本編総合評価1万突破記念での投稿です。本当は超えたら直ぐに投稿するつもりでしたが、37話投稿時点では一文字すら進めていない状態だった為に無理でした。想定を遥かに超えるスピードで評価が増していたので、大変申し訳ありません。
急遽書き進めて仕上げたので誤字脱字がありましたら、誤字報告機能から報告して下さると嬉しいです。
今作はヌキ用というよりは本編補足という部分が大きいので、性描写以外も含みます。
R-18シーンのみを希望の方はこちらからどうぞ
「お邪魔しまーす」
とある家にて、少年の声が響く。
礼儀正しさには少し欠けているが、親愛的な声音。
「いらっしゃい、駆」
少年の名前を呼びながら返す少女───駆の幼馴染である美島 奈々は、「間違えた」と言わんばかりに口を開き、言葉を訂正する。
「ごめんごめん、えーと……『今日は出来るだけスペイン語で喋るんだったよね』」
「『うん。もう明後日からはスペインだからね。迷惑掛けるけどよろしく』」
「『大丈夫。私としても良い勉強になるし、覚えて損はないから。……本当に良く喋れる様になったよね? 今じゃ私よりも出来るんじゃないかな』」
「『凄い必死に覚えたので……でも発音はやっぱりセブンの方が上手だよ。僕はまだ上手く舌が回らないから』」
15歳の逢沢 駆がレアル・マドリードの練習へと招待されて早くも4ヶ月。それ以前からスペイン語については学んでいたが、現地スペインでの練習参加という事情もあり急ピッチでスペイン語が出来るように仕上げていた。
元々スペイン語を齧る程度には出来ていたセブンから教わりつつ、海外の実況や専用の語学勉強のサイト、また世代別代表のコネから通訳の人とのレッスンを通じて、(下手ではあるが)会話に支障がない程度には喋れる様になっている。
「『じゃあいつも通り、スペイン語実況でレアルの試合を観てこっか』」
スペイン語の実況である理由は、もちろんスペイン語の学習の為。実況・解説の言葉となると単語に偏りは出るだろうが、リスニングの慣れという意味ではやった方がいい。
レアルの試合を観るのは、練習参加時に淀みなくチームに溶け込む為。選手の癖や動き、試合から見て取れる戦術の理解。何も学ばずに参加すれば痛い目にあうのは目に見えているから、少しでもチームに着いて行けるように。
一般公開されている練習風景の映像も含め、一週間後からの練習に備えて出来る限りのイメージトレーニング。これを4ヶ月ほど続けていた。
学校は既に夏休みに入っていて、本日は昼間からの練習を終えた後にセブンの家に来ており、時刻は夕方。そこから1試合分の約100分間の試合映像を終えて、一息つく。
夏は日が沈むのが遅いが、夕刻からそこまでの時間を過ごせば当然辺りは暗い。窓から見える光景に、駆はそろそろ帰ろうかと立ち上がる。
「『駆、今日は泊まってく?』」
「へ?」
「……あれ、単語間違えたかな。今日はウチに泊まっていくかなって訊いたんだけど」
「ああいや、単語間違いは無かったけど……」
「明後日から飛行機で一日中飛ぶ事になると考えると明日はゆっくりしたいだろうし、詰めるなら今日が最後だしね」
「着替えが……」
「駆さえ良ければパパのがあるから。どうかな?」
「あ、じゃあお言葉に甘えて」
(……今日のセブン、なんか強引な気がする。2週間くらい離れるしセブンなりの甘えなのかな)
だが半年前にあったU-17 W杯でも、勝ち上がった分それなりに長く離れていた筈だ。その時は特に本日の様子を見せる事はなかった。
或いはその時に離れる感覚を覚えたから? しかし帰国した後でも出発する前と様子は変わっていなかったし───と、そう思考する中でセブンが立ち上がる。
「お風呂沸かしてくるから、駆はそのまま試合観てていいよ」
「じゃあ遠慮なく……そういえばセブン、えーと……セブンのお母さんは? 今日は随分静かだけど。泊まるなら挨拶くらいはしとかないと」
「ママ? 今日は昔馴染みの友人と出掛けるって言ってたから、遅くまで帰ってこない筈だよ」
じゃあ沸かしてくるねー、と。小さな足音を鳴らしながら部屋を出ていくセブンを見ながら、駆は思わず呆然としてしまう。
(……え、じゃあ暫く二人きり? それで泊まり?
先程までスペイン語に耳を慣らしていたせいか、脳内パニックの末に思考さえもスペイン語へと変換される。
暫く親が帰ってこない、2人きりの時間が続くと分かっている上で泊まっていけというのは
(取り敢えず落ち着こう。うん、試合観よう)
セブンの内面の思惑はどうでアレ、表面的な言い訳としてはスペインという環境に適応する為の根詰めだ。取り敢えずはそれに従おうと、静かな空間の中でマウスのクリック音を響かせながら動画を選択する。
そうして映像を流し始めて15分程度が経った頃。ドアの開く音が鳴り、セブンの声が駆に届く。
「駆、お風呂沸いたけど先に入る?」
「んー……キリが良いところまで観たいから僕は後が良いかな」
「じゃあ先に入っちゃうね。……タンスの中は漁っちゃダメだよ?」
「しないよッ!?」
思わず勢いよく振り返りながら言ってしまう。先程までの2人きりという意識が蘇り動揺が大きかった。
セブンはクスクスと笑いながらタンスに寄り着替えを取り出そうとしている。駆はデスクトップへと向き直り、映像の時間を僅かに戻して再び煩悩を祓おうと集中し始める。
「……」
そんな駆の背中をセブンは目を細めて見つつ、タンスの中に仕舞っていたモノを取り出した。
ガサっ、と立つ音を駆の耳が捉える。
(ん、袋の音? 今取り出してるのって服───まあ別に気にしなくていっか)
入替用のシャンプーなどだろう。別に部屋の中から袋の音がしたとしても何も不思議はないし、そこまで敏感に感じ取る必要はない。
そう結論づけて、部屋の扉が閉じる音を聞き届けた後に映像へと集中した。
約30分後。試合の前半が終わり、駆は集中を解いて伸びをする。硬くなっていた筋肉がほぐれていく感覚を覚えながら、視線を扉へと向けた。
(30分……髪を乾かす事も考えると上がるには微妙な時間だろうけど、後半まで観るとなると流石に長いよな。キリが良いところって自分で言ったし、試合観るのは終わりにして待ってよう)
ふぅ、と。脱力して背もたれに身体を預ける。特に意味もなく椅子を回転させて暇を潰していると、ふと視界に灰色の袋が目に入った。
(……ああ、セブンが着替え取り出してた時にしてた袋のか。気付かないまま下に行ったのかな)
袋に特に何も無ければゴミ箱に入れようと、そんな軽い気持ちで近付く。
(ん、何か入ってる? だとしたらテーブルの上に置いた方が良いかな。何の箱───)
「……………!?!?」
モノによってはデリケートな品かもしれないし、あまり見られたくないモノである様ならテーブルに置くよりは最初からそこになかった風に引き出しなどに入れるつもりで袋の中身を見た。
よくよく考えれば、灰色の袋なのだから覆われていれば中は見えない。だからわざわざ見ようとせずに落ちてたから置いといたと言えば良かっただけなのだが……そこまで考える事を駆は放棄していた。恋人である自分に見せるのを躊躇うようなものはそうそうないだろうと。
(0.01……ぇ、これってあのあれだよねコンビニとかでも置いてるチラッと見た事ある程度のものだけどこういう表記の商品って他にないだろうしいや落ち着け落ち着いて考えろ宿泊だから変な方向に思考が寄ってる可能性も───)
箱を見て、裏面のさまざまな表記を見て。そっと箱を袋に戻し、両手で頭を抱える。
(コンドームだこれ……)
放棄しかけた思考は、耳に微かに届いたドアを開く音に急速に回り始める。
(あ、ドライヤー掛け終わって部屋に来てる!? どうしよ……き、気付かないフリが無難……?)
