背徳転生―エログロ世界に転生したけど、だらだら生きてます― 作:どくいも
――それはそこそこに懐かしい記憶であった。
今から約20年、いや30年近く前の事。
私がこの世界に生まれる直前、すなわち神の眼前にいた時の話だ。
『つまり、俺は異世界に転生して魔王を倒せ……ってこと!?』
『別にそんなこと言ってません』
その時私は神(あるいはそれほどの力を持った何か)により、新たな世界へと転生するための説明を受けていた。
この神様曰く、次に私が生まれ変わるのは、地球とは似ているが少し法則が違う異世界【ジーコ】らしい。
現代地球文明に比べて、科学文明が少し遅れており、代わりに、神学や魔法に関する技術が発達いる。
何よりも魔物や魔族と呼ばれる人類敵性生物がしており、さらにはそれらを統括する魔王と呼ばれる世界。
わかりやすく言えば魔王が存在する剣と魔法の世界に、ちょっとしたおまけ付きで転生できることのなったそうだ。
『そんな世界に、わざわざ記憶付きで転生させてくれるんだから、そりゃ魔王を倒せ位言われるかなぁって思ったんですが』
『驕らないでください。
数多の英霊ですら倒せなかった今代の魔王に、少し底上げしたエロゲクソ童貞ごときでなんとかなるとは思ってるませんよ』
言いたいことはわかるけど、流石にその発言は辛辣過ぎない?
聞くところによると、通常なら大体70年ごとに世代交代する魔王が、今代は1000年たっても現役。
さらには今の異世界における魔王の勢力が強すぎて、新たな勇者を選定したり、蘇生したりしても生まれた瞬間に狙い撃ちされる、すなわちリスキル状態になっているそうだ。
そんな魔王の卑劣な破壊工作のせいで、やや人類文明が後退気味、それが今の異世界【ジーコ】の状態だそうだ。
『一応、魔王という存在は、その性質上、人類を完全に絶滅させることは不可能です。
しかしそれでも、長期間同じ魔王が存在し続けることは健全とは言い難いですからね』
『魔王の存在自体が、人類的には健全じゃないように聞こえるんですが』
そんな自分の意見は無視されつつ、なぜ自分がそんな世界に転生させられるかと聞かれれば、基本的には【デコイ】らしい。
複数の対魔王英霊をその世界に転生させる為、新しい魔王殺しである【勇者】の存在を察知しにくくするために、中身のない凡人をそれっぽく転生させて、転生勇者のリスキルを防ぐとのこと。
地獄かな(本日2度目)?
『なら、全部本命の勇者だけ召喚するとかは無理なのか?
神なんだから、全部方面だけの攻撃とか余裕だろ?』
『それに関しては、勇者や魔王を増やし過ぎると、世界のほうが先に壊れてしまうので』
であるか。
『それゆえ、あなたには最低限の下駄を履かせて転生させますが、そこで何かすることは期待してないので安心してください』
こちらとしては、転生後に無茶振りさせられるよりは全然いいけど、全く期待されないのはそれはそれでムカつく。
『まぁ、魔王も暇ではないので、あなた程度の魂ならすぐに偽物だとわかっていただけると思うので、命の心配とかはしなくていいと思いますよ。
だから、貴方は精々、前世と同じく小市民で、しかし早死だけはせず、出来れば適当に子孫を残すことを目標に生きていってください』
一瞬なんだその程度かと思ったが、よく考えたら地球時代はそれすら達成できずに死んだことを思い出す。
そんなこんなである程度の質問が終わり、転生直前になって、思わずそれを聞いてしまった。
『ところで、件のクソ強い魔王ってどんなスペックしてるの?
もしかして、思うだけで世界を壊せるとか、超新星爆発を起こせるとかないよね?』
『あぁ、そういえばそれを伝えていませんでしたね。
参考までに、件の魔王のここ最近の簡易的なスペックです』
そうして脳内に送られる魔王についての情報。
単純な外見やその体質、更には特技まである程度細かくもわかりやすくまとめられたその魔王についてのデータとその特徴を読み取った。
そうしてそれを読み終わって思ったことが一つ。
『……なあ、神様』
『はい』
『この魔王って、ほとんどがエロ関連の技能持ち。
いわゆる【淫魔】と呼ばれる存在ではないですか?』
『はい。
件の魔王は貴方の生まれる時代では【大淫魔女王】を名乗っていますね』
さもあらん。
★☆★☆
「……懐かしい夢を見たな」
タウロの昇格残念会から早数日。
ひさびさに夜遊びもせず帰宅し、自室で爆睡し、遅めのおはよう。
背筋をグイっと伸ばしつつ、ステータス欄から今の時刻を確認した。
「……朝の十時か、思ったよりは早く起きたな」
――ちゅぷ、ちゅぷぷ♪
関節の隙間を整えつつ、過去の事を思い出す。
昔はそこそこ大変であった。
神からの恩恵はあるとはいえ、基本的にそれらは幼少期ではそこまで役に立たず、さらには自分の生まれがほぼスラムという酷い状態で生まれたからだ。
事前の神の警告のおかげで、この世界が淫魔王に支配された世界だと理解していたが、そんな情報アドバンテージなど赤子の状態やスラムの治安の前では何も役に立たず。
何とか生き残るだけで精いっぱいであった。
そのうえで、この世界は淫魔王に支配されているせいか、スラムでは無数の色狂いや違法媚薬が溢れており、周囲の尊厳破壊は日常茶飯事。
むしろ前世の記憶や倫理観を恨めしく思うことも、多々あった。
「そう考えれば、今こうしてケツ穴の心配も、倫理観も壊さず冒険者をやれていることは幸福なんだけど……」
――チロチロチロ♪
しかし、それでも結局いまだ結婚はできていないなと。
ましてや恋人や子供を作ることもまだ。
結局神様からの神託を達成できていないなと。
「……いや、別に達成できてないからって加護を没収されるとかはないと思うけど……
けどなぁ」
――くちゅくちゅ♥
多分、神様側もこちらに与えた加護に有効期限などを求めていないし、あのときの神託も軽口程度のものだろう。
しかし、それでも今自分に与えられた神からの加護がなくなると色々まずい。
だからこそ、できるだけ加護がなくなる可能性を下げておきたいのも、また事実だ。
「となると、最悪はスラムに行って、適当な壁尻相手に産んでもらうか?
