めてやねえ?」
細めた目が、ちら、と立香の膨らんだ股間を見た。
「ああ、おかしい。鬼を見てそこをそんなにするなんて、旦那はんは豪いお人やわあ」
指摘されると、立香は途端に冷めてきた。というより、まったく自覚のなかった生殖欲求の呼び声に理性が恥じた。がたん、と椅子が倒れるほどの勢いで立ち上がると、そのまま振り向きもせず走り去ってしまった。
酒呑童子としては、褒めたつもりである。立香が自分に魅力を感じているのは判っているし、他の魅力的なサーヴァントからいろいろと誘われているのも知っている。
それらの誘惑を悉く跳ね除ける立香の道徳観、なによりも童貞故の臆病さが、奥歯で噛み潰してしまいたくなるほどに愛らしく思っていた。
が、この場合は、立香自身も余程に気をつけて接する鬼を相手に、気づかぬ間に生殖欲求を滾らせる胆力を無心に褒めただけであった。きょとんとした表情で見送り、恥ずかしげに丸まった背中が見えなくなった時、思わず背筋をなにかが走った。
(ああ、あぶないあぶない。もうちょっと酔うてたら、追いかけて食ろうてたわ)
愛らしさのあまり、背中に爪を立て、その皮膚を引き裂き、露わになった臓物を弄んだ挙句に口に運び、程よい硬さの白い骨を引き抜いて玩具にしてしまったところだった。
(まあ、それもええけど・・・・・・小僧や頼光とやり合うのもええし、本人も知らん間ぁに気に入ってる茨木の落ち込むとこも悪うはないけど、殺したらそれでしまいやし、もうちょっと我慢やなあ)
唇を舐める。口に運んだ酒が、立香の血の味を混ぜたように錯覚した。
ほんの僅か気を抜いたり、接触態度を誤ったりして命を失いかねない危険なサーヴァントは、他にもカルデアには居る。
ギルガメッシュやオジマンディアスなど、意外と洒落が判るのでこちらの価値を認めてくれているうちはじゃれるのも許容してくれるが、根底に敬意を欠くとあっさり首を落としてくるので最低限気を遣っている。
バーサーカークラスは危険だが、ある一事にさえ触れなければ問題ないのが多いので、命に関してはそれほど心配は要らない。寧ろ心に何事かを誓った英霊や神霊の方が危ない。
彼らの価値観は、現代人の立香に根本的に理解の外にあることが多く、なにをきっかけにして殺める意思に変ずるかが判らない。
現代より以前は総じて、命は軽いのだ。特に、人の死に日常性のあった神代は。
そういう危機意識に関しては立香は抜かりない。酒呑童子にも同様なので、立香の背中に向けて投げられたあの危険な意識は、悪寒となって警鐘を鳴らしている。
にも関わらず、惹かれてしまうのをどうにも止められない。
その危うさが引力を持ち、心が囚われていっているのを止めようがなかった。
そんな、ある日の夜。
「旦那はん、ちょっとええやろか?」
扉の外で酒呑童子の呼び声。
なにか用事か、それとも単に酒を飲む相方が欲しいだけなのか。ロックはしていないので簡単に扉が開いた。
「どうかした?」
ベッドから降りる。
ほとんど全裸の上に帯をも除いて羽織った着物が一枚。いつもの瓢箪は置いてきており、かむろ頭に涙を模した装飾が、角の間に光っている。
目尻を下げて口角を持ち上げ、如何にも上機嫌と蕩けた笑顔が立香を見ていた。
「それ、ちょいと試しに使ってみいひん?」
指差したのは、右手甲に刻まれた三画の令呪。英霊への絶対命令権の証。
「そろそろな、うちも堪えきれんようになってきたもんやから、旦那はんもうちも程良う抜いた方がよろしいと思うてね」
令呪への命令権は、限定的であればあるほど拘束力が増す。逆に範囲や権限を広げれば広げるほど拘束力は弱まり、立香程度の魔力なら程度を弁えないと路傍の石程度にしか感じられない。
