鳥のさえずりが彼方に聞こえている。
差し込んでくる夕日を背中に、孫策は貸部屋の寝台に腰掛けていた。月はこちらの人数分、都合をつけてくれようとしていたのだが、それは固辞して冥琳と同室で過ごすことを決めている。
義母は飲み仲間でもある祭と。小蓮には夜間の護衛を兼ねて明命がつくことになり、あとは梨晏と霞が一緒になっていた。
どうせここで何日も暮らすわけではないから、ほかの誰かと寝る時には自分が足を運べばいいだけだ。明日には馬家の面々との会談が予定されており、何事もなければそのまま軍議に移ることになる。
馬騰が麾下としているのは、異民族との命の取り合いの中で磨かれてきた騎馬隊だ。参考にできることはいくらでもあるだろうし、吸収できる部分はすべて吸収するつもりで孫策は戦に臨むつもりだった。
「董卓殿のあの表情。御母上の言ではないが、おまえちょっかいをかけたな、一刀」
「おもしろい女だと感じたから、そうしたまでだ。見てくれは深窓の令嬢だというのに、あれは心にけものを宿している。その歪さに、俺は惹かれてしまうのだろうな」
「好き勝手言ってくれる。しかしまあ、おまえから奔放さを取っ払ったところで、気味の悪いなにかが残るだけなのかもしれんな。……孫郎殿の直感、あてにさせてもらうぞ」
冥琳は観念したのか、ふーっと長く息を吐いている。
貸部屋とはいえ私的な空間にいるせいか、普段よりもかなり気が緩んでいるようだった。卓上に両肘をつき、合わせたこぶしに顎を乗せている。そんな姿勢でいるせいか、ただでさえ豊満な谷間があきれるほど強調されていて、ついオスの本能を刺激されてしまうのだ。日常的に厳しい視線に晒されている孫家の文官どもがこの姿を見たら、いったいどんな感想を抱くのだろうか。親友であり、恋人でもある男の特権だった。それを存分に堪能できていることに、孫策はひどく優越感を覚えている。
自分の視線に気がついたのか、冥琳の瞳が理知的な輝きを取り戻していた。瞳の色は萌え立つ草原の緑にも似ていて、さわやかな風さえ感じさせる。
こうして千里の先まで見通してしまえそうな顔をしている時の冥琳も、孫策は好きだった。
「ところで、私はこの状況に対してどんなツッコミを入れるのが正解なんだ。なあ、明命?」
「ふぁふ……。んっ、れるっ、んあっ、んっ……、ふぁい……?」
くぐもった声の持ち主が、冥琳の質問に反応する。
生暖かい感触に包まれていた下腹部の一点。その包容がやや薄まり、孫策は切なさを感じていた。眼下にある黒髪を撫でる。そうされるのが気持ちよかったのか、明命は唾液まみれになった亀頭の先を優しく吸い上げる。
「明命に、仕事をしてきた褒美をやっているだけだ。それをいまさら、おまえの眼を憚ったところでなんの意味がある」
「はぷっ、んっ、ちゅっ、ちゅっ……。あっ。一刀さまのおちんちん、びくってなりました。はうっ、んあっ……。お味もとっても濃くて、わらひ、んむっ……」
男根を口に含みながら、明命が床についた膝をしきりに擦り合わせている。
冥琳の前で奉仕をしている自分に、気分を昂揚させてしまっているのか。ちょっとざらついた舌の表面が敏感な裏筋を這い回る。じわりと昇ってくる甘い痺れ。冥琳が部屋にもどった時点で行為はすでにはじまっていたから、わざわざ中断する気にはならなかった。
明命は大変な猫好きで、身のこなしにも動物的な軽さがある。戦闘はもちろんのこと、その技術は諜報に関してもよく役立つ。そうした存在が麾下にひとりいるかどうかで、戦の趨勢はいい方に転んだりもする。
「はあ……。まったく、少しは注意してもらいたいものだ。こんなところ、賈駆殿に見られでもしてみろ。おまえの評価、きっと地面の遥か底にまで落下するぞ」
「それこそ、気にする意味のないことだ。交わるべき時がくれば、道は交わる。月とは、たまたまそれが早かったのだろうな」