足音は段々と近づいて来ており、考える時間は残されていない。率直なアイデアをそのまま行動に移し、駆は灰色の袋を先程まで座っていた椅子からでは見え難い位置へと移動させる。
足音は静かに、サッと行動を済まして椅子へと戻り、大きく鼓動する心臓を必死に鎮めつつ、いかにも「動画見てました」風を装って部屋に入って来たセブンの方に顔を向ける。
「上がったよー。動画はキリよく終わった?」
「ウン」
「じゃあ冷めちゃう前にお風呂入ってね。服は置いてあるからそれ着て……あとシャンプーやボディソープは上の棚が私のだから、そっちは使って大丈夫。下の段のはママのだから気を付けて」
「アッ、ウン。ハイッテキマス」
物凄くカタコトな喋り方で違和感しかないのだが、セブンは特に気にする様子もなく、風呂へと向かう駆を見送る。ガチャリと閉まる扉を見てから自分の部屋を見渡した。
(あの様子的に……)
「うん、ちゃんと見たみたい。でもわざととか考えてないんだろうな……取り敢えずはこれで意識すると思うけど」
駆の不自然な様子を気にしなかったのも当然だ。駆が動揺した原因であるコンドームの存在はわざと見つかるように置いたのだから。
顔に熱が集まる感覚を覚えつつ、灰色の袋をタンスに仕舞う。
20分後。セブンの部屋の扉が開き、駆は吹っ切れた思考を持って堂々と部屋の中へと入っていく。
(うん、備える分には何も問題はないし、今日とは限らないからね! うん! 変に緊張を覚えると期待してる感じが出てカッコ悪いし、いや期待してないと言えば嘘になるけども!)
「……やっぱり少し大きいかな?」
「へ? ああ、まあセブンのお父さんってガタイ良いもんね。高一の僕だと丈は長いかも。……あとセブン、さっきはあまり気にしてなかったけど」
「ん?」
「夏とはいえ、ちょっと薄着過ぎない……?」
「そう? 部屋着って大体こんな感じだと思うけど」
下はショートパンツ、上はキャミソールに薄手のパーカー。確かに夏場という事を考えれば家での格好などこんなモノだろう。
だがそれは家族で過ごす場合での話であり、異性と同じ部屋に居る事を意識すれば無防備と言えるだろう。
(……なんか平然とし過ぎてて本当に意識されてない気がしてきた)
それはそれでどこか悔しいなと思うところは有りつつも、心臓が破裂しそうになるよりは良いかなと、駆は無意識に入れていた力を抜く。
「駆、夕飯はまだだよね? 温め直す事にはなるけど用意してあるから、下行こっか」
「うん。……あ、その前に母さんに連絡だけしちゃって良い? 突発的な泊まりだから何も伝えられてないし」
「そっか、先に伝えとくべきだったか。じゃあ用意しておくから、連絡終わったら下に降りて来てね?」
「はーい」
「ご馳走様でした。……にしても、なんかごめんね? 僕の食事メニューに合わせる形になっちゃって」
「……聴きたい言葉はそれじゃないかなぁ」
「あ、うん。とても美味しかったです」
「はい、お粗末さまでした」
駆が申し訳なさそうな声音で言えば、セブンは少しむくれた様子で告げる。食事の感想を言えば表情をコロッと変えて、笑顔で返した。
「………」
沈黙が続く。食事を終えて洗い物をし終わった後、再びセブンの部屋に戻って座っているのだが。自然とスペイン語での会話ではなくなっていて、試合映像を見返そうという雰囲気ではない。
詰めるのなら今日が最後と言ったのはセブン。しかし彼女は特にアクションを起こす様子もなく、ただ目を瞑って駆に寄りかかっていた。
「そ、そういえば今日は僕ってどこで寝ればいいかな? リビングのソファーとか……」
「んー? 私の部屋で良いんじゃないかな。布団はあるし……それとも一緒にベッドで寝る?」
「……今日のセブン、随分と積極的だね」
静かな、儚げですらある笑みを浮かべながら余裕綽々と返答するセブンに、思わず駆はそう問う。
セブンは閉じていた目をゆっくりと開き、僅かな間を置いて肩を離す。感じていた重さに微かな寂しさを覚える駆は、セブンの紡いだ言葉に驚愕の表情をこぼした。
「ね、駆。えっちしようか」
「───えっ、へ?」
真正面から向き合って、耳元にまで顔を寄せて。そうして発せられた言葉に、駆は何も返さず固まってしまう。
「付き合ってもう2年近く経つんだから、そろそろ進展あっても良いと思うんだ。やっぱり分かりやすいのはそれかなって」
「……セブン」
見つめ合って、瞳を覗いて。
思考が正常に作動し、その瞳の意味を理解して、真剣な眼差しへと変わり言葉を紡いだ。
「その嘘は、僕でも分かるよ」
「────」
駆の言葉に目を大きく開き、セブンは唖然とする。
体勢変わらぬまま数秒の沈黙が訪れ、やがて力が抜けた様に頭を駆の胸元に落とした。
「……うん、ごめん。進展があっても良いと思うっていうのは嘘」
駆の温もりに触れながら、ゆっくりと話す。
「本音を言うとね、小さい頃を思い出して怖くなったんだ」
「小さい頃?」
「私が親の転勤で、アメリカに発った時の事」
そんな事もあったな、と。当時は泣くくらいに寂しい想いがあったのに、今となっては懐かしい記憶の一つになった、初恋を自覚した日の思い出に、そんな思考を浮かべる。
「本当に急だったの。1週間前に知ったばかりで、頭の整理がつかないままあの日を迎えてた気がする。……今度は駆がそうなるんじゃないかって」
「……僕が?」
「レアル・マドリードに認めてもらえるって、サッカー選手にとって到達地点の一つだと思うから。もしこの練習参加で結果を出して、今すぐにでも契約を……なんて事になったら、2週間どころか数年は帰ってこなくなるんじゃないかって」
「そ、そんな事はないと思うけど」
「うん、駆がそうする気が無いのは分かってるよ。スペイン代表の件を予め言ったのも聴いた。だから、私が一方的に不安になってるだけ」
胸元に置いた頭を離し、不安に揺れる瞳を駆に向けながら、セブンは言葉を続ける。