酒呑童子のように、伊吹大明神や九頭竜など、諸説はあるが紛れもなく神の血を引いている大怪物が相手なら、行動を止めるだけでも三画全てを用いざるを得ないだろう。
本来、魔術師ですらない立香ごときが従えられる英霊ではない。
そんなこと、誰よりも立香が判っている。そういう理由と本人の気質があって、彼は令呪を命令権としてではなく補助目的としてしか認識していない。
「いやね、旦那はんはきっと初めてやろ? そんな可愛らしい子がたどたどしくうちの体に触ったら、もうもどかしいやら可愛いやらですぐ食ろうてまいそうなんよ。
けど、それ使たら最悪だけは防げるやろ? 歯型くらいはつくかもしれんけど、まあそれくらいは堪忍ね?」
要するに、短い時間だけ手足を拘束してしまえば、なにをされても血迷っても、実行には移せないからその隙にやれと言っているらしい。
立香は焦った。まさか心の準備も予兆さえもなく、いきなりそんな好餌が目の前にちらつこうとは思いもしなかった。
「逃がさへんよ? 旦那はんはまだまだ堪えられるか知らんけど、うちはもう辛抱が効かんようになってきたんよ。またこの間みたいに可愛らしい仕草されたら、次はもう・・・・・・わざわざ言わんでも、判りはりますやろ?」
酒呑童子のその笑みを見た瞬間、ぞっと、背中に怖気が立った。
誇張ではない。この鬼は間違いなくやる。あの細い指で腹を裂き、臓物を引き摺り出して酒に混ぜ、諸共に飲み干してため息を吐くのだ。美味い、と。
立香はようやく事態を察した。
この好餌を逃せば、引き換えは命になる。慌ててベッドの乱れを直し始めた。
「もう・・・・・・今言うたところやのに、そんな可愛らしいことするなんて、旦那はんはほんまにいけずやわあ」
飛び掛かりたい衝動をなんとか抑えているらしい。
立香は、動悸が激しく気が気でない。
垂涎の的の酒呑童子が自ら部屋を訪れて、しかも安全な方法まで提示してその肢体を捧げてくれるという場面である。躍り上がる心地だったが、恐ろしくもある。もしも満足に足らないものだったら、行為の後で食い殺されてしまうだろう。
立香のそれとは別種の酒呑童子の衝動は、そのことを輪郭を伴う現実感で予感させている。
しかし、だからと臆病風を纏った手管は酒呑童子の嫌うところだ。こうとなれば、一切合切の全てを男の情念に溶かし尽くし、前後も忘れて耽るしかない。
果たしてそれが、自分に出来るかどうか。
「ほならまあ、せっかく床を整えてもろうたことやし、そこでしようか」
ぺたぺた、と愛らしい足音で寝台に登り、脚を畳んで膝を割り、手をついた。
股関節の柔らかな女にのみ許された、愛らしくも煽情的な座り姿に立香は生唾を呑んだ。
「ほれ、旦那はん」
と、酒呑童子が合図する。立香は言われて、手の甲の令呪に命じた。
「令呪を使って命じる。これより一時間、酒呑童子の手足を封じよ」
カチン、と撃鉄が落ちるような。重厚な存在感が落ちる感覚。そして右手甲に熱。
見ると、令呪が二画光を失っていた。
(これだけで・・・・・・)
たったこれだけの命令で二画を用いねばならぬほど、自分の酒呑童子への強制力は弱いものらしい。
しかし、それが逆に立香を昂らせた。
それほどの英霊をこれから意のままに出来るのである。
「うふ、旦那はんも男の子やねえ。ああ、火照ってまうわ。そんなギラギラした目ぇで見つめられたら、うち、蕩けそう・・・・・・」
拘束された四肢をもぞつかせ、腰をくねらせてわざとらしくしなを作る。
立香はそっと手を伸ばした。
「あんっ・・・・・・」
からかうように殊更に色っぽい声をあげた。
立香の中指の先端が、帯のない着物の隙間から潜り込み、肌を滑った。
(ああ・・・・・・!)
