背徳転生―エログロ世界に転生したけど、だらだら生きてます― 作:どくいも
――冒険者。
それは、浪漫にあふれた仕事。
迷宮へと入り浸り、未開地を探索する好奇心の強き者の仕事。
――冒険者
それは、あふれ出る正義の仕事。
人類の敵を打ち倒し、人々に平和と平穏を約束する人類への愛にあふれる者の仕事。
――冒険者。
それは、危険な仕事。
脅威に直面し、自ら天敵へと突撃する無謀なる仕事。
例え危険な仕事であっても、運と力があれば何とでもなる。
危険や絶望と引き換えに、夢と希望、さらには富と名声すべてが詰まっている、それが冒険者稼業というものだ。
それゆえに、俺は冒険者となった。
なりたいものになるために、力を持って、全てを手に入れるために、私は冒険者という道を選んだ。
その結果、私は成功した。
銀級という地位も手に入れ、安定して稼ぐだけの術も身に着けた。
好きな時に好きなものを食べられ、金を使えば好きな女を買うこともできるようになった。
――しかし、それでもこの選択は、そもそも間違いであったかもしれない。
なぜなら、俺は確かに皆があこがれるほどの冒険者になれたが、私自身がかつてあこがれたような冒険者にはなれなかったから。
無数の富や名声を手に入れても、そこに私が真に欲する物はなかったから。
──だからこそ私は思うのだ。
――私がこの世界に生まれ落ちて為すべき、それはもしかしたら別の事だったかもしれないと……。
★☆★☆
「で、結局あんたは何が言いたいわけ?」
「ちょっと冒険者辞めて別の仕事しようと考えてるんだけど、なんかいい仕事ない?」
「ない、冒険者だけ。
あきらめなさい」
というわけで現在俺達がいるのは、この街にある冒険者ギルド、その2階席の酒場。
そこで依頼の後の打ち上げをしているところだ。
「流石に、一言で切って捨てるのは酷くない?
それに否定するにしても、もっとこう、言い方ってもんがあるだろ」
改めて自己紹介すると、私の名はエルキ。
異世界に生まれ落ちた元日本人の現異世界人だ。
この世界においてはごく一般よりもチョイ上の成功した冒険者でもある。
もっとも、いくら成功したといはいえ、この街の冒険者という縛られた範囲であり、自分よりも強い人も幸せな人もたくさんいる。
その程度のごくごく平凡な転生系冒険者でもある。
「ん~、久々に食べたけど、やっぱりここのご飯は、あんまりおいしくないわね。
割引されてなかったら絶対食べないわよ」
「まぁ、仕方ないですよ。
ここの食事は安全性と効能だけしか気にしてないそうですし。
味は、酒で我慢しろと宣言していますから」
「こっちの話を無視すんなや」
現に今だって、せっかく仕事の後の打ち上げだというのに、パーティの仲間は自分の話を聞いてくれず。
あんまりおいしくないギルド飯にすら、話題を奪われる程度の幸運さと言えよう。
「いや、仲間とは言え、年上のおっさんに突然そんな愚痴を聞かされても、ねぇ?」
「そうですよ、急にそんなことを言って。
もしかして、冒険者をやめたくなったのですか?
それとも、このパーティにいるのが嫌になりましたか?」
「いや、そういうわけじゃない。
というか、このパーティの居心地はそこまで悪くないからな。
なんなら、お前たちがいるから冒険者を続けているまであるし」
「なら、なぜ?」
「そりゃ、こちとらもうアラサーだぞ?
いい加減、引退を考えてもいい時期じゃねぇか」
なお、自分が粘り強く訴えを続けたためか、ようやく仲間である二人も多少こちらの話題に関心を持ってくれたようだ。
「でもさすがに、私達の年齢で引退を考えるのは少し早すぎじゃない?
銀級や金級の中でも、私達はかなり若い方じゃない。
それに、いくら銀級冒険者でも、怪我したらそれですぐ終わりになるわけじゃないから、何かあってから考えるのでも、十分間に合うわよ?」
「お前ら2人はそうかもしれないが、俺はそうじゃないだろ」
おかげで少しずつではあるが、向こうもこちらの話題に乗ってくる。
「何かあってからじゃ遅いだろ。
それに30代以降の転職はそれこそ伝手がないと本当に地獄だぞ?
30代新人の募集かけているところなんて、十中八九地雷の職場しか残されていないからな」
「声に切実さが混じってますね……」
「しかも、おれはこのパーティの指揮担当でもあるだろ?
突然怪我で引退するときに、どうするか決めておかないと困るのはお前らだろ」
「まぁ、そう言われるとそうよねぇ。
正直私もあんたの代わりの仲間を探すとか、面倒くさすぎて考えたくない」
そうして、こちらから話題の深刻さも伝わったのか、彼女達の返答もだいぶ現実的でまともなものになっていった。
「言いたいことはわかったわ。
それに突然こんな話をするんだから、それ以外にも引退を考えるような理由があったんでしょ。
いいわよ、特別今日だけは、大事な仲間としてあんたの悩みを聞いてあげる」
かくして俺は、ようやくこちら異変を悟ってくれた仲間に対して、今回の自分の真の悩みを口に出すのであった。
「というわけで、今回の依頼の救出対象だった【車犯竜】の【人間肉竿ケツ穴オナホ車】がマジでドン引き過ぎて、なえてしまったわけだ」
「……それは、その」
「もし、俺たちが今回の依頼に失敗していたら、自分もあれの仲間入りしていたとか考えると、怖くて怖くて今すぐにでも冒険者をやめたい。
手遅れになる前に冒険者を引退して別の同じくらい稼げる仕事を始めたいんだけど、何かいい方法はない?」
「なんだ、いつもの発作か」
なお、ようやく振り出したこちらの本音は、あっさりと聞き流されてしまった模様。
「いつものとは何だよ、いつものとは!
