※この作品はR-18です。

虎となりて   作:KKS

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続・桂花の受難(桂花)

 なんの変哲もない雑務を、いつも通りこなしていく。

 薄暗い書庫の中での作業だった。空間を彷徨う埃と、ちょっとかび臭い匂いのせいで鼻がむずむずする。入り口から差し込む陽の光だけが、ささくれ立ちそうになる心を癒やしてくれている、という有り様だった。

 それなりに広い書庫とはいえ、容量には限界があるのだ。不要になった書物を取り出し、何冊かまとめて縄でくくる。できあがった束は街の書店まで運んでいき、いくらかの銭と引き換える。それが本日桂花が言い渡された仕事であり、この作業がもう三日は続いていた。

 写しを作成するにもかなりの手間が必要になってくるから、読まなくなった書物を後生大事に抱えているのはほとんど罪同然なのだ。後に続く者のことまで考えて、曹操は資源を有効活用しようとしている。そうした小さな振る舞いだけでも、曹操は傲慢なだけの高官連中とは違っていた。だからこそ、雑務を命じ続けられていても、どうにか耐え忍ぶことができているのだ。

 

「これも、来るべき栄光のための下積みなんだから。そうよ。曹操さまから与えられた試練だと思えば、なんだって……」

 

 独り言を呟きながら、桂花が書物の束を縛り上げる。

 この瞬間だけは、いくらか心にすかっとした感覚が訪れるのだ。あと五つほど束ができあがったら、台車に載せて書店まで持っていく。幸い猪女以外の女性武官とも知り合えていたから、その助力を得るつもりだった。

 

「桂花」

「なっ……!? ど、どこの誰だか知らないけど、いったいなんのつもりなのかしら。この私の真名を軽率に呼んだこと、死ぬまで後悔させてあげる。いいから、姿を見せなさいよ」

 

 穏やかに流れていた時間が、異変によって突如打ち壊されていく。

 声の響きから、相手が男だということはわかっていた。普通なら、もう少し冷静に状況を俯瞰するべきだったのかもしれない。それだけ、桂花にとって真名は神聖なものだった。しかも、曹操にすら真名を呼んでもらえていないという現状が、非礼に対する苛立ちを増幅させている。

 

「は……、え……っ? な、なんで。どうしてあんたが、曹操さまの邸にずかずかと足を踏み入れているのよ……!?」

「わからないことを言っているのは、おまえのほうだ。涼州に蔓延る賊徒を討ち終えたら、また会いにくると伝えたはずなのだが。でなければ、涼州土産のことなど、書簡を出して尋ねたりはしない」

「ちょ、やっ……。ち、近寄らないでよ、孫策。書簡の内容はともかく、私はあんたに真名を許した覚えなんてひとつも……っ」

 

 叫ぼうとしたのに、うまく声が腹の奥からでなかった。

 それに、真名を呼んだ相手があの男だとわかった瞬間からあるこの気持ちの戸惑いは、なんなのか。

 書庫での作業はひとりで行っているから、助けを期待することなどできなかった。運良く誰かが通りがかればいいのだが、それがもし夏侯惇のような面倒な女だったら、自分の吹けば飛ぶようないまの地位は、消し炭に変わるのだろう。

 

「許しなら、ここで得ればいいだろう。おまえを迎えに来た、桂花。軍師として、俺の闘いを支えてもらいたい。おまえの持つ王佐の才、いつまで書庫の片隅で腐らせておくつもりだ」

「うぐっ……。そ、それは……」

 

 すぐに言い返すことができなかった。それはつまり、自分は心にわだかまりを抱えている、と孫策に宣言しているようなものなのである。

 気持ちに揺らぎがないかと問われれば、あると答えなければ嘘になる。それだけ、孫策の求めは単純至極だった。

 いつの間にやったのか、書庫の扉が完全に閉じている。逃げ場のない密室で、猛獣のような男と二人きりでいる。胸の中心。早鐘を打っていて、呼吸がちょっと苦しいくらいだった。