と、これだけで立香は目が眩みそうになった。
なんと滑らかな肌の感触。きめの細かい皮膚の下にうっすらと脂肪を載せた独特の触感。自分の腹を撫でてみてもこうはならない。指先に毛穴の出っ張りも感じぬ、僅かに湿りながらも熱を帯びる感覚に溶けてしまいそうだった。
「あんっ、こそばいわあ」
真っ赤な口を覗かせる口角の歪みの奥から、酩酊したような甘い声音。
立香はゆっくりと、体の中心を指先でなぞり、何度も上下させる。
腹から臍の下まで、下腹部へはさすがにまだ触れられない。見えないなにかに阻まれるように急停止した指が、首元までゆっくりと上がり、更に滑り降りる。
この指に、酒呑童子の肌が触れている。そう思うだけで、なにやら頭の芯が蕩けていきそうな心地だった。
「ああ、酒呑ちゃんっ」
「あん、なに? うちの知らんとこで、うちのことそないに呼んではるん? 遠慮せんと、これからうちのことそう呼んでええんよ。だってもう、肌と肌の触れおうた男と女なんやから」
このじれったくも愛らしい立香の愛撫にほくそ笑みながら、ひどく優しい声音で言った。
堪らなくなった。立香は酒呑童子へ向けて飛び掛かり、腰に手を回して抱き着いた。
「酒呑ちゃんっ! ああ、酒呑ちゃん!」
頬に伝わるぷにぷにの腹の感触と体温。思春期の男の子らしく、少し膏の浮いた頬を接することに僅か躊躇したものの、昂ぶりはもう鎮められない。
「お腹、ぷにぷにしてて、可愛いよぉ・・・・・・!」
「うちのお腹、気に入ったん? 嬉しいわあ。旦那はんみたいなお堅い人も、一皮剝いたら雄、しかも甘えたがりの子供なんやね。
甘えてもええんよ? 毒のある酒は美味いものやもん。身も心も溶かしてまうけど、よろしいやろ? だってもう、うちの味を知ったら戻れへんのやから」
妖しく艶めかしく笑うこの毒花の、なんというかぐわしさ。鼻腔に入る肌の香気は、既に危機感さえも蕩かせて、立香はもう夢中である。
ちゅっと、腹に唇を押し付けて吸い付いた。
「ちゅっちゅ、ちゅむ、ちゅ、ちゅ・・・・・・」
愛しさに耐えかねて、酒呑童子の肌を吸っていく。
「うふふ、こそばいわあ」
虫を飲み込んだ食虫花がゆっくりと口を閉じるように、食人花は唇を閉じ、嗜虐的に目を細めた。
同時に、鉄製の下着が霧が散るように消え失せた。
待っていたように立香の顔が滑り、幼い膨らみに頬を擦り付けた。
「ちっぱい、酒呑ちゃんのちっぱい・・・・・・!」
起伏のない胴体に、そこだけが僅かに隆起を見せ、先端に似つかわしくないほどにつつましい乳首がある。
人間なら誰しもが持ち、また、人型であれば鬼ですら持っている身体的特徴である。ほとんど起伏がないから、年端も行かぬ幼女や極言すれば男のものとそれほどに変わりない。
本人の強すぎる母性が理性さえ浸食した源頼光の、その象徴ともいうべき巨大な乳房とは違う。しかも普段から鉄製の胸当てで申し訳程度に隠していただけの、小さな膨らみである。
それが露わになり、目の前に晒され、しかも無防備というこの光景のなんという甘美さであろうか。女体に優劣はないのだと、思い知らされる。
立香は美術品を扱うような丁寧さで手を這わせ、お気に入りの玩具を愛玩する仔猫のようにすりすりと頬を擦り付ける。
「ああ、可愛らしいなあ、旦那はん・・・・・・」
手を拘束しておいてよかった。
幼い体躯にここまで情欲を露わにして夢中になる立香の姿は、不思議なほどに愛らしい。もしも両手が自由なら、頭を抱き潰していたかもしれない。
「んああ、柔らかい・・・・・・」
夢心地で、立香は酒呑童子を愛撫する。
手に跳ね返る弾力は強く、そのくせ柔らかい。ぷにぷにとした感触は、淫靡というよりも癒される。それが適度に熱を帯び、掌に溶けてしまいそうな儚さがある。
油断すれば自分を取って食らう鬼とは思えぬほどの可憐さを、この肌は持っている。それが魔力のように立香を捕らえて離さない。
が、立香は雄である。雄は、雌に種を植え付けることを使命とした生き物だ。
「は、あ、はあっ」
荒い息を吐いて、既に張り詰めていた肉棒を取り出す。もどかしげにベルトを外してズボンを脱ぎ、天に向いて雄々しくそそり立った肉棒が露わになり、その先端を酒呑童子の腹に当てた。
「は、は、あ・・・・・・」
つつ、となぞっていく。両手は酒呑童子の肩を掴み、腰を動かして。
固定されていないから、潤滑の不十分な肌と先端が引っかかって肉棒が時に水平になり、それでも腰を動かすと外れてぴんと、天を向く。また腰をもぞつかせてあてがい、また滑らせる。
