若虎駆ける(冥琳)
舞い上がる砂塵の中を突き進んだ。
騎馬の一団を操り、賊徒を追い立てる。速度は一定に保つ。かかりすぎても、緩めすぎても意味がない、と手綱を握りながら孫策は思う。
これは戦ではなく、狩りである。獲物が鹿や猪などの動物か、人間かの違いでしかない。そのことを、深く考えようとも思わなかった。
「いまだ周瑜。火を放ち、奴らの退路を断て」
「へへっ。まさか、ここからは聴こえやしませんって、大将」
そばにいた旗本の誰かが、冗談めかしたように笑う。
こんな場所から、離れた地点に潜む周瑜に声が伝わるはずがない。だが、発した当の本人である孫策は、いたって本気なのである。
黒塗りの鞘から剣を抜く。片刃の剣で、刀身の半ばから少し反りがある。長すぎないから馬上でも扱いやすく、普段から肌見放さず佩いている愛刀だった。
成人した折に義母から手渡されてから、風呂と厠を使う時以外はほとんど一緒に過ごしてきた。もはや自分の出生になど興味はないが、このひと振りだけがどうにか縁をつないでくれている。
「おお。大将のお言葉通り、ほんとうに火が上がっているぞ」
「ほら見ろ。俺とあいつとの仲を、おまえたちは甘く考えすぎだ」
一番最初に笑った旗本が、馬上で平身低頭になっている。
調練中にやる気のない素振りを見せられていたのなら、間違いなく斬り捨てていたことだろう。ここは、選ばれし者だけが上がることを許された舞台であり、自分たちは狩り場にいるのだった。だから、かわいげのある冗談くらいなら、笑って流せる。
率いる騎馬は百騎。この数ヶ月、暇さえあれば鍛えてきた麾下たちだった。
いずれは中原を駆け回り、戦に明け暮れることになる。そうした目標があったから、鍛えるなら騎馬しかないと思っていた。
義母、それに付き従う宿老たちも、こぞって騎馬隊を形成できる人員を育てている。
地方のいち領主で終わるつもりなどさらさらない。遥かに大きなものに眼が向いているから、原野を征服するための軍勢を組織しようとしているのだ。
「掃討に移るぞ。皆、俺の合図に常に気を配れ」
賊徒の数は五百ほどか。徒党を組んでいるだけなら正直どうでもいい規模の相手だったが、領内を荒らすというなら話は別だった。
普通なら、義母の配下の誰かが討伐にでかける。戦にならないくらいつまらない敵なのだから、調練の成果を見るという目的がなければ自分も手を挙げることはなかったのだろう。
「まがい物の孫郎め、死にさらせ」
「はははっ。終わってやるものかよ、こんなところで」
賊徒のひとりが斬りかかってくる。気合だけは認めてやってもいいが、剣も馬の扱いも、まるでなっていない。孫策がぶつけるように馬を寄せる。それだけで威勢が吹き飛んだのか、賊徒は馬上で身体をよろめかせた。
斬るまでもない相手だ、と孫策は刀を握る手で手綱を掴んだ。左の拳で賊徒を殴りつける。落下し、地面に叩きつけられたひとりが、後続の騎馬の足蹴にされていく。
「俺をまがい物だと非難するのなら、それを言う貴様たちはいったい何者だ」
そもそも、なろうとしていまの地位を得たのではないし、なにも知らない赤の他人に非難されるいわれなどなかった。
やりたいようにやり、駆けたいと思った道を駆けてきた。それを許してくれた育ての父母には感謝しているし、受け入れてくれた家族に対する恩を生涯忘れることはない。
「孫策の剣、嫌というほど味わってから死んでいけ。さあ、斬られたい者から前に出ろ」
前方には周瑜の放った炎があるから、どれだけ攻め立てられようと賊徒に逃げ場はなかった。
あとは、獲物を好きに狩るだけだ。刀を持った右手を差し上げ、騎馬隊の陣形を横長に変化させる。
先頭に躍り出て、ひたすらに斬りまくった。倍以上の敵に対して麾下は少しも遅れをとっておらず、ずっと押しに押せている。そうでなくては調練をしてきた意味がない、と孫策は笑う。今日は本番のようであり、実はそうではないというのが本音だった。
外に出ていけば、強い軍勢はいくらでもいる。それと互角にぶつかり合い、すり潰すくらいでなくては天下は狙えない。そのくらい、覇者への道は遠くにあるべきなのではないか、という思いもある。
やけに血なまぐさい土埃が、しばらくあたりを覆い尽くした。
†