詠の鋭い眼光を思い起こす。月と真名で呼び合うようになってからは、監視が余計に厳しくなった気がしていた。
「はむっ、あんっ、あっ、ふふっ。よろしければ、冥琳さまも一緒にいかがですか? 私は、ちっとも構いませんので」
「明命こそ、私に対する気遣いは不要だ。おまえが一刀からもらっている褒美の時間を、邪魔するつもりはない。私のことはいないものと思い、存分に愉しんでくれ」
「はい、なのです。んあっ、むっ……。くぷっ、ぷっ、んっ、ひゃへっ……。んぷっ、あっ……。一刀さまのおちんちん、るろっ……。もっと私の奥にまで」
冥琳から許しをもらい、明命が男根を喉の深くに迎え入れる。
小蓮などであれば、少ししただけで苦しくなり、嗚咽と同時に吐き出してしまうが普通だった。日頃鍛えている呼吸の術が、この瞬間にも活かされているのかもしれないな、と孫策は笑いながら思う。明命は喉の筋肉をうまく操り、互いに快楽を得られるぎりぎりの点を攻めている。
必死になって男のものにすがりついている顔を見せられると、どうしても支配欲が満たされる。もはや諦めがついているのか、冥琳は意に介さずといった態度をとっていた。
忠犬のごとき様相を示す明命。その着衣の胸もとを乱し、ふくらみかけた乳房に指でふれた。つんと尖った乳首が、指先をしっかり押し返してくる。
「せっかく、こうして西涼まで出てきているのだ。もう少し、手土産をもって帰りたいものだな」
「うむ。董卓殿とのつながりで、考えられることは増えている。益州、というか探るならまずは漢中か。誰か、いい案を出してくれると助かるのだがな」
眼を細めて、冥琳が笑い声を洩らした。
この先、乱世が深まるほどに軍師には大きな責務が降りかかる。それが冥琳だけに集中するような事態だけは、避けたいと思っていた。
案をあたる候補として、思い当たる節がないわけではなかった。
別れ際に見た猫耳女の困惑した表情を思い出す。しばらく間を空けたことだし、こちらから動きを見せてもいい頃合いだと孫策は一度頷いた。
賊軍討伐が成ったあかつきには、どうにかして荊州の土地をもぎ取るつもりでいる。
地盤に不安のある何進は、信用に足る味方を求めているきらいがある。荊州には皇帝の同族である劉表がいて、しかもかなりの力を有しているのだ。おのれの息がかかった人間を送り込み、その対抗馬とする。いまの何進ならば考えそうなことで、自分は気持ちを全力でくすぐってやればいい。
「一筆したためてもらおうか、冥琳。荀彧宛ての書簡だ。近況報告のついでに、涼州土産はなにがいいか尋ねておいてくれ」
「承知した。ふふふっ。少々気の毒ではあるが、こればかりはどうしようもないことだ。虎の爪の届く範囲に、荀彧殿は迂闊に足を踏み入れてしまったのだからな。獲物を逃がすくらいなら、いっそのこと八つ裂きにしてしまう。そうではないのか、一刀?」
「人を化け物のように言ってくれるなよ、冥琳。ただ、曹操殿の不興は間違いなく買うことになるだろうな。ははっ。夏侯惇との一件があったせいで、それもいまさらなのかもしれないが」
洛陽は、思いの外愉しみのある場所だった。苛立ちを抑える曹操の顔は、まだ記憶として鮮明に残っている。あれから荀彧は、うまく馴染むことができているのだろうか。曹操の心は別にして、側近たちはあの女の存在を確実に危ぶんでいるに違いない。
胸からの快楽に負けじと、明命が精液を吐き出させようと懸命に頭を振っていた。会話の内容と不釣り合いな淫靡な水音が、部屋に先程から響いている。さしもの冥琳も完全に無関心ではいられなくなったのか、時折眼が奉仕をしている明命のほうに向いていた。
「おちんちん、まだまだ大きくなるのですね。ふあ、んっ、れろっ……。おつゆ、吸っても吸ってもあふれてきて、ああっ……。射精なさるのでしたら、今日はぜひとも私のお口によろしくお願いします。一刀さまの精液のお味、しばらくぶりですので、んぷっ……。いまのうちに、たくさん」