特に意味のない遊びであるが、蕩けるような背徳感と快感が頭を浸していく。
「んふふ、女の体での遊び方も知らん旦那はん、健気で可愛いわあ。あん、ちょっとぬめってきはったねえ。そのぬめりにも何万って精子があるやなんて、なんやおそろしわあ」
先端から漏れ出たカウパー腺液が、酒呑童子の肌になめくじが這ったような、ぬめりの痕跡を刻んでいく。
肌を汚していくその姿に、酒呑童子はわざとらしくおののいて見せて、扇情的に腰をよじる。
「はあっ!」
立香の理性は、とうに蕩け切っているらしい。後に残っているのは、雌を自分のものにしたいという純粋な雄の欲求だけのようだ。
腰を引き、再び酒呑童子の首元に顔を埋め、掌で膨らみを覆い、優しく揉んでいく。
「んんっ・・・・・・やらしい手つきやわあ、旦那はん。頼光の牛みたいな乳やのうて、うちのちぃちゃい乳のが好きなん?」
立香は少し安堵した。
酒呑童子は死に及んでも余裕を崩さないが、快楽を受け取るのは他の生物と変わらないし、人間と同じく乳房への愛撫でそれを得ることも可能らしい。
思春期の少年らしく、これまで映像や本で仕入れた知識を総動員して、痛みを与えないよう慎重に手を動かしていく。
膨らみを潰さぬよう、手は優しく添えて、それを肌に少しだけ食い込ませて窪ませて、円を描くようにゆっくりと。
手足の動かない酒呑童子を、力のままに意のままに、自らの快楽の贄とするのはあまりにも惜しい。快感を得られる事実を幸いに、蕩かせてみたい。
とはいえ、知識は経験と種類の違う強みだ。知識を欠いた経験は滑稽だし、経験を欠いた知識もハリボテでしかない。立香は自分が思っていたよりもスムーズに動かない手と、力加減の微妙さに苦労して、思うように酒呑童子から声音を引き出すことが出来ない。
そういう、童貞故のまごつきに、酒呑童子は思わず唇を舐めた。
「旦那はん、いま、間違うてもうちの鼻先にちんちん押し付けたらあかんよ?」
怒張が思わず萎れるほどに、立香はぞっとして顔を上げた。自分の不手際がこの興を冷ましてしまったのかと、恐る恐る酒呑童子の顔を覗き込んだ。
が、予想に反して、酒呑童子は美酒に酩酊するように目を細め、頬を裂いたような歪な微笑を浮かべていた。僅かに覗いた瞳が、恐ろしく光っていた。
「うちみたいな鬼と契約して、しかも独り占めしとうて悋気を燃やすスキモノマスターが、女の愛で方一つ知らんおぼこやなんて・・・・・・うち、我慢出来へんわあ」
噛み千切られる、という確信があった。柘榴を奥歯で噛み潰すように、簡単に食い千切られるだろう。
立香はぞくり、と背筋に怖気を走らせた。にも関わらず、酒呑童子の興が失せていないことに安堵して、肉棒は少しも硬さも熱も失っていない。
やはり、この危うさに惹かれている。生命の危険をにおわせるこの鬼に、惹かれてしまうのをどうにも止められない。
立香は、乳首を摘まんだ。
「あんっ・・・・・・!」
親指と人差し指の先端で、コリコリと弾力のある柔らかさを摘まんで転がす。
それだけで、酒呑童子は喉を反って声をあげた。
(おやまあ・・・・・・うちらしゅうないなあ)
心の中で笑う。
無論だが、酒呑童子は処女ではない。生も死も味わい尽くすを信条とする酒呑童子は、性交の持つ悦びも当然知っている。相手は、それこそさまざまだった。人間であったこともあったし、同じく鬼であったことも、時には獣というのもあったかもしれない。
そういう過去をいちいち記憶に留めておくには、酒呑童子は浮薄に過ぎた。酒の銘柄を覚えておくように、印象に残った者だけを覚えているに過ぎない。
その酒呑童子が、たかが乳首を転がされただけで容易く愛らしい声をあげるとは、本人も吃驚である。
(中てられて、ああ、どうも堪らへんわあ・・・・・・)
考えてみれば、強制力を以て手足を拘束されるのも初めてである。
(なんや、旦那はんのこと笑えへんなあ)
愛らしさに胸が締め付けられる。拙い愛撫に焦れて身が火照る。
相乗効果で、性感帯がひどく敏感に疼いているのを感じた。
そんな酒呑童子を知ってか知らずか、立香は熱心に乳首を転がしている。
一定のペースと力加減で、時折様子を窺いながら健気に。それがまた、酒呑童子には愛らしくてしようがない。
「くふ、んくっ、んふふ・・・・・・!」
酒呑童子の好む具合を確かめるため、姉の顔色を窺う幼い弟のような表情で指先に意識を向ける立香。その健気な指使いが、情事にも慣れた酒呑童子から快感の音色を引き出していく。