流れてくる風が焦げ臭い。
賊徒の掃討を終えた孫策は、川辺で周瑜との合流を果たしていた。火計の指示を直接していたせいか、いつものように女らしい香りがしない。本人もそのことが気になっているのか、なんとなく距離があるのを孫策は感じていた。
「もっと近くにこい、周瑜。戦場にいた人間らしい匂いがする。それは、軍人として誇らしいことではないのか?」
「意地の悪いことを言うやつめ。だったら毎日、わが身を煙で燻してから出仕してやろうか。おい、どうなんだ、孫策?」
「やめだ、やめ。底意地の悪さで、俺ごときが軍師殿に勝てるはずがないだろう。うむ、そうだな。匂いのひどさでは、俺もかなりのものではある。麾下にも少し休みを取らせたいところだし、水浴びでもしていくか」
「おっ、おい。言いながら脱ぎはじめる奴が、どこにいる」
眼鏡の奥。知性をたたえた周瑜の瞳が、ちょっとたじろいでいる。
衣服を素早く脱ぎ捨て、周瑜の腕を引き寄せる。流れの速さは緩やかで、いい具合に身を隠せそうな岩場まである。なんとも、お誂え向きの場所だった。
「どこって、ここにいるだろう、冥琳?」
「はあ……。一刀、まったくおまえという男は」
文句を言いつつ、周瑜が素足となって川に一歩足を踏み入れた。いつ見ても飽きることのない、褐色の肌である。
まがい物の要素のひとつに、この肌の色もあるのか。義母や妹たちに比べると、自分は肌の色が少し薄い。それを他人に馬鹿にされて腹を立てたこともあったが、子供の頃の話である。
冥琳、というのは周瑜の真名だった。この国では、名と字のほかに真名を持つことが当たり前となっている。自分の場合は、一刀というのがそれに該当する。
「おい。私はなにも、身体を洗ってくれなどと頼んではいないのだが」
「遠慮をすることはない。俺が、好きでしているだけのことだ」
「だから、それがおかしいと指摘を……。んっ、んむっ、はあっ、れるっ……」
反抗的な口を強引に塞ぐ。
煙たさが残っているのは仕方がないとして、口づけにはやはり甘さがある。そのまま冥琳の服を剥ぎ取り、裸で抱き合った。
「興奮しすぎだぞ、馬鹿者。だいたい、こんな外でだな……。あっ、んっ、んんっ……♡」
「好きな女と、こうして密着しているのだぞ? 欲情していないほうが、むしろ失礼だと俺は思ってしまうのだが」
「も、もう……っ。くっ、はっ、はあっ……。それっ、んぅ、いっ、ああっ……♡」
いきり立つ男根を、むっちりとした腿の隙間に差し入れる。言いようのないあたたかさがあり、同時に重みのある乳肉を手を使って持ち上げると、もはや感動が込み上げてくるようだった。
肉の感触を味わうように、ゆっくりと腰を動かす。開放的な場所での情事に恥ずかしさがあるのか、冥琳は顔をさらに赤く染めていた。
それと同じくらい赤くなった乳肉の先端。こねるように指の間で転がすと、冥琳が身体を跳ねさせた。ばしゃり、と水をたたく音がする。驚いて抱きついてくる冥琳が、いじらしかった。
「な、なんだ、ただの水鳥か。誰かが来たのかと思い、さすがに慌てたぞ」
「そんなことを言って、刺激が足らなくなっただけではないのか、冥琳? ほら、抱きついた反動で俺のものが少し」
「んっ、くふうぅ……♡ う、動かしているのはおまえではないか、一刀。あっ、んっ、くううぅう……♡ だ、だめだ、こんな、ああっ」
めり込むように埋もれた亀頭を、膣肉の中へとさらに埋もれさせていく。
冥琳の体温が直接伝わる。どこよりも安心できる場所で、居心地は最高だった。
興味本位のいたずらが、はじまりだったのかもしれない。まわりは美人だらけで、当時は欲望の発散だってどうすればいいか知らなかった。冥琳とは知り合ってからずっと仲がよかったし、いつかはそうなりたいという思いが自分にもあったのだろう。
現在ほど肉づきはよくなかったが、理性を崩すには十分すぎるやわらかさを冥琳は備えていた。溺れた、という表現がよく当てはまるのだと思う。大抵のことは時間が解決するというが、月日の経過とともに激情の起伏はなだらかになり、自分たちの結びつきは断固たるものとなった。
「ゆっくり、動くぞ」
「これ、すごくいいっ……♡ くっ、ふ……ぅ。あ、ああっ。音を立てすぎるなよ、一刀。先程のようなことが何度もあっては、私の身がもたん、んんっ……♡」