「だから繋ぎ止めたかったんだ。大きな未練があれば、抱いてくれれば、駆は戻って来てくれる……って、そう思った。駆は優しいからさ」
正面から身体を寄せて、片手を握る。再び沈黙が訪れ、駆はどう返せば良いのかと思考を回した。
考えて、考える事自体が違うのだと気付く。伝えるのならストレートな気持ちで充分であると。
「……セブン」
空いている片手でセブンの頭を撫でる。サラッとした心地の良い髪の流れに沿う様に、何度も。
「焦らなくても、セブンの事が大好きだから。少なくとも事前に組んだ約束を破る様な真似はしないよ。サッカー選手として逃す事の出来ない選択はあるだろうけど、それでもセブンと離れたくない気持ちも強いんだ。具体的には……うん、人生をやり直してもまたセブンと恋人になりたいって思うくらい」
「……ふふ、そっか。うん、駆が言うと説得力が違うね」
事実として、未来の記憶を保持して中学二年の頃へと戻った駆が言うのだから当然説得力はあるだろう。実体験と素直な気持ちをそのまま伝えれば、セブンは僅かに強張っていた表情を緩めて顔を近づける。
そっと唇が触れ合い、直ぐに離れる。駆は気恥ずかしそうに顔を逸らしつつ、絡め合う指を解こうと動かした。
「じゃ、じゃあそろそろ寝よ───」
「うん、えっちしよっか」
「……ぇ、と。……まだ不安?」
「んー。仮に離れる機会があっても、必ず会いに来てくれるんだろうなって思ったよ」
駆が動かす指を捕まえる様に絡め、空いた片手は頬を愛しそうに撫でている。
「だから今は、単純に駆とそういう事をしたいなって」
理屈とか理由は無しに、恋慕とは別に湧き上がる情欲がそれを求めていると、セブンはそう伝えた。
そして少し呆れと恥ずかしさを混ぜ合わせた様な微妙な表情を溢しながら、意識をお腹の方へと向ける。
「それに、さっきから駆のが当たってるから」
「……生理現象なので」
「私の誘惑に反応してくれたのは嬉しいけど、会話の間も全然萎える様子なかったじゃない。ね、全部私の責任にして良いから。……しよ?」
サッカーに集中する為に性欲を運動へと向けて禁欲していたから、とか。言い訳は出来たが、逃げる言い訳でしか無い。それを思考の隅に追いやり、一度離した片手を再びセブンの頭へと触れさせた。
「これしたら、もう止まらないけど」
「ん……止める気は無いから」
触れさせた手を軽く自分の方へと引き寄せ、唇を合わせる。お互いに目を閉じて、先程よりも長く。
薄く目を開いて、ゆっくりと離した。
「……んっ」
お互いに一息。短い呼吸を入れて、もう一度唇を触れさせる。初めての雰囲気に意識は朧げで、どちらのかは定かでは無いが、舌先が歯に触れる。お互いに少し大きく口を開き、舌同士が絡み合った。
僅かに開いた唇同士の隙間から生暖かい息が漏れ、熱気が頬を撫でる。夏場である事を考えても体温が非常に高く感じたが、2人は気にする素ぶりもなく舌を交わらせている。
「ん……ぁ、は……」
舌を離し、唇を離し、蕩けた表情で向かい合う。それが互いの情欲を駆り立て、何度もキスを繰り返す。
唇が触れるだけの長いキスも、舌を絡め合う永遠に感じる様なキスも。
「ね、駆。キスだけじゃなくてこっちも……」
恋人繋ぎの片手は決して離さず、駆の頬に当てていたセブンの手が彼の手首を掴む。
脱力した手はなすがままに導かれ、セブンの胸に置かれる。
「ンっ」
「ご、ごめん。痛かった?」
「ううん、ちょっとこそばゆいなって。……駆の好きにして良いよ?」
「……っ」
ハグした時に押し付けられるとか、ふと接触があったとか、セブンの胸の感覚を知る機会はそれなりにあったが。直接触れるのは初めてだ。
アスリートにしては少し大きめの胸。ハリがあって形は保たれており、巨乳というよりは美乳の定義に当てはまる見た目と言えるだろう。
沈む指を返してくる感覚を指先で味わい、初めての感覚に喉をゴクリと鳴らした。
「……ぁ、ん」
時折喘ぎが混ざる吐息が目の前で漏れる。夜の静寂の中に虫の鳴き声と布の擦れる音。そして互いの呼吸だけが耳を指していて、何に阻まれる事もなく2人だけの時間が続く。
胸を触られる僅かな快楽に身を任せながら、セブンは駆の手首から離していた片手を彼の下腹部へと移動させる。
「ふふ……んっ……どんどん硬く、なってるよ?」
ダボダボな服では分かりやすく膨張させており、興奮を主張する様に硬さは増していく。
「今、出すから……」
駆が着用するズボン。サイズが合わないから落ちない様に強めに結んでいた紐が解かれ、セブンが引っ張る。
下着ごと引っ張られ、上向きの陰茎に少し引っかかりはしたものの、下腹部を露出させた。
「これが駆の……おちんちん」
「……ッ」
「わ、ビクってした。……ひょっとして私の言葉に反応した?」
「……まさか、セブンの口からその言葉が出ると思わなくて」
「えっちな事してるんだもん。えっちな単語くらい出てくるよ」
マジマジと見つめて、そんな様子に恥ずかしくて目を逸らす。既に胸からは手が離れており、行き場を見失って自分の頬を撫でた。
露出による開放感さえ感じてしまう駆の陰茎に、セブンは恐る恐る手を触れさせる。華奢な指に反応してピクリと動き、小さく喉を鳴らした。
「……こんな感じ、かな?」
「ぅ……」
「い、痛かった?」
「いや、他人に触れさせる感覚に、ちょっとビックリしちゃって……」
「……“記憶”の方で経験してるんじゃ」
未来の記憶でも、駆はセブンと付き合っていた。それは聴いているが、流石にアダルトな話題は避けるべきだと考えたのだろう。だから経験の有無についてをわざわざ問いかける事はなかった。
だが駆がセブンと付き合ったのはJリーグ最終節の後。“記憶”は高卒の時までしか保持しておらず、付き合っていた期間は3ヶ月程度だ。もちろんそれ程の時間があれば経験するカップルもいるのだろうが、駆とセブンはそうではなかった。
「“記憶”でも無いよ」