「あんっ、んふ、上手上手、旦那はん。そのっ、ん、調子、調子・・・・・・」
しかし時折強弱の変化が欲しくなる。
昂らせるくせに満たしてはもらえない。未熟さ故に生じるそのジレンマが、尚のこと体を疼かせていく。
快感を求める肉の欲求に、酒呑童子の細い腰が思わずもぞつく。いつの間にか、滴り落ちるほどの愛液がシーツに染みを作っていた。
「んああ! 酒呑ちゃんっ!」
堪りかねたのは愛撫を受ける当人よりも立香だった。乳首を転がす指をそのままに、下腹部へ顔を埋めた。
同時に、少し腰を浮かせてやる酒呑童子。
ぷにぷにの弾力を思わせる小陰唇が意外なほどの慎ましさで膣口を閉じ、しかし蜜をしとどに溢れさせて微香をくゆらせている。
その様は正に男を誘い惑わす妖花。無毛のぷに穴に、立香は我を忘れてむしゃぶりついた。
「ちゅぶう・・・・・・!」
厚く火照り、充血して膨らんだ小陰唇を唇の隙間に誘う熱いキス。口の中の空気を抜き、淫らに音を立てながら吸引する。
「んふー、んふー・・・・・・!」
すると、今度は呼吸するために鼻孔が膨らむ。酒呑童子の性器から通う淫臭が流れ込み、そのかぐわしさに頭の芯が蕩けていく。
(ああ、ずっと・・・・・・永遠に嗅いでいたい・・・・・・)
不思議なほどにかぐわしい。性器であると同時に排泄口でもある股間の臓器なのに、何故こんなにも胸がときめくのか。不快などとは過ぎりもしない。
肌の香気に汗が混じり、生々しく密度を感じる臭気なのに、まだ足りない。肺の空気を全てこの香りと入れ替えて、鼻腔に臭気の元となる微粒子を定着させなくてはと使命感まで湧き起こった。
人ならば羞恥心が許すまい。が、酒呑童子は鬼だ。この怪異の摂理は、人よりも動物に近い。匂いを嗅ぐ行為に特別な感情はない。
「うふふ、あんまり夢中になってはると、酔い潰れてまうよ?」
ぐい、と嗅ぎやすいように腰を突き出して微笑む。
が、既にこの匂いだけで堪えられなくなっているのは立香である。腰を突き出した拍子に唇の間に挟み込んだ膣口より蜜がぴっと口内に散り、その感触が思い出させた。
自分が唇を接しているのは、あの酒呑童子の秘められた入り口なのだと。
「ちゅぶぶ・・・・・・!」
上質な絹豆腐のような。滑らかで弾力があるも、充血して解れたために崩れそうなほどに柔らかい。それでいて熟れた果実のように少しつつくだけで蜜を滴らせる。
吸い込む時の微細な振動のために、一度抜いた空気を口の端から取り入れ、また吸い取る。
「んふっ、んんっ、ん、んう・・・・・・!」
さすがの酒呑童子も、これには声を抑えられない。
嗜虐的な微笑は消えて、眉根が寄って瞳は閉じられ、唇をきゅっと結んだ女の表情へと変わった。
「あも・・・・・・」
立香は一度大きく口を開け、小陰唇ごと膣口を口内に招じて、吸い付きながら舌先を押し付けてみた。
「んくう! お、おぼこの割りに、大胆なことしはるなあ、旦那はん、んんう・・・・・・!」
この思い切りの良さ。決断力と発想力こそ、酒呑童子をして一目置くに値すると称される由縁であろう。
「ずぷぶ・・・・・・あむ、ぶぷぽ、じゅぷぷぷ・・・・・・!」
吸い付きながら唇を窄め、吸引しながら頭を引く。この入口より酒呑童子の秘めたる内臓を啜り切るように吸うと、やがて唇が滑って外れる。
ぶぽん、と空気の流入する下品な音が立つと、すぐさま口を広げてまたかぶりつく。
「んあいぃ・・・・・・んい、く、んく、んん、んっ!」
さすがに、ここまでの熱心さで自らの秘唇を愛された経験はない。
酒呑童子は愛らしい声音を抑えられず、誘う目的ではなく快感におののいて腰を震わせ身を捩る。
その間も、器用なことに乳首を転がす一定の動きは止んでおらず、性感帯の三点同時刺激は酒呑童子の女を昂らせ、蕩かせていく。
(ああ、あかん、腰が・・・・・・)
腰がかくかくと前後に震え出した。この快感に蕩けていたい気持ちと、この快感の強さに畏れる気持ちが同時に湧いた。無理な体勢でもあるから、蕩けていく筋肉が腰を支えきれなくなっている。
しかも、立香は解れ切った膣口から滴る愛液の全てを舌と口内で受け止め、時折こくりと喉を鳴らして飲み込んでいる。
さすがにこれには、酒呑童子も頬を熱くせざるを得ない。女として、ときめいているのをどうしようもなかった。
「あ、んあ、あん・・・・・・だ、旦那はん、いつまでそんな、恥ずかしいことしやるの? うちの旦那はんやもん。ここまでしといて、怖気づいてははらへんのやろ?