 孫策が、圧力をかけるように一歩ずつにじり寄ってくる。獲物として、自分は力がなさすぎる。あの太史慈ですら、一騎討ちの末に組み伏せてしまうような男なのだ。抵抗したところで、どうにかなるような相手でないことは最初からわかりきっていた。

 

「まあ、いいだろう。元々、縄を首に引っ掛けてでも連れていくつもりだった。ははっ、それに」

「な、なによ、その気持ちの悪いほほ笑みは。はっ……! あ、あんたまさか」

 

 書物を縛っていた縄に、孫策が意識を向けている。

 このままだと、確実にまずいことになる。そう理解しているはずなのに、肝心の足は動いてくれなかった。

 縄を手にした孫策に、壁際まで追い詰められた。燃え盛る炎を宿した双眸に、頭のてっぺんから足先まで捉えられている。胸の中心は、相変わらず早鐘打ち続けていた。

 

「やっ、やめっ……! ひっ……。うあっ、いっ、ああっ……」

 

 ばちん、と平手打ちによる乾いた音が響く。

 頬に鋭い痛みがある。抵抗に出ようとした心を、瞬時に打ち砕かれたのだ。太史慈との間に割って入った時とはわけが違う。虎に組み伏せられた獲物を待っているのは、残酷な最期だけ。かすかに身体をふるわせながら、桂花は孫策にされるがままになっている。

 頭上で縛り上げられた両腕。どうして、自分はこんな姿をさせられているのに、気分を昂らせているのか。

 孫策の手のひら。顔のぶたれた部分に、あてられている。その力加減がやけに優しく感じられて、ちょっと腹立たしいくらいだった。

 

「いい表情をしているな、桂花。似合っているぞ、こういう格好も」

「うっ、くうっ……。わ、私を辱めるような真似をして、どうしようっていうのよ、孫策」

「そろそろ、一刀と真名で呼んでくれても構わないのだぞ? これ以上意地を張っていても、辛いだけだ」

「い、意地だなんて私は……あっ。んうっ、んあっ、やっ……。そ、そんなところ、さわらないでよ!? あっ、んんっ、くっ……。だ、だめって言ってるのに、あっ、んあっ……!?」

「心の底からそう思うのなら、俺の顔を蹴り上げればいいだけだ。それをしないということは、要するに」

「し、知ったふうな口を聞かないでよね、変態孕ませ精液男が……! んあっ、いやぁ……。そ、そんなとこ、吸わないで……ぇ」

 

 首筋に顔を近づけたかと思うと、孫策が思いっきりそこを唇で吸い上げた。

 かなりの力で、間違いなく痕になっている。いかがわしい男のすることだから、肌の露出している部分を狙ってのことなのだろう。正直、人前にでることを想像してみただけで、ぞくりとするような甘いしびれが全身を走り抜けた。

 孫策、一刀に背中から押しつけられたせいで、きちんと整理したばかりの書物が棚からこぼれ落ちる。

 正直、そんなことはもうどうでもよかった。至近距離にある一刀の顔。眼の奥にある炎の揺らめきすら、感じ取ってしまえるくらいのところにまで接近してしまっている。

 

「ははっ。王佐の才だけにとどまらず、おまえにはメス犬としての才能まであるようだな。こうして俺に縛られて、内心興奮しているのだろう。なあ、桂花?」

「だ、誰がそんなことっ。い、いやあっ……!? ま、真名で呼ぶことは許してあげるから、それだけは絶対にだめっ。くふっ、うっ、はーっ、んうっ。そんな汚らわしいもの、私に押しつけないで」

 

 服をずり下げられているせいで露出した下着。その股の中心の部分に、ひどく熱いものを押し当てられている。

 いくら男に嫌悪感があるとはいえ、必要なだけの知識は備えているつもりだった。男の陰部は興奮すると肥大し、最後には欲望の種を撒き散らして果てる。

 自分には生涯縁のないことだと思いこんでいた。それなのに、現実というやつはやはりどこまでも恐ろしい。

 