「ふーん……そっか。ふふっ」
「わ、笑う事はないじゃん……」
「ううん、違うの。嬉しくて。……駆にとって、私の行動って後追いに思える様な事が多かったと思うから。明確に、“記憶”の私が経験してない事を出来るんだなって。本当の意味で初めてを貰う事が出来て、嬉しいんだ」
駆の“記憶”では既に経験していて、だから自分のぎこちなさにもどかしさを感じているかもしれない。そう思っていたから心に余裕がなくて、駆の気持ちを掴もうと彼のやりやすい様にしていた。
だが実際の所は未経験。言われてみれば胸を触る動作に躊躇いを感じたし、不慣れな様子だった。
それを理解して、セブンの表情には余裕が生まれた。
「ね、気持ちいいか教えて?」
「……も、もうちょっと強く握っても大丈夫」
「ん、こんな感じかな」
労わるように優しく、触れるだけかの様な動かし方は擽ったさを感じてしまう。もう少し握る様にして大丈夫だと言えば、セブンは従う。
「凄く硬いのに、弾力もある……不思議な感触だね」
「そっ、うだ……ね、ぅん」
ゆったりと上下に、ぎこちなく動く手。露出した陰茎の先に時折指が掠り、もどかしい快楽が逆に気持ちよさを際立たせる。
片目を瞑り声を抑える様子の駆に、セブンは思考に靄がかかった様に普段の聡明さが失われ本能的な行動を取った。
恋人繋ぎの片手は決して離さず、だが密着していた身体を引き、空いた空間に顔を降ろしていく。
ハッとその様子に気付いた駆は声を出すが───
「ま、待ってセブンそれはっ」
声で引き留める事は叶わず、セブンの口の中へ陰茎が隠れていくのを目に映した。
「〜〜〜〜ッッ」
生暖かい空気に包まれ、熱い吐息が亀頭を擽る。ふっくらと柔らかい唇が陰茎を撫で、経験した事のない未知の感覚に駆は身体を震わせる。声は漏らさない様に手で押さえるも、その様子自体が駆の感じる快楽を表していた。
「…………♡」
上目遣いで、駆の陰茎を口に含んだままその様子を見たセブンは目を細め、ゆっくりと顔を動かしていく。
「ぁ……っ、ぅ……」
抑えきれずに漏れ出る駆の声が耳を刺激し、どうすれば気持ちよくなるかを探る意識を強くする。
口の中で舌先を動かし亀頭を刺激したり。
「ッ……」
少し深めに咥え込んだり。
「〜〜〜〜っ」
上下の動きを亀頭だけに集中させ、それより下を指で扱いたり。
「ぅ、あっ───せ、セブンちょっとまっ」
これか、と。口から溢れてしまった喘ぎを誤魔化す様に声を出す駆に、だがセブンは止めるつもりは微塵もなかった。
駆の一番良い反応を記憶しつつ、他にも刺激を与える手段は無いかと探していく。少しでも駆に安堵の脱力を感じれば最も反応したやり方へと戻し、たった一回の経験で全てを暴くかの様に行為を続けた。
「っ、ホン───っと、ぅに……ッッ」
何分───或いは何秒という単位だろう。お互いに時間を忘れる夢中と快楽の情意の果てに、繋いでいる手に力が入る。
その意味を、セブンは何となく理解した。もう限界が近いのだろうと。
「セブン、もう出るから……」
事実、駆からの自己申告でそれが判明する。繋いでいない手でセブンの顔に触れて止めるアクションを起こす。
セブンの動きは止まる───ほんの一瞬だけ。
「ちょっ、セブ……ん、ぐ……っ」
頬を緩ませて陰茎を咥えながら笑うと、スパートを掛けるように動きを早くする。絶頂間近の快楽を強く拒否する事など当然出来ない。
唾液によるねっとりとした水音は大きさを増していく。
そして。
「〜〜〜〜〜ッ……!」
駆の腰が僅かに跳ねて、陰茎は震えてその先から白濁とした液を放出する。口の中に閉じ込められてその光景を目にする事は叶わないが、快楽の末の絶頂に身を任せて陰茎から溢れる液を垂れ流す。
「はっ、はぁっ……」
絶頂に達した身体は暫く震えた後に脱力し、倦怠感を覚える。呼吸を繰り返して酸素を取り込み、陰茎が小さくなっていく感覚を覚えると同時に思考は冷静さを戻していった。
「せ、セブンごめん、今ティッシュを───」
止める為にセブンの頭へと触れていた手が、反射的に頭を押さえる形になっている。慌てて手を退かして腰を引き陰茎を口から抜いて吐き出す為のティッシュをと、そう周囲を見渡す……間に。
ゴクッ、と。飲みにくいモノを飲むように大きく喉を鳴らす音が駆の耳に届いた。
忙しなく動いていた駆の顔はその音に反応して止まり、恐る恐るセブンへと視線が向く。
「えへへ、飲んじゃった」
指先を口元へと当てて微笑むセブンに、駆の心臓は大きく動く。普段は気にしない鼓動は激しくなり、耳にすらその音が刻まれていた。
「そっか、こういう味なんだ……苦いけど、なんだか癖になりそう」
口の中にまだ残っているのか、口の中をゆっくりと動かして余韻に浸っている。
どう動けば良いのか分からずに駆は固まっていた。
「気持ちよかった?」
「……凄く」
「そっか。良かった」
静寂の時間が訪れる。
やがて余韻から解放されたセブンが、今までずっと繋げていた片手を離して立ち上がる。感触が残り、だが実物が無い寂しさに名残惜しいモノを覚えながら、セブンの行動に目を向けていた。
彼女は扉の横に設置されている照明のリモコンを押して、部屋を暗くする。
カーテンで覆われた部屋が見える程度には明るさを残しつつ、人肌が暗闇に染まる程度の暗さ。セブンは背を向けて表情を見せないまま数秒立ち尽くし、振り返って駆へと近付いた。
「ベッド行こっか、駆」
手持ち無沙汰になった手が再び掴まれ、誘導されるがままにベッドへと腰掛ける。
座ったは良いが、ここからどうすれば良いのだろう。駆の知識にあるそういった行為は知識でしか無い。同級生に
まさかこのまま本番という訳ではあるまい。駆の陰茎は先程までの硬さが失われているし、するというのならセブン側からのアクションがある筈。
自然とまた大きくなるのを待つしかないのか。
「ね、駆。こっちの方も触って」
そんな駆の手を掴み、自身の下腹部へと導いていく。