ほなら・・・・・・ね? もう、いけずな旦那はんやわあ。うちからここまで言わせるやなんて・・・・・・」
流し目をして、媚びて見せる。見せる、という表現を用いたが、この場合の酒呑童子に狡知はない。自らが圧倒的上位者であるが故の余裕、そのための嗜虐やからかいではなかった。
女の熱を持て余し、男の情けを受けるための、健気な媚態である。そこに混じり気はなかった。
立香も、判っている。ぴん、と上を向いた怒張の先端を、ぷにぷにと柔らかな入り口に宛がう。
「い、いくよ・・・・・・?」
野暮である。蹂躙されることを望む女に、余計な躊躇や恐れを抱かせる最終確認だったが、同様の思いは立香にもある。
初めて、女の内臓に自身の剛直を埋める。事実を夢想したことはあれど、その感触や相手の反応までを明確に想像したことはなく、あったとしても多分に自分に都合の良い幻想が混じっている。
立香も酒呑童子も、痛くはないか苦しくはないか。こんな熱く張り詰めた肉の塊が、本当にこんな小さな穴の中に入るのだろうか。
まだ若い立香は、
(ひょっとしたら、子供は本当にキャベツ畑からコウノトリが運んでくるもので、これを女の人に入れて精を放ったら出来るというのは、迷信なんじゃないだろうか)
などと、血迷った考えまで浮かんできていた。
しかし、これ以上の躊躇は許されない。ものの十数分で酒呑童子の戒めは解かれる。その時、まごついていたことへの不満が尾を引いていれば、簡単に身を引き裂かれてしまうだろう。
立香は、甘美な瞬間への期待と、自分たちが変わってしまうことへの恐怖を飲み込んで、ぐっと腰を進めた。
「あ、はあ、ああっ!」
ずぷ、と入り口を割り、奥へと侵入していく肉棒。
小柄な体躯相応の小さな酒呑童子の秘唇は、入り口の襞を捲り上げられるようにして肉棒を受け入れていく。
この挿入の瞬間まで、頭を巡っていた不安などどこへやら。立香の全身を甘く駆け抜けていく快感電流は、それ以外の一切を蕩けさせていった。
(う、うそ・・・・・・!?)
こんなにも、快いものなのか。
神経の発達した男性器を締め付ける肉の適度な締め付けと、溶かさんばかりの温かさ。女を征服する本能的な悦びと、女に食らい尽くされるような被虐的な悦びが同時に満ちる。
酒呑童子の肉壺は、その幼い体に見合わない熟成具合で容易く立香の肉棒を飲み込んだ。サイズ感としては、許容量ぎりぎりの筈なのに、柔らかく解れた膣肉はそれを甘く締め付けて、咀嚼するように蠢く余裕さえあった。
「う、ふふ、あはは・・・・・・!」
膣襞を掻き分け、媚肉を擦り上げられる快感に喉を反らして嬌声をあげた筈の酒呑童子が、最奥まで受け入れると堪え切れぬというように、笑いを零す。
「これで、旦那はんはもううちのもん。源氏の大将がなんやと文句をつけても、旦那はんはうちのこと守ってくれはりますやろ?
旦那はん、可愛らしいだけやのうてこっちも立派で、うちも気に入ってしもうたし、これからもちょいちょい・・・・・・な?」
男の庇護を必要とする女の賢しらな甘言だったが、これが本心でないことを肌を重ねた立香は感じ取っている。
この媚肉の蠢きと、全身を走り抜ける快感に小刻みに震えている酒呑童子の肌は、言葉よりも如実に本意を表している。
耳元で囁かれる言葉は、この期に及んで生意気な口を利く女を獣性で屈服させる征服感のため。誰が主人で、この場の主導権は誰が握っているのか、判らせた時の満足感を倍増させるための嘘である。
(酒呑ちゃん・・・・・・!)