「おまえのすべてが欲しい、桂花。やると決めたからには、俺は徹底的にやるぞ。その果てに、おまえの壊れる姿があったとしても、だ」

「ふえっ……!? だ、だめだって言ってるでしょうが。ちょ、んっ……♡ こんな強引に、んあっ、くうっ……!? わ、私のはじめて、無茶苦茶にされる。一刀の、変態精液男のせいで、全部変になる……ぅ♡」

「ようやく呼ぶ気になってくれたのだな、真名を。ほら、桂花。少し、力を抜いていろよ」

「いやっ、あぅっ……! む、無理だってばぁ。こんな馬鹿みたいに大きくなった汚らしいモノ押しつけられて、平常心でいるだなんて絶対むり……ぃ!?」

 

 ぶちぶちっ、と身体を内側から引き裂かれるような感覚があった。

 大切に守り抜いてきた処女の喪失。これだけ強引に、しかも心を服従させるような趣のある中で行われるとは、想像もしていなかった。

 自分の身体は、やはりどこかおかしくなっているのではないだろうか。

 感じたことのなに異物感と一緒に、凄まじい熱が腹の奥を突き上げてくる。桂花、と耳のそばで囁かれる声に甘い響きがある。腹の奥底にある疼き。鎮めることができるのは、きっとこの男だけなのだろう。

 それに自分は腕を拘束されていて、満足に抵抗することさえできないでいる。だから嫌いなはずの男に犯されていても、これは仕方のないことなのだ。

 心の均衡を保つために、どうにかそう言い聞かせた。

 

「こ、こんなひどいことされてるのに、どうして私……っ♡ んひっ、おっ、あーっ、いやっ、いやあ……っ。だ、出したらいけない声、奥のほうからいくらでも出てきちゃう。一刀に聞かれたら絶対だめなのに、こんな、こんなのって」

 

 そうやって口に出していくことで、疑念は確信へと姿を変えていく。

 淫乱なことに歯止めのきかないメス犬。自分の本性は、実はそんな汚らわしいものだったのか。

 強引に挿入されているモノの熱さやカタチが、やがて鮮明に見えてくる。びくり、と男根が膣の動きに合わせて跳ねたようだ。

 肉という肉を、内側からかき出される。こんな危険なモノを挿れられて、まともでいられるはずがなかった。

 覇者の風格を備えた宝刀、と表現するほかなかった。

 反発を有していたはずの心が、抽送のたびに服従の色に染められていく。気持ちいい。なにもかもを壊され、心を強制的に再構築されていく感覚があった。

 

「いつまでも聞いていたいな、桂花の声を。俺の飼い犬らしく、もっと淫らに鳴いてみるがいい。さあ、これでどうだ?」

「は、はひっ……! んあっ、んっ、おーっ、くふっ……♡ わ、私のいやらしいおまんこの奥、もっと突いてください。ご、ご主人様のおちん……ちん、たくさん感じていたいんです。ですから、どうか……あっ、ああぁああ……!」

 

 胸の奥でどうにか堪えていた言葉を、ついに吐き出してしまう時がきた。

 快楽を与えてくれるご主人様。淫らなメス犬である私の、唯一無二の飼い主さま。言葉を発しただけなのに、腹の奥がどうしようもないほど切なくなった。

 溺れるほど満たされなければ、その切なさはきっといつまでも消えることがない。交わりはじめてから、感覚的に理解したことだった。

 満足そうに一刀が笑う。

 下から激しく突き上げられたせいで、腰がガクガクとふるえた。あふれた愛液が飛び散り、床に落ちていた書物を汚す。自分の心が、ここに帰ってくることはもうないのだろう。立つ鳥跡を濁さず。飼われることに幸せを見出すメス犬でしかない自分に、そんな上品な別れができるはずがない。

 

「いい子だな、桂花は。ついでにもうひとつ確認しておこうか。射精のおねだり。できるな、おまえなら」

「は、はひっ……♡ こ、子種。ご主人様の貴重な子種を、私のメス犬おまんこに、んあっ……♡ あ、あーっ♡ あふれるくらい、射精していただきたいんです。お、おちんちん、気持ちよくなるように努力いたしますから。はじめてチンポ挿入されてすぐいってしまうような雑魚マンコに、どうかお情けを♡」