今回こそマジで引退しようかどうか、気分的瀬戸際はなんだよ!?
見てくれこの真剣な眼差しをよぉ!?」
「いや、でもまぁあの程度被害なら……ねぇ?」
「私個人としては、先月見た【無限分身淫乱スライム射精肉竿樽】の方のほうが遥かに驚きでしたけど」
「やめろ!それを口に出すな!
ようやく忘れられたと思ったのにぃぃぃ!!!」
さらに言うと、こちらがようやく忘れかけていた過去の冒険の冒険のトラウマまで掘り起こされる始末。
なんでそんなひどいことをするの?
「というか、この世界はおかしいんだよ!?
なんだよ、【耳マンコ開発虫】とか【へそ穴貫通絶頂スライム】とか!?
もっとこう王道の感じの魔物や強敵を討伐する依頼はないのかよ!?」
「つまりあんたは久々に【牛鬼】やら【呪人】みたいな、人型の魔物と戦いたいということかしら?」
「もしくは盗賊団の殲滅かもしれませんね」
「そいつらだって、基本男女関係なく犯すじゃねぇか!?
しかもケツアナだけじゃなく、場合によってはこっちを性転換してでも!?
頭狂ってんのかよ!?」
そう、実はこの世界は、いわゆるエロゲ的ファンタジーな世界であったりするのだ。
それゆえに、人類の敵である魔物は、何故かどいつもこいつもエロ技能標準搭載。
しかも、強くなればなるほどマニアック性癖をこちらに押し付けて襲ってくる傾向にあり、高位の冒険者ほど危険ときたもんだ。
「やめたい……。
別に今の給料や待遇に文句があるわけではないけど、取り返しのつかない後遺症を負う前にこの仕事辞めたい……」
だからこそ、この世界における冒険者は、唯々危険なだけではなく、命より大切な尊厳を失うことは珍しくない。
一度死んで異世界転生できた自分としては、文字通り死ぬよりも恐ろしい、そんな職業でもあったのだ。
「まぁまぁ、エルさん。
私たちが頑張っているから、罪もない人達がそのような邪淫の魔の手から救われているのです。
むしろ、このような苦労をすることが私達冒険者の本業、そうでしょう?」
が、残念ながら自分のこの悩みに対して、仲間達はあまり共感をしてもらえないでいる。
なぜならば、この世界的には、冒険者とは、そういうエログロモンスターと戦ったり襲われたりするのが常識だからだ。
自分の考えるような冒険者像は、そもそもこの世界的には存在しない。
「じゃ、あんたの悩みは解決したから今度は私の悩みを聞きなさいよ!
というわけで、そろそろ私の彼のタウロの銅3級昇格試験なんだけど。
その昇格祝いに何を買うか一緒に決めるの手伝って♪」
そうして、自分の話題はこれで強制的に打ち切り。
その上で、こんな雑なお悩み相談を対価に、もっとめんどくさい問題を仲間から振られてしまった。
「え、やだ。
というかそういうのはお前ひとりで決めろや。
彼氏のプレゼントをパーティ面子とは言え他の男に聞くんじゃねぇ」
「私はあんまり男の趣味ってわかんないのよ。
まぁ、あんたはタウロと違って趣味も悪いし、年もはるかおっさんなのは知ってるわよ?
それでも、同じ男ではあるんだから、そういう視点でのアドバイスが多少なりともできるでしょう」
なお、こいつの言う彼氏関連のお悩み相談は、大抵は惚気地獄になり、一人身の自分にはいろんな意味で毒だ。
出来ることなら御免被りたいが、どうやら今回は避けるのが難しいようだ。
「あ、なら私は今回の相談には必要ないみたいですね。
それじゃぁ」
だからこそ、負担軽減をするためのもう一人の仲間も道連れにしようと思ったが、残念ながら彼女はこちらが声をかける前に離脱の準備を開始してしまった。
こら待て、このデカケツシスター!
「いやぁ、本当なら私もお供したいのですが、この後教会の子供たちとの約束があるので……。
ごめんなさいね?」
「う~ん、なら仕方ないわね!
それと、この余った料理は適当にお土産として持って帰ってくれない。
あとの食事はコイツと私で別の店で食べ直すから」
そうして、自分の願いもむなしく、デコイ候補であるシスターは無事に脱出。
哀れ、事前に安易なお悩み相談をしてしまった自分には逃げ場は残されていないと言ったところだ。
「それじゃあ、さっそく次の店と!
タウロの昇格祝いへの作戦を一緒に考えるわよ!?」
「拒否権は?」
「あると思う?」
かくして俺はこの打ち上げの食事代をすべて払い、この貧乳女戦士に拉致される。
「ん~?やっぱり、こういう場合って女魔除けの香水とかがいいかしら?
タウロはあんたと違って、純粋にモテるからね。
清潔感を保ちながら、私のものって、きっちりアピールできるものがいいかも」
「え?手料理?
う、う~ん、それに関しては私よりもタウロの方が上手だからなぁ。
愛情たっぷりで、その上、おしゃれなのよ!」
そして行く先々で、相談という名の惚気とに付き合わされ、彼女の彼について耳にタコができるほど聞かされる。
「……で、そんな自慢の彼でも、お前のここは満足させられないと」
「いっ♥いひひひひいいぃぃぃ~~♥♥」
そして、そんな長々しい彼氏自慢の締めとして、彼女の蜜壺にこちらの一物を突き刺すのであった。