もしくは奴隷でも買ってそいつに孕んでもらって……さすがに最終手段過ぎるか」
――ちゅるるる~♪♪
そんな中少しだけ脳内で異次元の少子化対策を考えるも、すぐにその考えを振り払う。
そうだ、自分は折角前世の記憶と倫理観を持ったまま生まれ変わったのだ。
いくら神にくそ童貞やら同僚からヘタレといわれようとも、この倫理観だけは大切にしていくと決めたのだ。
――じゅぼ、じゅぼぼぼぼ♥♥
「うっ…!!出すぞ!!」
そんな考え事のさなか、自分の竿への刺激が最高潮になる。
半分無意識、半分習慣的に、思わず自分の股間にあるそいつの頭部の角を強くつかむ。
そのまま、そいつの頭ごと強く股間へと押し付けて、肉竿をそいつの喉の奥まで押しやる。
喉のうねりと締り、さらには【性器】としても機能する咽頭により、亀頭裏まで含め、温かみと括約を感じつつ、射精した。
――~~~~~♪♪
「ん、今日も目覚ましフェラありがとうサキュ太郎」
そうして、俺は自分の竿の掃除を終えた淫魔に礼を言いながら、ゆっくりとタオルを取り出すのであった。
朝の性処理サキュバスをしまい、自宅を出ていく場所は中流層向けの商業地区。
そこのすこしはずれに自分の所属する冒険者ギルドである。
「あ、エルキさま!
今日はおひとりですか?
なら時間はありますわよね!というわけで、少しお話が……」
「ダンジョン探索。
ダンジョンは大淫、鍵は妖羊の草原で」
そして今俺は、ギルドのハイランク冒険者用受付においてダンジョン行への許可を取っているわけだ。
なお、大淫とは、この都市にある最も大きいダンジョンであり、この都市の冒険者産業の中枢。
鍵とは、そんな大淫ダンジョンで使えるワープ用の魔法アイテムの事である。
「いやいやいや、少しお待ちください!
実は、最近冒険者の救出費用が少し上がったのでしてよ!
そのおかげで、ほら、この通り、救出の際にポーションなどの魔法薬を使っても、場合によってはギルド側で5割負になりまして……」
「鍵は妖羊の草原で」
「あの……」
「探索、鍵、妖羊の草原」
なお、基本的にこの冒険者ギルドではきっちり冒険者は管理されている。
そのため、ダンジョンに潜る際も許可が必要になるし、特にダンジョン内の奥地へと一瞬で移動できるカギに関しては基本的にギルド側で管理されているほどだ。
まぁ、この事については冒険者的には賛否両論出ていることだが、個人的には悪いことではないと思っている。
でなきゃ、ただでさえ多い違法冒険者という名のごろつきや被害者という名のダンジョン遭難者がもっと増えることが眼に見えているからな!
「う~…、せめて、依頼書くらいは見てくれませんこと?
ほら、今回の行方不明者なんて銅の準2級冒険者ですのよ?
完全治療とまではいきませんが、せめて少し遺留品を探すくらいは……」
もっとも、ちゃんと管理できているせいで、ダンジョン内でどのくらい冒険者が行方不明になっているかをきっちりギルド側で管理できているという事であり。
そのせいで救出依頼がいつでも山済み状態になっているのだ。
さらにいえば、その依頼もある程度ギルド側も補助金を出しているが、ほとんどが格安報酬確定。
唯一の救いは、例え依頼を受けていなくても、賞金首形式で生きて連れて帰ればそれだけで最低限の報酬をもらえるところだろう。
「うるせぇ、その手の救出依頼はもっと正義感が強いやつに頼め」
が、それでも基本救出依頼というのは、一部のもの好き以外積極的に受けるべき依頼でないのは確かだ。
なぜなら救出依頼は基本、高難易度、低収入、精神的きついの三拍子だからだ。
だから、どこかの高貴な血持ちとか、救出ガチ勢のシスターとか、そいつらなら或いはだけど俺みたいな只の生活困窮者系冒険者に頼むのは色々人違いすぎだろ。
「う~、ですが……」
「うるせぇ、あんまりごちゃごちゃいうなら、その上と下の口どちらにも俺の一物ねじ込むぞ?」
「責任取ってくださるなら、それでもかまいませんことよ?」
「……探索、鍵、妖羊の草原」
「へたれ」
かくして俺は、なぜか冒険前に特大の敗北感を味わうことに。
――げへ、めげへへへへへへ!!!!
「う……あ……♥
やめ……♡」
そのうえで、ダンジョン内でも救出待ちの冒険者を見つけてしまうという不幸に見舞われるのでした。