されるがままの駆の手は、ショートパンツの中へと侵入して下着越しに彼女の秘部へと触れる。
触れた部分は湿っていて、熱を帯びたヌメりを指の先で感じた。
「……男の子は、っ、おちんちんが……ぁ……大きくなると、思うんだけど……っ」
僅かな接触。だが自分のとは違う太さの指が触っていると意識すれば、興奮が感度を上げて、撫でるだけで小さな嬌声が漏れ出る。
「女の子は、ん……興奮すると、ここが……っ、濡れるんだ……ぁ、っ」
無意識に指の腹で秘部を撫でている駆の手首を掴んで止めて、顔を耳に近づけ、熱い吐息を発しながら告げる。
「だから今、すっごくえっちな気分……♡」
普段からはかけ離れた甘い声が吐息と共に耳を擽り、駆の脳を刺激した。
「ね、脱がして。駆の好きな様にして良いよ」
ゴクリと唾を飲み込み、セブンの手が離れていくのを感じてからゆっくりと動く。セブンが羽織っていたパーカーを自分で脱ぎ、その間に駆がショートパンツを下ろす。
キャミソールと下着だけの扇状的な姿に少しだけ見惚れて、震える指先で下着へと触れた。
スッと少しだけ降ろして、彼女の秘部が顕になる。身体よりも熱を帯びているそこに駆の視線は釘付けになり、その様子を見たセブンが恥ずかしそうに顔を背けた。
「あ、あまりジッと見ないで……」
未経験の男子高校生に、それは無理な話だろう。外れない視線を感じながら、その視線に含まれた意味の一つを察してセブンは恥ずかしさを紛らわす様に言葉を紡ぐ。
「毛は、海外だと無いのが主流な所が多いから。……子供っぽいって思う?」
首を横に振る駆を見て、セブンは安堵した様に微笑みを溢す。
「そっか。良かった」
その言葉を区切りに、駆の手が動く。
指先が直接彼女の秘部を撫でた。張り付く様な滑りと秘部の流れに従い、ゆっくりと動かしていく。
「ぁ、ん……っ」
擽ったさと快楽の中間。脳の認識がまだ気持ち良い感覚を覚えきれておらず、こそばゆい感覚が僅かに残っている。
だが漏れ出る喘ぎが快楽を示しており、時間が経つにつれてその色が濃く表れる。
「っ……ふ、ふぅ……ん───」
快楽に塗りつぶされていく感覚をセブンは理解した。無意識に手で口元を押さえて嬌声を上げない様にしている。
とは言え、駆に経験が無いから気付いていないだけで、愛液の分泌量は普通よりも遥かに多く、それが快楽の度合いを示していた。
「うぁ……ん、ぅ……っ」
指に絡みつく液はどんどん増していき、手の甲へと滑りが流れていく。
指の押し付けを強くし、秘部の筋を撫で下ろした。
「んん───っ!?」
なぞった先にある深めの穴を感じ取り、指を強く押し込んでいく。
指を伝って垂れ落ちる愛液の量は増し、中で分泌された滑りが締まる膣内への侵入を抵抗なく許す。
「ぁ、はっ、ふ───、っ───……っ」
乱れながら呼吸を繰り返し、自分の中へと侵入してきた指に強く意識を向けた。
自分でする時とはまるで違う。恵体とは決して言えない身体つきでありながらも、性差を確かに感じさせるゴツゴツとした指先が膣壁を擦って刺激する感覚は、セブンに喘ぎを強制させる。
「あ──、やだ、んっ──、うぁ、ああっ……♡」
深く、指先だけではなく根元まで。人差し指の限界まで侵入させてくる駆に拒否する様な言葉を出すも、その声音は非常に甘く、抵抗する素振りはない。
普段であれば言葉を受け入れ、気を使う駆ではあるが、場の雰囲気に脳を侵されて止める様子はない。
「や、や、うぁ──、あ──、んぅ……っ」
深々と侵入させた指を引いていき、指先が膣口を出る前に止める。そしてまたゆっくりと奥まで進ませ、再び入り口まで引き戻す。
繰り返される動きは膣内をほぐしていき、緩みと締め付けの幅を広くしていく。最初の擽ったい感覚は消え去り、駆の指はただ快楽だけを齎していた。
セブンが駆に口淫をした時程の様な、手探りで快楽の当たり方を追求する素振りはないのに、徐々に快楽の度合いが高まっている。
長い性的刺激による絶頂への接近と、そして駆が本能的に良い当たり方を理解していっているからだ。
「〜〜〜ぁ……ッ"」
やがて、セブンの反応は目に見えて変わった。手は口元から離れ、反射的に止める様に駆の肩へと置かれている。だが動きを止める程の力は入っていなかった。
抑えられない声が絶頂に近いことを示しており、駆の指は早くなる。
「ッッ…く……っ、ア、ま…っ、イッ───」
膣内で駆の指は締め付けられ、そして。
「〜〜〜〜ッ"ッ"♡♡」
セブンの全身が震える。
「はぁ、はっ───」
焦点の合わない眼は白く染まる感覚を覚え、脳は絶頂に侵され思考を回す事が出来なくなる。下半身は痙攣。異性の手で迎えられた絶頂の余韻は非常に長く、脳が酸素を求めて呼吸を繰り返す。
「───んんッ……、っ!?」
そんな最中、再び駆の指が動き出す。
「やっ、ま……ッ、あ……イッた、ばかりなの、にぃ……♡」
絶頂に気付かず続けている訳じゃない。セブンが果てた際に駆は動きを止めており、間違いなく絶頂に達しているのを理解している。
故に間違いなく意図的。
「く……っ、ふッ……ぅ、ん……ッ"」
膣内に入った指先は感度の高い部分を擦り続け、先程まではピンと張っていただけの親指が陰核を撫でる。
絶頂直後、まだ余韻が残っている身体に対してはあまりに刺激が強い。快楽の波が大きい状態を継続する様な攻め方に、セブンの嬌声は大きくなる。
「ン゛んゥ…ッ、あ"っ、ィ───」
当然、二度目の絶頂は一度目よりも遥かに早く迎える事になる。
「んんっ───〜〜〜ッ"♡♡」
震える身体は先程よりも長く継続し、強い快感に身体の自由を失う。背中は反り、数瞬の痙攣の後に背中から力無く倒れ込んでいった。
快楽に震える身体をそのままに。息切れを起こした様に呼吸を繰り返し、チカチカと白く光る視界を腕で覆い隠す。
「はーっ、はぁ……っ、ぁ……」
酸素を取り込み、快楽の波が小さくなっていき、漸く思考を回す余裕が出来た。