「ははっ。いい具合に仕上がってきているようだな、桂花。ン……。下手くそでもいいから、もっと腰を使え。射精してもらいたいのなら、精一杯誠意をみせてみろ」

「はいっ、ご主人様……! んうっ、んっ、ううっ、はーっ♡ い、いかがでしょうか、私の腰振りは。オチンポ、少しでも気持ちよくできていれば幸いです」

 

 抽送がさらに激しくなる。

 拘束された腕。食い込む縄が少し痛いが、それすらいまは快楽に変わる。

 いきたい。このまま、淫らにいかされたい。思考を支配しているのは淫欲だけであり、そこには理性のひと欠片も存在していなかった。

 お腹の奥がずっと切なくなっている。

 欲しい。欲しい。欲しい。欲しい。欲しい。

 ただ、ご主人様の精液で子宮の隅々まで満たされたくて、だらしなく腰を振った。

 

「あひっ、あーっ、んあっ、うっ、くふう……っ!? くる、きちゃう。頭の中真っ白になって、もうなにも考えられなくなる……ぅ♡」

 

 もう、我慢の限界だった。

 軽い絶頂を繰り返していた身体が、男根に甘えることを良しとしてしまっている。子宮の入り口に熱い先端が擦れている。射精の兆候。それを覚えていたくて、男根のふるえにすべての神経を集中させた。

 ひと回り太くなる。先端のふるえ。それから、男根全体が膣の中で大きく跳ね上がった。

 

「きてるっ。これが、あっ、これが、ご主人様の……♡」

 

 一刀に背中を強く抱き寄せられている。

 たくましい腕。これから、自分はこの腕に幾度となく抱かれるのだろう。

 吐き出される熱い精液。女としての幸せを、嫌というほど叩き込まれているようだった。腰のふるえから逃げることなどできやしない。

 胎内をぐるぐると駆け巡る子種。さらに、感覚を上書きされていく。感謝を述べようとしたのだが、うまく舌が回らなかった。

 手のひらで頭を優しく撫でられている。子供のころでも、ここまで悦びを感じたことはなかった。

 

 

 永遠に続くかのように感じられた交合の時間。それも、いつしか泡のように消えていった。

 どうしてか、眼の前にいるはずの一刀の姿が、時を追うごとに朧気になっていく。

 いかないで。こんなところで、私をひとりにしないで。必死の叫び。届くことはなかった。やがてそこにあったはずの一刀の姿が、空間と一体になって消えていく。

 最後の抵抗として、桂花は腕を伸ばした。

 なにかから落っこちたような衝撃。尻に、はっきりとした痛みがある。

 

「いっ、あたたっ……。って、え、なによこれ……!?」

 

 自分の背後にあるのは、倒れた椅子。そういえば、と桂花は鈍痛のする頭の中を整理していった。

 

「ゆ、夢。ほんとに夢だったっていうの、あの光景が」

 

 疲れて少し休憩にしていたところ、どうやら居眠りをしてしまったらしい。

 慌ててあたりを確認してみたものの、書物が散らばっているようなことはなかった。それに、左右の腕のどちらにも、拘束をされていた痕跡はなかった。

 

「あ、あははっ。こんなの馬鹿みたいじゃない、わたし……」

 

 あれだけ昂揚しいたはずの気分が、急速に萎んでいく。もうすでに、泣きたいくらいの気分だった。

 床に座り込んだまま、大切なところを少し確認してみる。

 あれだけ盛大に犯されたのだから、ちょっとやそっときれいにしたくらいでは、取り繕えないくらいの量の精液を放出されたはずなのである。

 すがりつくにしても、もっとマシなものがあるのではないか。われながら滑稽だったが、いまはそれだけが希望だった。

 

「うわっ、すっごい濡れてるし……。はあ、ふう……。最低な夢見て、椅子から転げ落ちて……。ほんっと、なにやってんだか」

 

 ここから雑務に向かうやる気を復活させるのは、至難の技なのではないかという自覚がある。

 馬鹿。涼州のある方角に向かって、桂花はひと言だけ呟いた。

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