冥琳の片足を持ち上げ、結合部の密着を強くする。
美しい黒髪が風に流れる。きっと、傍から見れば詩を詠みたくなるような情景をなっているはずだ。
「ひゃ……っ。おっ、んっ、んんっ……♡ き、きてる。一刀の太いのが、私の奥の、奥にまで……ぇ♡」
暴れ回る乳肉を掴まえる。
極上の揉み心地。埋もれた指が気持ち良すぎて、離れたくないと駄々をこねる。
女を求める腰が止まらない。起伏こそなだらかにはなったものの、それで元からある情欲の炎が収まったわけではなかった。人を斬れば、それだけ感情は揺れ動く。揺れ動いただけ、ふくらんだものは吐き出す場所を求める。
「ふうっ、んっ、はーっ、はっ。おまえの熱さをもっと感じさせてくれ、一刀。私の肌という肌に、刻みこむほどに。うっ、うあぁあっ♡」
がくん、と冥琳が上体を揺らす。
噴き出した愛液が熱をたたえている。これだけの歓迎を受けて、応えてやらないほうがどうかしている、と孫策は抽送を続けた。
熟した果実、と評するのは心の内だけにとどめておく。手触りのいい尻肉を片手で鷲掴みにし、最奥で性器同士を擦り合わせる。痺れるような快楽。自分もかなり興奮してきているのか、一瞬腰が砕けそうになった。
冥琳、と真名を呟いて膣肉をほじくる。きつい締め上げ。早く射精しろ、と急かされているようだった。普段は厳しい素振りが目立つ女なのだが、これで甘え上手なのがもはや卑怯なのである。
欲望がふくらむ。腰が重い。それでも愛する女の要望に応え、孫策は快楽をひたすらに送った。
「くる、またくるっ……♡ うっ、はあっ、んっ、おっ……♡ き、きてくれ、一刀。今度は一緒に、おまえも一緒に……いっ♡」
「はははっ。文句を言っていた割に、ひどく愉しんでいるではないか。いいぞ、冥琳。好きなだけ、おまえの身体にぶっかけてやる」
「し、仕方がないだろう。それに、ぐっ、んうぅうう♡ 私をこんなにしたのはいったい誰だと、おっ♡ おもっ……♡」
裏返った声で冥琳が雌の声を洩らす。
実際は鍛え上げられているはずなのに、どうしてこんなにもやわらかさを感じられてしまうのか。女体の不思議。はっきりとした答えなど、別に欲しくもなかった。
「うっ、あんっ、あっ、あふっ♡ ふ、太い。一刀のチンポが、私の中で限界までふくらんで♡ ああっ、くる。射精するんだな、一刀」
子宮口への擦りつけで返事をし、内側を引っ掻きながら思いっきり引き抜いた。
あまりの反動に男根が跳ねる。達した冥琳の肉体は鮮やかに色づいていて、白濁で染めてしまうのがもったいないくらいの美しさがあった。
暴れる男根を手で扱き上げる。堰を切って流れ出す精液。何日か溜め込んでいたせいか、やけに勢いがよかった。締まりのある腹部。それに反するくらい主張をする乳房。そして端正な顔にまで、粘っこい汁が襲いかかった。
「い、いいぞ、一刀っ♡ あ、ああっ、んっ、あああっ♡ もっと、私に、私だけに、おまえの子種をぶっかけてくれ♡ 匂いが取れなくなって、いつまでも感じていられるくらいに♡ うあっ、んうぅうぅうう♡」
全身で精液を浴びながら、冥琳が絶頂に声を洩らす。
心からの叫び。いつまでも聞いていたくなる、と孫策は思った。汁まみれになった乳肉を搾り上げる。冥琳の子は、こんな立派なものから乳をもらえるのだと思うと、ちょっと腹立たしくなった。
「だ、だめだ……ぁ♡ いまそんなにおっぱい搾られたら、あっ、あっ、んーっ♡ で、でないのに。まだお乳でないのに、一刀の指がぐりぐりって♡ く、はあっ♡ んっ、んんっ、おっ、くお……っ♡」
少しでも気分を先取りしてやろうと、両方の乳首を強引に口に含む。
かすかに甘さがしているのは、おそらく気のせいなのだろう。いっている身体には刺激が強すぎるのか、冥琳が何度も身体をひくつかせている。このくらいのことでやめてやるものか、とさらに乳首を強く吸い上げた。
「こ、この馬鹿者……ぉ♡ い、いぐっ♡ 一刀に乳首ねぶられて、またい……くっ♡」
かわいらしい冥琳の声が、岩場に反響する。
生まれた火照りはまだ消えてくれそうになかった。
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