「…………」
「いたっ、痛い」
「バカ、ケダモノ、イジワル」
一度目の絶頂を迎えて、余韻が残った状態で直ぐに刺激を与えたのがわざとであると気付き、セブンは身体を起こした際に枕を手に持ちそれで駆を叩く。
クッション性の高い枕を大した振るいも無く叩きつけても痛みなどない。棒読みに近い感想を溢して惚ける様子の駆に対して、率直な言葉を吐き出す。
顔を真っ赤に染め上げて告げるセブンに駆は目を逸らしつつ、微かに笑いながら言葉を紡いだ。
「余裕のないセブンって珍しいから……」
「だからって、経験の無い女の子にアレは無いんじゃ無いかなっ」
「……好きにして良いって言ったのはセブンだし」
「言ったけど、確かに言ったけど……うー」
熱を帯びた頬に手を当てながら、駆から目を逸らして不貞腐れた様に言葉を溢す。
「もう少し、可愛くいたかったのに」
「凄くえっちで興奮しました」
「それはっ───うん……見れば分かるけど」
一度射精して萎れていた筈の駆の陰茎は硬さを取り戻しており、目に見えて大きくなっている。セブンの感じる姿に興奮している何よりの証拠だ。
「次からは、ちょっと遠慮を覚えて貰うと嬉しいかな」
「……次」
「こ、恋人なんだからこれからもする機会は───って駆、なんかさっきより大きくなってない……?」
「いや……たまに僕の事えっちって言うけど、セブンも大概えっちだよねって」
強い快感を与えられ、強制的に連続の絶頂を与えられて尚、“次”を望むのは、そういう欲求が強いと言わざるを得ない。
遠慮や加減は経験を積み重ねなければ理解する事は出来ない。加減が出来ずにしてしまう可能性はあるし、慣れたら逆に相手の限界を見極められて先程よりも凄い状態になるかもしれない。
既に思考をしっかり回せているセブンならその辺りも理解しているだろう。
言葉では遠慮を覚えて欲しいと言っているが、まだ本番もしてない状態で次を求める発言は、今の行為を期待していると捉えても良い。
「……本当にイヤだったら、必死に抵抗してるよ」
セブンは立ち上がり、タンスへと寄る。そこに入れてある灰色の袋からフィルムだけ剥がして開けていなかった箱を取り出し、記載通りに開く。
包装に包まれたゴムを一枚取り出し、残りは箱ごとベッドのヘッドボードへと置く。
「じゃあ───シよっか」
「……うん」
セブンの言葉に、駆は頷いて答える。
「あ、あれ? 入らない……」
「セブン、それ逆だったりしない?」
「……裏表とかあるんだ。えっと、こっちかな」
「あ───ちょ、ちょっと待って。一回触れたものはリスクあるから別のやつを」
「そ、そっか。そうだよね。違うやつに変えるね」
「……」
「さっきの感じだと……こっち、かな?」
「……っ」
「あ、入った。ええと……お願いします?」
「こ、こちらこそお願いします……?」
着け方を間違えて、他のゴムを用意して。初めて特有の緊張感がお互いに謎のやり取りをさせる。
ゴムを着け終えるとセブンは背中から倒れ込み、脚を立てて少し開く。駆がその間に入り込み、自身の陰茎を彼女の秘部へと触れさせた。
「じゃあ、挿れるね」
「うん」
「……い、痛かったら言ってね」
「うん、きて」
ゆっくり、手淫をした時に理解した女性器の膣口から陰茎を挿入する。
秘部を照らす滑りが、亀頭を侵入させる手助けを行う。亀頭までだ。
「……っ」
「セブン、もう少し力を……」
「分かってる、分かってるから」
強い締め付け、だけではない。指一本だけの時は感じなかった明らかな引っ掛かり。粘膜のヒダが亀頭の先端以外の侵入を拒み、そこが開拓される拒否感がセブンの中で芽生え、締め付けも強くなっているのだろう。
ほんの僅かに入っている駆の陰茎の熱を感じながら、呼吸を繰り返して全身を脱力させる。
「
「セブ───」
「お願い駆、このまま一気に挿れてっ」
「わ、分かった」
余裕がなく、切羽詰まる声音で駆へと要求。セブンが拒否すれば、駆は無理やり挿れる行為はしないだろう。痛みに怯えてゆっくりとすれば徐々に裂ける感覚に恐怖して本気で拒んでしまうかもしれない。
だから気持ちがまだ向いている今のうちに一気にと告げるセブンに、駆は答えた。
「ぁ"あ"っ───く、ぅ"ッ」
「……全部、入ったよ」
「ん、ん……っ"」
「大丈夫……じゃ、ないよね」
「ごめ……暫く、動かさないで……」
充分に濡らし、指で慣らし、絶頂による快感も身体は覚えた筈だ。それでも初めては痛いもので、裂かれる様な感覚がまだ残っている。
一般的に処女膜と言われるそれは、個人によって大きく差がある。人によっては運動に伴い、経験が無いにも関わらず膜が破れている者もいて、場合によっては初めてでも痛みを感じないケースもあるらしいが。女子に於けるトップアスリート、日本代表の運動能力によるトレーニングでもそうならないとなると、セブンの処女膜の耐久性は一般より高いと言えるだろう。
当然、それが破られた時の痛みは相応になる。
駆が気持ち良くなる様にしたい、という気持ちもあるのだが。それ以上に痛みをどうにか落ち着かせたいという思いが強く、下腹部にある異物感と太ももを伝う赤い液体を感じながらも呼吸を繰り返して脱力を意識する。
もっと気持ちいいを共有出来る初めてなら良かったな、とか。自分の反応に駆は呆れや萎えを持っていないだろうか、とか。思い描く理想の初めて通りにはならないものだと、目尻に浮かぶ涙を腕で覆い隠しながらセブンは思考を回していた。
「セブン」
「ぇ……」
駆の名前を呼ぶ声が耳を差す。
同時に顔を覆っていた腕を退かされ、下半身を動かさない様に顔を近付ける。
「ぁ、まって駆、いまはっ───んむ」
脱力に慣れた身体に力は簡単には入らず、接近する駆の唇を拒む事は叶わない。
唇は重なり、舌を交わらせ、貪る様に息の続く限り性愛の接吻を続ける。
やがて離す頃にはドロドロの唾液が絡み合っており、お互いの舌が糸を引いていた。