酒呑童子にとって、この夜は遊びに過ぎないのだろう。そのことは、自ら令呪を提案したことでも判る。
しかし、その遊びに対し、その遊びに真剣になっている立香に対し、こうまで真摯に熱心に取り組む姿勢は、正に酒呑童子らしい。
「この浮世の大抵は遊び。せやけど、遊びは真面目に遊ばんと白けるだけで、そんなん寺の坊主の読経と変わらへんわあ」
その酒呑童子に、惹かれたのだ。立香は夢中で、腰を振った。
「んあひっ! ひぅん! ん、んなああ・・・・・・!」
あの酒呑童子の柔肌を密着させ、触れたこともなかった媚肉を自らの怒張で侵入し、互いの快楽神経を刺戟し合っているのである。最早思慮や気遣いなど埒外。ただただ本能に任せて腰を振る。
一度突き込み、引いて、また突く。あまりの激しい抽送に、不安定な姿勢の酒呑童子の体が跳ねる。
寝台が軋み、腰を叩きつけるような動きに儚く揺れる酒呑童子の肢体。そこに命を弄ぶ鬼の姿はなく、一方的に蹂躙される女の姿だけがあった。
「んっく、んく、んんっ、んは、はぁん!」
奥で、カリ首で引っ掛けた媚肉を捲り上げるように戻り、弾頭形の先端が限界まで蹂躙するために帰還する。
酒呑童子の腹の中で、浸すほどに分泌された愛液が掻き混ぜられる。くぐもった淫らな水音が、肉のぶつかる激しく高い音に混じって奏でられる。
「んあ、は、激し、うちのおめこ、こんなにされたん、さ、さすがに初めて・・・・・・ああ!」
そうだろう。他の誰が、鬼種の中でも最上位に位置し、理や法則を弁えながらも感性によって自分を含めた命を弄ぶこの酒呑童子を、こうも好き放題に貪るか。
(ああ・・・・・・これは、あかんかも・・・・・・ちょっとハマりそう・・・・・・)
自分よりも遥かにか弱い生き物に好き放題に蹂躙される奇妙な悦びを、知ってしまった。
(しかも・・・・・・)
と、酒呑童子はちらり、と薄眼を開ける。
奥歯を噛んで、快感を必死に御しながら腰を振る表情の、なんという愛らしさだろう。両手で酒呑童子を抱き締め、縋るように身を寄せながら、荒々しく腰を振る姿のアンバランスさ。酒呑童子は思わず、令呪の戒めも忘れて抱き締めてやりそうになった。
(これ、食い殺してやりたいけど・・・・・・ちょおっと、勿体ないわなあ・・・・・・)
全身を貫く快感、このまま溶けてしまいそうなほどに高まる体温、情事の熱に浮かされるように総身をしっとりと濡らした汗、火照った肌と放たれる香気。
この狭い部屋で、試しに身を預けてみたら、なんという幸福感。こうまで視野が狭くなり、一個人しか目に入らなくなったのは初めてである。
酒呑童子は全身を蕩かせながらも、頭の奥で賢しらに働く理性と胸の奥を疼かせる本能が戦い合うのを自覚した。
奥歯で噛んで、食い殺してやりたい。
しかし、そうしてしまえばもう、この感覚は味わえない。
今すぐ殺したい。
けれど勿体ない。
(ああ・・・・・・うち、狂いそう・・・・・・!)
その瞬間、令呪の縛りが砕けた。
二画を用いた拘束が、バーサーカーもかくやというほどに狂気を増した酒呑童子に打ち砕かれ、自由になった両手と両足が、草を刈る鎌のような速さと力強さで立香に振るわれた。
「んぐくっ、しゅ、酒呑ちゃん・・・・・・?」
が、優しかった。
首に腕を絡め、脚で腰を抱く。気にしがみつく虫のような姿勢は、快感を持て余した女の姿に他ならない。
「だ、旦那はん、胸張りや・・・・・・あんたはんがうちのことこんなに蕩かせてなかったら、今頃潰れてはったよ・・・・・・」
立香の胸に、言いようのない感慨が湧き起こる。
酒呑童子への愛しさ、自分への誇らしさ、こうして幸せを分かち合う日を迎えられた幸運、それら全てが感動となって立香を覆っていく。
精神的な充足が立香の目尻に涙を浮かべさせるが、肉体を襲う快感はそれほどに生易しくはない。
狭く小さな膣が許容量ぎりぎりで肉棒を飲み込み、その限界ぶりをとても思わせないほどに解れてこなれた膣肉が優しく包んでいる。