「明命のような忠臣をもてて幸せだな、おまえは。器量よしで腕が立ち、なおかつ閨でも従順ときているのだから」
「ふぁふ……。お褒めに預かり光栄なのです、冥琳さま。ぐぷっ、んぅ、ちゅっ、れろぉ。ふあっ、あっ、んむっ、はあっ」
冷静な眼差しを崩さないまま、冥琳が股の間におのれの指でふれている。
自分と長い時間過ごしているだけあって、性欲の強さには侮れないものがあった。椅子に座った状態の冥琳が、自分に見えるように大きく足を開けている。上品な色をした黒の下着。その中心は確認するまでもなく女の汁で濡れていて、着替える必要があることを示していた。
「くくっ。たまには、こうした余興も悪くはなかろう? んっ、ああっ、ふっ……。明命のため、さっさとどす黒い欲望の種を吐き出してやるのだな」
「ください、一刀さま。はうっ、んっ、ちゅうぅうう、ちゅるっ。私のお口に、濃厚で熱いとろとろをお腹いっぱいになるまで、んふっ……」
男根を頬張る明命の表情は、すっかり蕩けきっていた。
肌に男の陰毛がふれることも気にせず、一心不乱に精液だけを求めて快楽を引き出そうとする。床には我慢汁の混ざった唾液がぼたぼたと垂れ落ちていて、ほとんど水たまりのようになっていた。冥琳の挑発的な自慰行為は続いていて、普段見慣れているはずのすらりと伸びた足が、やけに色っぽく感じられる。
「一刀さま。んんぅ、一刀さまっ。おちんちん、すごいのです。こんなに熱くかたくなって、はあっ……。お口いっぱいじゅぽじゅぽしているだけなのに、んあっ♡ 私の身体まで、すごく火照ってくる。とっても素敵なのです。それだけ、一刀さまという存在は特別なのでしょうね、私たちにとって」
いじらしいことを言ってくれる明命のやわらかな頬を、二本の指を使って揉む。
男根のうえに吐き出される多量の唾液。その熱さと粘り気の強さに、孫策はぞくりとするような痺れを覚えていた。
滑りの良くなった竿の部分を明命が懸命にしごく。片方の手のひらは亀頭の先端に添えられていて、同時にやってくる刺激が男を飽きさせない。
「びくびく、すごく強くなっていますね。いきたい、射精したいと、一刀さまのおちんちんさまが叫ばれているようです」
「そんなにかわいい物言いをするかな、俺のこれは。それはいいとして、明命」
「はい。一刀さまのお情けを、どうか私のお口に。れぷっ、んっ、んむっ……。いって、いってください、一刀さまぁ……♡」
男根を半分ほど飲み込んだまま、もごもごと明命が口を動かす。
歪んだ言葉のおかしさと、やってくる均等でない快楽が、限界近くにまできていた理性の崩壊を、そっと後押ししてくれる。
「ああ……。いっているのだな、一刀。明命の小さな口に、入り切らないくらいの量の精液を射精して。どうだ、最高の気分なのではないか? んっ、あっ、ああっ。こうして見せつけられているだけでも、感じてしまう。おまえという男の熱、やはりまともではないよ、一刀」
秘部の門扉を左右にこじ開け、中身が見えるように冥琳は媚肉をいじくる。
その言葉にはかすかなふるえが混在していて、冷静な様を装う裏でしっかりと感じていることが読み取れるのだ。
長い射精を続ける男根。明命は大量の精液を何度かにわけて飲み込んでいるようで、さすがに話している余裕はどこにもないようだった。
かけがえない忠臣の頭を、労いの思いを込めて孫策は撫でていた。明命の眼が嬉しそうに細くなる。今日は男根に残った最後の一滴まで搾り切るつもりでいるらしく、敏感になった亀頭を小さな舌が執拗に這いずり回る。
「入るぞ、孫策殿。調練も終わり、今しがた暇になってな。先日約束したように、手合わせを願いたい……のだが」
流れるように扉を開け放った女が、入ってくるなり言葉を失っている。
華雄。董卓軍にその人ありと謳われる、武勇の士。その無骨すぎる性格が災いしたのか、男女の情愛には疎い部分があるようだった。