「……苦っ」
「か、駆のを飲んだんだから当たり前でしょっ。だから止めたのに……」
駆が少し顰めた表情から溢した感想に、更に瞳を潤わせてしまう。本当に思い通りにならない初めてだと、気恥ずかしさを抱えながらそう思ってしまう。
「身体は、どう?」
「ぁ……う、うん。少し、大丈夫になったかも」
「負担が大きいのはセブンの方だから。先ずは自分のことで良いよ。それで呆れたりなんて絶対しないから。セブンの好きな様にして良い」
「……もうっ」
始める前は自分よりも何倍も緊張していた筈なのに、いざ事に及ぼうとすれば見透かして気を遣う。ああ、いつも通りの駆だと安堵を覚えた。
目尻に溜まった雫を拭い、僅かに身体を起こして駆の背中に手を回した。
「そろそろ、動いて良いよ」
「うん」
ゆっくり、固定していた腰を動かしていく。奥まで挿入した陰茎を微かに引き、直ぐに押し込む。先ずは入り切った状態から慣らしていこうと、動きは最小限に抑える。
「んっ……んぅ…」
喘ぎ───というには、少し苦しさの目立つ声音。内臓に異物を入れられている様なものだ。当然と言えば当然。
どうにかして和らげていく事は出来ないかと、駆はセブンの表情を見て思案する。その視線は顔から下へ、乳房の膨らみで押し上げられたキャミソールへと向かった。
未だ直接的に顕になっていない胸。衣服を捲り上げ、身体のバランスを崩さない、程良く実った乳房を曝け出す。
そして、その胸を覆う様に触る。
「ぁ……んっ、は……っ」
少し反応が変わる。
擽ったさが混ざった様な、甘さが混ざった様な。少なくとも苦痛を伴う声音でない事を理解し、駆はゆっくり腰の動きを継続したまま、胸の触り方に変化を施していく。
大きさを堪能する様に包み込む触り方でこねたり、乳房の下側を撫でる様にしたり。
「ん──、うぁ……ああっ……っ、♡」
その声音に甘さが増していく。
それが膣内の大きな刺激によるものか、それとも胸の性感帯に触れたが故か。駆はもちろん、受け身のセブンにさえ判断は出来ない。
ただ確かなのは、苦しそうだったセブンの表情は和らいでおり、快感を覚え始めたということ。
多少の無茶は効く様になっただろうか───セブンの表情を見ながらそう判断した駆は、覆い隠す様に触れていた胸の、その中心部。小さな乳輪の中央でピンと張ったピンク色の突起を、整えられた人差し指の爪で弾く。
「ィ"───っ、っ!? ぁ、あ、まっ───」
膣内の締まりは強くなり、陰茎に絡みつく滑りが増していくのを感じた。明らかに感じ方が変化している。前戯による絶頂寸前の喘ぎに近い反応に、駆は数瞬だけ思考を回し。
「〜〜〜〜ぁ"っ♡」
両手で、彼女の両乳首を摘む。
絶対に傷つけない様に繊細に、だが自然の擦れよりも遥かに強い力で。
徐々に腰の動きも早くしていき、乳房を弄る快感と合わせてそれが『気持ち良い』であると身体に思わせる。事前知識は然程多くなかったが、実践に及ぶ事で生殖本能が異性の快楽を高める手段を理解させていた。
「イ、ッ……んァあ…っ」
締まりが強くなる。
セブンの言葉にならない声が絶頂を予感させた。
必死に果てるのを我慢する様な様子に、駆は顔を耳元に寄せて囁いた。
「良いよ、イって」
「───っ、〜〜〜〜っ"」
快楽の果てを堰き止めていた力みは駆の言葉で決壊し、身体は絶頂を受け入れた。
「ィ、く……ぅ────ッ"♡」
身体は震え膣内は締まる。
震える瞳が果てた事を知らせ、駆はこれ以上の快感を与えない様にと動きを止めた。
「ぁ、あっ"……ん、ぅ……」
全身の震えは治り快感の波が小さくなる。まだ膣内に残る陰茎の熱に僅かな快楽を感じながらも、セブンは駆の顔を見ながら告げる。
「うぅ……試合の時に感じる様になったらどうしてくれるの?」
「……セブンのその姿が中継されるのは流石に嫌かな。うん、出来るだけ控えるね。思っていた以上に感じてたからビックリした」
「その言い方だと中継されてなければ良いって聴こえるんだけど……私だってこんな感じ方するとは思わなかったよっ」
むぅ、と。自分の胸を寄せながら、自分で弄ってもここまで感じた事は無かったんだけどなと頭の中で思う。
「まだ出来る?」
「うん……でもわざわざ聞かなくても、動いても良いんだよ? 駆だってそのままは辛いだろうし」
「遠慮を覚えてって言われたし」
「……素直に言葉を受け止めすぎな気がするな」
「えっ」
「もうちょっと強引でも良いのに」
「……そう?」
「そうです」
駆も相手の考えや、嘘か本当かの見分けはつくようになってきたが。
遠慮を覚えて貰うと嬉しい───その言葉は紛れもなく事実だった。しかし今発した「強引でも良いのに」という言葉にも嘘偽りは無く、どちらも本音。
言葉を繋げれば矛盾する。でも本心に違いはない。
(女の子の心を理解するのって、ゴール前の1対1の駆け引きなんかより遥かに難しいな)
「……駆?」
「動くよ」
「ん……どうぞ」
苦笑する駆に名前を呼びながら疑問を溢したセブンに、誤魔化す様に宣言して腰を動かす。
快感の波は小さくなっているが、絶頂の余韻が完全になくなった訳ではない。高くなっている感度は継続していて、駆の陰茎が膣壁を擦れる度に快感の波は大きくなる。
既に胸を弄らずとも膣内の刺激だけで充分な性感を得ている。
片手をセブンの腰へと回し、もう片方の手は力なく寝ている手を握る。それに反応したセブンの手が駆の手を握り返し、口淫した時の手の感覚へと戻った。
「んァあ…っああ…♡」
「……っ」
膣内へと挿入した時からずっと続いていた快感。動いていない時があったとは言え、締められる刺激で駆の感度も充分に高まっている。
セブンには先に達して良いと言ったが、駆としては一緒に果てたい気持ちがある。故に次の彼女の絶頂までは我慢したい所だが。とてもそこまで保ちそうにない。
(強引でも良いって言ったのはセブンだし……っ!)