魅惑の感触だった。ぐっと腰を引けば、結合部の隙間から泡立った二人の粘液が、肉竿に引き摺られてごぼりと溢れ、突き込むと泣き別れをした恋人が再会に熱い抱擁をするようにして膣肉が抱き締めてくる。
肉棒の先端から根元まで、余すところのない甘美な快感が満ち、それが会陰や丹田へとじんわりと広がり、そこから全身を貫く快楽電流と化す。
いつまでもこうして酒呑童子を抱いていたい。最早酒呑童子の気の迷いで臓物をまき散らす危険は去った。このまま二人で、蕩けんばかりの情事に酔い痴れていたいが、限界は近い。
幸福感と快感が立香から余裕を奪い、酒呑童子もまた、小刻みに膣を震わせて絶頂の予兆を示している。
「んくっ、ふ、膨らんで・・・・・・だ、旦那はんの、爆ぜてまいそう・・・・・・!」
ぎゅっと、柄にもない健気な仕草で立香を抱いた。
体を駆け、その奥に蓄積された快感が炸裂する絶頂の瞬間に、体が準備した。
「うう、酒呑ちゃん! 酒呑ちゃんっ、で、でる・・・・・・! なか、膣内に出したい! 酒呑ちゃんの一番奥まで・・・・・・」
立香の悲鳴に切迫感が混じる。肉棒の根元から上がってくる熱い感触は、もう阻止限界点を超えている。
願望であった。愛しい女の体を隅まで自分で染めたいという雄の本能的な欲求だった。が、酒呑童子は立香が言い終わるよりも先に、両手で立香の頬を包んで、目を向けさせた。
「ええよ、思い切りよう、残さずにな・・・・・・?」
優しい声音だった。これまで聞いたどんな言葉より、これまでの誰に向けたものよりも、優しい声だった。
すぐに、酒呑童子は立香の唇を吸った。
鬼の仕草ではない。愛を分かち合う人間を真似た、しかしその割りに、なんとも堂に入った真に迫るほど優しく慈しむ口づけ。
「・・・・・・っ!」
立香はその瞬間に果てた。言葉通り、酒呑童子の一番奥で、半固形状の、この日のために溜めていたのではないかと思いたくなるほど濃厚な精を放った。
「んんっ・・・・・・!」
断続的に吐き出される、自分の内臓よりも熱い粘液の感触。焦がすような、しかしそれでいて体に浸透していく優しい浸食。鬼も卵子を作るのか、その卵子は人間の精子と反応するものなのか。それは判らない。
が、この感触こそ自分の細胞を蹂躙するこの世で最も愛しい侵略者。己が雌という性別で生まれた意義であった。
酒呑童子は、唇を重ねた体勢で身を震わせた。
二人とも、まるで死に瀕した昆虫のような。激しく無様な身の震え。体の奥と頭の中で快感が炸裂し、肉体機能の限界を突き詰めるように絶頂を味わっている。
時間感覚から逸脱した法悦の瞬間。永遠のような一瞬を味わい尽くす最中も、二人は互いを抱く腕を緩めない。
「・・・・・・っ」
呼吸さえ覚束ない法悦も、絶頂を過ぎれば波を引く。生命活動という、二人の情事の前には無粋とさえ思える肉体機能によって、二人は降りて来た。
水を被ったように汗みずくで肌を接し、水分が吸着し合って、二人で一つの生き物になったような気がした。
酒呑童子は唇を離し、立香の肩に愛らしく頭を預けた。
「ほんま、罪な旦那はん。鬼を夢中にさせるんは、どこの偉い英雄も出来た試しないのに、こんなに簡単にやってのけるんやね・・・・・・」
ほう、と吐いたため息が熱い。立香は酒呑童子を落とさぬよう、離さぬよう、より力強く抱き締めた。
「せやけど、覚悟せなあかんよ? 鬼は怖いもんやって、旦那はんも知っての通り。良いもんは盗んで、飽きるまで愛でる。せやけど、飽きてもうたら・・・・・・どんな扱いするんやろねえ?」
嗜虐的に細まった目。慈愛を交わし合った熱は、まだ醒めてはいない筈だ。それは、紅潮した頬と弾んだ吐息で判る。
それなのに、酒呑童子は言った。
「飽きさせへんように、気張らんとあかんよ? 懐くだけなら犬と同じ。食らうだけなら鬼と同じ。うちを夢中にさせたんは、人のあんたなんやから、面白うしてくれんと」
かぷ、と肩に歯を立てずに甘噛みしてみせて、
「まあ、これからよろしゅうね、旦那はん。うち、こう見えて尽くす鬼やから、可愛いさかりの旦那はん、腰のもんの乾く暇なんて、作らへんからね・・・・・・?」
いつもと同じように、洒脱に淫靡に笑ってみせた。