思考を回す余裕も無くなってきて、浮かんだアイデアを即時決行する。
腰に置いた手を再び胸の突起へと触れさせた。
「ぁ"───んぅ、また……ぁッ"……控えるって、んっ、言ったの……にぃ♡」
言葉では抵抗する様に告げているが、表情には喜びが浮かんでいる。本気で嫌がられたら駆も直ぐにやめるつもりだったが、これならば続けても良いだろうと指の動きを早めた。
セブンの快感を高めて絶頂までを早める。彼女の乳首が性感帯として感度が非常に高いのは先程の挿入しながらの動きで分かっていたから、この手段は有効だろう。
問題は、セブンの表情と甘い声に脳を侵食されて、駆の感度も高くなっている事だ。相手の感度を高める程に自分の絶頂への接近も早くなり、余裕がなくなっていく。
もう我慢の限界も近い。
「ア゛、ぁッ……、は、はっ"───そんなっ、獣みたい……な、ぁっ」
どうせ絶頂寸前なら動きを速くしても遅くしても変わらない。既に膣内は激しい動きにも順応しているし問題は無いと判断して、駆は前後の動きを速めていく。
「んっ"……ふーッ、ふーッ♡」
「セブン、そろそろ……っ」
「わたしもっ、ああっ───」
二人の息が荒く、興奮は最高潮へと達している。絶頂は間近、言葉を少なく交わしてお互いに意思を疎通させる。胸に触れていた片手も繋ぎ合わせ、両手を恋人繋ぎに。
そして。
「〜〜〜〜〜ッ」
「んっ、ぅ──あぁぁイ、くぅ"……っ♡」
密着した身体が震える。
お互いの痙攣が重なり、片方がビクリと動けば片方も連動する様に動く。絶頂の余韻は長い。
「ぁ、ぁ……♡」
ゴムが無ければ子宮の奥を叩いていただろう白濁とした液の射出を下腹部に感じながら、小さな嬌声が漏れ出る。
やがて射精が収まると、お互いの身体の震えは小さくなり。脱力し、呼吸を繰り返す。
「はぁーッ、あぁ……この量、中に出されてたら絶対妊娠してるよ……んっ」
息が落ち着いてきたところで駆が腰を引き、膣内から陰茎を抜く。その先端にはゴムに包まれた精液が溜まっており、それを見たセブンが腹の中でゴム越しに出された感覚を思い出しながらそう告げる。
取り外し、溢れないように縛っている駆を見ながら笑みを深め、セブンは問い掛けた。
「ねっ、駆。まだ出来る?」
「えっ……あー、うん。時間置けば多分」
「じゃあそれまで触り合いっこしようか。なんか、もっと身体が昂ってきちゃった」
度重なる絶頂がドーパミンを大量に分泌させ、セブンは多幸感に包まれている。更に有り余る体力がそれを求め、身体に疼きを齎していた。
体力と性欲は決してイコールではない。だが無関係かと言われればそれも違う。体力が多ければ継続能力が高まる為、性欲を強めるキッカケさえあれば歯止めが効かなくなるのは必然と言える。
もちろん駆もアスリートとして多大な体力を保持しているし、若さ故の精力とそれを押し留めていた禁欲が合わさり、継戦可能だ。
ただ、明らかにセブンの目つきは獲物を狙うもので───それに対して、駆の瞳は若干の怯えを宿していた。
「セブン、もう流石に……っ」
怯えは正しかった。
時刻は既に夜中の2時を回っている。3時間を超える性的行為による絶頂の連続は、アスリートの体力を持ってしても耐えられるものではない。
ベッド周りに散らばるゴムの数からして、既に五度は性器を重ねていると考えて良い。幾ら数ヶ月の禁欲とアスリートの体力を兼ね備えていても、無茶に近い回数だ。
それにも関わらず、身体を重ねるたびに性的欲求が高まっていく様子のセブンに、駆は限界を伝えた。
だが。
「私の好きな様にして良いって言ったのは駆だよねっ?」
「言ったけど、言ったけども……」
「それにほら、また硬くなってる♡」
そう。好きにして良いと言ったのは紛れもなく駆だ。漏れなく自分に返ってきている。
何より、駆の理性に反して本能は生殖機能を活性化させていた。一度出すだけでも相当な体力を消費する射精を五度も経て脳の疲労は限界を迎えているのに、本能だけはまだ性行為を求めている。
駆の脳が回数に耐え切れる許容量を持っていないだけで、回数をこなせる備えは出来ているのだろう。せめて萎えてくれれば終わったかもしれないのにと、無駄に持久力の高い愚息を恨めしそうに睨む。
───結局、お互いの体力が尽きるまで交わる事になる。
休憩を挟みながらも繰り返される行為は夏の日が昇り始めるまで続き、最後は気絶する様に眠った。
「……駆、随分と眠そうだけど大丈夫か?」
「祐介。うん、ちょっと遅くまで起きててさ」
「今日は別に無理して練習に来ることは無かったんだぞ? 傑さんや熊谷監督もその辺は配慮してくれるだろうし」
「まあ、うん。けど明日来れない人達と顔を合わせるには今日くらいだし。特に、3年生は総体で部活を引退する人も多いから。帰って来てから居ない人がこんなに、ってなるよりは今のうちに挨拶しておこうかなって」
「そっか」
翌日───というよりは当日の午後。夏休みに入って部活動の時間も多く取れる様になり、本日のサッカー部活動は午後からとなっていた。
ある意味では日が昇るまでセブンと交わっていた理由の一つと言えるだろう。普段ならば身体の調子を最も整えやすい時間帯の練習ではあるが、今だけは恨みを抱く時間帯の練習だ。
睡眠時間だけで言えば充分に取れたのだが、倦怠感と疲れが色濃く出てしまっている。幾たびの絶頂や朝方まで交わっていた事を考えれば至極当然の事。
ただ気になるのは、今はマネージャーとして動いているセブンだ。駆とは違って非常に元気に動いているし、顔も心なしか艶々としている。
一緒に気絶する様に眠ったのにどこで差が、なんて思いながら見つめていると、その視線に気付いたセブンが近寄って駆の耳元で囁いた。
「次はスペインから帰って来た時に、ね」
明らかに公衆の面前でする様な約束ではない。周りに聴かれない程度の声量ではあるが、普段はそこまで密着しない二人の様子には注目が集まる。
幼馴染である事は周知の事実だが、恋人関係にある事は隠蔽しているからだ*1。女子サッカーのアイドルと今や日本の至宝とまで言われる様になったU-17日本代表得点王が熱愛ともなればメディアも大騒ぎになるから、その辺りは配慮しており、普段はあくまでも幼馴染の距離感を意識していた。
その二人が普段見ない様な至近距離ともなれば、恋人関係にある事に気付かなくとも当然騒ぎになるだろう。周りから忙しない視線を浴びながら、駆は思考を回す。
(まだ“不安”があるのか……)
だからこそのスペインから帰って来た時に。帰ってくる様に願う言葉である可能性。
或いは、と。セブンの妖艶な表情を見て、確信する。
(いやえっちに嵌っただけだこれ。どうしよう、毎回アレだと死ぬんじゃないかな僕)
顔が青ざめる感覚。騒がしい周り。
いつもと違う部活動を送り、スペインへと飛び立つ前の最後の練習を終えた。
余談だが、その日の夕飯は赤飯だった。
ちなみに赤飯が出たのはスペイン行き前日だから本来の意味である厄祓いが目的です。
ただ駆くんは出て来た赤飯に動揺するので、前日にセブンの家に泊まっていたというのもあって、
母→察し
美都(妹)→察して悶々としてる
父→気付いてない
傑→飯うめぇ
逢沢家はこういう状態です。